インティ・クリエイツといえば、『ロックマンゼロ』シリーズや『蒼き雷霆 ガンヴォルト』シリーズといった王道アクションを思い出す人も多いことでしょう。また、ファミコンソフト『超惑星戦記 メタファイト』をリブートした『ブラスターマスター ゼロ』シリーズを展開するなど、チャレンジングな取り組みにも意欲的です。


もちろんこうした作品も魅力的ですが、紳士ご用達の『ぎゃる☆がん』シリーズにも、個人的ながら非常に惹かれています。ただし『ぎゃる☆がん』は“自由過ぎる表現”(意訳)が今の世情的に難しいのか、新たな動きがしばらく途絶えている状況です。

しかし、『ぎゃる☆がん』と世界観を共有する『グリム・ガーディアンズ デーモンパージ(以下、デーモンパージ)』が2023年2月に登場。『ぎゃる☆がん だぶるぴーす』のメインヒロイン「神園しのぶ」と妹の「真夜」を主人公に抜擢し、魔界の城を舞台に活躍するスピンオフが展開しました。

そんな『デーモンパージ』の発売から2年が過ぎた2025年3月27日、シリーズ第2作となる『グリム・ガーディアンズ サーヴァント・オブ・ザ・ダーク(以下、サーヴァント・オブ・ザ・ダーク)』がリリースされます。

本作では、魔王に仕える悪魔のメイド姉妹を主人公にゲーム性も大きく変化。『ぎゃる☆がん』世界とは今回も繋がりがあり、シリーズファンとして見逃せません。

そんな本作の発売が間近に迫る中、いち早く本編をプレイする機会に恵まれたので、前作経験者の視点から今回プレイレポートをお届けします。

なお今回プレイしたのはSteam版です。また、ほどよい緊張感が楽しめる「VETERAN」にて、10時間ほどプレイした範囲でのレポートとなります。

◆前作から一変した『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』のゲーム性
『デーモンパージ』と『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』はいずれも、探索要素のある横スクロールACTです。キャラクターは異なりますが、どちらの作品も姉妹が主人公となり、ソロプレイでは状況に応じて姉妹を切り替えながら敵との戦いに臨みます。


また両作品とも、姉の基本攻撃は遠距離武器(サブマシンガン)を使い、妹は近接攻撃を担当します。姉は攻撃力が低めですが連射が効き、妹はリーチが限られている分、与ダメージが大きく、互いの長所を活かした立ち回りが攻略のカギになります。

こういった基本中の基本を前作から継承しているものの、一方でゲーム性はかなり変化しています。前作は王道的なアクションでしたが、『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』はジャンルの枠を超え、メトロイドヴァニアと称しても過言ではないゲーム性を備えました。

前作にも探索の要素はありましたが、基本的にはマップはステージ単位で構成されており、その構造も比較的シンプルな作りです。探索というより、ボスに向かう道のりに別ルートもあると表現すると実態に近いかと思います。

対する『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』は、世界が複数のエリアで分かれていますが、隣接するエリアと直接繋がっており、複数のエリアと繋がっているケースもありました。また、各エリア内も相当数のフィールドが広がっていて、強化アイテムやお金が入った宝箱なども随所に眠っています。

こうしたお宝やルートの一部は、訪れた段階では手が届かないことも少なくありません。後に獲得する新たなアクションなどで活路が開けるため、再訪することで『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』の世界はどんどんと広がっていきます。こうした探索要素も、まさにメトロイドヴァニアらしい楽しみです。

また前作の主人公ふたりは、ゲーム進行に応じた武器の強化や獲得アイテムで直接的に強くなる要素はありましたが、RPG的なレベルアップはなく本人たちのスペックは大きく変化しません。


しかし『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』では、主人公の姉妹が仕える魔王の「骨」を集めて城の玉座に捧げると、一定数ごとにレベルアップします。その結果、HPやサブウェポンの使用に必要なWPなどの最大値が上がるほか、攻撃力も上昇。さらにスキルを獲得し、アクションの幅まで広がります。

前作ではある程度の探索要素はあるものの、ルート分岐で各ステージのボスを目指すアクションゲームでした。一方『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』は、広大な世界を探索しながら進み、目的地のボスを倒した後も、新アクションの獲得で更なる探索も楽しめる、まさしくメトロイドヴァニアな一作です。

「同じような作品なら、遊ばなくてもいいかな」と思っている前作経験者がもしいれば、その予想は実態と大きく異なっているので、本作に再度ご注目ください。また、シリーズ未経験者でメトロイドヴァニアが好きなユーザーなら、前作を知らずとも大きな問題はなく、純粋なメトロイドヴァニアACTとして楽しめるので、こちらもお見逃しなく。

◆姉妹の個性が際立ち、切り替えのテンポも向上
ここまで前作との相違点やジャンルが大きく変わった点について言及しましたが、ここからは『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』のゲーム性や、本作で味わったプレイ体験に迫ります。

悪魔でメイドな姉妹の姉「キリカ」は、主にサブマシンガンで敵を撃ち抜きます。弾そのものは無限ですが一度に装填できる数には限りがあり、補充するためのリロード中は短いながらも硬直が発生します。

そのため、敵の隙を活用する立ち回りが求められますが、リーチが長いためさほど苦にはなりません。ボス戦では「いつリロードするか」の見極めも重要で、そのやりくりがプレイ感にテンポを与えてくれるため、手間ではあるもののゲームらしい手ごたえを感じさせくれる部分でもあります。


またキリカによる通常時の射撃はダメージが低いため、ボタン同時押しで近距離射程の「ショットガン」も使用します。弾数を多めに使用するもののダメージ量は大きく上がるので、状況に合わせて使い分ければ与ダメージの増加に繋がります。

妹の「マーシャ」は鞭状の植物を振るい、近距離の連続攻撃が可能です。与えるダメージが大きい上に、連続攻撃中にステップ回避ができたり、アイテムを使用して強力な一撃を放ったりと、パワフルかつテクニカルに攻めることもできます。

姉妹ともに「ダッシュ」が使えるため、マーシャなら間合いを詰めて攻撃したり、キリカは距離を広げて一方的に攻撃したりと、前作よりも高い機動性で戦闘が楽しめます。

ちなみに、姉妹の切り替え(操作キャラの切り替え)はボタンひとつで即座に変更可能。この点は前作も同様でしたが、本作では空中でも切り替えができるようになり、操作感の向上に一役買っています。

また、前作では底のない場所に落下すると即死亡となり、もう一人の操作キャラで助けに向かう形でしたが、『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』ではHPが減少した上で、近くの場所にリポップする仕様に変更されました。

個人的には前作の「落下=死亡」のペナルティはやや重く感じていたので、今回の仕様は実に助かります。もちろん、筆者の腕前に問題がある面も否定できませんが、本作は索要素が大きいためペナルティが重いと探索の足かせになる恐れがあります。即死亡という不安がなくなったのは、探索を楽しむ上で大事なポイントと言えるでしょう。

前作と共通する部分もありますが、遠距離主体の姉と、近距離で大ダメージが期待できる妹の切り替えで、様々な局面に挑むゲーム進行はメリハリが感じられます。
特にボス戦では、姉妹それぞれで有効な場面がこまめに切り替わるため、忙しくも手応えのある戦闘に心地よさを覚えました。

こちらも個人的な実感ですが、前作では近距離攻撃のリーチが短めだったこともあり遠距離主体の姉を主体的に使っていました。しかし『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』では、近距離攻撃のリーチも伸び、ダッシュによる間合い調整も可能になったため、妹の使いやすさがグッと増しています。

姉妹ともに活躍できる場面が増えた『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』は、ゲーム性の変化だけでなく作品としても着実な進化を遂げており、気の早い話ですが今後の展開にも期待をかけたくなるようなプレイ体験でした。

◆快適度が加速する構成が、プレイの没頭に拍車をかける!
『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』の変化や特徴、プレイ感などは以上の通りですが、本作にプレイ意欲をくすぐられた大きなポイントを最後にひとつご紹介します。それは、“アクション性の拡張”です。

ゲームが進むにつれてアクションが増えていき、二段ジャンプで新たな場所に到達したり攻撃の幅が広がったりといった楽しさも、メトロイドヴァニアに付きものの手応えです。

こうした面白さを『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』にも期待してゲームを始めましたが、期待を軽く上回る要素の数々に、プレイする手が止まらぬほどでした。

まず、探索アクションの定番とも言える二段ジャンプは、開始からほどなくして取得できます。ただし二段では到底足りない地形も多く、もどかしく感じる場面もありました。

しかしゲームを進めていくと、三段ジャンプどころか四段ジャンプも可能となり、ゲーム開始時点とは比べ物にならないほどの高みまで、自力でたどり着けるようになります。空中でのジャンプを繰り返すことで対空時間も伸ばせるので、ボスの攻撃をかわす手段としても非常に有効です。


ちなみに、最初から使えるダッシュは地上でしか出せませんでしたが、後に空中でのダッシュも可能になるほか、空中におけるダッシュ回数も増加。10時間ほどプレイした段階で、四段ジャンプに空中ダッシュ2回という、驚異的な機動性を楽しんでいます。

ただし本作のダッシュは、短い距離を素早く移動するもので、戦闘時には助かりますが長時間の移動にはやや不向き。ボタン連打でダッシュを繰り返すことはできるものの、それだけ指も使いますし、メトロイドヴァニアなのでエリアも広大なので、移動速度については若干の不満もありました。

ですが、ゲームを進めると「魔王ダッシュ」が解禁され、長時間の高速ダッシュが可能になります。しかも進路上の雑魚敵を粉砕し、水面もそのまま駆け抜けられるという豪快さ。地形の段差などにはぶつかるものの、魔王ダッシュ中はジャンプも可能なので、移動の不満はこれでかなり解消されました。

また、直接的なアクション要素ではありませんが、本作には基本的な攻撃手段(姉のサブマシンガン、妹の鞭)以外に、サブウェポンが存在します。サブウェポン自体も多種多様で戦略の幅を広げてくれますが、特筆したいのが付属するスキルとその効果です。

サブウェポンは敵を倒すとドロップしますが、その中には特別なスキルがついているものもあり、装備すると様々な効果が発揮されます。例えば、攻撃力やHPの上昇といったステータス増加系もあれば「リロード半減」「装弾数+」のような特殊な効果を持つものも。

リロード半減をつけると、リロード時間が目に見えて短くなるため非常に快適です。
装弾数+は、サブマシンガンの最大装弾数が増え、取り回しが良くなります。こうした特殊な効果は恩恵も大きく、サブウェポンの獲得も嬉しい要素のひとつと言えます。

しかもサブウェポンは、「合成」で強化できるほか「スキル移動」も可能なので、好みのスキルで固めていけば戦力も高まりますし、利便性も大きく向上します。この「合成」や「スキル移動」をはじめ、特定の場所同士を行き来できるファストトラベルや、アイテムを保管しておく倉庫などの機能は、ゲーム進行に応じて順次解放されていきます。

先ほどの機動性や魔王ダッシュも含め、遊べば遊ぶほど快適さが増していく作りになっており、そこに探索やサブウェポン獲得の楽しさも相まって、プレイする手が止まらないほどでした。

進行に応じて予想を上回るほどアクションが拡張していくゲームは、メトロイドヴァニア作品の中にいくつもあります。そして、本作もそうした作品に負けず劣らず、メトロイドヴァニアならではの良さが詰め込まれており、前作からの予想以上の発展に正直驚かされました。

快適性も含め、遊べば遊ぶほどハマっていく構成や、メトロイドヴァニアの魅力が備わったゲーム性、テイストがライトで親しみやすいストーリーと、いずれも高いレベルでまとまっている『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』。前作のファンのみならず、メトロイドヴァニア好きにもお勧めできる作品に仕上がっています。

そして、『ぎゃる☆がん』ファンにも本作のプレイを強くお勧めします。現時点で最も『ぎゃる☆がん』に近い立場の作品なので、『サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』の購入&プレイが、『ぎゃる☆がん』の応援にもきっと繋がるはず。共にエールを送りましょう!

『グリム・ガーディアンズ サーヴァント・オブ・ザ・ダーク』はニンテンドースイッチ/PS5/4/Xbox X|S/One/Steam向けに、ダウンロード版が3月27日より発売(Xbox X|S/Oneは後日発売)。パッケージ版は4月24日発売予定です。

価格はダウンロード版が4,400円(税込)。パッケージ版は通常版が5,940円(税込)で、限定版が10,978円(税込)となっています。店舗特典など、そのほかの情報は公式サイトをご確認ください。

(C)INTI CREATES CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
編集部おすすめ