ミニチュアゲーム『フロストグレイブ』からミニチュアゲームを始める方法をご紹介するシリーズも第3弾に突入。前2回では組み立て方をご紹介しましたが、今回はついに塗装に入っていきます。
フロストグレイブの解説は(こちら)

また、過去の記事をの内容を踏まえて説明していきますので、まだ未読の方は一度読んでから先をお読みください。

組み立て方その1組み立て方その2
◆塗装は必須なのか

以前の記事からの繰り返しになりますが、ミニチュアゲームは、ゲームとしては塗装が必須なわけではなく、塗装の有無で有利不利もありません。しかし、塗装がしてあったほうが、自分と対戦相手両方にとって視覚的な楽しさが増すと私は考えています。

とはいえ、前回紹介した組み立てに比べても慣れるまではそれなりに時間がかかるものではありますので、ミニチュアの塗装よりも、ゲームそのものに惹かれているという人は、組み立てが終わったらまずはそのミニチュアで遊んでみて、ゲームで活躍した駒から時間を見つけて少しづつ塗ってみるなんていうやり方も楽しいと思います。

実際、私もミニチュアゲームを始めた頃はそんな感じで遊んでいました。そして段々と塗装の楽しさを味わい、数えきれないほど(数えるのをやめた)ほどのミニチュアを塗るようになりました。というわけで、必須ではないですが、読者のみなさんにもぜひ体験していただきたいので、連載では基本的な塗装方法を紹介していきます。

今回はそんな塗装の第一ステップとして、下地づくりを説明させて頂きます。

◆プライマーを塗ろう
今回の連載では、細かなミニチュアの塗装方法としては一般的な筆塗りの塗装方法を解説していきます。塗料は安全で刺激臭がなく非常に扱いやすい、水性アクリル塗料を使っていきます。そして、その下準備としてまず、プライマーを塗ります。

プライマーとは、素材に塗料を定着させるための下地材のこと。
ミニチュアゲームはミニチュアを直接触る関係で塗料が剥げないように定着させるのは非常に大事であるため、プライマーは必須といえるでしょう。

一般的なものはスプレータイプかボトル入りのもので、ボトル入りものは筆かエアブラシで塗っていきます。今回はスプレータイプのものをメインに、ボトル入りのものの使い方も簡単に紹介しておきます。

◆スプレープライマー
スプレープライマーは、日本の模型店等でも様々な種類のもの手に入りますが、普通のプライマーは前回紹介したメタルのミニチュアには使えないので、模型用のメタルプライマーが良いでしょう。だいたい小さな缶が400~500円ほどで売っています。

自分がミニチュア用のプライマーとして愛用しているのは、デンマークのミニチュア専用塗料メーカー「アーミーペインター」の『カラープライマー』。アーミーペインターはミニチュアゲーム用のミニチュアを簡単に塗装できるようにすることを主眼に製品を作っており、初心者でも非常に使いやすいアイテムを揃えていて非常にオススメです。ちなみに、記事トップにある『フロストグレイブ』の公式作例でも使われています。

プラスチックはもちろん、前回紹介したメタルやレジンなどなどの素材に対して使うことが出来ます。プライマーと言うと一般的には透明だったり白だったり黒だったりと、基本的には塗装自体をするものではないのですが、『カラープライマー』は20以上の色があり、プライマーを塗るついでに1色塗れちゃうというのが非常に便利。

価格は2000円ほどで、一般的な模型用に比べると少々割高にはなりますが、その分容量は多く、大量にミニチュアを塗るのに使っても中々なくならないので一本あれば長く使えますよ。

また、『フロストグレイブ』の場合は、ミニチュアがそれぞれ異なる色の服を着ていてもカッコイイのですが、例えば他のゲームでよくある軍隊的なミニチュアを大量に塗るときに、その軍隊のテーマカラーを一気に塗れると、作業時間がだいぶ短縮されます。


これは次回改めて詳しく説明しますが、プライマーと全く同じ色の塗料が用意されているのも塗り損じたときに修正しやすいのも良いポイント。

◆何色にするか
さて、それでは早速、前々回作ったごろつきのミニチュア(個人的好みで四角いベースに載せ替えました)と、前回作ったリーパーのボーンズの騎士(下写真右)のミニチュアにプライマーを塗ってみましょう。

今回はアーミーペインターのプライマーを使うので、まず何色のプライマーを塗るかを決めます(日本代理店の公式サイトには、カラーのリストがないのでこちらやこちらのショップページで選ぶのがオススメ)。(追記: 「アーミーペインター」の公式カタログも公開されました)

もし、ミニチュアの服の色を統一したいのであれば、その色で塗るのがベスト。先程も言いましたが、プライマーで一色入れてしまえば、非常に作業が楽になることでしょう。

一色塗るつもりがなければ、「マットブラック(黒)」がよいでしょう。塗り残した部分が影っぽくなり目立たないので初心者にはオススメ。この後で、プライマーの上から黄色や赤、白などの明るい色を塗ろうとすると、下地の色が透けてしまいがちなのがちょっと難点。

しかし、『フロストグレイブ』などのファンタジー系、もしくは古代~中世の歴史系のミニチュアを塗る際に強くおすすめしたいのが「レザーブラウン(茶色)」。このタイプのミニチュアは大体の場合、革靴や鞄、ベルト、鞘を装備していることが多く、その辺を一気に塗れてしまうのは非常に便利。また、黒などに比べると黄色や赤を塗る場合も下地が透けにくいのでとても楽ですよ。

加えて、今回プライマーを塗る騎士のような、全身に鎧を着ているミニチュアには「ガンメタル(暗い銀)」、「チェインメイル(明るい銀)」がオススメ。
さっと吹けばもうだいたい塗り終わった感じになりますよ!

今回はごろつきにレザーブラウン、騎士にガンメタルを使用します。それでは早速カラープライマーを吹く準備を始めましょう。

◆カラープライマーを吹く準備
カラープライマーなどのスプレープライマーは、先ほど説明した水性アクリル塗料ではないので、有機溶剤と可燃性ガスが入っており、吸い込むと体に悪いので、吹き付け作業は、野外で行うか、窓に加えて換気扇がある十分換気ができる場所を確保する必要があります。壁等にプライマーがかかってしまうと落ちないので十分気をつけましょう。また、強烈な匂いがしますので、近隣にお住まいの方の迷惑にならないように気をつけましょう。

それでも吸い込んでしまう事があるので、出来る限り塗装用のマスクをすると良いでしょう。飛び散ったものが目に入ったりするのも危険なので、出来る限りゴーグルをしましょう。服や手につくと落とすのが大変なので、簡単なものでいいので手袋やエプロンも用意しておくことをオススメします。

次に、適当な大きさの段ボール箱を用意し、簡易の塗装ブースとします。段ボール箱の中で吹けば、周囲にプライマーがついてしまう心配がありません。できればこんな感じで中に新聞を敷き詰めておくと、同じ箱が長く使えます(新聞紙なしで長期にわたって吹き続けると、箱の内側に粒子がホコリのようについて、塗装中に飛んでミニチュアについてしまうことがあります)。

続けて板か角材を用意し、以前紹介したブルタック(ほら、便利でしょ!)、もしくはガムテープか何かでミニチュアをそこに固定します。
メタルのミニチュアは重いのでしっかりくっついているか、傾けても落っこちないか事前にしっかり確認しておきましょう。

複数のミニチュアにプライマーを吹くのであれば、ぴったりくっつけて並べたりせずある程度間隔を開けて並べておくとよいでしょう。

個人的には傾けたりすることが簡単な短い角材が好み。100円ショップ等でも簡単に手に入り、長いこと使えます。ただ、(『フロストグレイブ』にはあんまり関係ないことですが)大量のミニチュアに一気にプライマーを吹く場合は板の方が楽だと思います。

ちなみに、吹き付け作業を行う場合、湿度に気をつけてください。湿度が高い環境でプライマーを吹くと、乾燥が不十分となり、全体が白味がかってしまったり、ざらついてしまうことがあります。作業を行うときはなるべく雨の日は避け、湿度が低くなる昼の時間に作業をすることをオススメします。

そして吹付けを行う前に、スプレーを2分程強く振って中身を撹拌します。スプレー缶の中には撹拌の金属の球が入っていてカラカラ音がするはず。作業場所を確保し、必要な物を装備し、ミニチュアとスプレーが準備出来たらいよいよ吹き付けです!

◆プライマーの吹き方
いきなりミニチュアに吹く前にまず、しっかりノズルから中身が噴き出るかを箱の中に向けて適当に吹いて確認しましょう。これを必ずやるようにすると、いつか複数の缶を買った時に、間違えて別の色を吹いてしまうなんていう事態を防げますよ(やったことがある)。


缶のチェックをしたら、ミニチュアを固定した板か角材を片手に持ち、もう片方の手に缶を持ち吹き付けます。吹き付けるときは、缶とミニチュアの距離を15cm~20cmの範囲に保ちましょう(アーミーペインターのカラープライマーはこれが最適距離ですが、他メーカーのものは異なりますので注意書きをしっかり読みましょう)。

近すぎるとミニチュアの細かい凹凸が埋まってしまい、遠すぎると表面がざらついてしまいます。カラープライマーの缶の全高がだいたい20cm位なので、迷った時は参考にどうぞ。

一体に集中して吹き付けるのではなく、缶を持った手を横に平行に移動させながら吹きましょう。吹き始めと吹き終わりは、塗料が出る量が不安定なのでなるべくミニチュアに掛からないようにするのがベスト。

1方向に吹き終えたら今度は、ミニチュアの角度を変えて、別の方向から吹き付けましょう。スプレーは一定以上の角度に傾けると塗料がちゃんと出ないので、スプレーを横や逆さに傾けず、なるべく棒や板の方を傾けましょう。

だいたい全体をカバーできたら終わり。プライマーがかかっていない場所が多少あっても、塗装前にカバーできますので、気にしなくて問題ありません。完全にカバーしようと重ねて吹きすぎると、凹凸を埋めてしまうことがあるので注意しましょう

吹き付け作業が終わったら、スプレー缶を地面に垂直に逆さまにして、塗装ブースの新聞を敷いてあるところに対して、塗料が出なくなるくらいまで少しの間(おそらく数秒で十分)吹き付けましょう。こうすることで、ノズルに溜まった塗料をガスで吹き飛ばし、ノズル中で固まってしまうことを防げます。
ガスが足りなくなってしまうのではと思うかもしれませんが、塗料よりもガスのほうが沢山入っているので気にしなくて大丈夫。

あとはミニチュアについた塗料を乾燥させます。

◆乾燥
湿度によって大きく時間が変わりますが、大体15~30分もあれば触れるくらいに乾きます。しかし、続けて塗装をするのであれば、最低でも1時間、可能であれば丸1日は置いておいて、ミニチュアにプライマーをしっかり定着させた方が安心です。

吹きつけた直後はまだ臭いが残っているので、換気の出来無い部屋に持ち込んだりして乾かすのはやめましょう。ホコリが付いてしまう可能性があるので、ある程度乾くまでは室内に入れることをオススメしません。雨が降らない陽気であれば、そのまま外のダンボールの中に置くのがベストです。

また、吹きつけた直後は、ミニチュアの凹凸が埋まってしまったと心配になるかもしれませんが、乾燥し水分が抜ければある程度戻るので、時間をかけて乾燥させれば大丈夫ですよ。1日以上置いても凸凹が埋まってしまっているようであれば、あとは塗装でどうにかできます。

慣れると簡単にできるものなのですが、もし上手にスプレーを吹けるかどうか不安というのであれば、適当な小物か、切り取ったランナーか何かで、先に試してみることをオススメします。

◆完成

半日以上乾かすとこんな感じに仕上がります。騎士のミニチュアはもうこれで十分カッコイイ。とにかく、これで水性アクリル塗料で塗装をする準備が整いました。

■オプション:ボトル入りプライマー長々説明をしましたが、自宅でスプレープライマーを吹く作業場所が確保出来ないという方も多いはず。一部模型店やミニチュアゲームの専門店では、スプレーを吹くことのできる作業場所を貸してくれる場所もありますが、そこにアクセスするのが難しいという方もいるでしょう。

そんな方にオススメなのがボトル入りのプライマー。こちらも模型店でいろいろ売っていますが、個人的にオススメなのはミニチュアゲーム用の水性アクリル塗料も出しているスペインのメーカーの『ファレホ』の「サーフェイスプライマー」。

こちらも、以前紹介した素材のミニチュアに対して、直接筆で塗ることが出来ます。また、色の種類が多数あり、先ほど紹介したカラープライマーのように最初の一色をプライマーを塗るついでに塗ることも出来ます。

ボトルを良く振り、毛幅が1cmくらいの適当な筆で塗るだけ。プライマーを塗ると筆は他の塗装に適さない状態になってしまうので、プライマー専用の筆を用意しましょう。こちらは模型店等で一本100円程度で売ってるもので十分ですよ。

ちなみにこれもスプレーほどではないですが少し刺激臭がするので、窓を開けるなどして換気ができる環境で作業をしましょう。

下地が透けない程度に塗れたら後は数時間乾せば、水性アクリル塗料で塗装をする準備は完了(スプレーより少し乾燥に時間がかかります)。こちらも可能であれば1日くらい置いたほうが安心でしょう。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
またしても長くなりましたが、これで下地づくりの説明は終わり。環境に左右されるものなので、やりやすい方を選んでぜひ挑戦してみてください。

今回の記事で使用した、『フロストグレイブ』用のごろつきのミニチュアは公式ストア及び全国の取扱店で販売中です。

また、「アーミーペインター」の『カラープライマー』は、全国の取扱店にて販売中。取扱店のリストはこちら。ちなみに、『フロストグレイブ』の公式ストアでも販売されています!

「ファレホ」の『サーフェイスプライマー』は、国内代理店のボークスの店頭、ウェブショップ、並びに全国の取扱店にて販売中。以前紹介したジャイアントホビーなどミニチュアゲーム専門店で取り扱っているお店もあります。

『フロストグレイブ 基本ルールブック日本語版』は公式ストア、及び全国の取扱店で販売中。ルールブックはアマゾンでも買えますよ。

これで次回以降は水性アクリル塗料を使った、本格的な塗装の作業を何回かに分けて解説していきますよ!

■傭兵ペンギン
フリーライターとして働く傍ら、時々アナログゲームの翻訳をしております。アナログゲームと筋肉映画が大好物。最近はホビージャパンのテーブルゲームチャンネルでTRPGウォーハンマーRPG』のプレイ風景を生配信する番組に出演中。アーカイブ動画もありますので、是非チェックしてみてね!
Twitter:@Sir_Motor
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