8月19日に行われた配信番組「カービィのエアライダー Direct 2025.8.19」にて、ニンテンドースイッチ2ソフト『カービィのエアライダー』の新情報が発表されました。

この番組にはディレクターの桜井政博氏が登場し、『カービィのエアライダー』の詳細から開発の経緯まで、興味深い話がいくつも飛び出しています。


■「こりゃあ完全に『マリオカート』でよいでしょう!」と桜井氏が自ら発言!?
『カービィのエアライダー』の前作にあたる『カービィのエアライド』がリリースされたのは、2003年のこと。約22年ぶりの新作となります。

これだけの時間が経った今、なぜ『カービィのエアライド』の新作を作ることになったのか。この点について桜井氏は、任天堂のソフト開発責任者の高橋伸他氏と、当時ハル研究所の社長を務めていた三津原敏氏から「ぜひとも」と強くお願いされたため、と説明しました。

しかし、『カービィのエアライド』の特徴である「カービィを使ったレースゲーム」「キャラもの・レースゲーム・走る・たたかう」といった要素について、「『マリオカート』でよいですね」「こりゃあ完全に『マリオカート』でよいでしょう!」といった驚きのコメントを、なんと桜井氏が自ら口にします。

この発言は番組内だけのものではなく、開発の話を受けた時、実際にそう述べたとのこと。『カービィのエアライド』を生み出した桜井氏だからこそ、疑問や不安に思う点があったのでしょう。

こうした経緯がありながらも、実際には開発に着手し、発売日も2025年11月20日に決まった『カービィのエアライダー』。つまり桜井氏は、「こりゃあ完全に『マリオカート』でよいでしょう!」という自身の言葉に対し、自ら答えを出した形となります。

「『マリオカート』でよい」ではない、「『カービィのエアライダー』だからこそ」の魅力とは、どういったものなのか。桜井氏が出した答えに迫るであろう、本作の特徴的な要素をチェックしましょう。

■格段に少ない入力操作
『マリオカート』シリーズは、作品にもよりますが、それなりのボタン入力やスティック操作を行って操作します。
一般的なレースゲームと比べて、使用するボタンやスティックが特段多いわけではありませんが、シンプルとまではいきません。

一方、『カービィのエアライダー』は、使用するボタンとスティックがかなり少なく、コンパクトにまとまっています。ジャンプ台に乗って滑空した後、スティックの前後で滑空状態を調整しますが、通常の走行時におけるスティック操作は左右に動かすだけ。前に倒す必要はありません。

また、特に少ないのはボタン操作。走行に直接関係するのは、「プッシュ」するボタンのみ。「プッシュ」はブレーキの役目と同時に、チャージする効果を持っています。

チャージの効果は直線中はあまり意味がなく、カーブを曲がる際にスティックを真横に倒しつつボタンを押すと、ドリフトが発動しながらチャージも開始。この溜め続けたチャージを、カーブが終わった後に解放することで、マシンが一気に加速します。

カーブ中のドリフトとそのあとの加速を繰り返すのが、『カービィのエアライダー』における基本となります。この操作を、スティックとボタンひとつで行えるシンプルさが、本作が持つ魅力のひとつです。

また『カービィのエアライダー』では、加速や攻撃などの効果を得られる「スペシャル」と呼ばれるシステムがあり、こちらも独立したボタンを使いますが、こちらは専用のゲージが溜まった時に発動可能となるため、「プッシュ」ほど頻繁には使わないと思われます。


この「スペシャル」を加えたとしても、「プッシュ」と「スティック操作」の3つだけで、レースゲームを楽しめる『カービィのエアライダー』。シンプルゆえの間口の広さは、プレイヤーの人口拡大にも繋がる強みです。

■プレイヤーの積極性で、マシンがスピードアップ!
操作するボタンは少なくてシンプルですが、だからといって作りが浅いのかと言えば、それは全く異なります。

本作はレースゲームなので、いかに速く走るのかが重要です。カーブでの減速をできるだけ抑え、直線を可能なかぎり最高速で走る。そのためのコース取りが重要なのは、他のレースゲームと同様ですが、速度を上げる手段はこれだけではありません。

ドリフトからの加速はもちろんのこと、滑空や星の獲得、コピー能力など、プレイヤーの積極的な行動による、能動的なスピードアップがいくつも備わっています。

まず、ジャンプ台に乗って空を滑空できますが、着地の際にマシンと地面が平行になると、「ナイス着地」でスピードアップ。そのため、ここではスティックの前後操作も重要です。

また、各マシンは「スタースリップ」と呼ばれる星しぶきを、後ろにまきながら走っています。この「スタースリップ」を獲得すると、自分のマシンの速度が上がります。後続が有利なシステムなので、ライバルに追いつきやすい反面、自分が先んじている時は気が抜けません。


「スペシャル」やコピー能力などを使ってライバルを攻撃すると、そのヒット時に星くずが出現し、それを取ることでもスピードアップします。また、コースを徘徊している敵を倒すと砕けた星が出ますが、こちらもマシンを加速させてくれる要素です。

総じて言えば、プレイヤーの積極的な行動によって、意識的にスピードアップさせて競うのが、『カービィのエアライダー』となります。

■ライダー全員に「コピー能力」!?
敵の能力をコピーして使う「コピー能力」は、『カービィ』シリーズお馴染みの要素です。ただし、一部の例外を除き、コピー能力を使えるのは基本的にカービィだけ。

本作にはカービィ以外のライダーも多数登場しますが、コピー能力を持つのがカービィだけだと、桜井氏曰く「楽しさに差が出すぎる」という問題があります。

そこで桜井氏が出した結論は、「すべてのライダーにコピー帽子をつける」。つまり、誰をライダーに選んでも、コピー能力が使えるようになりました、

“全員が使えるようになった”と言葉で言うのは単純ですが、ひとつの能力につき、全員分のモーションなどを用意しなければならず、それが能力の数分だけかかるということ。作業工数が格段に跳ね上がるのは、誰の目にも明らかです。

それを誰よりも承知している桜井氏が、やると決めた『カービィのエアライダー』。プレイヤーの遊びの幅を広げるために邁進する、まさに英断と言うべき判断でしょう。

■単なるレースとは一味違う「シティトライアル」
『カービィのエアライダー』には、ひとつのレースだけでは終わらない、複合的な楽しさを組み合わせた「シティトライアル」というモードがあります。


「シティトライアル」は、箱庭型のマップ「スカイア」を舞台に、マシンを乗りかえながらパワーアップアイテムを獲得し、最後に待ち受ける「スタジアム」で勝者を決める規模の遊びです。

インターネット通信なら、最大16人まで参加できます。ローカル通信の場合は、プレイヤーが最大8人、残りをコンピューターで埋めて最大16キャラによるバトルが可能です。

開始直後は「ライトスター」というマシンに乗っていますが、最終決戦の「スタジアム」で勝つには心もとないので、マシンの乗りかえが重要。マップ上に置いてある「空車」のマシンを手に入れたり、条件を満たせばライバルのマシンを奪うこともできます。

「シティトライアル」の最中には、街中のコースでレースを行う「ショートレース」や、集まった人同士がバトルする「デスマッチ」など、様々なイベントが発生。その結果に応じてパワーアップアイテムを入手できます。

制限時間が過ぎると、全員が「スタジアム」に集結。ここで、無数の敵を倒す「バトルロイヤル」や、飛距離を競う「エアグライダー」、ひたすらまっすぐ走る「ゼロヨンアタック」、ぶつかった数字板のポイントで争う「ポイントストライク」、降下しつつ得点をゲットしていく「スカイフォール」など、多彩な勝負が参加者たちを待っています。

複合的な戦いで競い合う「シティトライアル」ひとつをとっても、「『マリオカート』でよいでしょう!」とはなりません。また、コピー能力で広がる戦略、能動的に速度を上げる要素の数々、なのに操作がシンプルで遊びやすいなど、いずれも『カービィのエアライダー』が持つ、誇るべき特色です。

「こりゃあ完全に『マリオカート』でよいでしょう!」に対して、桜井氏自身が答えを出した『カービィのエアライダー』。
実際に遊んでみれば、その答えはより明確に分かるはず。発売日の11月20日が、今から待ち遠しいばかりです。
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