後編では更に、『BLAZBLUE』シリーズに踏み込んだ数々の質問をぶつけてみたので、興味がある方は引き続きご覧ください。
◆『BLAZBLUE』という世界の作り方
──格闘ゲームが苦手な人でも、別方面で楽しめるような切り口を用意したのが『BLAZBLUE』だったんですね。では、本作の個性的な世界はどのようにして生まれたのでしょうか。
森氏:難しい質問ですね(笑)。なんとなく最初にあった世界観に、キャラクターを乗っけていき、そこからそぎ落としていく形で構築しました。大きな戦争があって、世界が崩壊しかかってる……といった歴史からまず考え、次に主人公を加えました。
主人公を目立たせるための大まかな手法は二つあって、主人公を英雄にして周りを全員敵にするか、主人公を悪人にして周りの奴らがそいつを追うか。この二つです。
──『BLAZBLUE』では、後者を選んだわけですか。
森氏:主人公を「倒されるべき相手である」という立場に置くことで、そこから更なる肉付けを行いました。
──設定を構築し、主人公を倒されるべき存在に定義したことから、『BLAZBLUE』の世界が作り上げられたんですね。
森氏:とはいえ、「悪人」とは少し違うんですよね。
──この世界が生まれた経緯がよく分かりました。では、構築するにあたって苦労した点などはありましたか?
森氏:格闘ゲームという点で、すごく苦労しています。キャラクターが減らせないんですよね(笑)。バトルモノなのに、殺せないですし。しかも、シリーズを重ねていくことで更にキャラを増やさないといけない。
──キャラクターの増大化は、格闘ゲームのシリーズモノでは避けられない宿命ですよね。
森氏:増えた分、ストーリーも用意しないといけません。(『BLAZBLUE』は)濃い世界なので、ひとりひとりにちゃんとしたバックボーンも必要となりますしね。
──確かに、1作目から見るとかなり増えますしね。5年後や10年後には、もうどうなってることやら。
森氏:もうきっと『BB48』ですよ。総選挙も開けます(笑)。まあ『BLAZBLUE』に関しては前から発表している通り、次のタイトルが出たらひとつの区切りになりますね。ラグナ=ザ=ブラッドエッジのお話が終わります。
──いよいよですね!
森氏:「総合エンターテインメント作品」なので、例えば小説なりなんなりで『BLAZBLUE』自体は今後も続いていくと思いますが、主人公・ラグナの物語は次で完結させます。そして、僕はまず休みます(笑)。
──ちなみに、改めて動き始めた時に手がけるのは、格闘ゲームじゃない可能性もありますか?
森氏:次作るものは、絶対格闘ゲームじゃないですよ。公言しておきます(笑)。『BLAZBLUE』関係でもないと思いますしね。
──今の森さんが手がけるRPGとかも、見てみたいですね(笑)。
森氏:トラウマ残すようなRPGになりますよ、きっと(笑)。RPGとかも今まで結構遊んできましたけど、記憶に残ってるのって衝撃的なヤツが多いんですよね。松野さんの手がける『タクティクスオウガ』とか、トラウマ残るじゃないですか。
──残りますね。各章のタイトルも忘れられないほどです。
森氏:ああいうの、大好きなんですよ。『タクティクスオウガ』が本当に面白くて、ニュートラル・ロウ・カオス、全ルート遊びましたから。「そこまでするか!?」って思いながらプレイしました。もしRPGを作るとしたら、トラウマを残すようなものをぜひ作りたいですね。
◆『BLAZBLUE』が持つ魅力に迫る
──格闘ゲームとしても非常に人気の高い『BLAZBLUE』シリーズですが、物語面における見どころを教えていただけますか?
森氏:ラグナ=ザ=ブラッドエッジがどのように歩んでいくのか、その生き様を見届けてもらえると嬉しいですね。各プレイヤーさんが愛用しているそれぞれのキャラクターから、ラグナというキャラを見るという視点を持ってプレイしていただけると、より面白くなると思います。
──ハザマを使ってる時はハザマの目線から、タオカカの時はタオカカの目線で、ということですね。
森氏:ハザマで遊んでいる時にツバキが乱入してきたら、煽ったり苛めたくなるじゃないですか(笑)。自分が使うキャラクターがこの世界でどういう立ち位置にいるのか、ラグナのことをどう見ているのかと、想像しながら遊んで欲しいですね。
──感情移入して楽しむのも、本シリーズの醍醐味のひとつなんですね。
森氏:アズラエルなんて、誰を見ても「よし、お前は俺のエサ」ですし(笑)。それぞれのキャラの気分で戦ってもらえると嬉しいですね。
──各キャラクターに感情移入して様々な視点から楽しめるというのは、格闘ゲームだからこその物語の楽しみ方かもしれませんね。
森氏:自分が今使っているキャラだけでなく、対戦キャラとの関係性も大事にしたかったんですよね。格闘ゲームというのはどうしても、上手い下手が出てきてしまうので、そこ以外の部分でも楽しんでもらえるようにしたかったんですよね。
──キャラの関係性が楽しめるのも、「総合エンターテインメント作品」だからこそですね。
森氏:(格闘ゲームだからといって)難しく考えず遊んでくださいね、とは何度も言いたいですね(笑)。
──それでは次に、先月発売されたばかりの『BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA EXTEND』の見どころを教えてください。
森氏:やはり「セリカ」と「Λ-11」がプレイアブル化したことですね。
──メインストーリーの最後に、1シーン増えてますよね?
森氏:増えてます。あれの後に次回作がなかったら、ユーザーさんからお叱りを受けてしまいますね(笑)。
──ああいったシーンが、「主人公が倒されるべき存在である」という部分に繋がっていくんですね。
森氏:ええ、そうですね。
──なるほど、ではそこも見どころのひとつですね。ちなみにセリカは物語にも深く関わってきますが、元々そういう構想だったのでしょうか。
森氏:話すと長くなるんですが、そもそも「フェイズ 0」はゲームに入れようと思っていたストーリーなんですよ。ある程度のプロットまで出来ていたんですが、ちょうどそのタイミングで、富士見さんから「小説を作らないか」というお話をいただきまして。「ならばこういうのはいかがですか?」と(フェイズ 0の構想を)見せたら、「これでやりましょう」と。
──そうだったんですか!
森氏:つまりセリカは、元々本編に出す予定のキャラだったんです。で、ツバキやハザマと同じように、ストーリーモードに出てきたキャラクターがプレイアブル化する可能が非常に高くなるので、そういった経緯から今の形になりました。
ちなみに、僕ひとりでセリカを作っていたら、あんなヒロインらしくならなかったと思いますね(笑)。自分だけで作ると、どうにも可愛げがないんですよ。甘え方が下手なんです。
──セリカはその辺り、すごく上手ですよね。
森氏:匙加減を誤ると媚びてるように見えてしまうので、ヒロインキャラは難しいんです。なのでセリカは、いいキャラを作ってもらえたなと思っています。可愛いし、守ってあげたくなる感じがありますよね。小説の著者である駒尾真子先生のおかげです!
──ヒロインと言えば、ノエルもヒロインですよね。
森氏:実は当初、主人公にしようと思って作ったキャラなんですよね、ノエルって。ラグナ、ジン、ノエルの三人を主人公にする、というのが最初の構想だったんです。
旧衣装と新衣装
──はじめは主人公だったとは……!
森氏:そのためノエルというキャラクターは、ヒロインらしい作り方をしていないんですよね。
──この三人が主人公という構想は、物語的にもやはり意味のある立ち位置なのでしょうか。
森氏:そうですね。その片鱗がどんどん明らかになっていくのが、今回のストーリーです。
──では、そこにも注目して欲しいと。
森氏:はい。あ、注目といえば、今回ネットワークモードのロビーやマイルームがすごく良く出来ているので、そこも見て欲しいです。めちゃめちゃお手軽なので、遊びやすいです。それと、漫画「リミックスハート」のキャラクターもストーリーモードに出てくるので、こちらもお見逃しなく。
ちなみに今回追加されたのは、エクステンドストーリーが3本、追加ギャグシナリオが8本、そしてリミックスハート出張版ですね。これだけで10時間くらい遊べますね。
──リミックスハート出張版は、漫画のストーリーをゲーム化したような形でしょうか?
森氏:いえ、完全新規のストーリーです。漫画版の1巻を読んで「あれ?」と思う箇所があった方は、リミックスハート出張版を遊ぶと「なるほど」と納得していただけると思います。
──そういえば今回、メインストーリーが分かりやすくなってるように感じたんですが……。
森氏:ええ、分かりやすくしたんですよ。前はキャラごとにしていたので大変だったんですけど、次はもっと分かりやすくしようと思ってます。あと改善点ですが、対戦モードにおける誤操作による反則負けの問題も対応しました。
──いったいどのような機能なのでしょうか?
森氏:はい。予め「ゲームオプション」でポーズメニューを「長押し」に設定すれば、メニュー画面がすぐに開かないようになります。2~3秒押し続けて見られる感じですね。このため、プレイ中に誤って触れてもメニューが出ません。
2年くらい前の大会の準決勝で、対戦中に誤ってボタンに触れてしまったため反則負けになってしまったことがありまして。すごくいい試合だったので、勿体なかったんです。その時に「こういう機能が欲しい」と言われまして、今回ようやく実装できました。
──プレイヤーさんからの要望も、積極的に取り入れているんですね。では、まったく角度の異なる質問となりますが、これまで『BLAZBLUE』シリーズに触れたことがない方が今から遊ぼうと思った時に、どの作品から入るといいというお勧めはありますか?
森氏:『-CONTINUUM SHIFT EXTEND-』と『-CHRONOPHANTASMA EXTEND-』ですね。この2作品で、概ねの物語は分かるようになっています。『-CONTINUUM SHIFT EXTEND-』の時に、『CT』の各ストーリーを統合した総集編シナリオを作ったので、この2本を遊んでもらえば基本部分は全く問題ありません。
──では、今がちょうどいいタイミングとも言えますね。
森氏:そうですね。あと「ぶるらじQ」も始まったばかりなので、そちらも是非楽しんで下さい。
──それでは最後になりますが、『BLAZBLUE』シリーズファンの方々に向けて、メッセージをお願いします。
森氏:『BLAZBLUE -CHRONOPHANTASMA EXTEND-』が発売されました。これの売れ行きがよければ次回作が豪華になるかもしれません(笑)。次回作の準備も無論しており、最後に入れたいものがあるんですが……これがちょっと難しくなるかもしれないので、よりよい次回作のためにも応援よろしくお願いします! 本当に!(笑)
──本日はありがとうございました。
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こうして、突然すぎた突撃インタビューも無事に閉幕。その後森氏は、スタッフの方々と共に『BLAZBLUE』×「パセラ」コラボで提供するメニューの試食会へと向かいました。やはり、ヒトカラではなかった模様です。
ちなみに森氏は、「ゴールデンテイガーエナジードリンク」を「美味い!」と絶賛していましたが、女性陣からは「ちょっと甘過ぎ」との意見が寄せられ、「……俺、疲れてるのかな。だから甘いのが美味いのかな」と気弱な一面も垣間見せました。
ゲーム作りに関しては、責任と自信を持って当たっている森氏ですが、こと味に関する面では「女性陣がOKと言ったらOKです」と、一歩引いたスタンスに。そのギャップが少々意外にも見えますが、信頼できる相手に任せるという意味では、それもひとつの「自信」の形と言えるのかもしれません。
このコラボイベントは、5月12日から6月14日まで行われます。まずはこの、『BLAZBLUE』らしさ溢れるユニークなメニューを味わい、そして『BLAZBLUE -CHRONOPHANTASMA EXTEND-』をプレイしながら、ラグナ=ザ=ブラッドエッジの物語が迎える結末の到来を楽しみにお待ちください。
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