2020年に登場したサイドビュー型2DアクションRPG『天穂のサクナヒメ』は、攻撃や移動を補助する「羽衣」を用いた独特の操作感と、主人公サクナヒメの成長に直結する本格的な「稲作」要素を融合させた作品です。アクションと育成、そして農業を密接に結びつけた構成は多くのプレイヤーに強い印象を残し、高い評価を獲得しました。


その評価は数字にも表れており、2024年3月時点で『天穂のサクナヒメ』の全世界累計出荷本数は150万本を突破しています。インディーゲームとしては異例とも言えるミリオンヒットを記録し、その後はテレビアニメ化も実現するなど、活躍の舞台はますます広がっていきました。

2026年2月5日に配信予定の『天穂のサクナヒメ~ヒヌカ巡霊譚~』(以下、『ヒヌカ巡霊譚』)は、そうした広がりの中から誕生した作品のひとつです。

スマートフォンおよびPC向けに展開される本作は、原作『天穂のサクナヒメ』の魅力を色濃く受け継ぎつつも新たなアプローチを取り入れ、従来のファンだけでなく新規ユーザーにも強く訴求する内容となっています。

今回、正式サービス開始に先駆けて『ヒヌカ巡霊譚』に触れる機会を得たため、そのプレイレポートをお届けします。

■『天穂のサクナヒメ』と『ヒヌカ巡霊譚』の共通点と相違点
『ヒヌカ巡霊譚』は『天穂のサクナヒメ』を原案とした作品ですが、単なる続編ではなく、新たな世界観を構築した意欲作です。

舞台や物語は一新されており、『天穂のサクナヒメ』のサクナヒメは続投するものの、新キャラクターである「ヒヌカヒメ」も主人公として登場。ダブル主人公体制で、本作の物語を彩ります。

本作の舞台となるのは、御柱都から遠く離れた西の海に姿を現した「謎の群島」です。群島の調査のために訪れたサクナヒメは、そこでヒヌカヒメと出会い、島に秘められた謎と脅威に共に立ち向かうことになります。

群島を探索して物語を進めるためには、戦力の強化が欠かせません。その戦力を支える根幹となるのが、原作と同じく「稲作」です。
稲作によって生み出された「米」で強化されたキャラクターたちを編成して島を探索し、物語を進め、強敵に挑むために再び稲作へと励む。この「稲作」「探索」「強化」の循環こそが、『ヒヌカ巡霊譚』の基本的なプレイスタイルとなっています。

このサイクル自体は『天穂のサクナヒメ』と共通していますが、中身は大きく変わりました。稲作はより細分化され、強化要素の幅も広がっています。また、バトルは見下ろし型の探索アクションへと変化し、スマートフォンでも遊びやすいシステムへと刷新されています。

同じサイクルを持ちながらも、プレイ感覚やシステムは大きく異なる――それが『ヒヌカ巡霊譚』です。

■よりこだわりを深めた稲作システム
稲作によって手に入る「米」は、『ヒヌカ巡霊譚』でも極めて重要な存在です。本作の米は、キャラクターを強化する装備品としての側面を持っており、装備させることで各種ステータスを補正します。

収穫した米の出来がいいほど高いレベルになり、育て方によってパラメータの傾向も変化します。どの能力を伸ばすかを意識して育てるのも重要で、米のレベルが高いほどステータスの上昇幅も大きくなります。

また、米は装備品として使うだけではありません。実施予定の納品イベントでは、米を別のアイテムと交換できるほか、報酬を得ることもできます。
そのため、米を蓄えることは、戦力の蓄積であると同時に財の備蓄とも言えるでしょう。

さらに、収穫によって得られるのは米だけではありません。精米の工程で入手できる「ぬか」は、キャラクターが所持するアビリティの継承に関わるアイテムとなっています。こちらも、戦力強化に直結する要素です。

米の出来映えは、「種もみ」「田んぼ」「育成するキャラクター」「育て方」といった複数の要素によって決定されます。加えて、拠点の影響も受けるほか、「育て方」以外の要素にはそれぞれレベルが設定されており、より良い米作りには各施設の強化(レベル上げ)も欠かせない要素となっています。

ちなみに、種もみは非消費アイテムのため、何度使ってもなくなることはありません。原作では架空品種の「天穂」を育てましたが、『ヒヌカ巡霊譚』に登場する品種はすべて実在するものです。サービス開始時点では、「コシヒカリ」「あきたこまち」「ひとめぼれ」など、16種類の品種が用意されます。

新たな品種は、品種同士の掛け合わせによって開放されます。また、新しい品種を開放すると、その品種に対応した「稲の精霊」を獲得できます。稲の精霊はパーティに1体編成でき、これも戦力強化につながる重要な要素です。


現実の稲作をモチーフとしているため、工程自体の理解は決して難しくありません。しかし、プレイヤーが介入できる項目が多いため、特にプレイ開始直後は戸惑う場面もあるでしょう。

そうした場合に便利なのが「おまかせ」機能です。自動的に各項目を設定し、簡単な操作だけで稲作を始められます。完全に任せることもできますし、「攻撃力重視の米を作りたい」といった大まかな方針を指定することも可能です。

より細かく設定すれば、知識のあるプレイヤーほど理想的な米を作れる余地はありますが、実際に体験した範囲では「おまかせ」でも十分に実用的な品質の米を収穫できました。まずは自動設定で進め、理解が深まってから徐々に手動設定へ移行する、という遊び方でも問題なさそうです。

■キャラクターはレベルアップせず、強さは積み重ねで決まる
サクナヒメやヒヌカヒメを含め、パーティに参加できるキャラクターには、それぞれ「生命力」「攻撃力」「防御力」などのステータスが設定されています。ただし、『天穂のサクナヒメ』や一般的なアクションRPGとは異なり、本作では経験値によるキャラクターのレベルアップはありません。

キャラクターの強さは、ステータスに加えて、最大★5まで存在するレアリティを示す「階位」、定められた献立を作ると上昇する「段位」、そして階位を最大まで上げることで解放される「固有武器」の性能を合算させて決まります。

「階位」や「段位」の上昇による直接的な強化手段もありますが、その段階はある程度限られてもいます。そのため、装備品である「米」の育成が、戦力強化において極めて重要であるとご理解いただけることでしょう。


米を装備すると、そのパラメータが「攻撃力」「防御力」「生命力」といったステータスに加算されます。どのキャラクターにどのような傾向の米を持たせるのか、その判断も本作ならではの戦略性と言えます。

■アクションバトルも「おまかせ」で進められる設計
サクナヒメとヒヌカヒメは、謎に包まれた群島の調査を進めるため、ひとつずつ島を巡っていきます。島ごとにボスが待ち構えており、そこへ至るまでの道のりとして複数のステージを用意。ステージを進行する過程で物語も展開され、随所でバトルが発生します。

本作のバトルは『天穂のサクナヒメ』から大きく変化し、見下ろし型の探索アクションとなりました。操作は比較的シンプルで、通常攻撃、クールタイム制のスキル攻撃、回避を兼ねたダッシュが主なアクションとなります。

限られたプレイ時間の中で体験した印象では、プレイヤースキルがバトルに影響するものの、勝敗をより大きく左右するのは、積み上げた戦力だと感じました。稲作を中心とした強化要素が、バトルの結果に直結しやすい設計となってるようです。

原作『天穂のサクナヒメ』では、ある程度の戦力差をプレイヤーの操作技術で補うことができました。一方で『ヒヌカ巡霊譚』は、強化要素の比重がより大きいデザインになっています。

この点については、原作ファンの中には物足りなさを感じる人もいるかもしれません。
純粋なアクション性の手応えという点では、『天穂のサクナヒメ』に軍配が上がるのは事実でしょう。

しかし、バトルのバランスは好みの問題もあり、一概に優劣をつけられるものではありません。原作のバトルは完成度が高い反面、アクションに不慣れなプレイヤーにとってはハードルが高かった側面もありました。その点、『ヒヌカ巡霊譚』は育成要素を重視することで、より幅広い層が楽しめる設計になっていると言えます。

さらに、本作はバトルにおいても「おまかせ」機能が用意されています。バトルをフルオートで任せることができるため、アクションが苦手な人はもちろん、移動中など操作が難しい場面でもオートバトルに任せるプレイが可能です。スマートフォン対応タイトルである本作において、この配慮は非常にありがたいポイントでしょう。

なお、バトルは4人編成のパーティで行われ、プレイヤーが操作するキャラクター以外は自動で戦ってくれます。ソロプレイでありながら共闘感が味わえる点も、『ヒヌカ巡霊譚』ならではの魅力です。

■地に足をつけて進む、「サクナヒメ」の新品種
『ヒヌカ巡霊譚』の軸となる「稲作」「バトル」、そしてそれらに結びつく強化要素について、プレイ体験に基づくレポートをお届けしました。ただし、ユーザーが気になる点はこのほかにもあるはず。そのひとつと思われる課金要素について、最後に軽く触れておきます。


本作は、基本プレイ無料のアイテム課金制で提供される予定です。そのため、キャラクターの直接販売が行われるほか、「階位」を上げる限界突破用アイテムと「心想神画」(米とは別枠の装備品)が確率で排出されるガチャ要素が用意されています。

また、稲の収穫や施設の建築には一定の時間経過が必要で、完了までに待ち時間が発生します。リアルに時間の経過を待つこともできますが、この待ち時間を課金によって短縮することも可能です。

ただし、そうした要素が課金だけに限定されているわけではありません。無償通貨で販売されるキャラクターを手に入れられますし、ガチャも回せます。

また回数制限などはあるものの、収穫や建築は、アプリ内で配信される広告の視聴で時短できます。広告を視聴する代わりに報酬を得るという形式は、無料動画配信サービスにおけるCM視聴を想像してもらえれば、分かりやすいかと思います。

しかも本作の場合、広告枠はポリシーによるコントロールを想定しており、関連作品である「サクナヒメ」IPの広告に加え、「農業系」や「食」に関連した広告に絞る方針とのこと。広告視聴を導入しつつも、『ヒヌカ巡霊譚』と親和性のあるものに調整しようという試みは、没入感を阻むノイズを抑える効果もありそうで、ひとりのユーザーとして好感を覚えます。

羽衣アクションで空を舞うような爽快感を味わえた『天穂のサクナヒメ』に対し、『ヒヌカ巡霊譚』は稲作要素をさらに拡張しており、地に足をつけて積み重ねていくようなプレイ体験でした。

「サクナヒメ」を稲作とするならば、『ヒヌカ巡霊譚』は新たに生まれた品種と例えられます。新品種が果たしてどんな稲穂を実らせるのか、期待が高まる先行プレイとなりました。
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