絶望的な状況に追い込まれたいたいけな子供たちが、恐るべき戦車「タラニス」を駆り、過酷な戦いに立ち向かう『戦場のフーガ』シリーズ。その最新作であり、3部作の完結を飾る『戦場のフーガ3』が、2025年5月29日に発売されます。


この発売に先駆け、本作の序盤に触れたプレイレポートを今回お届けします。シリーズの基本的なゲーム性から独自の新要素まで、発売前に本作の魅力をチェックしておきましょう。

なお、今回プレイしたプラットフォームはPC版です。また、プレイ範囲はゲーム開始から第1章まで。製品版における最序盤の範囲に限りますが、本編の一部ネタバレも含んでいるのでご注意ください。

■『戦場のフーガ』シリーズとは
やむを得ぬ理由から、少年少女が「タラニス」に乗り込み、強大な敵と戦い続ける『戦場のフーガ』シリーズは、「ドラマティックシミュレーションRPG」です。ドラマ部分については後ほど触れるとして、ゲーム性の中心はタイムラインで進行するコマンド選択型のRPGになります。

RPGと聞くと、フィールドを自由に探索し、街やダンジョンを任意で行き来しながら、ラスボスの元に辿り着く……というゲーム進行を連想する人が多いことでしょう。しかし『戦場のフーガ』は、マス目状のルートを1マスずつ進み、待ち受ける敵と戦うバトルを中心としています。

探索や日常的な要素もありますが、作中における子供たちの日常は“戦いの最中”にあり、常に戦闘と隣り合わせの日々を過ごします。そのため、探索や日々の交流も、ゲームシステム的には「バトルに影響を与えるステータスやリソース」と結びついており、日頃の積み重ねが戦闘を有利に運ぶ一助となるのです。

そして、少年たちが向き合うバトルこそ、本作におけるゲーム性の軸となり、もっとも手ごたえを感じる部分となります。
ジャンル名にもある通り、シミュレーション性が高く、いかに被害を押さえて勝利するか。その醍醐味こそ、本シリーズの共通した魅力であり、『戦場のフーガ3』においてもフォーカスされている部分です。

■『戦場のフーガ』の戦闘は、戦略性の高いタイムラインバトル
今回プレイした『戦場のフーガ3』の第1章では、過去作で子供たちのリーダー的な存在であった「マルト」を助け出すため、彼の妹である「メイ」や幼なじみの「ハンナ」などが「タラニス」に乗り込んで帝国の深部へと突き進みます。

基本的なゲーム進行は過去作と同様で、ルートのマス目を進めることで敵兵器と遭遇し、タイムライン制のバトルが発生。コマンドを選択して攻撃などを行い、敵を全て撃破すれば再びルート進行に戻ります。

ただし、「タラニス」のHPや、特別な効果を発揮する「スキル」の発動に必要なSPの損耗度は引き継がれるため、目の前の1戦だけでなく、長期的に戦い続けられるように立ち回るのが重要です。ピンチに備えてSPを温存するか、ルート上にある「SP回復マス」を見越して「スキル」でHPを回復させるか、プレイヤーの判断が問われる場面も多々訪れます。

「タラニス」には「マシンガン」「グレネード」「キャノン」といった武装がありますが、子供ごとに使う武装が決まっており、誰を砲座に配置するかで使える武装が変わります。子供によって「スキル」の内容も異なりますし、武装によって敵兵器の「弱点」を突ける場合もあるため、武装選択(=子供たちの選択)も勝利を左右する大きな要因です。

武装は戦闘中に変更可能なので、敵兵器に合わせたチョイスで挑みましょう。一度武装を変えると、一定時間(行動回数)が過ぎるまで再変更できないので、選択は慎重に。とはいえ、即座に再変更できないだけなので、敵兵器に合わせて適時変更した方がスムーズに進めます。


行動回数や被ダメージが少ないほど、得られる経験値が増え、子供たちのレベルアップが早まります。レベルが上がれば、攻撃力などのステータスが向上するほか、新たなスキルを獲得することも。戦略的な立ち回りがスムーズな育成を促し、成長が後の戦闘を楽にする。このサイクルをどれだけ良く回せるかが、プレイヤーの腕の見せどころです。

■『戦場のフーガ3』では、子供たちの命をまとめて奪う新要素も……!
先ほど触れたゲームシステムは、『戦場のフーガ3』にも継承されているシリーズの基本的な内容です。これらに加え、本作ならではの新要素も備わっており、その一部を今回のプレイで体験できました。

まず、敵兵器の「弱点」を突く攻撃ですが、過去作では敵の行動を遅延させる効果がありました。しかし本作では、遅延に加えて「弱点コンボ」が派生し、連続で弱点攻撃を成功させると与えるダメージが増加していきます。

今回のプレイでは、この増加分を見越して、敵兵器を殲滅させる順番を見極める場面がありました。単体の攻撃ではトドメを刺すのに少し足りない場合でも、今度のダメージ増加がうまくハマれば、攻撃の手数を効率的に減らすことができるため、本作の戦闘全般でお世話になる予感を覚えます。

また、本シリーズを象徴する特徴的な要素として、「タラニス」に搭載されているもうひとつの兵装「ソウルキャノン」があります。この兵装は通常時は使用せず、いわば切り札的な扱いです。


「ソウルキャノン」の威力は凄まじく、恐るべき敵兵器であっても一撃で葬り去ってしまうほど。ただし、高すぎる威力の代償として、子供たちの誰かが命を差し出さなければなりません。

ひとりの子供の命を消費する「ソウルキャノン」は、敵にとっても味方にとっても悪魔的な兵装ですが、本作には「ソウルキャノン」ですら倒せない強敵すら殲滅させる「メガソウルキャノン」が登場します。

第1章はチュートリアルを兼ねているため、「メガソウルキャノン」の発動がイベント進行に組み込まれていました。そして、その代償となったのは……ひとりではなく、その場にいた子供たち全員の命。チャンバー室にも複数の椅子が容易されており、その命を捧げる代償がひとりでは済まないことを視覚的に物語っています。

今回は回避不能のイベント進行で発動した「メガソウルキャノン」ですが、当然通常のゲームプレイ中でも発動します。詳細までは明かされていませんが、バトル中に「全滅エンド」の条件が揃うと、「メガソウルキャノン」が強制的に発動するとのこと。

「メガソウルキャノン」に子どもたち全員の命が捧げられるため、文字通りのバッドエンドであり、同時にゲームオーバーとなります。『戦場のフーガ3』に挑む人は、「メガソウルキャノン」を発動させないよう尽力しつつ、万が一起きてしまった時に悲劇を受け止める覚悟も備えておきましょう。

今回の第1章部分では体験できなかったものの、『戦場のフーガ3』にはこのほかの新要素も多数用意されています。

例えば、これまで「マルト」だけが使えた「リーダースキル」は「マルチリーダースキル」と名前を変え、子どもたち全員が固有のリーダースキルを発動可能になりました。


また、かつての仲間や敵だった人物が「アシストキャラ」として参戦し、バトルに助力したり、特別なイベントが見られたりすることも。さらに、「タラニス」の育成要素がパワーアップしたほか、冒険の舞台が「空」や「月面」にも広がるなど、バトルから探索まで様々な進化を遂げています。

■過去作を上回るほど!? 幕開けから絶望的な『戦場のフーガ3』
最後に触れておきたいのが、『戦場のフーガ3』の物語です。本シリーズの物語は絶望と復讐が交錯しており、その幕開けは常に過酷な状況でした。

例えば1作目は、帝国に急襲されて村は焼け落ち、子供たちの親や大人たちは敵軍に連れ去られてしまいます。また2作目では、子供たちの半数を乗せた「タラニス」が暴走。囚われた仲間たちを救うため、操られている仲間と戦うという苦境に立たされました。

いずれも非常に厳しい状況ですが、『戦場のフーガ3』の幕開けから続く第1章の物語は、さらに輪をかけるような絶望に彩られています。

「マルト」をさらった帝国が再び戦争を仕掛け、この世界が再び戦火に飲み込まれます。子供たちは「タラニス」に乗り込み、「マルト」を救出すべく、帝国の旗艦への突入に成功。しかしここまでの激戦で、すでに子供たちの半数が命を落としていました。

「ハンナ」や「メイ」などは生き残ったものの、立ち絵には身体のあちこちに包帯が巻かれており、誰もが軽くない傷を負っています。
見た目にも痛々しい姿ですが、命を落とした仲間の喪失感も大きく、心も深い痛手を受けており、心身ともに限界ぎりぎりです。

そんな過酷な戦況で、敵の猛攻に耐えながらも進んでいくと、「マルト」の声が通信機に飛び込んできました。その受信に一瞬喜ぶものの、発信源を辿っていくと、とても人が入りきらない小さな箱と、散乱している「マルト」の服があるのみ。どうやら、その箱に入った発信機が機械的な音声を発しているようです。

しかし、その箱を射抜く銃声が響くと、穿たれた穴からこぼれるのは鮮血。格子状の蓋をよく見れば、その隙間からは髪の毛のようなものも……。

不吉な予感が蠢く中、帝国の皇帝である「カイザー」が映像越しに現れ、さらった「マルト」がどこにいるか、端的に示しました。「君たちの前に置いてあるではないか」、と。

そして、周囲に潜んでいた敵兵器に囲まれ、「タラニス」は絶体絶命のピンチに追い込まれます。戦力的に太刀打ちできず、精神的に打ちのめされ……その結果、「ハンナ」たちはひとつの決断を下します。「メガソウルキャノン」という、最悪の兵器の発動を。

残った子供たち全員の命を吸い上げた「メガソウルキャノン」は、周囲を取り囲む圧倒的な戦力すら壊滅させ、旗艦に深刻なダメージを与えました。
しかし、その奮闘も空しく、ダメージを受けた下層部を切り離した旗艦は、そのまま悠々と飛び続けます。

勝ち誇る「カイザー」と、血が流れ出た箱は策略に過ぎず、その一部始終を見せつけられた「マルト」と共に……!

過去作も幕開けが絶望的でしたが、『戦場のフーガ3』はさらに上回る強烈な一撃を見舞ってきます。これがまだ第1章の範囲と考えると、この先どれほどの絶望が待ち受けているのか想像がつかないほどです。

ただし、この第1章で目にした大半の出来事は、「マルト」が見た夢のようなもの。現時点ではまだ、現実化していない可能性の話に過ぎません。そしてプレイヤーが介在しなければ、この夢は現実になるのかもしれません。

仮定の未来だけでも。心が折れそうな“絶望”を早々に突きつけてきた『戦場のフーガ3』。製品版で味わえる物語に、今から身が震えんばかりです。

RPGの戦闘部分を深く掘り下げたゲームシステムは、コマンドバトルに高い戦略性が組み込まれており、よりよい一手を見つける醍醐味を堪能できます。「弱点」を突くダメージアップなどの新要素も、戦略の幅を大いに広げてくれることでしょう。

そして、絶望にまみれた物語も本シリーズの大きな特徴ですが、過去作以上の苛烈さを早くも予感させる展開を第1章で見せてくれました。バトルの戦略性と絶望的な物語が、本編でどのような融合を果たすのか。『戦場のフーガ3』製品版への期待が高まるプレイ体験となりました。

なお、『戦場のフーガ3』のゲーム内に、1作目・2作目のあらすじも収録されています。ネタバレレベルの展開も綴られているため、過去作をプレイしていないユーザーでも、シリーズの全容を知ることができます。シリーズ未経験の人も、『戦場のフーガ3』のプレイを一考してはいかがでしょうか。

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