シリーズ最新作であり、国内外から熱い視線が寄せられている『モンスターハンターワイルズ』が、今月2月28日にいよいよ幕開けを迎えます。

新たな冒険と狩りの日々は、広大化したフィールドや拠点とのシームレスな繋がりなど、過去作から大きな変化を遂げた部分もあれば、復活モンスターとの登場もあるため、新たな刺激から懐かしい再会まで贅沢に楽しめることでしょう。


特に「怪鳥 イャンクック」の復活は、発表当時から大きな話題となりました。SNSでは「イャンクック先生」と、敬意を払って呼ぶ声も少なくありません。

なぜ「イャンクック」の参戦にこれほど沸いたのか、そして、モンスターなのに「先生」と呼ばれるのか。『モンスターハンター:ワールド』や『モンスターハンターライズ』から始めた近年のハンターは知らない「イャンクック」の背景とは。

■古参組ながら、空白期も長かった「イャンクック」
「イャンクック」の登場はかなり古く、シリーズ原点の1作目『モンスターハンター』の時にはすでに顔を出していました。大型モンスターの中では討伐クエストの登場も早く、★3クエスト「密林の大怪鳥」でハンターたちと対峙します。

PSP向けを含め、「イャンクック」は後の作品でも活躍し、定番モンスターと化しつつありました。しかし『モンスターハンター3』には登場せず、『3G』や『3rd』でも姿を見せずじまいとなります。

半ばレギュラーだった立場から一転、すっかり見る機会がなくなった「イャンクック」ですが、『モンスターハンター4』(2013年)で見事復活を果たしました。2008年発売の『モンスターハンターポータブル 2nd G』から数え、約5年ぶりの再会です。

再び姿を見せ始めた「イャンクック」に多くのハンターが歓喜の声を上げましたが、しかしその喜びもひとときのこと。『モンスターハンターダブルクロス』(2017年)を区切りに、再びメインシリーズから外れてしまいます。


『モンスターハンター ストーリーズ』ではオトモンとして登場し、ライドオンで共にフィールドを駆け巡ることもできますが、こちらはRPGベースのゲームなのでメインのハンティングアクションとは異なります。

メインシリーズでは、転換期となった『モンスターハンター:ワールド』や、オトモガルクに翔蟲で狩りの快適性が大きく向上した『モンスターハンターライズ』などが登場し、世間を大きく賑わせます。しかし、大型DLCを含め、両作品のいずれにも「イャンクック」が姿を見せることはありません。

更なる空白期間を迎えても、再来の期待を失うことなくファンが待ち続ける中、このたびリリースされる『モンスターハンターワイルズ』への「イャンクック」参戦が判明。以前の空白期よりも長い8年近くもの時を経た、念願の再々復活となりました。

シリーズ初期の古参ハンターはもちろん、協力プレイが大いに盛り上がったポータブル時代、そして『4』や『クロス』シリーズと、幅広く活躍した名モンスター「イャンクック」。多くの世代から求められたため、参戦に喜ぶ声が多いのも至極納得です。

■戦いの基本を教えてくれた「イャンクック先生」!
「イャンクック」は多くのハンターから「先生」と呼ばれ、親しまれています。先生という言い回しは、何かを教え伝える相手に対して広く使われる言葉ですが、では「イャンクック」はハンターたちに何を教えてくれたのでしょうか。それは、『モンハン』における戦い方の基本です。

1作目『モンスターハンター』のオフラインクエストでは、素材の収集や「ランポス」といった小型モンスターとの戦いから始まります。そして、一際大きな「ドスランポス」を倒し、ハンター生活のサイクルを一通り身に着けた時に現れるのが、この「イャンクック」でした。


「イャンクック」は鳥竜種ですが、2本足で立ち、前足は翼状で、長い尻尾を持ち、ブレス(火炎液)を吐くといった大まかな特徴が、「リオレウス」を始めとする大型モンスターたちと一致しています。そのため、「イャンクック」との戦いを通じて、他の飛竜種との戦い方が自然と身についていくのです。

また、「イャンクック」のアクションも、『モンハン』の基本を教えてくれます。新人の頃はモンスターに特攻を仕掛けがちですが、モーションの早いついばみの連続攻撃で、無謀な立ち回りは危険だと教えてくれます。

距離さえ空ければ安全だと油断していると、火炎液で中距離攻撃を繰り出し、甘い位置取りで回復薬を飲んでいるハンターには突進攻撃で分からせる「イャンクック」。危機感の足りないハンターに、一切の容赦はありません。

しかし、その突進後には派手に転び、大きな隙を晒すといったこともあります。「モンスターの攻撃を避けたor防いだ後、攻撃するチャンスが訪れる」という狩りの基本を、まさしく身体で表現してくれているのです。

目立つほど大きな耳は、「イャンクック」の聴力が発達している証です。モンスターの外見を観察することで得られる情報もあると、この時に知ったハンターも少なくないでしょう。また、耳が良いため、通常時なら音爆弾も効果的です。見た目から弱点を推測するというやり方も、「イャンクック」が暗に教えてくれるのです。


「イャンクック」と初めて戦う時は、ゲーム進行度の関係から、武器や防具はかなり貧弱です。特に武器は、斬れ味がまだまだ十分ではないため、適した肉質の部位を正確に攻撃する必要がありますし、頻繁に砥石で磨かねばなりません。

そうした立ち回りは、飛竜種に限らずあらゆるモンスターと相対する時に必要な『モンハン』の基本といえますが、その基本をきっちり叩き込んでくれたのが、この「イャンクック」でした。

基本がなっていないハンターは、攻撃や回避でミスを繰り返し、あえなく「イャンクック」に撃退されます。しかし、モンスターの隙を突いて攻撃し、相手の攻撃を回避や防御で避け、的確なタイミングで回復薬を使う立ち回りを覚えると、「イャンクック」の討伐は決して難しくありません。

「イャンクック」の討伐は、ハンターが一人前になる最初の登竜門ともいえるでしょう。そのため、「イャンクック」の討伐に成功し、大型モンスターとの戦いに一歩踏み出したハンターたちは、その恩恵に敬意を表し、「イャンクック」を「先生」と呼ぶのです。

長く愛されるも登場時期に空白期があり、ようやく『モンスターハンターワイルズ』で帰ってきた「イャンクック」。本作の先生役は、ほかのモンスターに譲ることになりそうですが、過去作でハンター1年生を卒業した面々は、懐かしい先生との再会に心を震わせることでしょう。

生態系をより濃密に描く『モンスターハンターワイルズ』で、「イャンクック」はどんな姿を見せてくれるのか。再会と新たな一面のお披露目に、ご期待ください。
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