そんななか、9月25日から幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2025」にて、『ワイルズ』のプロデューサーを務める辻本良三氏、ディレクターの徳田優也氏、『FF14』でプロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏へのインタビューを実施。
また、インサイドではTGSの「オメガ・プラネテス」戦の試遊レポートも掲載していますので、こちらもあわせてご確認ください!
◆『ワイルズ』開発陣&吉田直樹氏にインタビュー!コラボの経緯や“なぜ、オメガなのか”を語る
ーー本日はよろしくお願いいたします。まず、「オメガ・プラネテス」のクエストは常設のクエストになるのでしょうか。
徳田 優也氏(以下、徳田):今回の試遊で出しているオメガ・プラネテスのクエストに関しては常設で、エクストラミッションのクエストをクリアすると、フリークエストの方に並ぶようなかたちになります。
ーー『モンハンワールド』に続いて2回目のコラボとなりますが、改めてコラボのきっかけを教えてください。
辻本 良三氏(以下、辻本):ご存知の方も多いかもしれませんが、僕と吉田さんは付き合いでいうと15年以上くらいの、とても仲良しです。これまでも一緒にモンハンをしたり、一緒に何かできたらという話をしたりしていました。「一緒にゲームを作りたい!」と思える、すごく魅力的なディレクターです。
吉田さんが『FF14』を担当することになったとき、私達も『ワールド』を作ることになり、絶好のタイミングだと思ったので以前のコラボレーションが実現しました。カプコンの開発スタッフにも『FF14』ファンは多く、面白いアイデアをたくさん出してくれました。
今回のコラボに関しても、以前から「また機会があれば」という話は出ていましたが、お互いのタイミングが重要だと考えていました。去年の夏のGamescomで開発スタッフと吉田さんが会う機会があり、その後のTGSで詳細な打ち合わせをして、コラボの話が始まりました。
ーー『ワイルズ』には多くのモンスターや生物が登場しますが、今回の『FF14』コラボではなぜ、機械兵器のオメガを選んだのでしょうか。
徳田:これまでのタイトルアップデートでは、ラギアクルスやセルレギオスなどメイン級のモンスターが復活してきました。第4弾ではゴグマジオスという飛行する巨大なモンスターが登場予定で、熱線など強力な攻撃を仕掛けてきます。
そんななか、これらのモンスターとはテイストが異った、新鮮味があるものを『FF14』の中から選びたいと考えました。『FF14』は敵がさまざまな範囲攻撃を重ねてくるなかで正解の位置取りを選択するという遊びが面白い部分だと思っていて、それを活かせるのはオメガだと判断しました。
さらに、『ワイルズ』の世界は古代文明をモチーフにしたようなバックボーンを持っているので、設定面でもシナジーがあります。
吉田 直樹氏(以下、吉田):補足をすると、『FF14』のオメガは自己進化を続ける古代文明が作り出したAIベースの存在で、「AIや機械は心を持てるのか」というテーマのストーリーが展開されます。
詳しく言うとネタバレになってしまいますが、『ワイルズ』でも素晴らしいストーリーを実装していただいたので、ぜひ見ていただきたいです。
ーー今回の参戦ジョブとして「暗黒騎士」と「ピクトマンサー」が発表されていますが、ジョブの選定はどのように行われたのでしょうか。
徳田:コラボの話を進めるなか、吉田さんに「今、『FF14』で人気のある熱いジョブって何かありますか?」という相談をしたところ、ピクトマンサーという絵素を重ねて魔法を打つ、ビジュアル的にも面白いジョブがあることを教えていただきました。
社内に持ち帰って検討したところ、ビジュアル面の面白さや、“絵を重ねていく”という遊びは『モンハン』になく、新たなシナジーを生み出せると感じたのでピクトマンサーを採用しました。
さらに、ライトユーザーの方でも『FF』とのコラボだと分かるジョブも採用したいと考えていて、最初は「白魔道士」なども検討されていましたが、ピクトマンサーと魔法系で被ってしまう問題がありました。
そんななか、自分の体力を犠牲にしながらアビリティを打っていく暗黒騎士の要素を取り入れたら面白いものが出来るのではと思い、暗黒騎士を使わせていただきました。
ーー『FF14』のジョブの設定を『ワイルズ』に落とし込むとき、苦労した点や大変だった部分はありますか。
徳田:MPの概念やクールダウンの管理の仕方など、アクションとMMORPGでは違う部分があるので、いかにテイストを保ちつつ『ワイルズ』に落とし込めるかという部分です。今回の試遊ではピクトマンサーしかお見せできていませんが、暗黒騎士にも色々なギミックがあります。
吉田:「すごいことするな……」という感想だけお伝えしておきます。
ーー先日試遊させていただきましたが、「まさか“パンクラ”までしてくるとは!」と非常に驚きました。『FF14』のオメガのギミックを『ワイルズ』の世界に落とし込むときに、苦労したポイントや意識した部分などはありますか。
徳田:先程も話した『FF14』の“正解の位置取りを選択する遊び”はアクション性に繋がり、シナジーがあると感じていますが、MMORPGと違ってアクションゲームではユーザー側の打開策も限られています。
開発はなかなか難航しましたが、打開策のひとつとして防御障壁というものを設けました。この障壁をいかにコントロールするか、という戦いの流れが生まれたことで、開発の他の部分でも道筋が見えてきました。
ーークエストの難易度としてはどれくらいのものを想定しているのでしょうか。
徳田:『ワールド』の任務で登場したベヒーモスのような、戦闘の特殊なルールを理解すればクリアできるくらいの難易度を目指しています。
ーーコラボでオメガを登場させるとき、『FF14』側で「ここは守ってほしい」というような要望を出した部分はありましたか。
吉田:『FF14』のオメガのストーリーをプレイされている方から見れば、あのオメガがそのまま登場して、それをギタギタにすることになるので、さすがにそれは心情的に辛い部分があるのではないかと思いました。そこで今回は「プラネテス」という別個体を作りました。
これであれば、ハンターとして思い切りオメガと戦えますし、オリジナルのオメガと絡んでいくようなストーリーも展開されるので、面白くなると思い提案させていただきました。オメガを使いたいという話が出たとき、僕も「パンクラあるもんね」という反応を一番最初にしました。(笑)
ーー『FF14』側にはアルシュベルドが登場しますが、そちらの難易度はどうなっていますか。
吉田:『FF14』のバトルコンテンツは複数の難易度を用意し、カジュアルに遊ぶ人からハードコアなプレイヤーまで、全ての方が楽しめるようにしています。今回のコラボでは報酬のドロップ率や集めやすさといった違いはあるものの、全ての報酬が全ての難易度で入手できるようになっています。
ーー先程、『FF14』では複数の難易度が用意されているとの話がありましたが、『ワイルズ』では常設以外のクエストもありますか。
徳田:土曜日にステージイベントがあります、とだけお伝えしておきます(笑)。(インタビュー実施時点では未発表)
ーー『ワイルズ』にはラバラ・バリナなど鋏角種のモンスターが登場しますが、オメガ・プラネテスも鋏角種に分類されるのでしょうか。
徳田:骨格は鋏角種ベースではあるものの、既存のモンスターの動きを直接使っているわけではありません。『FF14』からのモーションを活用しつつ、アクションゲームに適応させるために新規で作ったモーションが多く、かなりオリジナリティのあるモンスターになっています。
ーー「ネルスキュラ・クローン」について何かお話しできることはありますか。
徳田:試遊でもデルタアタックを防ぐためにネルスキュラ・クローンを倒さなければいけない瞬間がありますが、実際のミッションにおいては、そのネルスキュラにもちゃんとストーリーベースの役割が与えられています。
ーー双方の作品が近い時期にコラボコンテンツを実装するのは珍しい形だと思います。今回のコラボでどのような効果を期待されていますか。また、コラボが実現するまでの過程に困難はありましたか。
吉田:プロデューサーという観点で言えば、互いのファンが盛り上がり、まだプレイしていない人が手に取るきっかけになることを期待しています。また、大きなタイトル同士が収益を抜きにして面白いことをやることで、ゲーム業界の盛り上げや、開発チームとしても大きな刺激を受けられることが重要だと思います。
辻本:プロデューサー目線としての効果は一緒です。ただ、ここまで大規模なコラボレーションはお互いの信頼関係がないと実現できません。お互いのゲームに向き合う姿勢や考え方があるからこそ、アイデアを出し合えると思っています。
吉田:『FF14』と『ワイルズ』の両作品をプレイしているユーザーは多くいます。スケジュールコントロールは難しいですが、全力で両方のゲームをプレイヤーが楽しめるように、リリース時期をずらすことで調整しました。
ーー試遊では清々しいまでにオメガにやられました。これまでテストプレイなども重ねてきたと思いますが、プレイヤー目線としてオメガと戦ったときの感想があれば教えて下さい。
吉田:最終的なバランスで戦うのは、この後のリハーサルが初です。ビジネスデーでの状況を耳に挟んで、「やべぇ…」と思っています(笑)。
辻本:遊びやビジュアルなど、『モンハン』の世界ではできないことに挑戦できる機会となりました。まず最初は、インパクトを感じてもらいたいです。
徳田:製品版は試遊とルールが違う部分があるものの、やはり初回はすごく難しく感じるはずです。数回プレイすることで理解が深まり、クリアできるようなつくりなので、理解する過程も含めて楽しんでいただけたらと思います。
ーー28日にはスクウェア・エニックス側のステージイベントがありますが、見どころを教えてください。
吉田:ステージ上で実際に、アルシュベルドを討伐できるかチャレンジしようと思っています。
今回はカプコンさんの全面的な協力によって、色々なカテゴリーやバリエーションの報酬を用意しています。まずはハンターにジョブチェンジしてオメガに挑戦したあとで、『FF14』のほうもプレイしていただけたらと思います。
ーーセクレトがチョコボに似ていると感じるプレイヤーは多くいましたが、今回のコラボで『ワイルズ』にチョコボのヒナなどは登場しますか。
徳田:チョコボは会場にいる「でぶチョコボ」のように色々なバリエーションがあり、さまざまなアイデアがありましたが、まずはデフォルトのチョコボを再現することに決めました。鳴き声や騎乗時のBGMといった要素を用意しています。
ーー『ワイルズ』ではコラボのキービジュアルが掲載されていますが、注目してもらいたいポイントなどはありますか。また、『FF14』側では何か用意しているものはありますか。
徳田:ストーリーテラーであるアルファやオメガがしっかり入っている部分や、チョコボもいたりと、『FF14』の要素を沢山盛り込んでいます。また、背景にはストーリーに関わってくるジン・ダハドもいます。
吉田:流石だなと思ったのは、顔が微妙に傾いている部分です。オメガの特徴でもあり、最初からこの構図だったので、さすがの理解力だと感じました。『FF14』側では特設サイトの完全版や、フルトレイラーの公開を予定しています。
ーー今回のコラボを踏まえて、両タイトル間で将来的に目指しているかたちなどあれば教えて下さい。
吉田:開発チーム内では、前回の『ワールド』でのコラボでやり残したと感じる部分もありました。カプコン側には提案していませんが、24人コンテンツのアライアンスレイドで、2年がかりで『モンハン』をテーマにするのはどうだろうというアイデアが上がったこともあります。
先程も話したように、双方のプレイヤーと開発が盛り上がって刺激になるような面白いことが一番だと思っていますし、今回のクロスオーバーを多くの方に遊んでいただき、そのフィードバックを見た上で、また何かできる機会があればしたいと思います。
辻本:吉田さんとは今後も付き合いが続くと思うので、何か一緒にやる可能性は絶対にあると思います。ただ、お互いの適切なタイミングといった問題もありますし、プレイヤーにとってもインパクトのあるものを提供できるかが重要です。そのあたりを踏まえながら、今後のことを考えていきたいと思っています。
ーー本日はありがとうございました。
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