同じモンスターを狩るゲームであっても、視点が違えばずいぶん変わるものです。

たとえるならば、「モンスターハンター」シリーズが漫画で言う劇画の真剣さや、狩りを巡るドキュメンタリーみたいなものだとすると、「モンスターハンターストーリーズ」シリーズはジュブナイルの物語や、児童向けの冒険漫画みたいな違いがありました。
ジャンル分けをしてみても、前者がアクションゲームなのに対して、後者は物語を体験させやすいターン性RPGなのもある。

モンスターの扱いにしたって、「モンスターハンターストーリーズ」シリーズは単なる狩りの対象だったり巨大な敵だったりするものではありません。主人公たちと共に生きる仲間でもあるのです。そう、このシリーズは「モンスターハンター」シリーズ本編と比べれば、マイルドな冒険譚を体験するものだとばかり思っていたのです。

そんなシリーズの最新作が『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』(以下、モンハンストーリーズ3)なのですが、「東京ゲームショウ2025」で試遊してみてイメージを覆されました。

ゲームシステムは過去を踏襲しながらも、なにか世界観や全体的な体験が違う。ゲームのシリーズ3作目には決定的な変化が起こり得るとしばしばいわれるように、『モンハンストーリーズ3』にも劇的な変化がある。その一端がこのレポートで少しでも伝わればいいなと思います。

◆主人公がこれからの狩りを覚えようとする少年少女から、最初から成長した “隊長”に
劇的な変化と言えば、そもそも主人公です。これまでのシリーズは少年少女がだんたんとハンターとして成長していくものでした。それゆえに、「モンハンストーリーズ」シリーズはジュブナイルのRPGでもあると思っていたのですが、『モンハンストーリーズ3』は違う。なんと主人公はレンジャー隊の隊長なのです。


最初からある程度は成熟した手練れが主人公という違い。それはすなわち物語の視点もこれまでと全く違うことを意味します。

ストーリーは前途ある少年たちが華やかな道を進むようなものじゃありません。暗く思い匂いが立ち込めています。環境が荒廃し、滅びの道をたどりつつあるふたつの国家・アズラルとビュリオン。国家存亡の危機の中で一つのタマゴが発掘されます。それは絶滅したモンスターのはずだった、リオレウスのタマゴでした。

そこから双子のリオレウスが誕生するのですが、200年前の内戦で不吉と言われた双子の竜の誕生と同じだったのです。環境が悪化していく中、アズラルとビュリオンが戦争を行う直前まで追い込まれていく。アズラルの王子(※主人個の設定で女性選択の場合は姫)である主人公は暗い時代で何とか活路を見出そうとしてるのです。

この背景だけを観るだけでも、「モンハンストーリーズ」シリーズがジュブナイルを捨てて違う道へ行ったのが伝わるでしょう。

◆まるでハードな劇場用アニメのようなビジュアル、より世界に入り込むモンスターのアクション
今回の試遊でも過去のシリーズと気配がまったく違う。
「モンハンストーリーズ」シリーズでは序盤に毎回、主人公である少年少女のライダーが先輩ライダーに導かれ、ひと通り基礎を学んでいく立場が体験できたのですが、今回は逆。主人公が、これからのライダーとなる少女ティオを導いていく物語が展開するのです。

まず目を引くのはビジュアル。これまでもセルルックのアニメ調グラフィックがシリーズの特徴ではありましたが、今回はそのクオリティが再考されている。まるでTVアニメから劇場用アニメになるかのような緊張感の違いさえ感じさせるのです。

僕は先のストーリーを踏まえたうえで今回のグラフィックを観ていると、ふとスタジオジブリの「もののけ姫」を思い出してしまいました。世界観こそ違うのですが、陰鬱な抗争や破滅的な状況が裏にあるうえで青年たちが生きねばならない物語ゆえに想起したのかもしれません。

主人公たちは手練れのレンジャー隊らしく、最初から数多くのモンスターを使役しています。今回のバトルはシリーズの伝統的な三すくみの戦闘をベースとしながら、よりモンスターができるアクションも増えたのが興味深いところでしょう。これまでのシリーズにあった、モンスターにライドしての協力攻撃から、絆技の豪快さもしっかり踏まえております。

特に戦闘で注目したのは「シンクロラッシュ」ですね。これはモンスターの特定部位を破壊することなどでダウンさせることで、パーティ全体が一斉に攻撃できるラッシュ技です。
これまでもターン性RPGで戦闘のリズムの良さを追求していたシリーズですが、シンクロラッシュが加わることでより戦いにうねりをもたらしているのです。

◆モンスターにライドしてできる行動が、より明るい暗黒世界へ没入させる。
そして「モンハンストーリーズ3」を試遊してみてもっとも面白いと思ったのは、ライドするモンスターごとに違うアクションを取ることでき、探索の面白さが増していることでした。

高所に登れるモンスターもいれば、強力な力で岩石を破壊するモンスターもいる。高く飛んでムササビみたいに滑空するモンスターがいる。彼らの力を使いながら先へ進むことは、同時により世界観にも入り込んでいけるものとも感じました。モンスターと大きく関われるアクションを増やすことは、この陰鬱な物語にも大きく関わっているのです。

先へ進むと “石化”と呼ばれる、環境もモンスターも一部が白い石のように色を失くし硬化し始めている状況を目の当たりにするのです。主人公たちはどうやら環境が壊れていく中、モンスターと共にこの時代を生き抜かねばならない。柔らかい絵に対しておぞましい事態が進行している緊張感が全体を覆っているのです。

『モンハンストーリーズ3』はこのように過去のシリーズと打って変わって、成熟した青年が混迷する時代を戦う物語へ大きく転換しています。ジュブナイルの時代は終わりました。
暗黒時代を生きる物語が始まります。試遊した感触としては、実のところ今年必見のRRGのひとつにさえ仕上がっている何かがあるように思いました。

思えば僕は子供のころからカプコンのRPGをいくつかプレイしてきましたが、他社のRPGとは違い、時に異様な厳しさや残酷さを持つ展開があるものを見てきた記憶があります。たとえば「ブレスオブファイア」シリーズなどがそうでした。

そんな歴史に重なるように、なにか本作はジュブナイルをやめたことで、怖いカプコンのRPGを現代に炸裂させる導火線さえ見える気すらしていました。いや、本編を体験するまで分からないところはあるんですが。

『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』は2026年3月13日にSteam / ニンテンドースイッチ2 / PS5 / Xbox Series X|Sにて発売を予定。もはや過去作とまったく違う。シリーズにこれまで触れてこなかったプレイヤーすらも引き込める可能性がある、とまで言ってしまいましょう。ここは。

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