近年、マルチプラットフォーム的に展開される運営型ゲームはその母数を着実に増やしつつあります。
今後も『アズールプロミリア』『アークナイツ:エンドフィールド』、『無限大Anant』といった大作の数々が控えており、ジャンルは違えども“基本無料のゲーム”という領域においては、ますます競争が激化していくものと予想されます。
ユーザーにとってこうしたゲームの数々は、無料かつ対応ハードの幅広さ故、手軽に始められるコミュニティツールの一種でもあります。
さらに流動的なゲーム情報の発信スタイルは、SNSコミュニティにおいて世代間を問わず、ロングスパンに話題を提供し続けてくれる一種の共通言語になるわけです。
今回はいちゲームライターとして、そしていち運営型ゲームのプレイヤーとして、現在プレイし続けている『鳴潮』を軸としながら、ユーザーコミュニティとその文化に着目していきます。
◆HoYoverseがもたらしたフォーマット化と『原神』の影響
月に1度の定期的なアップデート、公式SNSが発表する次期実装キャラクターの告知、あるいはユーザー間で話題となったファンメイドのミームなど...。
いずれも運営型ゲームが持つ大きな強みと特色、あるいはカルチャーであり、その界隈における名物クリエイターやインフルエンサーの存在も、コンテンツが自発的に盛り上がる強力なトリガーとなり得ます。
こうした成功要因を確立し、ある種フォーマット化したHoYoverseは言うまでもなく、運営型ゲームを主体とするゲーム企業の黒船でした。同社の『原神』は、アニメ調の質感・表現と部分的な探索要素などが、なにかと任天堂の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が引き合いに出される代表作です。
ですが、名作の影響を色濃く受けながらも『崩壊3rd』で培ってきた自社のセンスを注入したことで、今やアニメ調オープンワールドの金字塔とも言える運営型ゲームに成長を遂げました。
配信から数年でmiHoYoの企業知名度をグローバルに知らしめるには、十分過ぎるほどのイノベーションを起こしたと言えます。
世界的なヒットを飛ばしたHoYoverseの功績は中国国内でも広く認められ、次々とフォロワー作品となるプロジェクトが発表されていきました。
こうして運営型ゲームに『原神』を意識したオープンワールドRPGのトレンドが波及してきたのは、紛れないもない事実という他ありません。
◆ユーザーコミュニティの力で独自に挑戦する『鳴潮』
そんな中でもKURO GAMESの『鳴潮』は、HoYoverseの成功要因を踏襲したユーザーコミュニティの創出を目指しつつ、リファレンス先の『原神』からゲーム性と世界観の部分で大きく棲み分けることに成功しています。
とりわけゲーム性の比重が強く、“アクションゲーム”に相応しい爽快感、プレイヤースキルを磨く楽しさの2面性を持ち合わせたゲームデザインとして、一定の人気を獲得するに至りました。
また、『原神』では主要キャラクターを演じる声優陣のコアなのめり込み方もユーザーたちに広く認知され、日本国内ではファンに愛される要因の1つでした。これは声優陣がゲームに時間を費やさねばならないため、大前提としての当人を魅了するだけのゲーム性が備わっているか?という大きな壁が立ちはだかります。
ユーザーコミュニティの創出という観点では、キャストのファンを上手くゲームに取り込める機会でもあり、『原神』のように強固な共同体文化の地盤を作れるかもしれません。しかし、それだけハードルは高いというもの。ですが、最近では『鳴潮』もそうした傾向が見られるようになりつつあります。
それは、男性主人公「漂白者(男)」を演じる増田俊樹さんのハマり方が『鳴潮』コミュニティで度々話題を呼ぶようになってきたからです。増田さんは高難易度コンテンツの縛りプレイや、ゲーム内に存在する膨大な実績集めをこなす、ハードなゲーマーぶりを自身のSNSで投稿しており、いち演者以上にプレイヤーとして作品に強くのめり込んでいることが分かります。
以前、筆者が「アニメディア」のインタビュー企画でお話を伺った際には、「日本でもっとも『鳴潮』をロールプレイしています」と話してくれたのが印象的でした。その際、インタビューに同席していた編集長すらも「ゲーム系の連載をお願いしたいくらい」と唸らせたほど。
それだけ当人が熱中しているのであれば、増田さんのファンの中にも当然ゲームを始めるユーザーが出てきます。最近では公式番組にもご出演されることが増えたため、『鳴潮』との結び付きがますます高まりつつあるのです。
このように日本国内では声優文化が独自に根付き、インフルエンサーとしての側面を併せ持っていることから、ゲームユーザーと声優ファンを巻き込む形で、コミュニティの促進・発展に寄与していることが分かると思います。
『鳴潮』のユーザーコミュニティで盛り上がる話題と言えばもう一つ。
作中キャラクター「ツバキ」をモチーフとした着ぐるみはやはり欠かせません。韓国で行われた『鳴潮』のオフラインイベントに出現したこのマスコットは、妙に味わい深いキャラデザと素行の悪さがカルト的な人気を獲得するに至りました。
今年開催されたKURO GAMES初の大型オフラインイベント「KURO FEST」でもその姿を見せ、公式コスプレイヤーたちを凌ぐ人気でした。
着ぐるみが登場するなり、周囲に居たファンはざわめき始めて一斉にスマートフォンカメラで撮影開始。早々に人だかりができ、着ぐるみが何か面白い動きを見せるたびにファンが歓声をあげていました。今に思えばあの盛り上がり方は、現地『鳴潮』ファンの熱狂ぶり体現しているかのようでした。
そんなツバキの着ぐるみはユーザー人気もあってか、最近では韓国の公式Xからそのキャラデザを踏襲した亜種が生まれていたりもします。新たに誕生した着ぐるみは、Ver2.6で登場した「オーガスタ」と「ユーノ」がモチーフとされており、SNSでは上々の反応です。
マスコットキャラクターの人気に火が着き、公式ミーム化する流れには『勝利の女神:NIKKE』の「Doro」に通じる物があります。
グッズ展開から『Stellar Blade』の『勝利の女神:NIKKE』コラボDLCへの出張とまさしく大出世です。これもコミュニティ内で盛り上がりを見せたから実現したことです。これらのマスコットたちは、ユーザーと公式のコミュニケーションにおいて、それこそ言葉と思想の壁を越えたインフラストラクチャーになっていると言えます。
『鳴潮』はこうした話題性の獲得に十分すぎる、ユーザー主導なカルチャーを本格的に取り入れつつあり、オープンワールド型の運営ゲームの中では独自のコミュニティ形成を確立させ始めています。
それは一見すると『原神』を踏襲しているようでありながらも、『原神』にはない魅力を備えたマイノリティたり得るものです。今後もさらなるミームの登場と、漂泊者役・増田さんの相当なやり込みには注目が集まります。
◆独自のアップデート方針と映像表現への挑戦
筆者が個人的に『鳴潮』を評価している点は、ゲーム内の映像表現を高めるアップデートについてです。他社タイトルでは消極的な細部の表現にもコストをかけてブラッシュアップしていくため、全ての運営型ゲームが抱える大きな問題、長期運用に伴う様式模様の時代的な摩耗という、常に根っこから存在し続けているユーザー離脱のいちテーマに挑戦しているのです。
“古臭さからの脱却”を図る姿勢は長期でサービスが展開するゲームに対して、コアユーザーが本能的に求めたくなるトピック。しかしながら月単位で世界が拡張され、新キャラクターが実装されるゲームに「映像表現を最新水準に磨き上げて欲しい」というのは、素人目に見ても非現実的な話です。
場合によっては根幹部の作り直しが必要になるでしょうし、高品質のアセットを新たに制作する点も大きなコストがかかると予想されます。
不定期ではありますが、短いスパンで新しい映像表現を取り入れるゲームは恐らく『鳴潮』くらいのものです。『鳴潮』はVer2.4から「ウルトラ画質」の追加を行い、さらにフィールドインタラクション作用をバージョンごとに加え続けることでユーザーの映像体験を高める工夫をしてます。
近年、苛烈を極める運営型ゲームの市場において、さまざまな切り口のタイトルが登場していますが、『デュエットナイトアビス』『無限大Ananta』はキャラクターガチャによるマネタイズをついに廃止する決定を下して、話題を集めました。今後はそういったゲームが増えていく可能性も大いに考えられることでしょう。
運営型タイトルのサービス形態が変わりつつある中、今後もガチャを主要なマネタイズ方式とするゲームには、それだけの価値をユーザーに提供していかなければならない時代になるのかもしれません。
パラダイムシフトが訪れたとき、果たして『鳴潮』はどんなゲームに進化を遂げているのでしょうか。これから長期的にサービスを展開していく上で、筆者自身もいちプレイヤーとして本作の成長を身守りたいものです。
今後も『アズールプロミリア』『アークナイツ:エンドフィールド』、『無限大Anant』といった大作の数々が控えており、ジャンルは違えども“基本無料のゲーム”という領域においては、ますます競争が激化していくものと予想されます。
ユーザーにとってこうしたゲームの数々は、無料かつ対応ハードの幅広さ故、手軽に始められるコミュニティツールの一種でもあります。
さらに流動的なゲーム情報の発信スタイルは、SNSコミュニティにおいて世代間を問わず、ロングスパンに話題を提供し続けてくれる一種の共通言語になるわけです。
今回はいちゲームライターとして、そしていち運営型ゲームのプレイヤーとして、現在プレイし続けている『鳴潮』を軸としながら、ユーザーコミュニティとその文化に着目していきます。
◆HoYoverseがもたらしたフォーマット化と『原神』の影響
月に1度の定期的なアップデート、公式SNSが発表する次期実装キャラクターの告知、あるいはユーザー間で話題となったファンメイドのミームなど...。
いずれも運営型ゲームが持つ大きな強みと特色、あるいはカルチャーであり、その界隈における名物クリエイターやインフルエンサーの存在も、コンテンツが自発的に盛り上がる強力なトリガーとなり得ます。
こうした成功要因を確立し、ある種フォーマット化したHoYoverseは言うまでもなく、運営型ゲームを主体とするゲーム企業の黒船でした。同社の『原神』は、アニメ調の質感・表現と部分的な探索要素などが、なにかと任天堂の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が引き合いに出される代表作です。
ですが、名作の影響を色濃く受けながらも『崩壊3rd』で培ってきた自社のセンスを注入したことで、今やアニメ調オープンワールドの金字塔とも言える運営型ゲームに成長を遂げました。
配信から数年でmiHoYoの企業知名度をグローバルに知らしめるには、十分過ぎるほどのイノベーションを起こしたと言えます。
世界的なヒットを飛ばしたHoYoverseの功績は中国国内でも広く認められ、次々とフォロワー作品となるプロジェクトが発表されていきました。
こうして運営型ゲームに『原神』を意識したオープンワールドRPGのトレンドが波及してきたのは、紛れないもない事実という他ありません。
◆ユーザーコミュニティの力で独自に挑戦する『鳴潮』
そんな中でもKURO GAMESの『鳴潮』は、HoYoverseの成功要因を踏襲したユーザーコミュニティの創出を目指しつつ、リファレンス先の『原神』からゲーム性と世界観の部分で大きく棲み分けることに成功しています。
とりわけゲーム性の比重が強く、“アクションゲーム”に相応しい爽快感、プレイヤースキルを磨く楽しさの2面性を持ち合わせたゲームデザインとして、一定の人気を獲得するに至りました。
また、『原神』では主要キャラクターを演じる声優陣のコアなのめり込み方もユーザーたちに広く認知され、日本国内ではファンに愛される要因の1つでした。これは声優陣がゲームに時間を費やさねばならないため、大前提としての当人を魅了するだけのゲーム性が備わっているか?という大きな壁が立ちはだかります。
ユーザーコミュニティの創出という観点では、キャストのファンを上手くゲームに取り込める機会でもあり、『原神』のように強固な共同体文化の地盤を作れるかもしれません。しかし、それだけハードルは高いというもの。ですが、最近では『鳴潮』もそうした傾向が見られるようになりつつあります。
それは、男性主人公「漂白者(男)」を演じる増田俊樹さんのハマり方が『鳴潮』コミュニティで度々話題を呼ぶようになってきたからです。増田さんは高難易度コンテンツの縛りプレイや、ゲーム内に存在する膨大な実績集めをこなす、ハードなゲーマーぶりを自身のSNSで投稿しており、いち演者以上にプレイヤーとして作品に強くのめり込んでいることが分かります。
以前、筆者が「アニメディア」のインタビュー企画でお話を伺った際には、「日本でもっとも『鳴潮』をロールプレイしています」と話してくれたのが印象的でした。その際、インタビューに同席していた編集長すらも「ゲーム系の連載をお願いしたいくらい」と唸らせたほど。
それだけ当人が熱中しているのであれば、増田さんのファンの中にも当然ゲームを始めるユーザーが出てきます。最近では公式番組にもご出演されることが増えたため、『鳴潮』との結び付きがますます高まりつつあるのです。
また、作中に登場するキャラクター「アンコ」を演じる、伊吹誓乃さんも『鳴潮』プレイヤーとして精力的に発信を続けていることで知られています。
このように日本国内では声優文化が独自に根付き、インフルエンサーとしての側面を併せ持っていることから、ゲームユーザーと声優ファンを巻き込む形で、コミュニティの促進・発展に寄与していることが分かると思います。
『鳴潮』のユーザーコミュニティで盛り上がる話題と言えばもう一つ。
作中キャラクター「ツバキ」をモチーフとした着ぐるみはやはり欠かせません。韓国で行われた『鳴潮』のオフラインイベントに出現したこのマスコットは、妙に味わい深いキャラデザと素行の悪さがカルト的な人気を獲得するに至りました。
今年開催されたKURO GAMES初の大型オフラインイベント「KURO FEST」でもその姿を見せ、公式コスプレイヤーたちを凌ぐ人気でした。
着ぐるみが登場するなり、周囲に居たファンはざわめき始めて一斉にスマートフォンカメラで撮影開始。早々に人だかりができ、着ぐるみが何か面白い動きを見せるたびにファンが歓声をあげていました。今に思えばあの盛り上がり方は、現地『鳴潮』ファンの熱狂ぶり体現しているかのようでした。
そんなツバキの着ぐるみはユーザー人気もあってか、最近では韓国の公式Xからそのキャラデザを踏襲した亜種が生まれていたりもします。新たに誕生した着ぐるみは、Ver2.6で登場した「オーガスタ」と「ユーノ」がモチーフとされており、SNSでは上々の反応です。
マスコットキャラクターの人気に火が着き、公式ミーム化する流れには『勝利の女神:NIKKE』の「Doro」に通じる物があります。
あちらは二次創作から生まれたキャラクターではありますが、現在ではオフィシャル化して愛されるマスコットキャラクター的存在となりました。
グッズ展開から『Stellar Blade』の『勝利の女神:NIKKE』コラボDLCへの出張とまさしく大出世です。これもコミュニティ内で盛り上がりを見せたから実現したことです。これらのマスコットたちは、ユーザーと公式のコミュニケーションにおいて、それこそ言葉と思想の壁を越えたインフラストラクチャーになっていると言えます。
『鳴潮』はこうした話題性の獲得に十分すぎる、ユーザー主導なカルチャーを本格的に取り入れつつあり、オープンワールド型の運営ゲームの中では独自のコミュニティ形成を確立させ始めています。
それは一見すると『原神』を踏襲しているようでありながらも、『原神』にはない魅力を備えたマイノリティたり得るものです。今後もさらなるミームの登場と、漂泊者役・増田さんの相当なやり込みには注目が集まります。
◆独自のアップデート方針と映像表現への挑戦
筆者が個人的に『鳴潮』を評価している点は、ゲーム内の映像表現を高めるアップデートについてです。他社タイトルでは消極的な細部の表現にもコストをかけてブラッシュアップしていくため、全ての運営型ゲームが抱える大きな問題、長期運用に伴う様式模様の時代的な摩耗という、常に根っこから存在し続けているユーザー離脱のいちテーマに挑戦しているのです。
“古臭さからの脱却”を図る姿勢は長期でサービスが展開するゲームに対して、コアユーザーが本能的に求めたくなるトピック。しかしながら月単位で世界が拡張され、新キャラクターが実装されるゲームに「映像表現を最新水準に磨き上げて欲しい」というのは、素人目に見ても非現実的な話です。
場合によっては根幹部の作り直しが必要になるでしょうし、高品質のアセットを新たに制作する点も大きなコストがかかると予想されます。
無論、こういった要因以外にもさまざまな制約が伴うことは明白であり、持続的に映像部分に投資を続ける基本無料ゲームはほとんどありません。
不定期ではありますが、短いスパンで新しい映像表現を取り入れるゲームは恐らく『鳴潮』くらいのものです。『鳴潮』はVer2.4から「ウルトラ画質」の追加を行い、さらにフィールドインタラクション作用をバージョンごとに加え続けることでユーザーの映像体験を高める工夫をしてます。
近年、苛烈を極める運営型ゲームの市場において、さまざまな切り口のタイトルが登場していますが、『デュエットナイトアビス』『無限大Ananta』はキャラクターガチャによるマネタイズをついに廃止する決定を下して、話題を集めました。今後はそういったゲームが増えていく可能性も大いに考えられることでしょう。
運営型タイトルのサービス形態が変わりつつある中、今後もガチャを主要なマネタイズ方式とするゲームには、それだけの価値をユーザーに提供していかなければならない時代になるのかもしれません。
パラダイムシフトが訪れたとき、果たして『鳴潮』はどんなゲームに進化を遂げているのでしょうか。これから長期的にサービスを展開していく上で、筆者自身もいちプレイヤーとして本作の成長を身守りたいものです。
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