農作物などを育てながら、フィールドでモンスターと戦う冒険も楽しめる『ルーンファクトリー』シリーズは、2006年に1作目が発売され、これまで20年近くもシリーズ作を重ね続けてきました。

そして2025年6月5日には、シリーズ最新作の『龍の国 ルーンファクトリー』が、ニンテンドースイッチ2/スイッチ/Steamに向けてリリースされます。
直近では『ルーンファクトリー3スペシャル』が2023年に登場したものの、本作のようにナンバリングのないシリーズ作としては、2011年発売の『ルーンファクトリー オーシャンズ』以来です。

こうした歴史を持つ『ルーンファクトリー』の新たな完全新作がどんな作品になるのか、シリーズファンならずとも気になるところでしょう。発売日に先駆けた先行プレイの体験を通じて、本作の魅力や手触りをいち早くお届けします。

■シリーズファンだけでなく、新規ユーザーの“第一歩”にもお勧め
シリーズファンはもちろんのこと、PVや紹介記事などを見て『龍の国 ルーンファクトリー』に惹かれたシリーズ未経験のユーザーも多いはず。しかし、「いきなり『龍の国 ルーンファクトリー』を遊んでも、十分楽しめるのかな」と一抹の不安を感じているかもしれません。

今回のプレイ体験を元に、まず結論を述べさせていただくと、新規ユーザーでもまったく問題なく楽しめます。また、全般的にかなり丁寧な作りになっており、むしろシリーズに初めて触れる第一歩として、非常にお勧めできる出来映えだと感じました。

実際にプレイする際の楽しみを奪わないため、物語面のネタバレは極力避けますが、本作の舞台は過去作と異なり、東にある「アズマの国」です。雰囲気も和のテイストが色濃く、これまでの牧歌的な西洋風の雰囲気とは違いますし、前提となるような直接的な繋がりもありません。

シリーズの特徴である「冒険」と「生活」が両方楽しめるといった特徴を受け継ぎつつ、独立した作品に仕上がっているのでご安心ください。

なお、今回プレイしたのはSteam版です。また、序盤~中盤までのプレイ範囲に基づく内容となります。


■決められた時間の過ごし方に“個性”が出る!
シリーズファンにはお馴染みの部分も多々ありますが、未経験の方に向け、『龍の国 ルーンファクトリー』の特徴的なゲーム性を軽く紹介します。

とある一件がきっかけとなり、「アズマの国」は現在衰退の一途を辿っています。各地にある里からはかつての活気が失われ、住人の流出も留まるところを知りません。その謎に迫りつつ、各地の里を復興していくのが、主人公の役目と目的になります。

荒れた里を復興させるには、畑を耕して作物を育て、収穫すること。その報酬として得たお金や収集した素材を使って畑を広げ、建物を建てることで里が活気づいていき、次第に住人が増えていくのです。

そうした日々を送る上で重要なのが、時間の経過です。メニュー画面の展開中といった一部の場合を除き、本作では時間が常に流れています。素材集めや住人との交流、探索に敵とのバトルといった行動の最中も時間が経ち、朝から昼、昼から夜へと推移します。

この一日一日の中で、プレイヤーがどのように過ごし、どんな行動をするのか。その結果が、農作物の収穫、里の復興、魅力的なキャラクターとの関係性、主人公の戦力強化の全てに影響を与え、大きな変化を及ぼすのです。

主軸の物語を追うかたわら、毎日を彩る日常を含めたゲーム進行のほとんどは、プレイヤーの取捨選択によって左右されます。
一日の時間制限という枠こそ揺るぎませんが、その範囲内の行動選択は幅広く、好みのプレイスタイルで楽しめる自由度の高さが大きな魅力のひとつです。

何を耕し、誰と仲良くなり、どうやって強くなっていくのか。プレイしているうちに自分なりのルートや習慣が生まれ、それが日々を構築していく。まるで人生のような歩みが、ゲームシステムを通して自然と積み上がっていく様こそ、本作だからこその醍醐味と言えるでしょう。

■時間に制限はあれど、期限の制限はなし!
このような日常を紡ぐゲーム自体は、『龍の国 ルーンファクトリー』だけに限った話ではありません。その上で特に伝えたいのは、本作が非常に遊びやすいゲームになっている点です。

一日という単位で切り取ると、時間制限の存在に息苦しさを感じるかもしれません。しかし本作の場合、一日の中に制限はあっても、メインクエストやサブクエストに期間的な制限はありません(少なくとも今回のプレイでは遭遇せず)。今日中に間に合わなかったとしても、それは明日に回せばいいだけです。

一日の中で効率的に済まそうと思えば、アレコレと非常に忙しないプレイになります。その忙しさにもRTA的な楽しさがあるとはいえ、時間に追われるのが苦手な人もいるはず。しかし、本作に“時間の制限”はあっても“期限の制限”はないので、焦る必要はありません。
『龍の国 ルーンファクトリー』を楽しむペースは、人それぞれで大丈夫です。

ちなみに深夜まで行動していると、徐々にHPが減り始め、最終的には倒れてしまいます。無理して動き回るよりも、深夜になったら大人しく休むことをお勧めします。

■作物の育成~収穫が、ゲームサイクルを支える軸のひとつ
本作におけるプレイの軸になるのは、里の復興に繋がる「開拓」です。里の中には、畑を耕したり、建物を設置できる「開拓エリア」があり、ここを繁栄させていくことで里が豊かになっていきます。

岩や瓦礫などを撤去した後、「畑パネル」を設置すると、そこは畑になります。「畑パネル」は報酬などでもらえますが、素材を使って自作するのが最も手軽な手段です。この畑に種を撒いて水をやると作物が育っていき、そして作物ごとの育成期が過ぎると念願の収穫にたどり着きます。

……と説明すると、リアルの農作物のように長いサイクルを想像するかもしれませんが、この世界の作物は成長が早く、数日で済むことも少なくありません。感覚的には「ちょくちょく収穫できる」くらいの手応えです。

収穫した作物は、料理(HPなどの回復や一時的なステータスアップ)にも使えますが、主な使い道は「出荷」し、お金に換えること。お金は幅広く使えますし、基本的な入手手段がこの「出荷」になるため、作物を育てることが日々を送る上で非常に重要なのです。


収穫すると作物の「種」が手に入ることもあり、収穫した後は再び種まきに移行します。また、畑が少ないと感じたら、素材を集めて広げていきましょう。一部の素材は里の中でも手に入りますが、本格的な復興を目指すなら、様々な素材が手に入る「里の外」への探索も欠かせません。

■シンプルながら過不足がなく、幅広い層が楽しめるバトルシステム
本作にはいくつかの里があり、それぞれ独自のフィールドが広がっています。

ひとつひとつは広大というほどではありませんが、素材を収集できるポイントが多く点在しており、それを一通り回っているだけで一日はあっという間に過ぎてしまいます。その点を踏まえると、無闇に広いよりも、密度の濃い本作の形式がゲームシステムとマッチしていると言えます。

しかもフィールドには、探索を阻む危険な敵が存在しており、戦って道を切り開くしかありません。本作の戦闘はフィールド上で行い、探索もバトルもシームレスで行います。ロードを挟むのはエリアの切り替え時(里とフィールド、フィールドとダンジョン等)だけなので、その気軽さも嬉しいところです。

敵とのアクションバトルは、必要なシステムが一通り揃っています。まず攻撃は、連続で繰り出せる「通常攻撃」、一定時間溜めて強力な一撃を放つ「チャージ攻撃」、神から授かる「神器」のカミワザを使った特殊な攻撃、スキルツリーを解放すると覚える「奥義」などがあります。

アクションに慣れていない人は複雑に感じるかもしれませんが、「奥義」は通常攻撃の後に発動するもので、複雑な操作はありません。
もちろん強力な技ですが、操作する上では「コンボの締めに派手な技が出る」くらいの認識でも大丈夫です。

また、カミワザはMP(作中ではRP)を使う魔法のようなものなので、使い惜しむ必要はありませんが、毎回連打するような技でもないため、要所要所で使えば十分。そのため、普段の戦闘は「通常攻撃(+コンボで出る奥義)」と「チャージ攻撃」を使い分けるだけで大きな問題はありません。

ロックオン機能もあるため攻撃は当てやすいですし、敵の攻撃は「ステップ回避」で避けられます。ちなみに、各武器の該当スキルを取得した後は、ステップ中に攻撃することで強力な「ステップ攻撃」を放つことができるようになります。

そして、「ステップ回避」のタイミングが良かった場合、「ジャスト回避」が発動します。ジャスト回避になると敵の動きがスローモーションになり、ここで強烈な「カウンター攻撃」を食らわせることが可能です。

「ステップ回避」を起点に、「ステップ攻撃」と「ジャスト回避」、さらに「カウンター攻撃」と派生していきますが、こちらも複雑に考える必要はありません。まずは「ステップ回避」に専念するだけで、かなり戦いやすくなるかと思います。

バトルに慣れてきたら、様々な武器を使いこなすのもお勧めです。最初は、平均的でクセがない「片手剣」のみですが、攻撃力は高く範囲も広いものの振りが遅くて隙も大きい「両手剣」や、遠距離攻撃や狙い撃ち(エイムによる射撃)ができる「弓」を、かなり早い段階で手に入れることができます。

さらにメインクエストを進めると「呪符」や「双剣」といった武器も取得できるので、自分の好みにあった武器が見つかるはず。
ちなみに武器は、メイン武器とサブ武器を同時に装備でき、戦闘中にボタンひとつで切り替えられるので、遠近対応にするもよし、手数と一撃で使い分けるもよしです。

■農作業は大変? そんなあなたにお勧めしたい「俯瞰モード」
ここまで『龍の国 ルーンファクトリー』の基本的なサイクルやゲーム性に触れましたが、さらに一歩深く掘り下げ、シリーズ未経験者にもお勧めできる“遊びやすさ”や“丁寧なつくり”について迫ります。

まず復興に直結する作物の育成ですが、神器のカミワザ「鼓の舞」を使うと、作物や木の成長を促進できます。「鼓の舞」は一定範囲に効果を与えるものですが、そのつど移動して使えば全ての作物の成長を促進させられます。(効果は、作物ごとに一日一回)

意図的に収穫時期を早めることができるので、「世話を忘れて枯れさせる」といった事故が減りますし、単純に報酬を得るサイクルが早まるので、初心者にも嬉しいシステムと言えます。

しかも「鼓の舞」は、枯れてしまった作物を蘇らせることすら可能です。うっかりミスして枯れてしまっても、「鼓の舞」があれば元通り。これがあれば、初心者も臆することなく農作業に勤しめることでしょう。

ちなみに、種撒きや水やり、収穫などは畑のマスごとに行います。10面のマスがあれば、種撒きや水やりも10回になります……が、それは主人公が直接行う場合の話です。

農作業中だと「俯瞰モード」の利用も可能となり、開拓エリアを見下ろすような視点で作業できます。この「俯瞰モード」で種撒きを行う際に、「ボタン押しっぱなし+カーソル移動」を組み合わせると、その動作を連続で行ってくれます。

マスごとにボタンを押す必要がなくなりますし、「俯瞰モード」中はカーソルがマス単位で動くため指定も楽々。「畑パネル」などの設置や取り外しも同様の操作で可能なので、「俯瞰モード」を使うと想像以上に楽ですし、同時に効率的です。これも、初心者にお勧めしたい機能のひとつです。

■里を復興させるほど、プレイヤーの負担が減っていく
俯瞰モードを活用すると農作業の負担が減ります。しかし、さらに負担を軽減してくれる要素が、『龍の国 ルーンファクトリー』に用意されています。それは、「里人」の協力です

里に住む住人に仕事を割り振ると、担当した仕事を実行します。農作業なら、畑に種を蒔き、水をやり、収穫まで行いますし、林業なら木材を切り出し、鉱業なら石材や鉱石を集めてくれるのです。

農作業を行うゲームの中には、ゲーム進行に応じて負担を軽減する仕組みがあります。発売元繋がりで例に挙げると、米作りが主人公の強化に繋がる『天穂のサクナヒメ』では、道具が発展して作業の負荷が大きく下がっていきます。

『天穂のサクナヒメ』の場合、住人の出入りがほとんどないため、作業負担の軽減を道具に結びつけました。『龍の国 ルーンファクトリー』の場合は、住人が増えるほど作業効率が上がり、プレイヤーの手を離れても回っていくようになります。

里を復興させることで住人が増え、その住人が各作業を担い、プレイヤーの負荷を下げていく。単なるサポートシステムという仕組みだけでなく、作中の設定や目的に沿う形で状況が改善していく本作の方向性は、利便性に加えて説得力もありました。

ちなみに、住人の働きは無償ではありません。彼らの食費は、里長である主人公が直接支払います。同時に、彼らが収穫した作物の売り上げも主人公の懐に入るので、彼らには十分働いてもらい、その稼ぎで養っていきましょう。

■開拓や物語進行、成長に恋愛まで、全てが快適過ぎる『龍の国 ルーンファクトリー』
作物の育成や収穫、特定の素材収集など、住人の助けを借りれば負担が大きく減りますが、物語を進めることはもちろん、クエストの達成や貴重な素材の収集などは主人公が果たすべき役目です。しかし、随所に用意された手厚いサポートが、重大な仕事を担うプレイヤーを助けてくれます。

まず、メインクエストやサブクエストを「追跡状態」にすると、オレンジ色の目的地マーカーが視覚化されます。この目印を辿れば、次にどこへ行けばいいのか迷うことはありません。

討伐クエストなど特定の目的地がない場合は、討伐対象がどこにいるか「魔物図鑑」で調べましょう。また、前述の通りフィールド探索も時間制限があるものの、各地にある「竜神像」と絆を結ぶことでファストトラベルが可能になり、移動時間を大幅に短縮可能。ダンジョンの中にある「竜神像」にも飛べるため、再戦可能なボスとの戦いも、面倒な道中抜きで挑めます。

「奥義」などの武器スキルやステータスアップ、また日常に役立つ数々のスキルなどは、カテゴリーごとに分かれている「スキルツリー」を介して獲得します。スキルの解放には一定のスキルポイントが必要ですが、専用のスキルポイントとは別に、「汎用スキルポイント」が用意されています。

専用のスキルポイントは、関連する行動を通して獲得することができ、特定のカテゴリーでのみ使えます。一方、「汎用スキルポイント」は文字通り汎用で、どのカテゴリーでも使用可能。日々の生活を送る中で獲得し、自由に使えます。

例えば、「両手剣」をまったく使っていなくとも、「汎用スキルポイント」でスキルを取得し、使いやすい状態にしてから遊ぶ……というスタイルも可能です。敵によって使いやすい武器が変わる場合もありますが、「汎用スキルポイント」を活用すれば「ステップ攻撃」や「奥義」などを始めから使えるため、プレイヤーに嬉しい機能のひとつです。

戦闘面での嬉しい話といえば、里の住人と交流して仲良くなることで一緒に冒険へ出かけられる点も見逃せません。複数の敵が相手だったり、強敵と戦う場合、仲間がいればその分狙われる機会が減るため、戦いやすさは格段に変わります。

また効率面だけでなく、好きなキャラと一緒にいられるのは誰にとっても喜ばしい話でしょう。主人公を含め最大4人でパーティを組めるため、賑やかな冒険を味わうことができます。

ちなみに、仲良くなる相手に性別の違いはありません。主人公は男女の選択ができますが、親密な仲になって結婚する相手に性別の障壁はなく、男性同士や女性同士でもなんら問題ありません。

しかも、別の世界へと渡る「世界渡ノ法」を行えば、現在の結婚相手などの状況を保存したまま、別の相手と結ばれる未来を味わうことも可能です。保存された世界は損なわれませんしいつでも戻れるため、何ひとつ失うことなく、分岐する世界をそれぞれ楽しめます。

小さなポイントから大きな特徴まで述べましたが、敢えてまとめるなら、『龍の国 ルーンファクトリー』は丁寧に積み上げられた包容力により、自由なプレイが楽しめるゲームだと強く感じました。

時間制限はあるものの、期限に制限はないため、急ぐのものんびりするのも自由。バトルはシンプルながらも必要十分なシステムが揃っており、好みの武器で戦う楽しさと、仲間と一緒にいられる嬉しさがあります。

軸となる農作業は「俯瞰モード」でやりやすく、住人に任せて負担も減らせます。複数の里やフィールドを行き来する機会が多いものの、ファストトラベルで行き来は自由自在。目的地マーカーのおかげで、行き先を見失うこともないでしょう。

「汎用スキルポイント」を使えば、注力したいカテゴリーのスキルを早く極められます。使いにくい状態の武器を使い続けるといった物足りない時間を、極力減らすことも可能です。そして交流に性別の垣根はなく、結ばれたい相手もひとりに絞る必要もありません。「世界渡ノ法」を駆使して、様々な未来を全てご堪能いただけます。

“日々の行動”という取捨選択を楽しみながら、長期的には何も捨てず、全てがプラスに転じていく『龍の国 ルーンファクトリー』。操作感も全般的に軽快で、プレイ時間と楽しいひとときがひたすら右肩上がりになったプレイ体験でした。

シリーズファンには世界観が目新しく、新規ユーザーには丁寧な作りがシリーズの入門用として最適な作品として、迷いなく薦められる一作です。

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