紳士たちの社交場「バニーガーデン」では、魅惑的なキャストたちにもてなされる大人の時間が楽しめます。しかし、営業を終えたキャストたちは、時に飲みすぎてしまうこともあり、帰る頃にはフラフラの千鳥足に――。


本作『へべれけ ばにーがーでん』では、そんな酔いどれ状態の彼女たちを無事に自宅まで帰すのが、プレイヤーの使命となります。「まともに歩けない酔っ払いを帰宅させる」という、誰が見てもコミカルなシチュエーションですが、だからこそゲーム性が気になるところです。

酔っ払いを扱ったアクションゲームは、内容も酔いどれ状態なのでしょうか。その実態に迫るプレイレポートをお届けします。

■「バニーガーデン」のキャストが迎える、ちょっと刺激的な夜と試練
バニーガーデンの人気キャストである花奈、凜、美羽香の3人が主人公となり、それぞれの帰路がアクションゲームとして描かれています。プレイヤーの任務は、障害物だらけの夜道を進みながら、彼女たちを安全に家まで導くこと。障害物や自転車、ときには車を避けながら、ゴールに辿り着けばステージクリアです。

最も印象的だったのは、風変わりな操作システムです。一般的な3Dアクションゲームでは、Lスティックの上方向を入力すればキャラクターは前進します。しかし、本作では上を押しても前に進まず、その場でぐるぐると回転するばかり。

キャストの動かし方を車の運転に例えると、上入力は「アクセル」に相当し、キャラクターが前に進む推進力が得られます。しかしキャストたちは酔っているため、いわゆるハンドルが常に誤入力の状態です。
アクセルだけを踏み込んでも、その場で回転してしまい、前進できません。

そこで必要になるのが、「方向転換」による修正操作です。右にふらついたら左に、左に傾いたら右に切り返す――このバランスをうまく取ることでようやく、キャラクターはまっすぐ歩くことができます。まるで千鳥足の酔っ払いを支えるような感覚で、プレイヤーは細かな入力を重ねながらキャストを導いていくのです。

こうした設計により、単なる「酔っ払いネタゲー」ではなく、コントロール精度を問われる意外性と手応えのあるアクション性が構築されていました。率直にいえば、想像以上にしっかりしたゲーム性だったため、驚くと共に見くびってしまって申し訳ない気持ちに駆られたほどです。

■酔いどれアクションの中に潜むジレンマ
本作の夜道には、様々な危険が待ち構えています。キャストにはHPが設定されており、障害物にぶつかるたびにダメージを受けます。一定以上のダメージを負うとキャストは転倒してしまい、タイムのロスに加えて衣装が破けるという悲劇にも見舞われます。さらにHPが減り、0になるとゲームオーバーです。

障害物を避けようと方向転換したら、酔いによるふらつきが大きくて別の障害物に直撃――そんな災難も珍しくありません。右のモノを避けたら、左のモノにぶつかる。
この、理不尽ながらも「そりゃそうなるか」感のある挙動が、トライ&エラーを生む下地となります。

さらに、さきほどアクセル=推進力と例えた「へべれけゲージ」は、上入力を続けるとゲージが溜まり、キャストの移動速度が上昇します。ところが、速度が上がるほど酔いによる回転も激しくなり、操作が難しくなるというジレンマが発生。早く帰りたいと思うほど、事故の確率が上がっていく。酔いどれの帰宅劇を描くゲームデザインとして、非常に高い説得力が感じられました。

■セクシー要素目当てだったのに、湧き上がる“守りたい”気持ち
本作はセクシー寄りの演出を多く含んでおり、先ほど触れた衣装が破けるというのもそのひとつ。初めのうちは、衣装が破けると「ちょっと嬉しい」という気持ちが湧き上がりましたが、プレイを重ねるうちに心境がやや変化していきます。

へべれけゲージと方向転換の調整は、セクシー要素を抜きにしても成り立つほど、ゲームシステムとして確立しています。そのため、遊んでいるうちに、自然と“出来るだけいい成果”を目指したくなっていきます。

そして気が付けば、「もっとタイムを縮めたい」というタイムアタック精神や、「次こそ衣装を破らずに帰らせたい」といった保護欲のようなものまで芽生え始めてしまいました。あくまで筆者の一例に過ぎませんが、そうした気持ちになってもおかしくない構成や仕組みが、本作に盛り込まれているのも事実です。

また、ステージ上にはパンツが落ちており、獲得することでキャストの着替えの幅が広がりますし、ステージクリアの評価ランクを上げれば嬉しいご褒美も。
こうした要素があるため、ダメージを押さえて素早いクリアを目指したくなり、結果としてアクション性へと没頭してしまいます。

セクシー要素に惹かれたはずなのに、純粋にゲームとして楽しんだり、キャストを守り抜きたいという責任感が芽生えてしまったのは、まったく予想外でした。

■気になるところは、ボリューム感と価格の受け止め方
最初は「上を押しても進まない」ことに戸惑い、その場で延々と回転し続けるようなスタートでしたが、方向修正に慣れていき、ゲージの調整に気を配り始めると、アクションゲームとしての手応えが増していきます。

また、キャストの酔いどれ姿を見るのも楽しく、パンツ集めもクセになります。また、キャストたちの日常を垣間見る物語や、ちょっとしたミニゲームもアクセントとしての味わいがありました。

しかし、気になる点もいくつかあります。まず本作のステージ数は決して多くありません。1ステージごとのプレイ時間も短めで、クリアだけを目的にすると数時間で遊び終えてしまうボリュームです。複数のサブコンテンツがあるとはいえ、いずれも短めで、全体としてはライトアクションという範囲に留まります。

期待させるテイストと実際の内容に齟齬はありませんが、本作はあくまでも『バニーガーデン』のスピンオフ作品であり、価格(2,480円)分の価値を見出すかは人によって意見が分かれることでしょう。

『へべれけ ばにーがーでん』は“美少女と千鳥足”というユニークなモチーフを、独自の操作感と設計により成立させた、ある意味唯一無二のゲームです。可愛い見た目や派手な演出だけでなく、操作と挙動の絶妙なバランスは、“酔いどれアクション”の名に相応しい手触りでした。


長時間遊びたい人よりも短時間で濃い体験を求める人に、そして『バニーガーデン』シリーズのキャストを愛するファンにも、強くお勧めしたい作品です。セクシーさに惹かれ、可愛さを満喫しながら、気づけばアクションに熱くなる。そんな“へべれけ体験”に、ぜひ酔いしれてください。

『へべれけ ばにーがーでん』は、ニンテンドースイッチ/Steam向けに2,480円(税込)で販売中です。詳しくは公式サイトをご確認ください。
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