ニンテンドースイッチ/PS5/PS4/Steam向け創壊共闘アクション『ガンダムブレイカー4』は、『機動戦士ガンダム』シリーズのモビルスーツ……というより、ガンプラを操作して戦うのが大きな特徴です。

ガンプラは、40年以上に渡って子供たちを虜にしてきました。
子供のころ、親にガンプラをねだってようやく買ってもらったという人も少なくないはずです。そんなガンプラの生産を主幹産業にしている地域が、筆者の住まいでもある静岡県静岡市です。

今回は『ガンダムブレイカー4』とガンプラ、そしてそれらが大きな影響をもたらす地域活性化について解説したいと思います。

◆静岡市とプラモデル産業
静岡市は、世界有数のプラモデル産業のまちとして知られています。

田宮模型、アオシマは静岡市、ハセガワはその隣の焼津市、そして国内唯一のガンプラ生産拠点であるバンダイホビーセンターは静岡鉄道静岡清水線長沼駅のすぐ傍らにあります。我々の触れるガンプラは、静岡生まれなのです。

JR東静岡駅の北口には、ガンダムが描かれたマンホールが。ガンプラは、静岡市にとってはそれ自体が税収をもたらす巨大産業セクターです。ガンプラを保管する物流用倉庫や大型トラックを展開する輸送業者、箱の製造を請け負う印刷業者など、バンダイホビーセンターの外にも多大な経済効果をもたらしているのです。無論、そこに発生する雇用は莫大なものになります。

自動車の生産には、そのメーカーの工場だけでなくライトカバーを作るプラスチック加工業者や内装部品を請け負う縫製業者も携わっています。それと同じ構図が、ガンプラにも存在します。


行政も、ここ10年ほどの間にようやく「プラモデル産業のまち静岡市」を前面に押し出すようになりました。「ようやく」と書いてしまうのは、静岡市は対外的なPRに積極的ではない側面が見受けられるため。このあたりは静岡市民がよく自覚している点でもあり、また同じ静岡県下の浜松市との気質の違いでもあります。

ガンプラが今も変わらず子供たちの胸を躍らせるものであり続ける限り、静岡市のプラモデル産業は主幹産業として君臨し続けるはず。『ガンダムブレイカー4』が起爆剤となり、若い世代が「自分の手でガンプラを作ってみたい!」と思い立つようになれば、その影響は巨大な利益として静岡市にもたらされるでしょう。

しかし、そこに至るまでの高い「壁」があるのもまた事実です。

◆静岡市民は、「プラモ好き」か?
これは意外に思われることですが、静岡市民は決して「プラモ好き」というわけではありません。

『桃太郎電鉄』シリーズの静岡市には、必ず「プラモデル(オモチャ)工場」が売買物件として出てきます。だから、この都市に住んでいる人たちも頻繁にプラモデルを作っているはずだ……なんてイメージがあるかもですが、そういうわけではありません。

むしろ上述の通り行政が「プラモデルのまち」をPRするようになったのは、ほんの最近のこと。1959年から開催されている静岡ホビーショーは、そもそもは「生産者見本市」という名のB2Bイベントでした。当初から一般市民を巻き込んだ巨大イベントとして始まったわけではありません。


また、現在の静岡市には「プラモデルを販売している実店舗」が意外に多くないという背景も。家電量販店の玩具コーナーを除けば、プラモデルの中古販売を行っている駿河屋か個人経営の模型店です。タムタムのようなホビーショップチェーン店は静岡市にはありません。

「プラモって、どこで売ってるの?」という子供からの質問に、プラモデル好きでない限り即答できない大人が大半ではないでしょうか。

◆小売りの空白化
80年代頃までは、静岡市のプラモデルの小売りは個人経営の玩具店、模型店、そして駄菓子屋が担っていました。

「何で駄菓子屋?」と思われるかもしれませんが、静岡市の駄菓子屋は店によっては駄菓子だけでなく静岡おでんを出したり、プラモデルやファミコンソフト、エアソフトガンを取り扱っていたりということがありました。実際、筆者の祖父母の家のすぐ隣に、駄菓子兼玩具店という感じの店が存在しました。

しかし、静岡市でもそうした「古き良き店」は少なくなってしまいました。

結果、訪れるのが「小売りの空白化」です。もちろん、現代ではAmazon等のネット通販を使ってプラモデルを購入することもできます。しかし、ネット通販は「購入前に箱を手に取る」という過程が発生しません。

「今の時代、子供たちがプラモデルの箱を手に取る機会なんかない。
だから、ウチの会社の新製品もどうしても大人向けの販促になるんだよ」というのは、筆者の知り合いのプラモデルメーカー社長の談です。

◆ゲームをしながらガンプラを作ろう!
「プラモデルのまち」の住民が、意外にもプラモデルに触れる機会が少ないという背景が存在し、それが「プラモデルによる地域活性化」を難しくする「壁」となっている様子は否めません。

しかし、それでもガンプラは閉塞感を打破するだけの魅力と破壊力を持ち合わせています。

『ガンダムブレイカー4』の販売に合わせて、実際のガンプラを対象にした『俺ガンCOLLECTION』というコンテストが開催されます。若い世代に対してガンプラを作る動機を与えるには、こうしたイベントは必要不可欠。駄菓子屋も玩具店も少なくなった現代だからこそ、その情勢に適合した「布教の仕方」が求められています。

プラモデル作るのって、面白い!

ゲームをきっかけに湧き出した子供たちの好奇心が産業に多大なインパクトを与え、地域活性化にもつながっていきます。
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