※この記事は『サガ フロンティア2 リマスター』の登場キャラクターについて語るため、ゲーム内容についてのネタバレを激しく含みます。

『サガ フロンティア2 リマスター』、発売されましたね。


3/27のニンテンドーダイレクトの翌日から、「サガ フロンティア2 リマスター発売!」のニュースが飛び交っており「え……?」と衝撃のあまり時が止まりました。ザ・ワールドのスタンド攻撃かと思いました。以前から噂はあったとはいえ、まさかこんな形でいきなり発表と同時に発売されるとは想像もしていなかったのです。

私はこの作品からは特に「命名」を学んだと思っています。

昔、キャラクター設定をじゃんじゃん行っていた時代の話ですが、「サービスインまでにプレイアブルキャラクターが50名必要だから、設定(=イラスト発注書)の制作をお願いします」なんてことがあったわけです。その時にもちろん、キャラクターの命名もしなければいけません。名前というものは、国によって読み方やミドルネームの命名規約が違ったりします。例えば、同じ国の出身という設定の2人が、「ジャン」と「メアリー」だったら、

「同じ国の出身という設定なのに、ジャンはフランス語名で、メアリーは英語名なのはどうして?」

という小さな違和感を生み出すことになるわけです。あくまで個人の意見ですが、同じ出身国やチームで命名規約を揃えた方が世界観を統一できると思っています。

「サガフロ2」は物語が素晴らしい作品なのはもちろん、その命名も非常に秀逸です。今回はそれを読み解きつつ、キャラクターの魅力を解説していきたいと思います。

この記事に触れて、「サガフロ2」だけではなくサガシリーズに触れていただける方が1人でも増えることを願っています。
この想い、河津氏にも届け!

◆歴史を紡ぐメインキャラクター
・ギュスターヴ13世
ギュスターヴ(Gustave)とはフランス語の男性名で、元々はスウェーデン語のgöt-staf(ギート族の杖)やGostislav(栄光の客)が語源と言われ、その名前がフランス語化したものです。「神の救い」という意味も持つようで、フランスのサッカー選手や近代の芸術家にも見られる名前です。

彼は誰でも持っている魔法の素養=アニマを持たずに産まれたことを逆手に取り、アニマを阻害する金属装備を有効活用したことで「鋼の13世」と呼ばれ、歴史を紡いでいく重要なキャラクターです。

若い頃はその劣等感からヤンチャしてたりしますが、その名前の語源通り強い存在として描かれ、自ら鋼の剣を打つのでした。

メイン主人公である彼の死は劇中では明確に描かれておらず、年表にもしれっと書かれているだけなんですよね。「最近シナリオ出ないなー」と思っていたら、年表に一行で死去されたことが追加されているという、なんとも言えない喪失感を味わいます。彼が登場する最後のシナリオでは、焼き討ちされた砦に残された鋼鉄の剣が発見され、状況的に死去したということになっていますが……。

……なんと、リマスターでは追加シナリオでレスリーとのその後も描かれており、これ見るためだけにプレイして欲しいぐらいです。

・ウィル・ナイツ
もう一人の主人公であるウィルは、ウィリアム(William)の短縮形です。語源は古代ドイツ語Willahelmに由来しており、Willaが意思、helmが兜を意味していると言われています。イギリスではメジャーな名前のひとつで、王室でも使われている非常に有名な名前で、日本語で言うと「太郎」「花子」のような位置づけです。

姓のナイツ(knight)は主に英語圏で使われ「騎士」という意味を持ち、準貴族とも呼ばれ領地を持たない貴族のことを言います。
劇中では明らかにされていませんが、もしかしたらウィルの祖先が名誉称号を賜っていたのかもしれません。

ウィルは両親を無くして叔父叔母に引き取られているのですが、やがて両親の死に関わる「エッグ」と出会い、戦いに人生を賭けていく……というストーリーを追体験できる存在です。その語源の通り、穏やかな性格で周囲の人を助ける生き方を貫いていますが、エッグの話になると冷静さを失います。

しかし彼はアニマを感知する能力が非常に高く、クヴェル(無限のアニマを持つ道具)をさらっと発見したり、ディガー(クヴェルの発掘人)の最高位である「タイクーン」の称号を得るなど、非凡な才能を見せつけており歴史を紡ぐもう一人の主人公であることは間違いありません。

設定によると享年101歳らしく、86歳になっても現役でパーティメンバーとしてラストバトルに参加するほどの勢いある御老体。世界一平均寿命の長い日本で2025年の男性平均寿命が81.09歳と言われていますから、彼は大往生だったようです。

・リッチ・ナイツ
ウィルの息子であるリッチは、リチャード(Richard)の短縮形です。父と同じく古代ドイツ語を語源としており、ricが力・支配、hardが勇敢な・強いを意味していると言われています。こちらも非常にメジャーな名前で、イギリスの王族やアメリカの芸術家やスポーツ選手などでも見かける有名な名前です。

彼はウィルの息子として産まれ、父の能力を超える素晴らしい才能を持つのですが……やったことといえば、女子のために虹をかけたり、子どもをこしらえたりと、主に女子関連で自由奔放な生き方をしています。なにそれ凄い。

でも彼がそういう人物だったからこそ、ナイツ家の血筋は続いたので結果オーライ……?

彼はその語源を表すかのごとく強い意思を持っており、エッグの存在に気づいてしまって使命感に駆られます。
その結果、エッグを奪うことに成功したリッチは全てを悟り、悲しい結果を迎えてしまうのですが……。

・ジニー・ナイツ
ウィルの孫でありリッチの娘であるジニーは、ヴァージニア(Virginia)の短縮形です。語源はラテン語のvirgoに由来しており、処女や乙女を意味していると言われています。乙女座もそうですね(ちなみにジニーが祖父や父と違いラテン語である理由は、この記事の後半で触れます)。

また、未開拓地域のことも意味するようで、アメリカにはヴァージニアという州があります。ちなみに、アメリカ人女優にむちゃくちゃ多い名前です。

ウィルの孫娘でありリッチの娘でもあり、先代の才能も完璧に受け継いじゃった天真爛漫14歳。ディガーの性質もバッチリ受け継いでいて、採掘欲に従って家出して別大陸まで行ってしまったりする奔放さはパパ譲り。

その語源の通り天真爛漫自由奔放を地で行いまくっております。天然かな。そりゃ周囲の人が彼女のことを放っておかないですよね。

しかし悲しいことに、リッチは彼女の出産前に姿を消してしまっているので、ジニーは父のことを知らないのです……。
道中でリッチの遺品を見つけるシナリオは、非常に心をえぐられます。

◆物語を彩るキャラクターたち
・コーデリア・エメリー
コーデリア(Cordelia)は語源がふたつあると言われています。

一つ目は聖ウルスラとも呼ばれるコルドゥーラ (Cordula) でラテン語のcordis (心臓)を語源とする説で、もう一つはケルト語圏では「海の娘・海の宝石・海の星」を意味するという言葉であるという説です。また、天王星の第6衛星や小惑星にもコーディリアの名前が見られたり、シェイクスピアの戯曲リア王にもその名前が見られます。コーデリア以外にもコーディリア、コーディーリアなどと発音することもあり、短縮形でディリィと呼ばれることが一般的なようですが、劇中ではコーディーと呼ばれています。

姓のエメリー(Emery)は「勤勉な人・熱心な人」を意味すると言われています。

そんなコーデリアですが、プレイヤーに大きなトラウマを与えた女性です。シナリオで単独潜入が必要な流れになり、それにコーデリアを派遣すると……非常にショックな出来事が起きてしまいます。

いやいや単独潜入だから頼りになるメンバーを派遣するとなったら、そらコーデリア選ぶやろってなります。泣きながらリセットしてやり直しです。リマスター版ではそんな我々のことを知り尽くしているのか、このイベントを回避できれば発生するシナリオが追加されていました。ユーザーの気持ちが分かりすぎでしょう。


コーデリアはヴィジランツ(ディガーを護衛する役目)としてウィルのシナリオに大きく関わってくるのですが、ウィルがタイクーンと呼ばれ始める時期からその姿を消してしまいます。その理由は劇中では語られませんが、もしかしてウィルと……という妄想がはかどります。なにせウィルがディガーになってからずっと10年以上も寄り添っていたコーデリアが、なんの理由もなくウィルの側を離れるとは思えません。

彼女は公式設定が少ないにも関わらず、前述のイベントのせいもあるのか、非常に人気のあるキャラクターです。その名前の通り、存在感を放ちつつ熱心な一面を見せてくれるキャラクターでした。なんと言いますか、「実らなかった初恋の人が、一生忘れられない」みたいな気持ちになるキャラクターです。

・グスタフ
名前の説明をするだけで重大なネタバレになるんですが……。言いましたよ。ここから先を読むかはあなたしだいです。

では、ネタバレしますよ。

グスタフはスウェーデン語で、フランス語化するとギュスターヴになります。

つまり、そういうことです。
名前の説明をしただけで重大なネタバレになるキャラクターなんて彼ぐらいです。

グスタフは物語後半からチラホラ出始めて、最初は「これ誰?」となってしまいましたが、ちょっと整理してみましょう。

ギュスターヴの親友ケルヴィンはギュスターブの妹マリーと結婚しており、その孫がグスタフ……ということは、ギュスターヴ家の血を引いた正統後継者じゃないですか!ギュスターヴ15世様じゃないですか!

グスタフは代々伝わるファイアブランドとギュスターヴの剣を固定装備として持っており、彼の存在でギュスターヴのすべてが報われた気がします。そしてギュスターヴの剣が最後に例のアレを打ち砕く……これで歴史が一つになり、感動しました。

余談ですが、彼は先代と似ていることを隠したいために独特の髪型をしているそうなのですが、なんと砂糖水で固めているとか……。彼を虫のいる所に連れて行ってはいけません(連れて行かれてしまうのですが)。

・プルミエール
プルミエール(Premiere)はフランス語で「最初の・初めての」という意味を持つのですが、英語読みの方が我々には馴染みが深いかもしれません。「プレミア」って言葉は日常生活で使いませんか? プルミエールの英語読みがプレミアです。Adobe Premiereさんにはいつもお世話になっております。

オート侯カンタールは23人の子どもを設けた奸雄として描かれていますが、その末っ子としてプルミエールは産まれました。

カンタール自身はプルミエールの存在を認識していなかったり、色々あって親子ほど年の離れた姉に育てられることになったり、色々あって末っ子にも関わらずプルミエールと命名されたようです。そしてその後も、色々あって家出しちゃいました。……色々ありすぎだし、それに家出多くない?(ジニー、グスタフ、プルミエールが家出組)。

幼少期にグスタフに助けてもらったことがリマスター版で描かれるのですが、仲の悪い家系同士のことなのでプルミエール本人は忘れかけていたのですが、グスタフと再会したことで思い出すというシナリオが心を掴まれます。

これ完全にフラグじゃないですか?

・ミーティア
ミーティア(meteor)はギリシャ語のmeteōrosに由来する言葉で、「流星・隕石」を意味します。英語読みで「メテオ」と言われたら理解できる方も多いのではないでしょうか。そうです。ミーティアは石斧をぶん回して隕石のように全てを破壊するのです。あと、すごくいい子。

ギュスターヴとウィルの両輪で描かれるこのゲームにおいて、「孤児院で育った村一番の怪力娘」というシンプルな設定の彼女。単なる一般人がラストバトルのスタメンになるわけですが、非常に強いです。あと、本当にすごくいい子。

シルマール大先生とその弟子ヴァンアーブルに出会ってしまったばかりに、最終的にはナイツ家とエッグのラストバトルに巻き込まれてしまうことになってしまうのでした。ヒドイです。とてもヒドイです。

まあ巻き込まれた彼女にとっては大変なことですが、持ち前の真向きさと明るさでなんとかなっちゃっている所が好感度上がります。繰り返しますが、すごくいい子です。

ちなみに、劇中では明らかにされていませんが、強力な石斧を残した実父って誰なんでしょう? ミーティアもコーデリアと同じ「赤い頭巾」というファッションにヒントがあるかもしれませんが、ないかもしれません。

・ロベルト・ビラス
ロベルト(Robert)は古代ドイツ語由来の男性名で、「栄光の輝き・名声に満ちた」という意味を持ちます。英語だと「ロバート」、フランス語だと「ロベール」と読みます。政治家やサッカー選手に多い名前で、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

ビラスという姓は様々な語源があると言われています。古代ローマ時代に上級階級の住宅を意味するVillaの複数形だったり、ブラジルに多い姓だったり、villusだと絨毛を意味したりと、色々な意味を持つようです。

彼もまたミーティアと同じく巻き込まれた一般人なのですが、グスタフの親友ポジションなので巻き込まれるべくして巻き込まれた感があります。そういえば、誘い受けっぽい言動と言われたら、納得できそうなことも時々しています。

とはいえ、エッグに目をつけられたにも関わらずその非凡な才能で見抜いて勧誘を断るなど、一般人とは言えないほどの能力を見せつけます。ラストパーティでは最大値のLPを誇り、簡単には倒れません。なにこの凄い一般人。

ちなみに彼の名前はSF作家の大御所「ロバート・A・ハインライン」を拝借したとプロデューサーの河津秋敏氏が発言されています。そしてその妻がヴァージニアというそうで……。

劇中でジニーはロベルトのことを兄のように慕っており、ロベルトも妹を早くに亡くしているという設定もあるので、もう公式カップルって言われたら私は納得しちゃいます。公式でジニーはタイクーンの称号を得た後のエピソードもあるのですが、そこで「子育てを母親に押し付けて」という記述がありまして、ジニーのパートナーはもしかしてロベルト……? って妄想がはかどります! ありがとうございます!

◆終わりに
ここまで読んでくださりありがとうございます。今回は主要キャラクターのみを取り上げましたが、他にも魅力的なキャラクターが多数登場しますので機会があれば読み解いてみたいと思います。後半登場するエーデルリッターをあえて外したのですが、改めて掘り下げてみたいですね。

26年ぶりにリマスターとして復活した「サガフロ2」、一人のユーザーとして非常に楽しませていただきました。個人的にサガシリーズはなかなか人に勧めにくいところがあったのですが、「ロマサガ2リメイク」と「サガフロ2リマスター」を勧めておけば大丈夫な気がしています。と言いますか、聞かれてもないのにこの2作を周囲に勧めて周っています。この想い、河津氏にも届け!

この記事に触れていただいた皆様が、この名作に興味を持っていただけることを祈っております。
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