本記事では、「年末年始を溶かす」覚悟で向き合いたい、10時間以上のボリュームがある2025年発売のアドベンチャーゲーム5本を、プレイ時間の目安とともに紹介していきます。
◆『都市伝説解体センター』:約10時間
『都市伝説解体センター』は、『和階堂真の事件簿』で知られる墓場文庫が開発を手がけ、集英社ゲームズより2025年2月13日、PS5/ニンテンドースイッチ/Steam向けにリリースされたミステリーアドベンチャー。本作は、“生まれたときから変なモノが視える”主人公・福来あざみが、原因を探るためポスターで見かけた「都市伝説解体センター」を訪れるところからスタート。センター長の廻屋渉に相談する中で、あざみはうっかり座った者に死をもたらす「呪いの椅子」に座ってしまいます。
死を回避しようと調査に取り組んだ結果、あざみは力余って椅子を破壊。廻屋から修理費用として1000万円を請求されてしまい、借金返済のためセンターの調査員として働くことになり、同僚の止木休美(ジャスミン)とともにさまざまな依頼に挑んでいくという導入です。
ストーリーが進むなかあざみの変なモノが視える力は、「過去に存在した人や物の痕跡」を視覚化する「念視」であることが判明。能力を活かして怪異が出現した現場を調査していきます。
ゲームプレイの流れとしては廻屋から依頼を受け、依頼者の話を聞きながら念視を使った探索で証拠を集めて状況を把握。仮説を組み立てながら都市伝説が、何に当てはまるのか「特定」していくというものです。
一本道で選択肢を間違えてもストーリーが分岐したりペナルティを受けたりすることはないため、集中を切らすことなく10時間ほどのジェットコースターのような体験が味わえるでしょう。
◆『花束を君に贈ろう-Kinsenka-』:約15時間
『花束を君に贈ろう-Kinsenka-』は5月29日、PC向けにリリースされたフロントウイング25周年作品の第1弾タイトル。シナリオを『いろとりどりのセカイ』シリーズや、『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』などを手がけた漆原雪人氏が担当しています。
作中世界には「呪詛」と呼ばれる呪いや想いが具象化した存在や能力があり、それらを駆使する「呪詛使い」をめぐるシナリオが展開。ダブル主人公を採用しており「橘才」と「鎌原竜起」の視点が切り替わりながら物語が進行します。
才は生まれつき心に痛みを感じない性質と「人の心を知りたい」という願望を持ち、心を刺激することを探しながら妹に害をなす人物を人知れず殺害していました。一方、体の痛みを感じない竜起は、「夕暮れの牢獄」という裏世界を支配する紅緒家の一員として、人間社会にはびこる邪悪を打倒する使命が存在。ある日竜起はパートナーの紅緒祀ともに標的として才を狙っており、二人の主人公と祀の邂逅からストーリーがスタートします。
本作は仲間との共同生活や能力を活かしたバトルなど、異能力モノの少年漫画的な枠組みに沿っていますが、主人公の一人は実際に多くの人を殺めてきた殺人鬼であり、もう一人の主人公も痛みを感じないため極端な自己犠牲を選びがちな人物です。ほかの登場人物も重い過去や歪んだ出自を抱えており、ショッキングな展開が多いため一見すると感情移入しづらい作品に映るかもしれません。
ただ約80万文字にも及ぶ膨大なテキストによって人物の内面が丁寧に描かれることで、共感はできなくとも、その行動や思考が理解できる瞬間が訪れます。
◆『魔法少女ノ魔女裁判』:約25時間
『魔法少女ノ魔女裁判』は、Re,AERがクリエイティブブランド「Acacia」名義で、7月18日Steam向けにリリースした魔法議論ミステリゲームです。本作は開発に関するクラウドファンディングで約6,600万円以上を集め、発売前から東京タワーとのコラボ企画が実施されるなど、プロモーション段階から話題を集めていました。
物語は主人公の少女・桜羽エマと12人の少女たちが、世界に害を及ぼす可能性を持つ魔女の因子を持つとされ、絶海の孤島にある「牢屋敷」に閉じ込められるところから始まります。因子を持つ者はストレスによって魔女化が進み、殺意や妄想に憑かれてしまい殺人事件が発生してしまうとのこと。「そんなことが起こるはずない」と意気込んでいた少女たちも、やがては死体を目にしてしまい、魔女をあぶりだして処刑する「魔女裁判」に参加させられます。
ゲームはビジュアルノベル形式で牢屋敷内を探索しながら会話を行い、日常シーンや証言や証拠を収集していくフェーズと魔女裁判パートが存在。裁判ではいわゆる『ダンガンロンパ』に近い、集めた情報をもとに証言の矛盾を指摘し、誰が“魔女”であるかを議論する討論型ミステリーに発展していくのが特徴です。
記事執筆時点では、Steamユーザーレビューが約2万件中97%が好評とする「圧倒的に好評」を獲得。販売本数は40万本を突破し、2026年春にはニンテンドースイッチ版のリリースも決定しています。なおAcaciaはジー・モードとタッグを組んだ『配信少女ノ裏垢迷宮』や、グッドスマイルカンパニーとの新作『魔法少女ノ因習村』も予定しており、本作のキャラクター「二階堂ヒロ」が登場する点も注目を集めています。
◆『伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル』:約15時間
『伊達鍵は眠らない - From AI:ソムニウムファイル(以下、伊達鍵は眠らない)』は、スパイク・チュンソフトが7月25日、ニンテンドースイッチ/スイッチ2/Steam向けにリリースしたタイトル。原作シリーズの『AI:ソムニウムファイル』は、打越鋼太郎氏がシナリオ、コザキユースケ氏がキャラクターデザインを担当する、近未来の東京を舞台としたミステリーアドベンチャーシリーズ。これまでに同名の第1作が2019年、続編『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』が2022年に発売されています。
シリーズを通して現実世界の「捜査パート」で手がかりの捜索や関係者との交流を行いながら、重要参考人の夢に入り込んで真実を探る「ソムニウムパート」を繰り返し事件の真相に近づいていくのが特徴です。
『伊達鍵は眠らない』は時系列が第1作と第2作に挟まれているスピンオフで、オカルトと陰謀論が大好きなネットアイドルのヒロイン「左岸イリス」が突如UFOに拉致されてしまいます。そしてレプティリアンの「明美」が主催する脱出ゲーム「The Third Eye Game」に参加させられる場面から物語がスタート。
時を同じくして伊達の養女「みずき」が所持する冷凍倉庫から、謎のポッドが見つかるという出来事が発生。伊達はイリスの脱出ゲームを手伝いながら、ポッドに潜む何かのソムニウム世界でイリスが“脱出ゲームで殺される場面”を見てしまい、行方不明のイリスと謎のポッドの関連を調べていくのが主な流れです。
『伊達鍵は眠らない』は打越氏はあくまで監修ですが、シリーズらしい軽妙なコメディとミステリーの面白さをしっかりと継承。おなじみの下品なノリも健在なためファンにとっては安心して楽しめる内容なほか、コンパクトなシリーズ入門作としてもおすすめです。またソムニウムパートと本作から追加された脱出パートが噛み合ったゲーム構成で、謎解きごとに閃きがつながっていく快感が常に味わえる点も新鮮でした。またPS5/PS4/Xbox Series X|S版が2026年2月26日に発売予定です。
◆『終天教団』:約40時間
『終天教団』は、DMM GAMESより9月5日ニンテンドースイッチ/PC向けに発売されたアドベンチャーゲームです。開発はネイロが手がけており、『ダンガンロンパ』シリーズなどで知られる小高和剛氏を中心としたトゥーキョーゲームスも制作に携わっています。
「終天教団」という世界の滅亡を待ち望む新興宗教が興した「終天教国」が舞台で、主人公が記憶を失っているシーンから開始。自らを神の使い“天使”だと自称する2人組「ヒメル」と「ミコトル」によって、主人公は自身が何者かに殺害された教祖であり、神の力で生き返った仮初めの蘇生状態であることを教えられます。世界の命運と真の復活をかけて、身体が保たれるタイムリミットの4日間を駆使して犯人探しをしていきます。
疑わしい人物は教団幹部である「法務省幹部・犬神軋」「保健省幹部・丑寅幽玄」「科学省幹部・伊音テコ」「文部省幹部・黒四館仄」「警備省幹部・伏蝶まんじ」の5名。「マルチジャンルADV」というジャンルのとおり、選択した容疑者にあわせて推理アドベンチャー、極限脱出アドベンチャー、ステルスアクションホラー、マルチ視点ザッピングノベル、恋愛アドベンチャー(?)と、異なる5つのゲームシステムを楽しめるのが特徴です。
約40時間と各ルート5~10時間ずつの内容が用意されており、すべてをクリアしようと考えると本記事でご紹介した中では圧倒的なプレイ時間を誇ります。ただ『終天教団』はルートごとにシステムごと全く異なる体験ができるため、ボリュームたっぷりでも最後まで飽きずにプレイすることができました。
今回紹介した5作品はいずれも、10時間台から40時間規模まで、腰を据えて遊ぶことを前提としたアドベンチャーゲームです。ミステリー、異能バトル、魔法少女、SF、宗教と題材は異なりますが、共通しているのは「物語を読む体験そのもの」に十分なボリュームと手応えがある点でしょう。
年末年始は、細切れのプレイよりも、まとまった時間を確保しやすい時期でもあります。


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