アトラスの代表作といえば、『真・女神転生』シリーズを思い出す人も多いはず。直近でも、ナンバリング最新作の『真・女神転生V』(2021年11月11日)や、追加要素を加えた『真・女神転生V Vengeance』(2024年6月14日)がリリースされ、今もシリーズ展開が続いています。


また、『真・女神転生』シリーズから派生し、それぞれシリーズ展開を遂げている作品も少なくありません。少年少女の葛藤や成長を描いた『ペルソナ』シリーズをはじめ、『デビルサバイバー』シリーズに『ラストバイブル』シリーズなど、枚挙に暇がないほどです。

その多くは『真・女神転生』シリーズと同じターン制RPGの要素を軸としていますが、同じ派生作でもアクションRPGに舵を切った『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズのような、独自路線を確立したものもあります。

そんな個性派シリーズの第1作目をリマスターした『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』が、2025年6月19日に登場します。

本作はファン待望の復活と言えますが、オリジナル版が発売されたのは19年も前のこと。『ペルソナ5』や『真・女神転生V』でアトラスを知った今時のゲームファンにとっては、どんな作品なのかまだ知らない人も多いのではないでしょうか。

そんな『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』が、『真・女神転生』や『ペルソナ』とはどのような違いがあるのか、先行プレイの体験を元にその特徴や魅力に迫るレポートをお届けします。アトラスらしさもあり、それでいて異色な『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』の一端をご覧ください。

なお、本作はスイッチ2/スイッチ/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Steamと多くのプラットフォームに展開しますが、今回プレイしたのはSteam版となります。また、12時間ほどプレイした内容に基づいております。

■『真・女神転生』や『ペルソナ』とどう違うの?
悪魔や天使を「仲魔」としてパーティに加え、様々な敵と戦いながら、異変や事件の解決や世界の命運に立ち向かう──作品ごとに細かい違いなどはあるものの、『真・女神転生』や『ペルソナ』などのシリーズ作は、共通する要素を多く備えています。(※『ペルソナ』シリーズでは、悪魔やシャドウと交渉してペルソナを獲得)

「仲魔」を加えて戦力を増やし、異変や事件に立ち向かうという要素は、この『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』も継承しています。
また、世界を俯瞰するマップと、それぞれの地域を切り取ったフィールド、敵と遭遇すると切り替わるバトルといった構成も共通しています。

そして、起きる問題は作品ごとに違うものの、フィールド上で物語や事件の捜査を進展させ、敵が彷徨うダンジョンに突入。最奥で待つボスに立ち向かって事態の改善を図る。そうした流れも概ね共通しているため、『真・女神転生』『ペルソナ』あたりのプレイ経験がある人なら、『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のゲーム進行もすぐに馴染むことでしょう。

ただし、設定や基本的なゲーム面において、異なる点も多々ります。『真・女神転生』や『ペルソナ』は、現代や近未来を舞台とする場合が多いのですが、『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』の舞台は架空の大正時代。かつて「帝都」と呼ばれていた頃の東京、つまり時代的には過去を扱う作品となります。

西洋文化を取り込み、洋食が人気を博し、時代に敏感な女性たちがモダンガールと呼ばれて街中を華やがせる。一方で、和装を好む人もまだ多く、和洋入り混じる景色も大正時代ならではと言えるでしょう。

そんな交錯する時代を舞台に選んだ『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、レトロでありながら新たな時代への息吹も感じられ、他のアトラス作品では味わいにくい独特な世界観を楽しめます。

また、社会に自動車が普及し始めたりと、科学が生活や習慣に大きな影響を与えた時代でもあります。「仲魔」を使役する本作の主人公のような存在は“オカルト”として片づけられてしまう、そんな時代の節目です。


科学とオカルトが交差する時代に、「悪魔を使役するデビルサマナーとなり、帝都を駆け抜ける」醍醐味は、本作ならではの趣深いアクセントと言えます。

■「デビルサマナー」ならではのゲーム進行
アトラスの人気シリーズたちと共通する要素も多い一方、独自性もはっきりしている『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』では、プレイヤーが主人公・葛葉ライドウとなり、人々を脅かす怪異に立ち向かい、帝都の平和を守ります。

ライドウは、協力者である鳴海が営む「鳴海探偵社」を手伝うという形で、様々な事件の解決に奔走することに。物語は話数形式で進み、第1話では少女からの不可思議な電話をきっかけに、とある資産家の事情に深く関わっていきます。

事件の捜査は街中での噂話に始まり、主要人物の家屋やその周辺での聞き込み、そして悪魔たちが闊歩する「異界」などに出向くことで進展します。異界を「タルタロス」や「マヨナカテレビ」、「パレス」などに置き換えれば、近年の『ペルソナ』ファンにも想像しやすい流れかと思います。

ただし本作の場合、人間だけの力では事件の解明に至れません。事件を知る人物の口は時に固く、証拠は隠され、そこに辿り着く道も塞がれていることがあります。そうした難題を攻略するには、悪魔の力が不可欠です。

真実を明かさない者には「読心術」、感情を後押しして本音を語らせる「発火」、冷静さを取り戻させる「冷却」、鋭敏な悪魔の感覚を活かす「現場検証」など、仲魔たちはそれぞれ捜査用の特技を持っており、彼らの力を借りて事態を打破していきます。

常人では太刀打ちできない事件を、人知を超えた悪魔の力を用いて解決する。悪魔を使役するデビルサマナーだからこその展開と手応えです。


舞台設定である大正時代と合わせ、こうしたシチュエーションや状況をロールプレイング(=役割を演じる)として楽しめるのが、『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』が持つ魅力のひとつだと、個人的に感じています。

ちなみに捜査自体は、その都度目的地がマップ上に記されますし、適時使用できるファストトラベル的な「現場急行」の行先にもアイコンがつくため一目瞭然。捜査が行き詰まることはないため、事件の捜査などのパートが苦手な人もご安心ください。

■『真・女神転生』派生作には珍しい、悪魔を使役する“アクションRPG”
事件解決の進行は共通点がありつつも、悪魔を使役する捜査という独自性を持つ『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』。その異なる点と言えば、悪魔たちと戦う戦闘システムが最たるものでしょう。

『真・女神転生』や『ペルソナ』のバトルは、基本的にターン制のRPGです。作品によってパーティメンバーの行動をAIに任せる場合もありますが、プレイヤーが主人公や悪魔の行動を決定し、攻撃や回復、防御などの命令を下すのが一般的です。

一方『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』では、リアルタイムのアクションバトルが展開します。ライドウを直接動かし、移動・攻撃・防御・回避を駆使しながら、敵悪魔の討伐を目指します。

もちろん、アクションバトルでも悪魔の使役が可能です。本作では、最大2体の仲魔を同時に呼び出すことができ、彼らと一緒に敵悪魔に立ち向かいます。仲魔の動きは基本的にAIに担当させつつ、要所要所でプレイヤーが命令を下すような形です。


プレイヤーが主に操作するライドウのアクションは豊富で、2種類の通常攻撃、足止めに役立つ銃撃、特別な効果を備える「神剣特技」、強力な「殺魔一閃」、溜めたゲージを消費して発動する「スピリット剣」と、攻撃手段だけでも実に多彩です。

通常攻撃には、「ダメージは低いが、MAGを奪える」弱攻撃と、「ダメージは大きいが、MAGを奪えない」強攻撃があります。MAGとは、特技を使うために必要なリソースのこと。ファンタジー系RPGにおける「MP」に近いものと考えれば、想像しやすいかと思います。

MAGは仲魔とも共有するため、MAGがなければ仲魔も特技を使えません。強力な攻撃はもちろん、HPや状態異常の回復、バフにデバフなど、特技の恩恵は幅広く効果も大きいため、MAGの獲得・維持は非常に重要です。

プレイヤーの心理としては大ダメージを直接与えたくなりますが、MAGがなければ仲魔は十全に戦えません。ダメージをとるかMAGを獲得するか、状況に応じて的確に判断することが、デビルサマナーたる主人公の役目と言えるかもしれません。

■賢く立ち回り、仲魔を活かせ!
本作において、MAGを用いた攻撃手段は非常に重要な役目を持ちます。敵味方ともに、悪魔は弱点となる属性相性を持っており、弱点を突かれると「弱点硬直」状態に陥ります。

「弱点硬直」中に受ける攻撃は全て「会心」となり、受けるダメージは1.5倍に。また、敵が「弱点硬直」の時は、奪えるMAGも2倍になります。
通常の攻撃だけでは倒しにくい悪魔も多いので、弱点を突く立ち回りが基本かつ最も重要な攻略法と言えるでしょう。

ライドウも「神剣特技」で弱点属性を突くことができますが、「神剣特技」発動後は一定のクールタイムがあり、連打はできません。弱点を突く攻撃が多いほどダメージを与えやすくなるため、ライドウだけでなく仲魔の特技にも頼ることになります。

また、手ごわい強敵は「弱点シールド」を貼っている場合があり、このままでは「弱点硬直」が発生しません。この「弱点シールド」の破壊にも、弱点属性の攻撃が有効です。

ターン制のコマンドバトルで戦う『真・女神転生』や『ペルソナ』と、リアルタイムのアクションバトルを繰り広げる『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、まったく違うジャンルと言えます。

しかし、弱点を突いて戦闘を有利に運ぶ要素は、シリーズ後期の『真・女神転生』や『ペルソナ』にも取り入れられており、仲魔やペルソナにできるだけ多くの属性攻撃を覚えさせた方が攻略も楽になります。

全く違うゲーム性かと思えば、戦略の要は共通するなど、意外なところでもアトラスらしさを感じることができる作品です。

■『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』のバトルは、テンポよく忙しめ
仲魔も存分に戦えるようにMAGの獲得に励みつつ、使い過ぎと感じた時には特技の使用をON/OFFで切り替え、敵が強力な範囲攻撃を繰り出す時には「隠し身」で一時的に退避させる。こうした判断を適時下しながら、ライドウ自身を操作して立ち向かうのが、『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』におけるバトルとなります。

こちらは最大3人(ライドウ+仲魔2体)ですが、敵も群れを成すことが多く、しばしば乱戦になります。ライドウの動きはもたつきもなく軽快ですが、敵も素早く動くため、戦闘フィールドをあちこち移動することもしばしばあります。


そのため、バトルのテンポは結構速く、弱・強攻撃のコンボに的確な回避、仲魔への指示、発動条件を満たした「殺魔一閃」と「スピリット剣」の使用など、コントローラーを握る手はかなり忙しなく動きます。

難易度的に難しいというほどではないものの、手を抜いて勝てるほどヌルくないのも事実。その意味では、適度な遊び応えがあるバランスになっています。設定で難易度を下げることで忙しさは軽減されるので、自分の好みに合わせて調整するのもアリでしょう。

また1戦1戦は忙しないものの、レベルは比較的上げやすく、戦闘回数そのものはある程度抑えられます。特に、敵が待ち構えている「ザクロ」で得られる経験値は4倍、もらえるお金は8倍なので、育成や強化を大いに助けてくれます。

「ザクロ」はフィールドの各地に点在しており、クリアすると消えるものの、ゲーム内時間(月齢)が進行すると復活するので、何度でも挑戦できます。この「ザクロ」を活用すれば少ない戦闘回数で戦力を上げられるため、道中の敵はできるだけ避け、「ザクロ」やボス戦といった密度の濃い戦闘だけを楽しむのもアリでしょう。

■独自色が強めながら、馴染み深いアトラスらしさも
大正時代を舞台に、事件の捜査に悪魔の手を借り、仲魔と一緒に戦いながら時には指示を下すアクションバトルに挑む『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』は、『真・女神転生』および派生作の中でも、類似した作品がない異色作と言えます。

こうした独自のプレイ感を構築しつつも、物語の全体形態は『真・女神転生』のスタイルを踏襲しているため、仲魔と肩を並べて戦う共闘感や敵の弱点を突く要素など、他の作品のファンにとってお馴染みの要素もあり、遊べばすぐに馴染む親しみやすさがあります。

また、オリジナル版の『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 超力兵団』のバトルは不評な部分もあったため、改善して好評を博したシリーズ2作目『デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』の戦闘システムをベースに、現代のプレイ感に合わせた改良が加えられています。

そのため、“『葛葉ライドウ 対 超力兵団』の物語を『葛葉ライドウ対 アバドン王』+αのバトルで楽しめる”という、オリジナル版の経験者にとっても初めての組み合わせを味わうことができます。

ただし、この令和に生まれ変わった『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』をプレイして、気になる点が全くなかったとは言えません。例えば、捜査中に仲魔の特技を使いたい場合、その悪魔が実際に能力を行使する演出が入るため、テンポが少し悪くなります。

特に、仲魔を切り替えて特技を使うと再召喚の演出も入るため、若干ですが間延びする印象を受けます。とはいえ、仮に演出なしに結果だけ表示されたら、悪魔を使役するという実感がなくなり、本作らしい味わいが失われるのも確か。演出のテンポの折り合いは、塩梅が難しいところでしょう。

また、バトルは敵の弱点を突くことが重要なので、召喚済みの仲魔が適していなかった場合、その都度メニューを開いて再編成する手間が入ります。戦闘のテンポ自体はスピーディなのに、アクションバトルの開幕早々にメニュー画面と向き合う機会が多いのは少々残念です。

加えて、戦闘中は乱戦になりやすく、カメラアングルの都合で敵の多くが画面に収まらない場合もしばしばあります。その状態で仕掛けられる攻撃はどうしても避けにくく、ささやかながらストレスに感じます。

画面外からの攻撃は、事前に矢印の表示が出るため、対応自体は可能です。とはいえ、その予兆だけでは避けにくいため、一度態勢を立て直すこともしばしばありました。壁際に逃げた敵を追いかける時にこの状態になりやすいため、カメラアングルの自動補正や、敵の移動先に一定の調整を加えるなど、システム面でのフォローが欲しいところです。

とはいえ、こうした問題がありつつも、悪魔を使役する手応え、自分のテクニックと判断が戦局を左右するアクションバトル、オカルトと科学がせめぎ合う絶妙な舞台設定、その帝都を守るデビルサマナーの実感など、本作ならではの魅力が大きいのも間違いありません。

異色作ながらアトラスらしさも感じられる『RAIDOU Remastered: 超力兵団奇譚』。改善点の多さで当時のファンも存分に楽しめますが、未経験のアトラスファンにも力強くお勧めしたい1作です。

※「葛」の字は異体字が正しい表記となります。
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