2018年にスイッチ版が発売された『オクトパストラベラー』は、群像劇による多角的に世界を描いた物語や、戦略性の高いコマンドバトルに加え、ドット絵と3DCGを融合させた描画手法「HD-2D」で、多くのユーザーを驚かせて虜としました。

HD-2Dは、懐かしくも新しい表現として高く評価され、『オクトパストラベラー』シリーズのみならず他の作品にも広がりを見せています。
そして、2025年7月末に行われた「Nintendo Direct ソフトメーカーラインナップ 2025.7.31」にて、HD-2Dを用いた新たなタイトル『冒険家エリオットの千年物語』が発表され、早くも話題となりました。

2Dと3Dを取り入れた描写は本作でも魅力的ですが、話題となったのはビジュアルだけではありません。これまでのHD-2D作品は、『トライアングルストラテジー』がシミュレーションRPGでしたが、そのほかはRPGが主体。前者も含め、じっくりと考えて戦うゲームがほとんどでした。

しかし、先日お披露目された『冒険家エリオットの千年物語』はアクションRPGです。HD-2D作品で初となるジャンルに挑戦する形となり、HD-2Dの新たな可能性を広げる作品としても注目を集めました。

これまでにない切り口で挑む『冒険家エリオットの千年物語』は、どのような魅力に満ちているのか。発売は2026年とまだ先の話になりますが、要素の一部を味わえる体験版『冒険家エリオットの千年物語 Debut Demo』がいち早く登場したため、早速プレイに臨みました。

なお、今回のプレイレポートは『冒険家エリオットの千年物語 Debut Demo』の内容となるため、製品版とは異なる可能性もあります。

■バトルはシンプル、だけど単純じゃない!
タイトルからも分かる通り、本作の主人公は冒険家の「エリオット」です。また、相棒となる妖精の「フェイ」がそばにおり、この2人が千年にもおよぶ時空を超える旅へと出かけます。

ただし、今回の体験版では時空を超える旅までは収録されておらず、遊べる範囲は目的となるダンジョンをクリアするまで。
『Debut Demo』なので、内容は比較的シンプルです。

シンプルといえば、バトル面の操作方法も分かりやすく、ストレートな作りになっています。戦闘中に使う主な操作は、2種類の武器(それぞれボタンに割り振り)による攻撃、移動にジャンプ、ガード、そしてフェイの能力程度です。

2Dアクションの中には、連打ではなくジャストなタイミングで攻撃を繰り出すと強力なコンボが発動したり、フレーム単位で回避するようなタイトルもありますが、『冒険家エリオットの千年物語』は攻撃方法もシンプルで、各武器ごとの通常攻撃とボタン長押しによるため攻撃、この2つを使い分けるのが中心になります。

この説明だけ聞くと、底が浅いように感じるかもしれません。しかし、少なくとも体験版を遊んだ範囲で、アクションに飽きたことは一度もなく、むしろ奥深さの片鱗を味わったほどです。

■通常と溜め×武器種×2つ目の武器の組み合わせで、広がる立ち回り
武器ひとつに絞っても、通常攻撃とため攻撃の使い分けで、戦いの幅がかなり広がります。体験版では、リーチは短いものの素早く振れる「剣」、遠距離から攻撃できるが矢を消費する「弓」、周囲をまとめて攻撃できる「鎖鎌」、ヒビの入った壁も壊せる「爆弾」の4つが使えます。

例えば剣の場合、攻撃速度は速いもののリーチの問題があり、間合いを見誤ると敵に届かずあえなく空振りすることも多々ありました。(空振り自体は筆者の腕の問題ですが)

しかし剣は、ため攻撃で衝撃波を飛ばすことができるため、ためる時間こそかかりますが遠めの敵にも攻撃が可能です。敵は、攻撃を食らったら反応して近寄る場合が多いので、「剣のため攻撃で不意打ち→近づいてきたら素早く連撃」という具合に、敵をうまく誘導して戦えます。

鎖鎌は、通常攻撃で自分の周囲を一度に攻撃できるため、雑魚に囲まれた時に対処しやすい武器です。
ただし、剣ほど素早くないため、タイミングの見極めは重要。ため攻撃は鎖鎌を伸ばして攻撃するため、さらなるリーチが望める上に、攻撃を当てた敵を引き寄せる効果も持ちます。

引き寄せた後に鎖鎌で追撃もできますが、近距離なら剣の方が速いので、「鎖鎌のため攻撃→剣の斬撃」という組み合わせもアリ。むしろ隙が減るので、助かります。

また、剣の攻撃で敵がノックバックすると、そのままでは2撃目が届かなくなるため、「剣の斬撃→鎖鎌の攻撃」ですかさず追い打ちをかけるのも悪くありません。

通常とための2種類に加え、装備できる2つの武器の組み合わせが戦い方に広がりを持たせ、シンプルだが単純ではない奥深さを実現しています。こうした組み合わせの妙が、アクションを飽きることなく楽しませてくれました、

上級者向けには、成功すれば敵を気絶させたり攻撃を跳ね返す「ジャストガード」というシステムもあるので、活用すれば戦いが更に楽しくなることでしょう。ちなみに、少なくとも体験版の範囲では、「ジャストガード」を使わなくとも問題なくクリア可能。必須のテクニックではないので、ご安心ください。

■「魔石」を活用し、自分好みのビルドで挑め
武器の組み合わせと立ち回りで、自分好みの戦い方を見つけるのが楽しい『冒険家エリオットの千年物語』ですが、そのバトルをさらに盛り上げてくれるのが「魔石」の存在です。

特殊な効果を付与する「魔石」は、攻撃力の上昇といったベーシックなものから、ため攻撃をパワーアップさせるものまで、様々な種類とレベル(高いほど効果大)が用意されています。

冒険で集めた「魔石の欠片」を魔石屋に持ち込むと、魔石をランダムで生成でき、その魔石をコスト内に収まるように装備すると効果が発動。
単純なステータスアップも心強いのですが、各武器の特性をより引き出す効果が得られるのも嬉しいところです。

例えば、鎖鎌のため攻撃がヒットすると「〇〇%の確率で気絶状態にする」という魔石があり、これだけでも頼もしい効果です。しかし、別の魔石で「気絶状態の敵に対して、鎖鎌のダメージが〇〇%上昇」というものもあります。

この2つを組み合わせるとどんな効果が得られるのかは、説明するまでもないでしょう。気絶で無防備にした上に、与ダメージも上がると、いいことづくめです。このように、魔石の組み合わせでより効果を発揮するため、武器同士の使い分けだけでなく、魔石と武器、そして魔石同士の組み合わせを模索する楽しさにも心をくすぐられます。

■相棒の「フェイ」が有能過ぎて頼もしい
ここまで、エリオット自身の能力や関連する特徴に触れましたが、相棒であるフェイの存在も外せません。むしろ、彼女がいることで、『冒険家エリオットの千年物語』の旅が楽しく、そして止め時を失う楽しさを味わわせてくれるのです。

フェイの直接操作も可能(Rスティックで移動)ですが、操作せずとも自動で動き、頻度は多くないものの敵に対して攻撃も行ってくれます。また、暗闇に包まれたダンジョンではフェイ自身の発光がたいまつ代わりとなり、視界の確保という大きな役割も担います。

また、フェイがいることで特別な能力も使用できます。体験版の範囲では、高速で移動できるダッシュと、瞬時に転移する瞬間移動(ワープ)の2種類を確認しました。


2Dアクションは、フィールド上を行き交う場合も多く、人によっては移動時間がもったいないと考える人もいます。その点、本作のダッシュはかなり速く、移動時間の短縮に一役買ってくれます。

どれほど速いかといえば、90度の曲がり角を通る際は、さながらレースゲーム気分。柵などにぶつかるとわずかに立ち往生するため、無理に曲がらず直線移動だけに絞った方がストレスがないかもしれません。

ただし、ぶつかるリスクがあっても使いたくなるほど、本作のダッシュは爽快なので、うまく活用すれば冒険を大いに助けてくれるでしょう。

もうひとつの瞬間移動は、フェイがいる場所へ瞬時に移動する能力。使いこなせば緊急避難にも使えそうですが、探索面でも大いに活躍してくれます。

例えば、フェイは常に空を飛んでいるため、ジャンプでは届かない足場にも単身で辿り着くことが可能です。その後、瞬間移動を使えばエリオットも現地に到着。探索で常に使う能力ではないものの、要所要所で的確に役立つ便利な能力といえます。

また、エリオットが挑むダンジョンの中には、試練(ギミック)をクリアするとアイテムがもらえるものがあります。その中には、矢が無数に飛んでくるギミックもありました。


ここで筆者は、矢の間隔を確かめた後にダッシュを使って挑みましたが、1回目はあえなく失敗し、2回目でなんとかクリア。しかし、公開されている紹介映像を見てみると、矢の届かないエリアまでフェイを動かし、そのつど瞬間移動するといった攻略を披露していました。

瞬間移動を使った方が明らかにスマートな攻略で、ちょっと悔しい思いをしましたが、筆者のがっかりプレイはともかくとして、ギミックに複数の攻略手段で挑める懐の広さも嬉しいところです。

■「フェイ」のおかげでソロプレイが捗り、時間が溶ける!
このようにフェイは、能力的にも頼もしい相手ですが、同等かそれ以上に嬉しいのが“声がけの多さ”です。プレイヤーは主人公のエリオットとなって冒険に挑みますが、その行程の中で、フェイが頻繁に話しかけてくれます。

「この岩、爆弾で壊せそうだよ!」といった、攻略に役立つヒントをくれるなど、台詞ひとつにも彼女の有能さが垣間見えます。また、敵と戦う時には応援を、勝った時には共に喜びを表現してくれるのです。

「エリオットはやっぱりすごいよ!」「やったね、エリオット!」「エリオットならやれるよ!」と、フェイの声がけは多彩で頻繁。また、幼めな印象ながら柔らかな声質なので、耳にも優しく聞き心地も良し。相棒のベタ褒めが、プレイ意欲を大いにかき立ててくれます。

フェイを操作する2人協力プレイも楽しめますが、こうしたゲームを一緒に遊ぶ相手が身近にいるかどうかは人によって分かれます。しかしソロプレイヤーにこそ、画面越しですが常にそばにいるフェイの存在が嬉しく、『冒険家エリオットの千年物語』を遊ぶ手を止めさせない魅力の一役を買っています。


バトルシステム自体はシンプルで、しかし武器同士の併用とため攻撃の組み合わせ、そこに魔石が加わることで、模索と実践の心躍るサイクルを実現している『冒険家エリオットの千年物語』。操作性も良好なので、“キャラを動かすだけで楽しいアクション”が味わえます。

その手応えの良さは、HD-2Dによる優れた描画演出にも支えられています。あくまで主観の意見になりますが、HD-2Dとアクションの相性も良く、個人的にはスーパーファミコンや初代PS時代に遊んでいたアクションRPGのように没入して遊んでしまいました。

この感覚は、人によってはニンテンドーDSやPSPのゲームであったり、PCのインディーゲームのプレイ感を思い出すかもしれません。時代の差こそあれ、それぞれがいつか味わった「夢中で遊んだ2Dアクション」を思い出すゲームだったのでは──と感じたプレイ体験になりました。

非装備状態の武器の持ち替えやフェイの能力の入れ替えなど、UIの面で改善して欲しい部分はあるものの、タイトルにある通り今回は「Debut Demo」。プレイした人に向けたアンケートも実施中なので、ユーザーからのフィードバックを受け、こうした点も洗練されていくことでしょう。

最近忘れがちだった、ひたすら2DアクションRPGを遊んでしまう“あの頃の感覚”を、この『冒険家エリオットの千年物語 Debut Demo』が思い出させてくれました。

強いて最も残念なところを挙げるとすれば、これだけプレイヤーを盛り上げておきながら、製品版は2026年発売という点です。仮に初頭発売だとしても、最低でも4ヶ月待つことに……あまりにも待ち遠し過ぎます!
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