7月29日、Nintendo Switch Online会員限定配信サービス『スーパーファミコン Nintendo Classics』に『マリオペイント』が加わりました。
『マリオペイント』は、1992年7月にスーパーファミコン向けソフトとして発売されたタイトルです。
ただし、これはスーパーファミコン。当時のデスクトップPCと比較するとどうしても性能(特に容量)で劣ってしまうため、ソフトにも様々な制約がありました。それでも、この『マリオペイント』は極めて大きな贈り物を90年代の子供たちに残してくれました。
それは「マウス操作の技術」です。
◆「ワープロはあるけどPCはない」という家庭が大半だった!
90年代前半、家庭用PCは小型化の一途を遂げてはいましたが、実際にそれを所有していた家庭は決して多くはありませんでした。
日本ではPCに先駆けて、ワードプロセッサー(ワープロ)の普及という現象がありました。
1985年、カシオ計算機が「カシオワードHW-100」という製品を発表。それまでのワープロといえば、電子レンジのような大きさの代物です。ところが「カシオワードHW-100」は、女性でも両手で持ち運ぶことができるくらいのサイズに収まりました。しかもそれが、5万9,800円という低価格で発売されたのです。
ここからワープロが爆発的に普及しました。
さて、ここで筆者の皆様に考えていただきたいのが、「既にワープロを所有している家庭が改めてPCを購入するか?」という点です。インターネットというものがまだなかった時代、PCにできることは限られていました。電子化された資料を読み込んだり、作曲をしたり、プログラミングの知識を生かして自分でゲームを作ったり……ということを趣味にしていない限り、PCはまず必要としません。物書きの仕事であれば、ワープロを持っていればそれで十分です。この時代はプロの小説家も、専らワープロを活用していました。
そして、ワープロというものはQWERTY式キーボードはあるものの、マウスはありません。つまり、多くの家庭ではマウスに触れる機会がそもそもなかったのです。
◆遊びながらマウス操作を学ぶ
しかし、2025年の人々は日常的にマウスを操作しています。
カーソルを動かすための微妙な操作は、マウスにしかできません。現に、これに代わる優れたコントローラーは30年以上経っても登場していません。筆者はとあるテクノロジーメディアで「画面に指を向けて操作する指輪型ワイヤレスマウス」というものを取り上げたことがありますが、それが一般的なPC周辺機器になったかというと……やはりそうとは言えません。
『マリオペイント』が発売された1992年当時、マウスの将来性に気づいていたのは自宅にPCがある少数の人のみでした。即ち、『マリオペイント』とは「マウスが21世紀に必要不可欠のコントローラー」であることを子供たちに教える役割を託されたソフトだったのです。
「当時のデスクトップPCと比較するとどうしても性能(特に容量)で劣ってしまうため、ソフトにも様々な制約がありました」と上述しましたが、それでも『マリオペイント』の「お絵描きスクリーン」では1ドット毎に色を塗ることができるため、絵心があれば緻密なイラストを描くことも可能です。もっとも、絵心のない筆者の場合は下の画像が精一杯ですが……。
ただし、絵を描く楽しみは絵心とは別のところにあります。『マリオペイント』を使って様々な絵を描くことで、子供たちは「ここをこうすれば上手く操作できる」という具合にマウスの使い方を遊びながら学んでいきました。
そうして少しずつ腕を磨いたら、次に挑戦するのは「ハエタタキ」。文字通り、ハエを叩いてやっつけていくゲームです。これが結構難しかった思い出がありますが、改めてニンテンドースイッチ2で挑戦してみると……やっぱり難しい!
しかし、これもマウスの操作技術を向上させる上で一役買っていたことは間違いありません。
◆「チーター」が当たり前になった!
30年ぶりに『マリオペイント』をプレイした筆者が、心から感動した点がひとつあります。
ニンテンドースイッチ2にマウスを接続してプレイしても、最初はどうもマウスの感度が良くなく、カーソルが俊敏に動いてくれません。これはマウススピードの調整で改善することができます。
ですが、よく考えたらチーターはマウス操作に慣れた上級者向けの設定だったはず。子供の頃の筆者は亀の設定のままお絵描きをしたり、ハエタタキをしていたはずです。
つまり、当時は上級者向け設定だったチーターが現代では「標準的なレベル設定」になったということです。人間のPC操作スキルが、30年前のそれよりも明らかに向上している証拠でもあります。
あの日、『マリオペイント』が教えてくれたことが自分自身の肉体に定着し、こうして毎日PCに触れる仕事をしている――。このソフトが筆者を育ててくれたことは紛れもない事実で、それ故に『マリオペイント』を『スーパーファミコン Nintendo Classics』で復活させてくれた任天堂には最大限の感謝を告げるべきと感じています。
ありがとう、任天堂! ありがとう、『マリオペイント』!
『マリオペイント』は、1992年7月にスーパーファミコン向けソフトとして発売されたタイトルです。
専用マウス「スーパーファミコンマウス」を使用することが前提で、PCのペイントソフトのようにお絵描きをしたり、簡単な作曲をしたりすることができます。
ただし、これはスーパーファミコン。当時のデスクトップPCと比較するとどうしても性能(特に容量)で劣ってしまうため、ソフトにも様々な制約がありました。それでも、この『マリオペイント』は極めて大きな贈り物を90年代の子供たちに残してくれました。
それは「マウス操作の技術」です。
◆「ワープロはあるけどPCはない」という家庭が大半だった!
90年代前半、家庭用PCは小型化の一途を遂げてはいましたが、実際にそれを所有していた家庭は決して多くはありませんでした。
日本ではPCに先駆けて、ワードプロセッサー(ワープロ)の普及という現象がありました。
1985年、カシオ計算機が「カシオワードHW-100」という製品を発表。それまでのワープロといえば、電子レンジのような大きさの代物です。ところが「カシオワードHW-100」は、女性でも両手で持ち運ぶことができるくらいのサイズに収まりました。しかもそれが、5万9,800円という低価格で発売されたのです。
ここからワープロが爆発的に普及しました。
刑務官の息子だった筆者の自宅にも、なぜかワープロがあったことをよく覚えています。
さて、ここで筆者の皆様に考えていただきたいのが、「既にワープロを所有している家庭が改めてPCを購入するか?」という点です。インターネットというものがまだなかった時代、PCにできることは限られていました。電子化された資料を読み込んだり、作曲をしたり、プログラミングの知識を生かして自分でゲームを作ったり……ということを趣味にしていない限り、PCはまず必要としません。物書きの仕事であれば、ワープロを持っていればそれで十分です。この時代はプロの小説家も、専らワープロを活用していました。
そして、ワープロというものはQWERTY式キーボードはあるものの、マウスはありません。つまり、多くの家庭ではマウスに触れる機会がそもそもなかったのです。
◆遊びながらマウス操作を学ぶ
しかし、2025年の人々は日常的にマウスを操作しています。
カーソルを動かすための微妙な操作は、マウスにしかできません。現に、これに代わる優れたコントローラーは30年以上経っても登場していません。筆者はとあるテクノロジーメディアで「画面に指を向けて操作する指輪型ワイヤレスマウス」というものを取り上げたことがありますが、それが一般的なPC周辺機器になったかというと……やはりそうとは言えません。
『マリオペイント』が発売された1992年当時、マウスの将来性に気づいていたのは自宅にPCがある少数の人のみでした。即ち、『マリオペイント』とは「マウスが21世紀に必要不可欠のコントローラー」であることを子供たちに教える役割を託されたソフトだったのです。
「当時のデスクトップPCと比較するとどうしても性能(特に容量)で劣ってしまうため、ソフトにも様々な制約がありました」と上述しましたが、それでも『マリオペイント』の「お絵描きスクリーン」では1ドット毎に色を塗ることができるため、絵心があれば緻密なイラストを描くことも可能です。もっとも、絵心のない筆者の場合は下の画像が精一杯ですが……。
ただし、絵を描く楽しみは絵心とは別のところにあります。『マリオペイント』を使って様々な絵を描くことで、子供たちは「ここをこうすれば上手く操作できる」という具合にマウスの使い方を遊びながら学んでいきました。
そうして少しずつ腕を磨いたら、次に挑戦するのは「ハエタタキ」。文字通り、ハエを叩いてやっつけていくゲームです。これが結構難しかった思い出がありますが、改めてニンテンドースイッチ2で挑戦してみると……やっぱり難しい!
しかし、これもマウスの操作技術を向上させる上で一役買っていたことは間違いありません。
◆「チーター」が当たり前になった!
30年ぶりに『マリオペイント』をプレイした筆者が、心から感動した点がひとつあります。
ニンテンドースイッチ2にマウスを接続してプレイしても、最初はどうもマウスの感度が良くなく、カーソルが俊敏に動いてくれません。これはマウススピードの調整で改善することができます。
「亀」「ウサギ」「チーター」の3段階で区切られているスピードは、デフォルト状態では亀です。それをチーターにすることで、ようやく現代のPCと大差ない反応速度になります。
ですが、よく考えたらチーターはマウス操作に慣れた上級者向けの設定だったはず。子供の頃の筆者は亀の設定のままお絵描きをしたり、ハエタタキをしていたはずです。
つまり、当時は上級者向け設定だったチーターが現代では「標準的なレベル設定」になったということです。人間のPC操作スキルが、30年前のそれよりも明らかに向上している証拠でもあります。
あの日、『マリオペイント』が教えてくれたことが自分自身の肉体に定着し、こうして毎日PCに触れる仕事をしている――。このソフトが筆者を育ててくれたことは紛れもない事実で、それ故に『マリオペイント』を『スーパーファミコン Nintendo Classics』で復活させてくれた任天堂には最大限の感謝を告げるべきと感じています。
ありがとう、任天堂! ありがとう、『マリオペイント』!
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