またシステム面では、本稿でも触れていますが、真剣少女が妖刀少女になるという、いわゆる「闇堕ち」が存在するのも大きなポイントです。プレイの仕方次第では闇堕ちして敵に回ってしまうシステムは、『刀剣乱舞 -ONLINE-』はもちろん、他の作品でもなかなか見られない要素になっています。
この少女と刀が縁を結ぶという独特の世界観とシステム、そして高クオリティのアニメーションもあって、配信前から高い注目を集めていました。また、2015年1月にはオープンβテストが実施されましたが、正式サービス開始にあたって、数々の修正・改善が行われたとのことで、正に満を持してのリリースとなります。
今回は、そんな『しんけん!!』をスムーズにプレイするための序盤プレイレポートと、本作のプロデューサー・吉原正訓氏へのインタビューをお届けします。
◆鍛刀で個性豊かな真剣少女を錬成!ぬるぬる動くアニメーションにも注目
本作をスタートすると、まずは最初のパートナーとなる真剣少女を「左文字さよ」「左文字みよし」「左文字こゆき」の3人から選ぶことになります。どの少女もゲームを進めることで手に入れることが可能なので、まずは好みで選んで問題ないです。ちなみに筆者は太刀による攻撃が強力な左文字こゆきにしました。
戦闘では、最大5人の真剣少女を従えて出撃することになります。ラインタワーディフェンスということもあって、時間経過とともに次々に敵である「憑喪」が出現し、プレイヤーの拠点に侵入してきます。
そしてもうひとつ、人口という数値もゲームに大きく影響します。これは自陣の体力を表すもので、憑喪からの攻撃を受けると減ってしまいます。序盤であれば気にする機会は少ないですが、記憶にとどめておくといいです。
実際にプレイしてみると、まず驚くのはキャラクターのアニメーションです。敵味方ともにブラウザゲームとは思えないほどぬるぬる動き、モーションのひとつひとつがとても丁寧に作られてあります。真剣少女ごとに刀の構え方、攻撃時の動きも違うので、いろいろなバリエーションを試してみたいと感じました。
戦闘時のコツとしては、真剣少女ごとに設定された間合いを把握しておくことが挙げられます。中にはラインを幅広くカバーし、憑喪を一網打尽にしてくれるものもいるので、重宝するはずです。
戦闘に慣れてきたら、次は新たな真剣少女を仲間にしたいと思うはず。本作では、バトルで手に入れた素材をもとに「鍛刀」を行うことで真剣少女を入手できます。ここで特徴的なのが、プレイヤー自身が熱い鉄を打ち、刀を作っていくことです。画面上に現れる鉄をクリックして刀の形にしていくのですが、叩く回数は最低でも500回とかなりの量。しかし、クリックといっても連打する必要はなく、ドラックし続けるだけでも大丈夫です。また、叩く場所によって刀の出来も変わってきます。叩くべき最適なポイントをクリックすると大きな火花が上がるので、それを目印にするといいでしょう。叩くのは時間がかかって面倒という人のために、弟子の鍛冶師に任せることも可能です。
◆妖刀化を防ぐ研磨、奥義を覚える試斬…屋敷でできることを一挙に公開
本作の拠点となる屋敷では、討伐任務に赴くだけでなく、真剣少女の強化や人口・熱量の増加など、さまざまなことができます。すべての行動の起点となる屋敷の画面ですが、オープンβテストをプレイした人は、インターフェイスがかなり変わっていることにも気付くはず。各メニューがすべて一画面に収まっているので操作しやすくなっただけでなく、屋敷の景観がより見やすくなっています。
屋敷でできることといえば、まず真剣少女の研磨があります。すべての真剣少女には斬れ味が設定されており、憑喪と戦うたびに斬れ味が悪くなっていきます。そのまま戦わせていくといつかは錆つき、最後は妖刀になってしまうのです。妖刀化した少女は、敵として戦うことになってしまったりと非常に危険な存在。普段から大切にケアすることが重要です。
また、真剣少女に奥義を覚えさせるための試し斬りもここから行えます。討伐任務中に使える特殊な技の存在は先程も触れましたが、ここで覚えていなければ、もちろん使うこともできません。試し斬りには「なまくら」「業物」「良業物」「大業物」「最上大業物」といった会場が用意されており、そのすべてで初段~十段に挑戦可能。しかし、段位ごとで特定のアイテムを消費することになるので、事前に用意しておく必要があります。
その他、屋敷の裏側には町があり、ここを発展させることで資源や人口を増やすことができます。町にはさまざまな施設を作成でき、発展を繰り返すことで効率の良いプレイが可能になります。将来的には所持できる真剣少女が増えたり、行動力である熱量の回復が早くなったりと、良いこと尽くめなので討伐ばかりでなく、こちらもしっかりこなしておくと後々楽になります。
以上が本作の序盤をプレイしてのレビューとなります。以前と比較しても確実に遊びやすく洗練されているので、オープンβテストで満足したという人も、今一度プレイしてみることをおすすめします。キャラクターの魅力、造詣の深さも「さすがDMM」といったところですが、二次創作のガイドラインは特に設けられていないとのこと。創作活動の題材としても、今後注目を集める可能性は大いにあります。
そしてここからは、プロデューサー・吉原正訓氏へのインタビューを紹介。本作の世界観、そして瞬く間に人気作へ成長した、同じDMM.comの『刀剣乱舞 -ONLINE-』の話など、興味深い話を聞くことができました。
◆『刀剣乱舞 -ONLINE-』とは互いを高め合う関係
――オープンβテストが終わり、いよいよ正式サービスが見えてきましたが、改めて本作を開発することになった経緯を教えて下さい。
吉原氏:最初の企画提案となると、2013年の7月までさかのぼります。
――『艦これ』を筆頭に、DMMでは数多くのブラウザゲームがありますが、どのように差別化を図っていこうと考えたのですか?
吉原氏:キャラクターのカロリーを上げるというか、キャラに対してどんどん力を入れていく方向へシフトしましたね。ブラウザゲームは基本的に終わらないゲームなので、戦闘を進めていくことに絶対的価値を見出だせるのかは私達にも分かりません。となると、ただ強い弱いの違いには留まらないキャラクターの価値を作っていこうと考えました。戦闘ばかりに価値を持たせると、より強いキャラクターばかりが脚光を浴びてしまいますよね。私は弱いキャラクターがすぐに消費されてしまうゲームにしたくなかったのです。
――では、具体的にどのような形でキャラクターに価値を付加したのでしょうか?
吉原氏:今回はアニメに強いピコグラフさんが開発に入っていることもあって、戦闘シーンはアニメーターの方に物凄いクオリティでキャラクターを描いてもらいました。1キャラにつき500枚くらいは描いています。ポリゴンだと一コマずつ切り取っていくと、どうしてもかわいくない瞬間も出てくると思うんです。今回のアニメーションの場合は、どこを見ても素晴らしい出来になっています。
――キャラクターというと、設定やストーリーにもかなり力が入っていますよね。
吉原氏:もちろん、ただかわいいだけでもダメで、なぜ刀を持った女の子が戦っているのかの理由付けもしっかりしていなければいけません。日本刀は本来美術品であり武器でもあり、美しさも怖さも併せ持っています。そんな日本刀の魅力を美少女に付加価値として持たせられないかと思い、約半年くらいは議論をしながら考えていきました。これが思いの外時間がかかり、議論を重ねるたびに世界観は膨れ上がってしまいました。
――同じ刀を活かした世界観のゲームとして『刀剣乱舞 -ONLINE-』もありますが、こちらとの関連性はなにかあるのでしょうか?
吉原氏:実は開発チームごとの横のつながりはほとんどなくて、『刀剣乱舞 -ONLINE-』と『しんけん!!』が同時期にリリースされるのはまったくの偶然なんです。それどころか、私達が『刀剣乱舞 -ONLINE-』の存在を知ったのは『しんけん!!』の制作が開始された後です。ただ、あちらはニトロプラスも絡んだ、女性ファンが多い作品ですので、結果的には差別化できているのかなと思っています。
――1月にはオープンβテストが実施されましたが、こちらの反響はいかがでしたか。
吉原氏:そもそもあのオープンβテストは体験版や負荷テストという意味合いではなく、意見を聞いて直すことを前提としたものでした。作品の方向性やサーバーの設計に対してどのような反応が出るかを見て、時間をかけて直していこうと最初から決めていたのです。ですから、動作が重い、UIが不親切といった厳しい意見もありましたが、考えなおす機会ができたので非常に有意義でした。
――しかし、修正をしている最中にも『刀剣乱舞 -ONLINE-』は流行り始めていたと思います。それに対抗できるだけの作品になっているという自信はあったのですか?
吉原氏:もちろんリリース前なので緊張はしますが、充分やっていけると思っています。『刀剣乱舞 -ONLINE-』に関してはむしろ恩恵をもらっていて、あちらのユーザーさんが『しんけん!!』に興味を持ってもらうことも多いのです。実際、事前登録社の中には『刀剣乱舞 -ONLINE-』のユーザーさんが結構います。それに加えて勉強させてもらうことも多いですし、なにが良くてなにが悪いのかを把握した上でチューニングに臨んでいます。何より、『刀剣乱舞 -ONLINE-』を見ているとキャラクターに価値を見出す方向性は間違っていなかったなと自信が持てます。
――結果的にはライバルというより、お互いを高め合う関係になっていたと。
吉原氏:そこは本当に良かったです(笑)。設定の点でも、『しんけん!!』は刀の擬人化ではなく、刀と縁を結んだ女の子なんです。ユーザーさんがカップリングなどの二次創作をする際にも、上手く機能するかと思います。
――擬人化ではないというのも、最近ではあまり見ない設定だと思います。
吉原氏:まず、刀って「正宗」や「村正」など男性をイメージさせる名前が多いので、単純に擬人化しても違和感が出てくると考えました。また、刀のひとつひとつに歴史があり、それを背負った少女に独自のパーソナリティを持たせられる点でも良かったと思います。逆にゲーム内に登場する少女から、間接的に刀のことを知れるので、歴史に詳しくない人でも楽しめます。
――実在する刀が持つバックボーンも反映されているのですね。
吉原氏:すごく考えたところですね。歴史に関しては、私達よりも詳しい方が大勢いらっしゃいます。そういった歴史ファンでも納得いただけるよう、気を付けて制作しました。そのおかげで、スカートの柄や会話の節々に至るまでこだわることができましたし、知っていればいるほど発見があると思います。ひょっとしたら、細かいポイントが二次創作のヒントになるかもしれませんね(笑)。
――二次創作が盛り上がるのは、モチーフがある作品のいいところですね。
吉原氏:思い入れが自然と強くなりますし、なんとなく等級を想像しやすいのも拍車をかけていると思います。逆にイラストレーターの方にはかなり苦労をかけてしまいましたね。美少女だけでなく、刀のほうもしっかりと描いてほしかったので、制作ディレクターからリテイクは何度も出しました。歴史好きな人が拒否感を示すイラストにだけはしたくなかったので、そこは徹底的にこだわりましたね。
――キャラクターのバックボーンは、ゲーム中のどういったところで見ることができるのですか?
吉原氏:戦っている場面以外にも気を付けていると随所に見られます。キャラクターごとのプロフィールも見ることができますし、会話や何気ないセリフの中にも性格が分かるヒントが隠されています。また、まったく別のキャラクターが教えてくれることもあります。
――では、同じ時代に存在した刀同士がつながっていたりもするのでしょうか。
吉原氏:はい。同じ時代や銘であると、実は姉妹であったりします。また、存在した地域が近くだったり、刀匠が同じ人物でも関係性が深くなっています。女の子の制服や小物、苗字を見てもらえると、なんとなく共通点も分かってくるはずです。
それに加えて、本作は近未来という世界観になっているのですが、なぜ女の子が刀で戦っているのかというところもしっかり考えておかないと、システム面もこだわれないので、時間をかけて作り上げましたね。本作の世界では隕石が落ちてきて、そこから生まれた謎の生命体「憑喪」が近代的な建物や技術を食らい荒らしてしまったのです。しかし生き残った人々は、「魂鋼」という素材を使って刀を作ると、「憑喪」に対抗できることを発見します。ただし、「魂鋼」からできた刀は17歳の少女にしか扱うことができないのです。
――なるほど。それと「妖刀少女」というのも本作独自の面白い設定だと思います。
吉原氏:妖刀少女はドロップする場合とプレイヤーさんが所持している女の子が変化する場合の2パターンで登場します。妖刀少女には二段階があり、第一段階ではゾンビのような状態になり、いきなり敵に回ったり、言うことを聞かなくなったりします。さらにもう一弾上がると、「妖刀鬼女」という状態になってしまいます。妖刀になってしまった少女をもとに戻すためには、刀を研磨などで手入れする必要があるのですが、どうしても手間がかかります。なので、普段からちゃんと手入れをし続けることが大切です。
ただ、妖刀になって初めて分かるキャラクター性もあります。リスクは伴うものの、少女の“闇堕ち”というのもひとつの見所ですね。
――分かりました。今回はありがとうございました!