2025年6月13日(金)に発売予定の『マジック:ザ・ギャザリング』(以下MTG)と『ファイナルファンタジー』(以下FF)シリーズのコラボセット「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」。

本コラボセットのPRイベントが開催され、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト所属でコラボセットのエグゼクティブ・プロデューサー、ザキール・ゴートン氏や、スクウェア・エニックス側のプロデューサーである市川翔一氏らが登壇。
コラボセットの概要や初公開の新カードが制作秘話と共にお披露目されました。

本稿ではそんな大注目のイベントの模様をお届けします。

◆「『FF』に出会わなければここには立っていない」コラボに懸ける想い
まず会場の様子を軽く紹介。クラウドとセフィロスのお出迎えを受け、来場者にはアートで彩られたキャラメルが配られました。

新カードや大会の優勝トロフィーの鑑賞もでき、イベントのオープニングやエンディングにはアコースティック楽団による演奏が披露されました。

イベントが始まり、ザキール・ゴートン氏と通訳のジョセフ・リース氏が登壇。ザキール氏が子供の頃に出会い、今でも一番好きな作品だという『FF10』について、「この出会いが無ければこのステージに立っていなかった」と熱い想いを語ります。

関係者全員が、自分の技術だけでなく、思い出や愛情をのせて制作された本コラボセットについても、「会場にいるすべての皆さんに、この制作に込められた想いを感じていただき、これらのカードがファイナルファンタジーファンの期待を上回るものであったことを願っています」と語りました。

続いて、市川翔一氏が登壇。市川氏も12歳の時に『MTG』に出会ってから、本作が生活にあり、「自分の運や未来を信じることはとても重要だが、それ以上にその結果を手繰り寄せるための準備が大事だということを教えてくれた」と語ります。

そして今回のコラボでは「4年という歳月をかけ、最高の未来を信じて我々の愛情とこだわりを精一杯詰め込んだ」と話し、「我々の愛情や思いを注いだカードが、世界中の『MTG』、『FF』ファンの皆さんにとっても特別な存在になってくれることを心から願っております」と語りました。

今回のコラボセットは、スタンダードで使用可能な300種以上のカードを収録したフルセットのブースター製品となり、通常のブースターに加えて、2種類のバンドル商品も用意されています。


シリーズの各時代を象徴する4つの統率者デッキも登場。ピクセルアート時代を代表する作品『FF6』、初代プレイステーション時代の金字塔『FF7』、プレイステーション2時代の代表作『FF10』、MMORPGという新たな形で世界中のファンが親しんでいる『FF14』の4作品が統率者デッキに落とし込まれています。

そして、コレクター向けの商品も充実。コレクションはもちろん、対戦にも使える美しいフォイル仕様のカードが手に入るコレクターブースターが登場。コレクター仕様の統率者デッキも展開されます。

◆セフィロスやバスターソード、魔法など『FF』シリーズの象徴をカードで再現
ここからは本イベントの目玉、「Secret Lairドロップ」3種が公開。日本では6月10日より、通常版とフォイル版が発売予定で、期間限定での販売となります。ここでは、公開された3つのドロップをザキール氏と市川氏のコメントとともに紹介します。

まずは「Secret Lair x FINAL FANTASY: Game Over」『FF』シリーズに登場する悪役たちが攻撃や必殺技を仕掛ける瞬間を描いています。効果や絵もキャラクターたちを象徴するものとなっており、市川氏も「それぞれのボスになりきってスペルを使ったらより楽しいんじゃないかなと思っています」とコメント。

続いては、『FF』人気キャラクターの武器が描かれた、「Secret Lair x FINAL FANTASY: Weapons」。クラウドのバスターソードをメインセットのクラウドに装備すれば、一撃ごとに最大4つのチャージカウンターを得ることができるなど、ゲームプレイの面白さ、ストーリーの深さの両方を意識してカードを選んだとのこと。


そして、「Secret Lair x FINAL FANTASY: Grimoire」は、『MTG』の5色のカラーを通じて『FF』に登場する魔法を表現。中でもザキール氏のお気に入りはノクティスの魔法「デス」で、「美しいアートと強力な呪文の効果の組み合わせは本当に圧巻」とコメント。

対して市川氏のお気に入りはビビの魔法「サンダー」。「『MTG』の稲妻は、たくさんのアートが存在するカードです。きっとこれが手に入ったら、その日から私のお気に入りになるんだろうなと思っています」と語りました。

また、「金粉の水蓮」がSecret Lairバンドルの特別プロモカードとして登場。販売期間中にいずれかのSecret Lairバンドルを購入すると配布されます。『FF7』のミッドカルの教会で咲くエアリスの花をモチーフにして描写されています。

実は本プロモカード、当初は英語版のみの予定でしたが、市川氏が「どうしても日本のプレイヤーに届けたい」ということで、ザキール氏に無理を言った結果、日本版でも実装したとのこと。市川氏は「あの教会で咲いている一輪の花を戦場で使って、愛でていただければなと思います」と続けました。

◆チョコボが統率者カードに。『FF』側プロデューサーも「まさか」の声

本イベントで世界初公開となるカードも公開。
同じようにザキール氏と市川氏のコメントとともに紹介します。

まずは『FF9』より「桃源郷の探求者、チョコ」。単体でも鳥クリーチャーと組み合わせても強力な統率者カードです。

チョコボが統率者カードになるとは思っておらず、驚いたという市川氏。「思い返してみると、昔から『MTG』では活躍していた極楽鳥っていう鳥タイプを持つクリーチャーがいたりして、もしかしたら昔から『MTG』と『FF』の掛け合わせの相性は良かったかもしれないなと思ったりしています。強力なクリーチャーなので、たくさんの鳥クリーチャーと攻撃を仕掛けて、ここほれ!チョコボのようにボーナスを沢山得るようなプレイをしてほしいです」と述べました。

そして『FF6』からモーグリが参戦。ティナを助け出すシーンが描かれています。ピンチを凌いだ後にモーグルたちが心強い援軍となってくれるといったシーンを効果で再現しているとのこと。

市川氏は「『FF6』でモーグリたちが勇敢に立ち向かうシーンっていうのが記憶にある方もいるじゃないかなと思います。本セットのアートは、ゲーム内のシーンを強く意識したものもありますので、入手した際にアートの細かい部分にも着目してもらえると、楽しい発見があると思います」とコメントしました。

続いて、『FF15』の召喚獣からリヴァイアサンが登場。
戦場に出ていられる期間が限られている「英雄譚」クリーチャーとなり、戦場に出て強力な効果を発揮した後、3ターン目には離脱します。ザキール氏は「『FF』と『MTG』のシステムを見事に融合させた本カードがお気に入り」とのこと。

市川氏は、「『FF』にとって重要で大切な存在の召喚獣という要素を『MTG』で登場させると、ただの強力なクリーチャーになってしまうという心配がありました」と語りつつ、「ただ、それは完全な杞憂でした。一時だけ顕現して強力な効果を発揮し、時には共闘してくれるという召喚獣を、『MTG』で再現できるこのシステムを早く皆さんに体験してほしいというふうに思っています」と紹介しています。

◆『FF10』のあの名シーンがカードに!
また、『FF』を代表する名シーンを『MTG』に落とし込んだ「継承史カード」が登場。市川氏は本カードのアートを「各タイトルを代表する本当に大事なもの」とし、「どのアートをどのカードに落とし込むか何度もコミュニケーションをとってきました。カードのパワーレベルは様々ですが、結果としてどれもがそのアートを愛する方が生かせるような形にできたと考えております」と制作の背景を語りました。

まずは『FF14』より「漆黒のヴィランズ」。キービジュアルをそのまま落とし込んだアートとなっています。激動の中で戦い抜き、決して折れない姿にふさわしいカードとして、“打ち消されない打ち消し”である「ドビンの拒否権」を採用したとのこと。

続けて、『FF6』より氷漬けの幻獣・ヴァリガルマンダとの出会いのシーン。市川氏は「あえてドット絵を使用することで、過去に『FF6』をやったことある冒険者の皆さんに昔の自分を思い出していただけたら」と想いを語りました。


そして、『FF10』を象徴する名シーン。本カードがお気に入りだという市川氏は、「プレイヤーの皆さんにとっても想定外に嬉しい一枚なんじゃないでしょうか」と続けました。

また6月27日~29日に幕張メッセにて開催される大型オープントーナメント“マジック・スポットライト・シリーズ”では、野村哲也氏が描くプロモカード「ミッドガルの傭兵、クラウド」が配布されることも発表。メインイベント参加者全員には通常版、さらにトーナメント上位128名には特別なフォイル版が贈呈されます。

◆竜騎士のジャンプ中の景色を初公開!?描きおろしカードが公開
ここからはコラボセットの描き下ろしカードを手掛けたアーティストの2人が登壇。『チョコボの不思議なダンジョン』『FF9』『FFクリスタルクロニクル』などに携わった板鼻利幸氏と、『FF9』『FFX-2』『FF13』『キングダムハーツ』『FFTCG』などに携わった松田俊孝氏による描き下ろしカードが、制作秘話と共にお披露目されました。

まずは、板鼻利幸氏が描き下ろした「迷える黒魔導士、ビビ」。最初は頼りない部分があったビビが様々な出会いを通して成長していく姿を、呪文を打つたびにカウンターを置いていく効果で表現したカードとなっています。

板鼻氏は、ビビというキャラは引っ込み思案で表情が無いため描くのが難しいと説明しつつ、本アートでは「ビビが自分の力が仲間の役に立つことがわかってきたシーンを描こう」と考えたとのこと。そういった経緯もあり、初めは攻撃魔法を撃って戦うビビを描いていったようです。

しかし、「ビビってこんなにアグレッシブだったかな……?」と悩み、その末に「ゲーム内に登場するブリ虫に驚き、咄嗟に魔法を放ったというストーリーが出来上がった」と言います。

市川氏によると、最初のラフ画ではビビが1人で魔法を放っていたとのこと。
そして「次に見せてもらった時はブリ虫が描かれていて、ストーリー性や動きが伝わり、表現に感動した記憶があります」と当時の気持ちを語りました。

続いては、松田俊考氏が描き下ろした「苦悩の竜騎士、カイン」。ジャンプの能力を再現しつつ、ダメージを受けると敵プレイヤーにコントロールが移ってしまうという、『FF4』作中での彼のストーリーを表現した効果となっています。市川氏も「おれはしょうきにもどった!なんて声が聞こえてきそうですよね」とコメント。

元々カインが『FF4』で好きなキャラクターで、そして竜騎士が好きなジョブであるという松田氏は、当時感じた「ジャンプ中のカインは何を見ているんだろう」という疑問から、自分なりにカインの見ている景色を表現したとのこと。

「もしかしたら竜騎士がジャンプした時にどんな世界が広がっているかっていうのは初公開かもしれないですよね」という市川氏に、松田氏は「公式ではないんですけど、公式っぽくなっちゃいます(笑)」と返しました。

ザキール氏は制作を振り返って「『FF4』のピクセルアートをどうやって『MTG』のアートに落とし込むかが大きな課題だった」と語りました。そういった中で本アートを見た時に「こういう形で出てくるんだ。なるほど!」と驚いたといいます。

◆「過去最大のボリュームが印刷されています。在庫についてはご心配なく!」
イベントの最後には質疑応答も行われました。ここからはその模様をお届けします。

――本コラボセットで難航したカードをお聞きしたいです。

ザキール氏:揉めたとか難航したってほどではないんですが、どのキャラクター、タイトルが重要で、どう強くすべきかとか、どのような能力にすべきかっていうのは、たくさんやり取りをさせていただきました。

セットやIPでとても重要なキャラクター…クラウドやセフィロス、チョコボなど、大会でもプレイできるレベルに、うまく調整ややり取りをさせていただきましたので、とても建設的なやり取りだったと思います。

――お2人にとって最も重要なカードや、思い入れの深いカードを選ぶとしたらどれになりますか?

市川氏:僕はセフィロスですね。僕は野村さんとやり取りが多くて、野村さんのアートを預かるっていうのは、私にとって大きく重いものであり、ザキールにもそのアートにふさわしい能力にしてほしいと話しました。これは野村さんだけではなくて天野先生のアートもですね。他のアーティストのアートもちろん大事ですが、特にふたつに関してはザキールとの議論が長かったなって気はしています。

ザキール氏:私にとってもセフィロスはとても思い入れのあるキャラクターで、本当はセフィロスって言いたかったんですけど、市川さんに取られました(笑)。本当にこれについて語りたいんですが、もう1つ挙げるとすると2月に公開された「ジャボテンダー」ですね。

パワーが9999プラスされるというのは、デザインや環境を見る他の方々から「何してんだ?」って言われたんですが、なんとかカードに落とし込むことができました。ファンからも素晴らしい反応が得られたので、とても思い入れのあるカードになります。

――現在、残念ながら手に入りにくい状態になっていますが、今後手に入る機会はありますか?

ザキール氏:そこはご心配なく。世界中だけじゃなく、日本の皆さんにとっても重要なことであるということは弊社も理解はしています。ウィザーズとして一番重要なのが、プレイヤーが商品を手に入れて、プレイして楽しめて喜ぶことです。そして本セットは過去最大のボリュームが印刷されており、今後も弊社としては全力で努力をしていきます。

――今回のプロジェクトで一番楽しかったことと、一番大変だったことをそれぞれ簡単に教えてください。

ザキール氏:一番楽しかったことは、スクウェア・エニックスと仕事ができたということです。本セットは共同開発という言葉が似合っており、スクウェア・エニックスとウィザーズが5年間一緒に開発してきました。私含め何名かが日本にも4、5回出張して皆さんとミーティングをして、仕事ができたというのは充実していました。

一番の課題だったのは、品質やファンの期待値など、いろいろな面で高水準なものが必要だったのでファンが求めているものに答えなければならないということ。実は通常のセットよりも開発の期間が50%ぐらい長くかかりました。最終的にはファンの皆さんが納得いただけるものになったのではないかと思います。

市川氏:僕としては、チーム同士で未来を語るのがすごく楽しかったですね。あとは、出してくれるカードのキャラクター性との答え合わせが楽しかったです。『MTG』プレイヤー、そして『FF』のプロデューサーとして見ても非常に整合性があり、そのマッチングが本当に楽しかったです。

逆に大変だった部分で言うと、アートが一発で決まるものもあれば、複数回修正を重ねた後もあって、その修正の言語化に苦労した記憶があります。例えば「このクラウド、FF7っぽくないよね」というものですね。ここは明確に言語化するよりも、ウィザーズさんがトライアンドエラーを繰り返してくれて、結果これだけの素敵なアートに着地しました。

――今回、最初に発表されたアートの選定基準は?

ザキール氏:最初の5、6枚は、スクウェア・エニックスの皆さんとたくさん協議させていただいた上で選びました。アート性であったりとか、ストーリー性であったりとか、様々な角度から選定させていただきました。

――「継承史カード」は、『FF』の既存イラストが出てきますが、こちらはどういう話し合いになったのでしょうか?

ザキール氏:ストーリーの面から選んだものや、アートの面から選んだもの、カードの能力を通して選んだものもあります。アートを監修していただくときに、「やっぱり天野先生のアートって素晴らしい」と弊社の多くの人が感じていました。

市川氏:逆にスクウェア・エニックスサイドとしては、これらのアートを使いたいって話は、実は当初戸惑いはありました。というのも、やっぱり各タイトルを代表するアートなので、そんなに簡単に渡すことはできず…。我々スクウェア・エニックスとして大事にしているのは、ファンの皆さん、ユーザーの皆さんがどれだけそのアートを使って楽しんでいただけるかっていうところ。

そう考えると、『MTG』の中で有名カードや、よく使われているカードっていうところをベースに継承史とするっていうのは、アートを最大限活用し、愛情を持って届けられるものだろうとなり、社内でいろいろ話をした結果として、「我々の情熱でちゃんとやるんでやらしてください」っていう形で実現までこぎつけました。

――今回、ナンバリングタイトルがコラボレーションしていますが、外伝タイトルなどが遊べるような機会はありそうでしょうか。

ザキール氏:私もそのような作品の大ファンでして、プレイできたら本当に素晴らしいなとは思いますが、本日このセットが焦点ですので、ファンの皆さんにはこのセットを本当に楽しんでいただきたいと思っております。

 「マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」の新カードや制作秘話がお披露目された本イベント。『FF』シリーズとのコラボとだけあって、注目しているファンも多いはず。6月13日(金)の正式発売を期待して待ちましょう!
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