『パワフルプロ野球(パワプロ)』シリーズの世界を初めてドラマ化した「パワプロドラマ2025―平凡な新社会人の俺がサクセスした話―」が9月26日(金)の深夜0時24分~1時19分に放送されます。

本作は、『パワプロ』ファンを公言するお笑い芸人の「ニッポンの社長」辻皓平さんが初めて脚本に挑んだドラマ作品。
元高校球児の新社会人「西野純平」が、謎のゲーム「パワフル社会人」によって周囲の人間のステータスが見えるようになり、ゲームと日常がリンクする独特な世界観で物語が語られます。

主人公の「西野純平」は鈴木福さん、ライバル役の「猪狩守」は松本怜生さんが担当。『パワプロ』らしい少し癖がありつつもユニークさ全開のキャラクターをどのように演じるのか、気になるところです。

今回、編集部ではドラマ脚本を手がけた「辻皓平」さんの合同取材と個別インタビューに参加。ドラマに込めた『パワプロ』の魅力やオファーを受けたときの率直な感想など、「パワプロドラマ 2025」について根掘り葉掘り伺ってきたのでその様子をお届けします。

◆『パワプロ』のサクセスはめっちゃ“コント”やなって
ーーまずはじめに、オファーのお話を聞いたときの率直な感想を教えてください。

辻皓平さん(以下、辻):いつも通りにマネージャーからお仕事の内容を聞いたときにドラマの脚本の話が来ていると聞いて、話していくうちに『パワプロ』のドラマということを知りました。それで、もともとドラマの脚本を書きたかった気持ちがあったので、二つ返事でOKしましたね。そのときはあまり実感がなかったです。

ーー『パワプロ』シリーズと日常がリンクするというのが作品のテーマとなっていますが、このテーマはどのように発案されたのでしょうか。

辻:打ち合わせでいくつか案を出し合って、1日目で大体の方向性が決まって…。そこに『パワプロ』好きな人たちが集まっていたので、『パワプロ』のあるあるネタをみんなで喋って今回のテーマがきまりました。


ーー脚本を書くときに行き詰まったところなどありましたか?

辻:『パワプロ』のサクセスモードも参考にしたんですけど、意外とスムーズにいきましたね。担当の人と何回かやり取りをしつつ、ちょいちょい移動中に書いて、合計で言うと3、4時間かかったと思います。

ーー意外と短時間で完成したんですね。それでは自分の想像通りの脚本になったんでしょうか。それとも全く違う展開のものになりましたか?

辻:書いていくうちに『パワプロ』を一番プレイしていたときの記憶を思い出して、「このシーンを入れよう」とかもあったりしましたね。

ーー今回の執筆をするにあたって辻さんは『パワプロ』シリーズを改めてプレイしたんでしょうか。

辻:『パワプロ』のいろんなシーンをプレイしましたね。今の新しいサクセスモードもやっているんですけど、昔のサクセスモードも参考にしたくて、プレイした記憶を思い出しながら制作しました。

あとは、『パワプロ』好きな作家さんと『パワプロ』の思い出を話し合ったりして喋りながら手伝ってもらいました。

ーー思い出話しをしていくうちに、話題になったキャラクターはいましたか?

辻:やっぱり姫野カレンですかね。少しストーカー気質のある女性なんですけど、子供の時にプレイしていたときはなんとも思わなかったんですが大人になった今見ると「この人ちょっとやりすぎているな…」と思いました。

ダイジョーブ博士も結構なことしていますよね。
誘拐とか。

ーー際どい展開とかもありますよね。

辻:そうなんですよ。ドラマでも際どい展開を「ゲームにあるから大丈夫っしょ」と採用したシーンもありました。

ーー自身が思う『パワプロ』の魅力について教えてください。

辻:ほんまテンポがいいですね!主人公と矢部くんの両方がツッコミしたりして、今回改めてプレイしてコメディ要素が強い作品だなとおもいました。だから、めちゃくちゃ脚本が書きやすかったです。ドラマではこのテンポ感を大事にしてます。

ーー自身のコント作りの経験が生きた部分はありましたか?

辻:コメディ要素が強い作品なので、ボケツッコミの流れを入れるときに「“フリ”を入れる」みたいなのはお笑い芸人でなかったら、すんなりできなかったかもしれないですね。

ーー実際にコントと『パワプロ』で似ている部分などは感じましたか?

『パワプロ』が思ったよりぶっとんでいるコントになっていると思いましたね。先ほどあげた姫野カレンとか矢部くんとかも癖が強いですし、そう思ったらサクセスってめっちゃコントやなって。

ーーバカリズムさんなど、最近お笑い芸人の方がドラマの脚本を手がけることが多いと思いますが、普段から脚本を書く芸人さんを意識されたりしますか?

辻:意識してしまうのが嫌なんで見ないように避けています(笑)。
『パワプロ』ドラマが公式発表されたときに周りからもすごい評判で「ドラマ化するんですね!ニュース見ましたよ!」と言われることも多かったんですけどね。

ショックを受けたり、考えすぎたりする方が怖いので見ないようにしていますけど、結局のところめっちゃ意識してしまっているかもしれませんね。今は書き終わったのでここから見ようかなと思っています。

ーー今後、ドラマの脚本のオファーがあったらまた挑戦したい気持ちはありますか?

辻:もちろんやりたいですね。今回は僕の好きな『パワプロ』を題材にめっちゃ書きやすい形で脚本を任せてもらったので、これで評価されたら0からの状態から書いてみたいです。

ーーコントの台本とドラマの脚本の違いはありますか?

辻:僕はコントの台本を書かないんです。全体的な流れみたいな抽象的なことしかあんまり書かない。あとセリフも多くないので、今回のようにガッツリ脚本を書いたのは初めてやったんです。

6人のユニットコントのネタとか、この前みたいに東京03さんのネタを書くときに一応演技指導とかもあったんですけど、今回は演出にまったく関わっていないので、新鮮でめっちゃ楽しみですね。

ーー演出に関しての要望などは提案したんですか?

辻:一応、ト書きを多めに書いたんですけど、でも僕はドラマのことはわかんないんで、ある程度プロに任せました。

ーー演出はおまかせしたんですね。

辻:そうですね。
僕がこだわったことがマイナスになるかもしれないなっていう気持ちがあって。

それでもこだわった部分はありました。「これはちょっと嫌ですね」みたいなのは。

ーー辻さん的に“やりたくない”というのはどういう意図があったんでしょうか?

辻:展開が分かりやすくなりすぎるのが嫌でしたね。難しいですけど「さりげなくやりたいとこはさりげなく」みたいな。そこで他の案を考えて提案したりしていましたね。

ーーそれで納得のいく脚本が完成したんですね。

辻:最終的にはできました。ちょっとめんどくさい奴になっていたかもしれないですけど(笑)。

◆はじめての「栄冠ナイン」は革命的で、廃人のようにプレイした
ここからは、インサイド単独での個別インタビューの内容をお届けします。

ーーお時間いただきありがとうございます。改めて、今回の『パワプロ』ドラマ化の脚本執筆を担うことになった率直な感想をお聞かせください。


辻:ほんまにふわっとした感じで、マネージャーからLINEで「パワプロを題材にしたドラマを制作するのですが、どうですか」という提案が来ました。正直なところ実感がなく、「やります」と返信したと思います。『パワプロ』が好きなので、そこまで不安もなく「ぜひやりたいです」といった感じでした。

実感がないまま脚本を書き終え、そのまま脚本が決定しました。そして、情報がリリースされた時の反響を見て、「ああ、やばいことをしたんだ、俺は」と。『パワプロ』ファンの方々がすごく盛り上がっているのを見て、「そうだよな、『パワプロ』だもんな」とそこで初めて実感しましたね。すごい仕事を頂いたなと。

ーーご自身で1,000時間以上プレイされているとのことですが、パワプロの魅力や、特に好きなところがあればお聞きしたいです。

辻:1,000時間というのは少し間違いで、「栄冠ナイン」モードだけで1,000時間なんです。なので「サクセス」などを含めると、小学校の頃からなのでペナントレースなどを含めると約1万時間以上はプレイしているとおもいますね。

ーー1万時間以上!?それでは『パワプロ』シリーズは毎シリーズ購入されているのですか?

辻:最近は毎シリーズ買っていますが、昔はお金的にも毎回は買えなかったので、次の年の新人選手などを自分でサクセスモードで作って遊んでいました。

ーー今の『パワプロ』シリーズだとアップデートなどもあって昔よりも飽きずに遊べますよね。
パワプロの魅力についてはいかがでしょう。

辻:やはりサクセスモードの登場人物など、キャラクターが濃いのに、すごくしっかりしていて“深み”があるところです。例えば姫野カレンは、ストーカー気質でこちらのテンションを下げてくることもあるのですが、最後にすごく良いことをしてくれたりする。そういうところが秀逸で、人間臭い感じもあります。

矢部くんのようなコミカルなキャラクターもいて、作り込みが本当にすごいなと思います。ゲーム内モードのひとつとは思えないキャラクターの強さがありますね。

ーーちなみに、お気に入りのキャラクターは誰でしょうか?

辻:お気に入りは猪狩進(弟)ですね。すごく良いやつなんです。兄(猪狩守)は少し口が悪くてエリートですが、進は好きでした。

ーー特に記憶に残っている、一番良かったと思う『パワプロ』のシリーズはありますか?

辻:それで言うと、大学生ぐらいの時にプレイした、ナンバリングは忘れましたが、「栄冠ナイン」モードが初めて搭載されたパワプロですね。おそらく17、8年前(※『パワプロ14』は2007年発売)だと思いますが、革命的で衝撃でした。「こんなに面白いものを出してくれたのか」と。本当に廃人になるくらいプレイしましたね。「栄冠ナイン」は以前3年おきくらいにリリースされていましたが、最近は毎年出ているので、そのたびに睡眠時間を削ってプレイしています。

ーー最近は移動中にもプレイできたりしますよね。

辻:そうですね、スイッチでもできますし。でも、それで遊び始めるとやばいと思って、家だけでプレイするようにしています。

◆猪狩、矢部くん、カレンなど原作キャラクターもしっかり再現!芸人にも好評だけど相方「ケツ」さんは無反応
ーー今回、主演が鈴木福さんですが、ドラマに『パワプロ』のキャラクターを登場させるにあたって、こだわった点や意識したポイントはありますか?

辻:パワプロのキャラクターについては、やはり原作ファンをしっかりと満足させることを意識しました。例えば矢部くんなら、彼がしそうなことは描くけれど、しなさそうなことはやらない、という点です。矢部くんは面白いキャラクターで、ツッコミがうまかったり、天然で変なところもあったりします。そして、主人公が最初に仲良くなるキャラクターなので、そのポジショニングは絶対にしっかりさせようと思いました。彼が言いそうなセリフや取りそうな行動、また猪狩守が言いそうなことややりそうな言動も同様です。

最初は「なんだ、あいつは」となるようなキャラクターですが、パワプロファンから見て「猪狩守ってこうだよな」と思ってもらえるように意識しました。それと同時に、パワプロ を知らない方にも愛されるようなキャラクターにしようと考えました。

ーー物語の主人公が、野球での失敗がトラウマになっている新社会人という設定ですが、このようなキャラクター設定にした意図を教えていただけますか?

辻:やはりサクセスモードの主人公らしい主人公にしたかったんです。これまで特に良いこともなく平凡に過ごしてきた人物が、「さあ、ここからだ」と奮起するような。

ただ、あまりに平凡すぎても物語が動かないので、後から挫折の経験を加えました。それによって、途中の野球対決シーンなどがより見やすくなったと思います。

過去の経験から少し負け癖がついている、というのはすごく平凡なことでもありますよね。多くの人が「どうせ自分は平凡だ」と思ってしまうのは、過去に何かしらの挫折があったからだと思うんです。

だから、視聴者の皆さんが感情移入しやすいように、新社会人で一番多そうなタイプをイメージしました。超エリート企業に入社したわけではない人たちが抱えていそうな悩み、という感じです。

僕自身も20歳くらいの頃はそうだったので、その年代が抱える一番多い悩みではないかと。「自分は普通、あるいは普通以下だ」「俺なんて、すごい人間じゃないし」と思っているようなキャラクターです。

ーー辻さんご自身も野球をされていたと思いますが、そのときのトラウマや経験が元になっているエピソードはありますか?

辻:僕もチャンスの場面では「回ってくるな」と思ってしまうくらいの小心者だったので、「やってやるぞ」というタイプではありませんでした。

だから、主人公と同じ側の人間ですね。今もそうですが「過去に別に良いことなんてなかったし」と考えてしまうところがあります。ツーアウト満塁で三振してしまう、僕もそっちのタイプでしたね。そういった自分の体験も主人公に反映されています。

ーー制作時に「パワプロあるある」で盛り上がったというお話がありましたが、具体的な内容を教えていただけますか?

辻:「このキャラクターはこうだよね」とか、「まず矢部くんが登場して、猪狩守が嫌なやつとして出てきますよね」といった話をしました。そういったあるあるを出しあっていくうちに、大まかな方向性はその日のうちに決まりました。

「カレンさんやダイジョーブ博士も登場させたいね」とか、「ダイジョーブ博士がカレンさんをかばってぶつかってくるよな」とか。他にも「カレンさんはお金持ちだから勝手にご飯を奢ってくれるよな」といった細かいネタをみんなで出しあって、大体の構成が見えてきました。

ーー少し話は変わりますが、相方のケツさんの反応はいかがでしたか?

辻:いえ、特になかったです。彼はそういうことで声をかけてくるような人間ではないので。知っているくせに(笑)。でも、他の後輩や先輩には『パワプロ』好きな人が多くて、みんな声をかけてくれました。情報が解禁されてからは「すごいですね」「楽しみです」とか。ココリコの田中さんも「見るよ」と言ってくださったり、ケツ以外の方からはたくさん反応がありました。

ーー最後にドラマを楽しみにしているファンや視聴者に向けて、脚本家として見てほしいポイントを教えてください。

辻:福くんが演じてくれる主人公が本当に普通の、いわゆる量産型というか、多くの新社会人が抱えるであろう悩みを持った人物なので、感情移入しやすいと思います。

なので猪狩守のような強気なキャラクターに最初は少しイラっとしたり、「あいつは羨ましい」と嫉妬したりしながら、物語に入り込んで主人公になった気持ちで楽しんで見てもらえればと思います。

ーーありがとうございました!

『パワプロドラマ2025 ー平凡な新社会人の俺がサクセスした話ー』は、9月26日深夜0時24分より朝日放送テレビ(関西ローカル)にて放送予定。放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信も実施されます。詳しくは公式サイトをご確認ください。
編集部おすすめ