近々の展開では、劇場版だけではなく対戦アクション『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』の発売も外せません。無限城編 第一章に繋がる「遊郭編」「刀鍛冶の里編」「柱稽古編」の物語をゲームで表現し、炭治郎の戦いを追体験できる作品です。
炭治郎に善逸、伊之助をはじめ、柱から鬼まで主要人物たちが結集し、3Dモデルによる滑らかなモーションを繰り出す『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』は、アクションの再現度も高く、戦闘中でも思わず見とれてしまうほどです。
しかし、「鬼滅の刃」の魅力は戦いだけに限りません。重厚な物語はもちろん、緩急をつけるユニークな演出なども重要です。しかし物語はともあれ、時に強めのデフォルメで描かれるビジュアルは、3Dモデルとの相性があまりいいとは言えません。漫画チックな表情などは、その部分だけ改めて作る必要に迫られる可能性もあります。
そうした描写を省くことも可能ですが、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』では原作にあった変顔や漫画的な描写をどのように扱ったのか。その内容を一部をご紹介するフォトレポートをお届けします。
なお本稿では、本編の重要な物語は明かしませんが、該当シーンのあらましなどには触れるため、軽度のネタバレが含まれます。ご注意ください。
■3Dモデルでも豊かな表情変化! 善逸の震えや反論も安定の再現度
大きな表情変化を3Dモデルで破綻なく表現するには、技術はもちろん丁寧な作り込み、そしてセンスも問われます。
まずは一例として、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』の遊郭編冒頭のシーンに注目してみましょう。任務のためとはいえ、音柱の「宇髄天元」が「神崎アオイ」などを誘拐同然に攫う場面では、炭治郎が早速「女の子に何をしてるんだ!!」と怒りを露わとします。
目や口も大きく開いており、3Dモデルながら大きな表情変化は原作さながら。プレイ開始直後から、再現度の高さを見せてくれました。
また、伊之助や善逸も加わり、天元に対して啖呵を切ります。ここでの善逸は、勇気を振り絞りつつも柱を相手に腰を引けているのが表情にもよく現れています。
しかし、善逸も天元にひるんでばかりではありません。天元の任務に同行して説明を受ける下りでは「俺の嫁を探せ」という命令に対し、「とんでもねぇ話だ!!」と、理不尽(と受け取った)な命令に真っ向から立ち向かいます。
あまりにも予想外の反応に天元もガチギレ。潜入捜査を嫁に任せていると説明しますが、善逸はそれも信じず「そういう妄想をしていらっしゃるんでしょ?」とバッサリ。その後の鉄拳制裁もやむなしです。
一連の善逸の表情は、漫画的な描写をしつつ、しかも全て表情が違うという芸の細かさ。原作のテイストが3Dモデルでもしっかり再現されています。
■まさかここまで再現するとは……3Dでもむごい女装姿
遊郭編における“個性派ビジュアル”の代表格といえば、女装した炭治郎、善逸、伊之助でしょう。潜入捜査するため、女性に扮するのは分かりますが、施した化粧があまりにもひどく、作中でも「不細工な子たちだね……」と言われてしまうほどでした。
そのむごさは、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』でもこれ以上ないほど忠実に再現されています。不自然な白い肌に、主張が激しい丸眉と頬。紅も鮮やか過ぎて、絵に描いたような不細工さです。
しかも、この化粧姿はムービー中だけでなく、任意で移動できる3Dモデルで描かれています。この化粧顔で遊郭を自由にねり歩けるのは『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』だけで味わえる体験です。
店に引き取られた時の、炭治郎の「一生懸命働きます」の笑顔も、この化粧のままではザワつきを禁じ得ません。
■正直すぎて挙動不審! 炭治郎の“あの顔”も忠実再現
化粧を施した時はかなりの有様でしたが、炭治郎は店だと化粧を最低限まで落とし、リボンや頬紅程度に留めています。下働きなので、見栄えをよくする(むしろ化粧で悪くなっていたのですが)必要がないのかもしれません。
しかし、この炭治郎による更なる変顔も待ち受けています。花魁として潜り込んでいた天元の嫁のひとり「須磨」の行方を調査している最中、なぜ調べているのかと問われる場面がありました。
もちろんこれは、鬼殺隊としての活動ですが、潜んでいる鬼に気づかれる恐れがあるため、真意を語ることはできません。しかし、炭治郎は正直者なので、平気な顔で嘘をつくことができず──
目は極限まで上をにらみ、口はかたくなに閉じ、どうしても挙動不審そのもの。全く普通の顔ではありませんが、そんな変顔すらも本作では見事に描写しています。
このビジュアルを再現したクリエイターにも感嘆しますが、そんな炭治郎を見ても動じず、優しく受け止めてくれた花魁も流石です。
■「アタイ絶対、吉原一の花魁になる!!」の善逸、ノリノリでミニゲーム
化粧顔の伊之助もなかなかの不美人でしたが、これは化粧の悪さに加え、本人もベロを出したままなど、態度にも問題がありました。
身売りされた店ではほぼ素顔を晒し、元々の容姿の良さが手伝って、器量よしとして噂されるほどに。一方善逸は、白粉こそ落としていますが、濃いめの紅は残ったまま。そのため容姿については、身売りされた後も評判は芳しくありません。
天元からの扱いも悪かったため、いたく傷ついた善逸は、「見返してやる、あの男……!」「アタイ絶対、吉原一の花魁になる!!」と意気込み。この場面も原作で印象深いシーンでしたが、ゲームではムービー中に再現されました。
……と思いきや、なんと三味線を弾くミニゲームが始まり、リズムに乗るほど「見返してやる!」なテンションの善逸に変化。彼の“吉原成り上がり物語”は、ミニゲームという形にまで昇華しました。その熱い想いに、頭が下がるばかりです。
ただし、ミニゲーム終了後は我に返り、任務に戻っています。成り上がり物語、即終了……!
■ゲームでも“零れ出そう”な甘露寺蜜璃
ここまでは、炭治郎、善逸、伊之助の大胆ビジュアルに注目しましたが、「刀鍛冶の里編」では他のキャラクターにも目を向けてみましょう。
炭治郎たちのようなデフォルメとは違いますが、忘れられないのが「甘露寺蜜璃」の登場シーン。炭治郎を見かけた蜜璃が、慌てた様子で駆けつけてきます。
この時の蜜璃は、湯上りのため浴衣を着用。そして彼女は、恵まれた肉体の持ち主で、フィジカルが非常に高く、そして体型も非常に豊かです。つまり……胸がもう大変なことに。
これには炭治郎も焦り、「あっ危ない! 気をつけてください!! 乳房が零れ出そうです!!」と、直球な心配&助言。ここの炭治郎もなかなか味わい深い表情ですが、関心事としてはやはり“零れ出そう”な部分が気になります。
幸い、大事に至る前に蜜璃が炭治郎の目の前に来たため、零れ出る危険は去りました。しかし、蜜璃の感情は暴走したままで、挨拶を無視された怒りが冷めません。
そんな彼女に対して炭治郎は、突然夕食の話を切り出します。「松茸ご飯だそうです」と。
この発言に、蜜璃は「えーーーっ!!! ほんとォ!?」と、喜色満面。松茸ご飯の喜びを表現しながら、夕食の場へと向かいました。
炭治郎はともかく、蜜璃の描写はデフォルメなどされておらず、豊かな表情変化を等身大のまま描いています。もちろんこれも、原作に沿った忠実な描写。こだわりの表現に感嘆しつつ、ゲームでも可愛い蜜璃に癒されます。
■玄弥の戸惑いと困惑も、3Dモデルでしっかり描写
「刀鍛冶の里編」では、「時透無一郎」の成長や、不死川玄弥の活躍も印象に残ります。本記事はユニークな表現に絞っているため、格好良い姿は別の機会で披露するとして、ここでは2人の忘れられないビジュアルをお届けします。
戦いの中で一線を越え、無一郎は精神的にも肉体的にも大きな成長を見せました。
……その直後、口から大量の泡を吐き出すまでは。そんな様子も本作では余すところなく描写しており、普段は落ち着いている無一郎の貴重な一瞬をゲームでも堪能できます。
無一郎の泡吐きシーンは、原作通りデフォルメされた表現でしたが、玄弥については等身大な描写に注目したいところ。鬼との戦いの最中、苦戦しつつも活躍する炭治郎の姿を目の当たりにした玄弥は、胸倉をつかんで「上弦を倒すのは…俺だ!!」と意気込みます。
「柱になるのは俺だ!!」と叫ぶ玄弥の心には、同期である炭治郎に対するライバル心や、兄の後を追いかけたい心情など、様々な感情が交錯しているはず。しかし、この時は玄弥の様々な背景はまだ明確になっておらず、言われる側からすればただただ圧を感じるだけです。
しかし、炭治郎は玄弥の怒りに反発せず、また臆する様子もなく「なるほど!! そうかわかった!!」と答えます。炭治郎の性格を考えるに、上弦を倒して柱になるという玄弥の発言をそのまま受け取ったのでしょう。
さらに、自分と禰豆子が全力で援護するとも告げ、「三人で頑張ろう!!」と玄弥を励まします。そんな炭治郎の想定外すぎる反応に対して、玄弥は言葉もなく唖然とするばかり。
そしてトドメになったのが、炭治郎の曇りなき眼。さきほどの発言が急場しのぎの嘘や誤魔化しではなく、本心以外の何者でもないことが一目瞭然です。
あまりに真っすぐすぎる炭治郎の発言と視線を前に、あれほど憤っていた玄弥は戸惑うことしかできません。デフォルメのような極端な描写ではないのに、玄弥の困惑ぶりがゲームでも手に取るように分かります。
■「柱稽古編」の表情変化も多種多彩
3Dモデルでも漫画的な表現をしっかりとこなし、等身大でも豊かな表情変化を描写する『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』。今回は「遊郭編」「刀鍛冶の里編」の印象的なシーンを抜粋してお届けしましたが、もちろん「柱稽古編」にも記憶に残るビジュアルが多数あります。
太陽の下を歩けるようになった禰豆子に対し、限界を超えて喜びを表現する善逸。結婚したら毎日寿司とうなぎを食べさせてあげる宣誓も、原作通りです。
また、痣の発現について訊ねられた蜜璃は、「ぐあああ~ってきました!」「グッてしてぐあーって」「耳もキーンてして」「メキメキメキイって!!」と、原作でもお馴染みの甘露寺節を炸裂。直後の「穴があったら入りたいです」や、「伊黒小芭内」の頭を抱えるシーンもしっかりあります。
そんな小芭内も、隊員たちを磔にし、訓練に用いるという驚きの手段を講じました。あまりにもな光景だったため、「この…括られている人たちは何か罪を犯しましたか?」と炭治郎が訊ねてしまうほどです。
この質問に対すして小芭内は、「弱い罪、覚えない罪、手間を取らせる罪、イラつかせる罪という所だ」と、怒りを隠すこともなく明示。さすがの炭治郎も(もうえらいこっちゃ…)と胸中でつぶやくほかありません。
3Dモデルで表情変化を豊かにするほど、描画や調整の作業は大きく増していくことでしょう。その中で、原作の持ち味を極力活かせるように取り組んだ姿勢が、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』から窺えます。興味が向いた暁には、プレイして再現度の高さを直接お確かめください。
※禰豆子の「禰」は、「ネ」+「爾」が正しい表記となります。