往年の名作ゲームを現代に蘇らせる手法は、「リメイク」「リマスター」「移植」などいくつかに分かれます。しかし、それぞれのカテゴリーを明確に線引きする厳密な定義はなく、メーカー側が自ら定めた形で呼ばれることがほとんどです。


オリジナル版にほぼ忠実な「移植」は分かりやすい方ですが、「リメイク」と「リマスター」の違いは、個々人でも意見が分かれるところ。強いていえば、作り直しが多ければ「リメイク」、グラフィックのHD化といった調整の範囲に留まるものは「リマスター」と呼ばれる傾向にあります。

しかし、「リメイク」と「リマスター」の境界線を危うくするほど、力の入ったリマスター作品が時折現れます。先日発表された『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』も、そのひとつに入るであろう作品です。

■ファン待望!バトルシステムは『アバドン王』ベース
『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、2006年に発売されたps2ソフト『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』をHDリマスター化し、ニンテンドースイッチ/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Steam向けに展開する作品です。

主人公であるライドウは、悪魔にまつわる事件の捜査を行いながら、召喚した仲魔と共にアクションバトルへ挑みます。この基本的な構造はリマスター版でも変わりませんが、まずバトルシステムに大きな変化が加わりました。

オリジナルのPS2版は、世界観やシナリオ、登場人物など様々な魅力を備えていましたが、一方でバトルシステムは操作性が悪く、アクションなのに爽快感も薄いといった問題も抱えていたのです。そのため、続編の『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』では、アクション面が大きく改善されました。

こうした経緯もあり、ファンの一部から「『アバドン王』のバトルで『超力兵団』を遊びたい」といった要望も当時上がっていましたが、その願いは叶えられずじまいでした……これまでは。

今回発表された『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のバトルシステムは、『アバドン王』をベースとし、さらに遊びやすく改良を加えたものとなります。あの時ファンが夢見た願いが、本作で現実のものとなったのです。


さらに、敵の弱点を突く特技をライドウが習得できるようになったため、仲魔との連携の幅が広がり、戦略性もより豊かになりました。

また、悪魔も新たに50体以上追加され、120体以上の悪魔が登場します。『アバドン王』や『真・女神転生V』で活躍した悪魔などの追加も予定されており、こちらも目が離せない要素です。

グラフィックのブラッシュアップはもちろん、ファンの期待に応えるバトルシステム、登場悪魔もボリュームアップと、これだけでもリマスターとは思えないほどの豪華な『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』。しかし、リマスターで生まれ変わる本作の改善点はまだまだ尽きません。

■『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』の新要素を一部紹介
まずは、詳しく明かされた新要素・改善内容をピックアップして取り上げます。

◆探偵手帳の機能強化
次の目的や事件捜査に関する情報をはじめ、ゲームの操作方法や戦闘時のコツなどをまとめた「探偵手帳」の機能が強化されます。操作に行き詰った際には、メニュー「探偵手帳」を確認し、情報を再確認しましょう。

◆ショートカット機能「現場急行」の追加
事件の捜査では、様々な場所に向かい、時には行き来することも少なくありません。そんな時、追加された「現場急行」を使えば、一度訪れた場所へ瞬時に移動できます。

◆ボイス設定
物語本編がフルボイス化され、作中の臨場感を耳でも体験することができますが、環境や好みによってボイスを聞きたくない場合があるかもしれません。環境設定でボイスのON/OFF自由に切り替えられるので、好みや状況に合わせて使いこなしてください。


また、ボイス言語は日本語だけでなく、英語も収録されています。帝都を舞台とした物語を、英語のボイスで楽しむのも一興でしょう。
普段と違ったプレイを楽しむことも可能だ。

◆セーブ機能の強化
場面や育成に応じてセーブデータを使い分けたい人も、少なくないことでしょう。本作では、セーブ可能なスロットが最大20ファイルに拡大され、使い分けられる幅が増えました。

また、物語の要所で自動でセーブする「オートセーブ機能」や、メニューにアクセスできる場面なら自由にセーブできる「クイックセーブ機能」も追加。強敵との戦いが近づいてきたら、これらの機能が役に立つことでしょう。

◆難易度設定
『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』には、5段階の難易度設定が用意されています。主人公と仲魔が死亡しない「魔道」、やさしい難易度の「王道」、通常の難易度となる「正道」、苦難に満ちた難易度「求道」、ゲーム2周目以降にのみ選択可能な最高難易度「超・葛葉ライドウ」と、その範囲はかなり広め。

本作はアクションバトルなので、「物語は気になるけどアクションは苦手……」という人は難易度を下げて、逆に手ごたえを求める人は「求道」を、やり込み派の方は「超・葛葉ライドウ」を目指しましょう。

■こんなにあるの? しかもさらに!? 驚きしかない「変更点/パワーアップ要素」
ここまで紹介した要素だけでもボリューム満点ですが、実はまだまだ終わりません。発表に合わせて公開された動画「『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』Spotlight」にて、一覧の形式で変更点やパワーアップ要素が羅列されており、その項目の多さには驚くほかありません。


ここまでに紹介したものと重複する内容もありますが、その一覧をまとめて紹介します。

◆オリジナル版からの変更点/パワーアップ要素
「戦闘システムの刷新」「グラフィックをリマスター処理」「仲魔の種類の増加」「同種の悪魔を何体でも仲魔にできるように」「ライドウの称号の大幅増加」「称号授与の自動化」「鳴海探偵社で全回復が可能に」「ダッシュ機能」「悪魔合体時のスキル継承仕様の変更」「戦闘で使用可能なスキル枠を8枠すべてに変更」「セーブポイントから業魔殿・金王屋へワープが可能に」「ナキサワメの無料化」
・追加カテゴリー

「戦闘中のロックオン機能」「キャラボイス」「探偵手帳」「隠密祓い」「悪魔合体に検索合体を追加」「悪魔合体に逆引き合体を追加」「ゲームオーバーにならない難易度追加」
・導入カテゴリー

「MAGドレインバトル」「戦闘で使用可能なライドウの特技・神剣特技」「自動で効果を発揮するライドウの特技・ご利益」「殺魔一閃」「必殺技・スピリット剣」「戦闘中の銃撃時に射撃モード」「クイックセーブ機能」「オートセーブ機能」「錬剣術」「現場急行」「シンボルエンカウント」「ミニマップと目的地表示」「仲魔のパッシブスキル・思い出特技」「コンティニュー」「仲魔に経験値や特定の特技を習得させる育成用道具」
これだけの変更点/パワーアップ要素がまとめて綴られましたが、映像を進めると「ほか、多数の要素を調整」とあり、手が入る箇所はこれだけに留まりません。

冒頭で「リメイク」と「リマスター」の境目に明確な定義はないと説明しましたが、『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』の追加・改善要素はあまりに多く、いちプレイヤーの視点で見ると、「もはやリメイクといっていいレベルでは」と思ってしまうほどです。

■『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のタイトルに込められた想いと。未来への期待
『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』の発表内容だけでも、徹底したこだわりで作られたことが窺えますが、「『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』Spotlight?」の後半にあるインタビュー映像を見ると、それが事実であると分かります。

このインタビュー映像では、オリジナル版の『超力兵団』と『アバドン王』と、そして『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のディレクターを務めた山井一千氏が、本作の開発経緯やその思いなどを語りました。

まず、『超力兵団』をこのタイミングでリマスターした理由として、担当するタイトルが終了するたびに「いつも『ライドウ』を考えていた」と明かし、万全の準備を整えてたところ今がその時期だったと述べます。

また、タイトルを変更した理由は2つあると山井氏が切り出します。当時、『アバドン王』リリース後にファンから「「2作目のシステムに載せ替えた『超力兵団』を遊びたい」という声や、キャラや世界観、シナリオはいいけどシステムは残念といった意見をもらった山井氏は、「『超力兵団』を復活させるなら、『アバドン王』のシステムへの載せ替えを実現させたい」と考えていたとのこと。

その想いを経た『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、念願通りに『アバドン王』のシステムに載せ替えたのはもちろん、新たなスタッフと共にシステムを徹底的に改良し、当時求めた理想以上の新たな『超力兵団』となりました。

この「新しくなった『超力兵団』」を正しく伝えるには、タイトルで表す必要がある──と考えたのが、そのひとつ目の理由でした。

また、販売地域が限られていたオリジナル版と違い、本作は世界に向けて発売されるタイトルです。
そのため、本作からライドウに触れる人やこれからライドウのことを知る方、いわゆる潜在的なユーザーが世界規模で存在すると言っても過言ではありません。

そこで山井氏は、「“本作からプレイしていただいても、問題なく楽しめる”ということが明確になるタイトルが良いんじゃないか」と考え、これがタイトルを変更したふたつ目の理由と明かしました。

一方で、タイトル変更で不安になる人に向け、「我々開発者は、ライドウへの19年分の変わらぬ愛を込めて、本作『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』を開発しました」と、その不安を払拭させる力強いメッセージを放ちます。

映像では、このほかにも『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』に関する様々な特徴や、発売が楽しみになるコメントなども数多く語られています。

また、「もちろん復活したのですから、ここで終わらせたいとは考えていません」「断言はできませんが、これからもライドウには活躍してほしいと自分も願っています」と、今後に向けた山井氏の熱い姿勢も見せてくれました。

『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、リメイクかと思うほど様々な刷新やブラッシュアップ、追加要素などが備わっていますが、その背景にはやはり開発陣の高い熱意がありました。本作の続報はもちろん、新たな可能性にも期待が高まるばかりです。

(C)ATLUS. (C)SEGA.
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