その番組とは、楽天TVなどで配信中の「ちょうみりょうぱーてぃー」。キャッキャと楽しそうにプレイする3人の女性タレントに感激しつつ、思わぬ改善点にも気付かされ、とても貴重な経験をさせていただきました。
もっともゲーム制作初心者によるド底辺のクオリティですから、到底売り物になる完成度ではありません。しかし「誰でも完成させられる」という点では、ここまで環境が整っていると思わず「次」への夢が広がりました。
本稿ではその番組内のリアクションとともに、どのようなゲームを制作したのか、アレコレと頭を悩ませながら完成させた「番組用に特化したゲーム」について筆者の体験談を紹介したいと思います。
◆番組に送るために完成させる!
筆者が制作したのは、声優番組「ちょうみりょうぱーてぃー」の同人ADV(アドベンチャーゲーム)。その名も「燃えよ小宇宙(コスモ)! ちょみぱ最後の戦い!」。
番組に登場する「マヨネーズ(演:吉成由貴)」「ケチャップ(演:藤川茜)」「しゅうゆ(演:永野希)」の3人のキャラクターが、謎の「デスソース軍」の本拠地に乗り込み、人質となった友だち「ミソちゃん」を救うという内容です。
ストーリー分岐はなし。SEおよびBGMもなし。読み上げプレイで15分ほどを想定したボリュームです。
もともと「ちょうみりょうぱーてぃー」とは楽天TVなどで配信されている声優バラエティで、出演者は吉成由貴さん、藤川茜さん、永野希さんの3名。吉成さんが考案した調味料の擬人化キャラクターをマスコットに、毎回、調味料の良さを伝えるためにオリジナルの調味料を調合したり、ツイスターゲームで大騒ぎしたりと、調味料をテーマにしつつ楽しいことなら何でもする番組です。
2021年頃には独自にファミコンのゲームカセットを制作するなど、ユニークな企画を実施したこともありました。
それではなぜこの番組の同人ゲームを作ろうと思ったのか?
第一に、シナリオを執筆する手間を省きたかったという事情があります。実は以前、同番組に5~6分程度の朗読劇用のシナリオを送ったことがあり、それを再利用することでシナリオにかかる労力を軽減したいと思いました。(同じシナリオでも朗読劇だと5~6分ですが、読み上げプレイでツッコミなどが入ると15分程度になるだろうという想定です)
第二に、筆者は絵が描けません。番組にはすでにキャラクターが存在しますから、それをお借りすることで問題をクリアしようとしました。
なにより大きかったのは、第三の理由であるモチベーションの維持。創作は、こだわればこだわるほど迷走しがちです。しかし「番組に送る」という明確な目標を設定すれば、改変期の兼ね合いもあり「早く送らないと」と自然と自分に鞭を入れられます。
そうしてゲームを送ったところ、なんと幸運にも番組内で採用されることに! しかも「アドベンチャーゲーム回」とサブタイトルにも採用していただいているではありませんか!!
番組内でおもしろかったリアクションは後ほど紹介するとして、三者三様のツッコミが入り乱れる配信はとても楽しく、まさに「後方腕組みクリエイター体験」をさせていただきました。
◆コンセプトは「背伸びをせずに作りきる」
筆者が「ゲームを作ろう」と思ったのはホロライブのとあるVTuberの配信がきっかけでした。
RPGツクールで制作されたゲームをプレイしているところを見て、ふと「RPG以外の開発アプリってないのかな」と思い検索したところ、ヒットしたのが今回ゲームエンジンとして使用することになった「ティラノビルダー」だったのです。
「ティラノビルダー」にはADVを制作する基本的な機能がすべて備わっており、例えば「キャラクターを表示する」「会話ウインドウを表示する」といったコンポーネントがあらかじめ用意されています。それらコンポーネントをシナリオに沿って上から順番に並べていくだけで簡単にADVが完成。
スクプリトを自由に打ち込むコンポーネントもあり、少し調べればさらに豊かな演出などもできそうでしたが、残念ながら筆者はプログラミングの素人です。今回は「自分にできる範囲で制作する」「ひとまず完成させる」を目標にしているため、予習が必要なスクリプトは使わず、あらかじめ用意されたコンポーネントを使いこなすことだけを念頭に制作しました。
当初の懸念材料だった、背景、BGM、SEといった素材類はフリーの素材サイトのおかげで解消を。ただしBGMとSEは、きっと「わちゃわちゃ」とプレイするだろうことを考え、番組の演出に影響しないよう後にオミットすることにしました。つまり必要なのは背景のみ。その部分だけフリーの素材サイトのお世話になります。
なお今回背景をお借りしたのは「AIPICT」さん。さまざまな種類がありとても助かりました。
キャラクターは以前、同番組のオフラインイベントで購入したアクリルスタンドがあったので、それをひとまずスマホで撮影し、仮素材にすることで対応することにしました。
もっとも苦労しそうなシナリオは、前述した通り、以前朗読劇用に投稿したものをゲーム用に調整することにします。
朗読劇とは言いつつもキャストは吉成さん、藤川さん、永野さんの3人だけ。
そういった部分を変更したり、言い回しで“くどい”と感じた部分をカットしたりして、“整えて”からゲームに組み込むことにしました。
◆「ギミック」をどうする?
さてこの段階で「物語を読む」ことに関してはシナリオのラストまで表現可能となりました。問題はこの後。「ゲームとして楽しませる部分」をどうするかです。たとえば選択肢などですね。
ただし仮に選択肢を入れるにしても、物語が分岐したり、異なるエンディングを実装したりすると、きっと「このパターンも見てみたい」と吉成さんたちは考えるはず。すると番組のテンポが悪くなってしまうでしょう。そこであえて一本道にしたり、選択肢で不正解をクリックしても反応したりしないよう調整しました。
それでは実際にどのようなギミックを組み込んだのか? プレイヤーが感情を込めて選択肢をクリックするような、物語性を重視したギミックにしました。
本作は「聖闘士星矢」の十二宮編のように、3つの部屋を順番に移動する物語です。ひとりが残って敵と対決し、最後に必殺技を放ってバトルを終わらせる……そのような構成です。
ならば3つの部屋をうまく利用し、各部屋で「マヨネ(マヨネーズ)」「ケチャ(ケチャップ)」「しょうゆ」をそれぞれ立たせつつギミックを盛り込めば、ちょうどいいテンポで山場を3つ作れるはず。
そこでまず第1の間では、藤川さん演じる「ケチャ」が必殺技の名を叫ぶよう誘導することにしました。必殺技の名称は「ファントム・ザ・ブラッディ」。中二病感がマシマシで、藤川さんがいつも照れながら絶叫するワードです。
具体的には、「ファントム・ザ・ブラッディ」の選択肢をひとつだけ用意。まずはその選択肢を藤川さんが叫びながらクリックするよう誘導します。そして照れながら叫んだ場面で「※気合が足りないようだ」と地の分で煽り、再び「ファントム・ザ・ブラッディ」の選択肢を少しだけ大きく表示します。そのようにして最初の山場を作りました。
第2の間では永野さん演じる「しょうゆ」が主役に。必殺技の名称が「本醸麹熟成抹醤油」と若干分かりづらく、オフラインイベントでも一瞬忘れてしまったという場面があったことから、「正しい技名」を「正しい組み合わせ」で選んでもらうことにしました。
まずは「本醸」と「本田」の2択。続いて「麹熟成」と「超熟成」の2択。最後に「抹醤油」と「抹消you」。ここで分かりづらいとテンポが悪くなってしまうため、クイズとしては比較的簡単にします。理由はガチのクイズをさせることではなく、ネタとして盛り上がってもらうためだからです。しかしここである閃きが……。
「どうせなら最後は10個くらい表示してインパクトを出すか」と考えたところ、永野さんが以前リリースした音楽アルバム「メタコグニ」がちょうど全10曲収録だったことを思い出し、「ならば全部、永野さんの楽曲にしてしまえ!」と急ハンドル。永野さんが作詞・作曲した楽曲タイトルを画面いっぱいに並べることにしました。
ちなみに永野希さんは、「ハナマル☆センセイション」でおなじみのアニソンバンド「Little Non」(リトルノン)のボーカル。現在はソロ活動もしており、そのデビューアルバムとしてリリースしたのが「メタコグニ」でした。
最後の第3の間は、バラバラだった「マヨネ」「ケチャ」「しょうゆ」が再び集結するということで、吉成さん演じる「マヨネ」の主役部屋ではあるものの3人が力を合わせる展開に。いわゆる元気玉の要領で、「ウチの力をマヨネに!」「私の力をマヨネさんに!」と、叫びながら選択肢をクリックしてもらうようにしました。
そうして完成したゲームは制作期間2日。再利用したシナリオの元々の執筆期間を含めると1週間程度という、とても短い期間で完成にこぎつけることができたのでした。
◆「(ニヤリ)」と「しまった…」が交互に訪れた番組視聴
番組内の実況プレイでは冒頭からツッコミの嵐。とくにスマホで撮影した仮素材の立ち絵は、「画質が悪い(笑)」と注目の的に。実は本番ではもっと綺麗なイラストに差し替えるつもりでしたが、テストプレイ中に「画質悪っ!」と心の中でツッこんだことから、「ツッコミを入れたってことは番組的においしいのでは?」と思いそのまま行くことにしました。その思惑がうまく行ってこちらもご機嫌です。
反省点は早くも見つかりました。吉成さんの「(敵キャラ)喋らないね」のひと言です。この物語を最初に書いた時は朗読劇を想定していたので、吉成さん、藤川さん、永野さんが兼役にならないよう、敵キャラには一切喋らせず「マヨネ」「ケチャ」「しょうゆ」の一人芝居で各バトルをさせました。
その時はそれが正解だと思いましたが、今回はその必要がなく、むしろ喋らない敵キャラに違和感があります。その「思い込み」に気付かされたというわけです。
また朗読劇でリズムを作るために入れていた「それ!」という掛け声や「はぁ、はぁ」という息切れも、全体的にテンポを落とす、またはせっかく盛り上がった場をクールダウンさせるマイナス効果があり、もっと詰めても良かったなと反省しました。
その一方、必殺技の「ファントム・ザ・ブラッディ」を叫ぶ場面では、期待通り、藤川さんが嫌がる場面が見られてまたまた笑顔に。「うざーい!(笑)」「(制作者)覚えてろよ!」でさらに“ニヤニヤ”です。「失礼になっていないだろうか」と思いながら組み込んだネタでしたが、快く乗っていただき嬉しく思いました。本当にありがとうございます。
続く第2の間では吉成さんがアドリブで敵役を演じていただき、ただでさえボイスつきで感動しているところへ思わぬご褒美です。
さらに選択肢の場面では、はじめてひとつから2つへ。「選択肢が増えてる!」のリアクションにも感激でした。また10択の場面では、永野さんのアルバム「メタコグニ」の収録曲が一面に広がったことで永野さんのテンションもMAXに。当初はただのクイズで終わる予定でしたが、急に楽曲タイトルを並べるアイデアが閃き、個人的には意味のあるシーンにできたのではないかと思いました。
ちなみに正解の選択肢が10択に埋もれては番組のテンポが落ちてしまうので、若干わざとらしいと思いつつ、ひとつだけ色をつけつつ画面端に配置しました。あの位置なら視聴者の視界から外れますし、演者側が気付いてもスルーできるはずです。
そして最終の第3の間は吉成さんのターンです。ネタに振りたい気持ちもありましたが、最終決戦の場ということもあり展開の熱さを重視。吉成さん、藤川さん、永野さんが3人で力を合わせる流れにしたく、申し訳ないと思いつつもそれで着地しました。
シナリオ的に若干グダってしまった部分もありましたが、それを感じさせないキャスト陣のテンションと入り乱れるツッコミの嵐に救われた本作。続くコーナーでは、ゲーム内設定の隙間を埋める関連企画も実施していただき、これ以上なく光栄な時間と学びを頂戴しました。すでに取りかかっている次回作ではそれらを反省点に、まずは完成を目指したいと思います。
そして思うのは、実際にプレイしてもらい、その反応や感想をもらうことがいかに重要かということです。それはなにもゲームだけに限りません。ゲームならテストプレイ、文章やマンガなら感想をもらうことがどれほど大切か身をもって知りました。
自分の中では成立していること、じゅうぶんに表現していること、説明していると思い込んでいることでも、他者から見れば不完全なことがあります。
今回、快くネタに乗っていただいただけでなく、色々な事を気づかせてくれた「ちょうみりょうぱーてぃー」のスタッフのみなさん、そして吉成由貴さん、藤川茜さん、永野希さん、本当にありがとうございました。
ゲーム作りって本当に楽しいですね。みなさんもこの年末年始にゲーム制作をはじめてみてはいかがですか?


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