2015年11月より稼動開始されたアークシステムワークスのアーケード新作『ブレイブルー セントラルフィクション』(以下、セントラルフィクション)。アーケードシーンを取り巻く状況は厳しいと言われるなか、新作を投入し続けることでアーケードシーンを盛り上げることに貢献し続けている男気あふれるメーカーのひとつである。


今回は『セントラルフィクション』の稼動開始を記念し、アークシステムワークスの森利道プロデューサーと、アーケードシーンを現場で支えるゲームチャリオット五井店の店長であり、自らも格闘ゲーマーとして活動しているかきゅん氏の2人にゲームセンターの現状、そして未来について語ってもらった。

◆ゲーセンに人が集まってくるようなゲームを作っていきたい

──今日はよろしくお願いします。

森:アークシステムワークスでプロデューサーをしている森です。よろしくお願いします。

かきゅん:千葉県五井の五井駅前にある、ゲームチャリオット五井店の店長をやっています。プレイヤーネームとしては“かきゅん”と言う名前を使っています。よろしくお願いします。

――お2人はいつ頃から知り合いになられたんですか?

かきゅん:確か『ギルティギア イグゼクス アクセントコア』で大きいイベントを開催した時に、「開発者突撃インタビュー」という企画で森さんに会ったのが最初ですね。その時に森さんから「水面下で新しい格闘ゲームを作っている」という話を伺いまして。その直後に『ブレイブルー』が発表になったので「なるほど」って思ったのを覚えています。

森:僕の記憶だとそれより前の『ギルティギア イグゼクス スラッシュ』の開発中に、プレイヤーの意見を聞きたいってことで、当時から有名なプレイヤーだったパチ君 (本名は関根一利、同社の統括バトルディレクター)に頼んで何人か連れてきてもらったことがあって。……その中にかきゅん君もいなかったっけ?

かきゅん:いや、僕はその中にはいなかったですよ(笑)

森:あれ、そうだったんだ(笑)でも、初めてちゃんと話したのは「カフェ・ド・アーク」にゲストで来てもらった時だったよね。


かきゅん:そうですね。確か目黒の中華料理屋に連れてってもらって。懐かしいですね。

──それから約6年の付き合いになるんですね。さてアークシステムワークスのアーケード新作『セントラルフィクション』の稼動が開始されました。現在のアーケードシーンを踏まえて、どういった意味を込めたゲームになっていますか。

森:アーケードシーンの規模がどんどん縮小していってることは我々もわかっていることなんですが、僕らにできることは「できる限り人が集まってくれるゲームを作る」っていうことです。これは最初の『ブレイブルー』から一貫したコンセプトです。僕もゲームセンターで育った人間なんで、ゲームセンターを無くしたくないんですよね。

ゲームセンターに対戦しに来たり、友達に会いに来たりっていうコミュニケーションの場になればいいなと思って『ブレイブルー』シリーズは開発し続けています。ただ、今回の新作『セントラルフィクション』だけに関して言えば、できる限り長く遊んでもらえるゲームを目指して作っています。

稼働前にロケテストを何度も行いましたし、新キャラも研究しがいのあるキャラを多くしているのもそういう理由です。
あとはストーリーを3つに分割して配信していくっていうのも、長く遊んでもらいたいっていう理由なんです。

──現場では『セントラルフィクション』の反響はどうですか?

かきゅん:稼働に関しては好評です。シリーズを遊んできているプレイヤーさんや、家庭用から入った新規の方がゲーセンに来てくれていると感じています。あと、今森Pの話にあった“アーケードゲームでストーリーが順次解禁されていくシステム”は過去に前例がなかったですよね。

例えば『ブレイブルー』のストーリーやキャラクターに興味ある方が、アーケードで『ブレイブルー』の新作が出たってことでゲーセンに来てくれたとします。でもそういう方は1人用で遊んで好きなキャラのエンディングまで遊んだら「後は家庭用待ちでいいか」ってなりがちなんです。

でもシナリオが段階的に配信されるとなると、そういった方がまたゲームセンターに来てくれるきっかけができるんですよね。ですので、オペレーターの立場的にも順次シナリオが配信されていく仕様はかなり嬉しいし、期待していますね。

──そのシナリオ第2弾となるACT2が1月28日に配信が決まりましたね。

森:そうですね。新シナリオは楽しみにしていてほしいです。『セントラルフィクション』はキャラが増えたので、全キャラ各3本分のストーリーを書くのは本当に大変でした。
特に「カルル」とかスポットが当てづらかったキャラのシナリオはかなり面白くなっていると思いますよ。

ちなみにACT2で一番衝撃的なシナリオは「ナオト」です。『ブレイブルー』の世界観を知っていれば衝撃が走ると思いますよ。これは予告しておきますので、ぜひプレイして確かめてみてほしいですね。一言だけ言っておくと、画面から目を離さないでください、ということかな。見逃したらもう1回プレイしてください(笑)

かきゅん:そうなんですか。ACT2のシナリオ、楽しみですね。

森:ちなみに、今回のバージョンアップは大型アップデートになるんですよ。ストーリーの追加だけじゃなくて、一人用モードに追加要素があります。

まずは「スピードスターモード」という新しいルールのタイムアタックですね。制限時間内に何人倒せるかを競うモードですが、このモードの最大の特徴として、自キャラの体力が一切減りません。時間切れでのみゲームオーバーとなりますが、大ダメージの連続技やディストーションドライブを決めるといった特定のアクションをすることで制限時間が増加するので、それを探してもらうっていう楽しみがあります。


あとは「アーケードモード」と「スパーリングモード」の選択画面でスタートボタンを押すと、「COM戦」用のキャラクターを設定することが出来るようになります。乱入された時には最初に選択したキャラで応戦出来るので、本アップデート後はストーリーが気になっていたキャラで心おきなくアーケードモードで遊んだり、スパーリングモードで練習する事が出来るようになりますよ!

──かなり追加要素がありますね。プレイヤーも遊び方の幅が広がりそうです。

かきゅん:1人用の台を置けるゲーセンもなかなかないですからね。ネシカ2~3セット置いて全部対戦台っていう状況だと思います。そうしたなかで『セントラルフィクション』のシナリオが解禁されたらアーケードモード(アーケード版で遊べるストーリーモード)を遊びたいって思う方も多いと思うんです。

だけど当然対戦もしたいって人もいる。それにゲームセンターでは対戦を拒否る理由もないですし。そこで勝てるかどうかはわからないけど、せめて乱入されたら自分の得意なキャラで対戦ができるっていうのはプレイヤーにとって有難い仕様です。

森:あと僕らはお店が混んでる時間や空いてる時間ってわからないので、ゲーセンにはそうした時間帯がわかるようにしてもらえたら嬉しいかな。対戦が好きな人はプレイヤーがいっぱい集まる時間帯に集まってくればいいし、1人用で遊びたい人は空いてる時間帯に行けばいいと。

例えばプレイしなくてもその時間に行けば、アーケードモード を遊んでる人がいるから後ろで見ようって思ってゲーセンに来てくれればいいんですよ。


──森Pから「ゲーセンがコミュニケーションの場になってくれればいい」という話がありましたが、現場であるゲーセンではユーザー同士のコミュニケーションの場作りにするべく、どんな施策をしていますか?

かきゅん:うちの店で言えば「初心者講習会」の開催です。とは言っても実際には中級以上の方も参加されるんですが、そこは特に制限をせずに集まってもらっています。実際、そのイベントの日にしかお店にこないプレイヤーさんも多くいらっしゃいます。同じレベル同士のプレイヤーさんを見つけやすいんですよ。

複数ある対戦台ではそれぞれ近い段位同士での対戦が繰り広げられていて、強いプレイヤーが下の段位のプレイヤーを狩りに行くってことが起きないんです。だからコミュニケーションが取りやすくなっていると思います。あとは他店さんでもよくやられている「段位制限大会」とかですね。

森:格闘ゲームって自分より少し強い人と対戦すると上手くなるんですよ。勝ち負けもわかりやすいし、会話もしやすい。そうするとお互いが切磋琢磨しながら強くなっていくんです。対戦していても楽しいんです。お互いの成長もわかるし。
今、かきゅん君の話にあったように自分と近いレベルのプレイヤーに出会うために、そういったイベントに足を運んでもらうっていうのはすごくいいと思いますよ。

──開発側で想定するユーザー同士のコミュニケーションを「現場であるゲームセンターが実現している」という連携を感じますね。

◆ゲームセンターで育った2人がゲーセン通いをするようになったきっかけ

──ちなみにゲームセンターで育ってきたお2人ですが、ゲームセンターに通うようになったきっかけって覚えてますか?

森:小学生の頃から通ってましたが、お金がなかったのでメインは駄菓子屋に置いてあるアップライト筐体でしたね。背が足りないんでビールケースを置いてその上に立って『スペースインベーダー』や『平安京エイリアン』を遊んでいました。

で、僕が本当にゲームを好きになったのは『ゼビウス』と『ドルアーガの塔』がゲーセンに登場した時なんです。その後『ドルアーガの塔』がファミコンで出るって聞いた時は嬉しかったですよ。

──お金を積まなくても好きなだけコンティニューできるわけですからね(笑)

森:そうそう(笑)。あとは初代『ストリートファイター』もでかいボタンの筐体で遊びましたけど、必殺技が本当に必殺技でしたからね。「昇竜拳、そこまで減るの!?」って感じで(笑)。それが中学校2年の頃でした。当時の話なんですが、友人が『ストリートファイター』に熱中してボタンを叩きすぎて骨折しちゃったんですよ。

突然ギブス巻いて学校来たので、理由を聞いてクラスのみんなで爆笑です(笑)。と言いつつ、自分も『テーカン ワールド カップ』をやりすぎてトラックボールのコンパネの間に手が挟まって切っちゃったりってこともありました(笑)。

──勢いよくトラックボールを回そうとして挟まっちゃうんですよね。

森:そうなんですよ(笑)。でもやっぱり『ゼビウス』はズバ抜けていました。グラフィックも綺麗だし、なんといっても「ソルバルウ」とか「アンドアジェネシス」といった名前がカッコイイんですもん。たぶん僕、『ゼビウス』がキッカケで中二病になったんじゃないかなって思いますよ。

かきゅん:『ブレイブルー』の原点が『ゼビウス』にあるんですね(笑)。

森:そうかも(笑)。中学校の時の版画制作の授業では『源平討魔伝』を題材にしたり……あの頃のナムコは大好きでしたね。「新明解ナム語辞典」っていう分厚いナムコの辞典が出たんですが、自分では買えなかったけど金持ちの友達が持ってたんで見せてもらったりしていました。

──「新明解ナム語辞典」は定価5000円でしたっけ。僕も買えなかったけど、同じく金持ちの友人が持ってて羨ましかったですね。

森:そうそう。子供に買える値段じゃないですよね。で、次に衝撃を受けたのは『リターン・オブ・イシター』でした。ゲームでちゃんとしたストーリー的な続編が出たってことと、パスワードで管理できるっていうのが驚きましたね。この時も金持ちの友人がお金をテーブル筐体の上に重ねて積んで遊んでいたんで「1枚くれよ、どうせ減ってくんだろ?」って言ってもらったりしてね。バカだったなあ(笑)

一同:(爆笑)

──自分たちも似たようなもんでした(笑)。高校までそんな状況が続きましたし。

森:高校生になるとさらにバカなことやる奴が増えてきて、また楽しくなっちゃうんだよね。バイトもできるようになるから、お金もある程度使えるようになるし。あと、その頃には「ブラストシティ」とかの新しい筐体が登場し始めて。テーブル筐体と違って蛍光灯の反射が筐体に映らないから画面がよく見えるんですよ。それで「すげー、画面がはっきり見えるよ!」って感動して(笑)

──テーブル筐体が一気に減っていきましたもんね(笑)。かきゅんさんはどうですか?

かきゅん:僕は小学生の頃にハマった『ファイナルファイト』ですね。ゲーセンで「メガロ50」みたいなデカい筐体で動いてるのを見て、「自分もあれで遊びたい!」って思ったのが最初でした。

でも小学生時代ってお金がなかったので本格的に通うようになったのは中学生になってからです。『ストリートファイターII』と『餓狼伝説』が同時に出た頃に、友人が「こういうゲームあるんだけどやってみれば?」って教えられて始めたのがきっかけです。「ボタンが6個もある、やばい」って思いましたね。格闘ゲーム自体初めてだったんですけど、『ストIIダッシュ』が出て対戦ができるようになったら一気にハマっちゃいました。

◆格闘ゲームブーム到来! ゲーセンの熱気は最高潮に

──ゲーセンは格闘ゲームのブームが来ましたよね。森Pは『スペースインベーダー』に始まって色々なゲームを遊んできたわけですが、格ゲーブームへはスムーズに移行できた感じですか?

森:周りに好きな奴が多かったから普通に遊ぶようになりましたね。格闘ゲームのブームの頃はもう専門学校生だったのかな。『ストII』で「ガイル」になかなか勝てなくて(笑)。対戦にも慣れてないから2P側になると技が出せなくなるんですよ。

だから友達同士で対戦する場合はまずは1Pと2Pどっちを取るかをジャンケンで決めていました。でも2P側になった奴はすぐにキャラを1P側に移動させようとするんですよ。その攻防が熱くて盛り上がったなぁ。

かきゅん:すごくわかります(笑)。格闘ゲームブームの頃に入ると僕の世代にも追いつきますね。私は中3で『ストIIダッシュ』、高1で『ストIIダッシュターボ』でした。ゲーセンでは僕よりもひとつ上の世代の方が鉄火場みたいな感じで盛り上がっていたんで、そこであまり勝ち過ぎると目を付けられちゃうんですよ。

でもこっちとしてもお金がないので必死なんです。500円持ってゲーセンに行って、今日はこれで1日持たせようって考えるわけですよ。そうするとまず500mlのコーラを買って、残りはゲーム代なので自ずと強キャラを使うわけです。何十連勝かして負けて、また強キャラで入って何十連勝……みたいにやっていたら大学生に裏へ呼ばれたりとか……(笑)

一同:(爆笑)

──同時期には『餓狼伝説』シリーズも人気でしたよね。2人ともやってましたか?

かきゅん:やってましたね。私は 過渡期は「アンディ」や「テリー」を使って、最終的には「ダックキング」になりました。ちょっとファンキーな感じと超必殺技の「ブレイクスパイラル」がカッコよかったんですよね。コマンドも難しかったんですが、それをいかに上手く出せるか、みたいなのがステータスになっていた時代があったんです。そういうのも含めて好きなキャラでしたね。

森:僕も『餓狼伝説』シリーズはすごく好きなゲームでした。『2』から『SPECIAL』になってコマンド入力が甘くなったんですよね。『2』では正確な入力が求められていたんですが、『SPECIAL』では例えば大パンチを出してモーションが終わる前に次のコマンドを入れておくと技が出たんです。

あとは1回も負けずにラストまで行く「とリョウ・サカザキ」が出てくるってのが良かったですよね。ガ ード不能だった“龍虎乱舞”だけはカンベンしてって感じの強さで(笑)。

かきゅん:あの頃はSNKが一時代を築いていましたもんね。

森:格闘ゲームとしての隠し要素や面白さ、それにストーリー的な魅力を表現したのが『餓狼伝説』シリーズだったと思います。「テリー」と「アンディ」っていう兄弟がいて、「ギース・ハワード」っていう悪のカリスマがいて。

場所も世界各地ではなく、「サウスタウン」っていう場所でストーリーが進行していくっていうところも良かった。やっぱりSNKの格闘ゲームを作ってた方々ってすごいなって今でも思いますし、僕はすごく影響を受けてると思います。

──当時の格ゲーブームの熱気ってすごかったですもんね。

森:そうですね。僕はブーム初期の頃は友人同士で対戦して遊ぶことが多かったんですが、『ヴァンパイアハンター』とか『ザ・キング・オブ・ファイターズ’94』の頃になると他のゲーセンへ遠征するようになったんです。「どこそこのゲーセンに強い奴がいるらしい」って聞いたら「じゃあ皆で行ってみようぜ!」って感じで。

『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズってうちで言うと『ギルティギア』と『ブレイブルー』が一緒になるようなものじゃないですか……だから僕、それをやりたくないんですよ。だって『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズが面白すぎたんですもん。

かきゅん:やっぱり先人がすでにやってるってことが大きいですか?

森:というか『餓狼伝説』も『龍虎の拳』もそれぞれストーリーが好きだったのに、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』に全て持っていかれちゃったんですよ。当時は「テリー」が本当に大好きで……『餓狼 MARK OF THE WOLVES』の超必殺技「バスターウルフ」なんかも本当にカッコよくてね。

かきゅん:「バスターウルフ」、カッコよかったですよね。私もあれを作った方に「ありがとう!」って言いたいくらいなんです(笑)。技を見た人みんながカッコいいって言う技ってなかなかないですよね。

森:「バスターウルフ」は歴代の格ゲー主人公キャラのカッコいい必殺技の1、2位を争いますよね。技の出方もカッコよかったし。

かきゅん:技のエフェクトも含めて衝撃を受けましたね。あの技を出したいが為にテリーを使いたいっていうのが、格ゲーが成熟してきた当時でさえありましたからね。

森:まぁ、そういうのもあってずっとドリームチーム的な格ゲーを作ることには躊躇しているんです。『ギルティギア』もまだちゃんと続いているコンテンツなので。こないだも石渡(石渡太輔、『ギルティギア』シリーズのゼネラルディレクター)と話したんですが、そういうのはお互いまだやるつもりはないっていう共通の意思も確認できました。それはここでも明言しておきたいですね。

かきゅん:いつかはアークのドリームチーム的な格ゲーが登場するんでしょうけど、それがいつなんだろうっていうのは私を含めてファン全員が気になってることなんでしょうね。

◆現在のアーケードシーンを2人はどう見ている?

──過去に様々なブームがアーケードシーンにはありましたが、現状のシーンについてどう思われていますか?

かきゅん:ゲーセンに来るプレイヤーが減ったというのはもちろんあります。ゲームや遊びが色々と多様化したことで、わざわざゲーセンに来ようとする人は少なくなったとは思いますね。

でも家庭用ハードでゲームを遊ぶ人やスマホで『パズドラ』等を遊んでる人がたくさんいるように、ゲーム自体が好きな人はたくさんいると思うんです。でもそうした方は無料で遊ぶってことに慣れちゃって、ゲーセンで1コイン入れて遊ぶってことに抵抗があるのかもしれませんね。

──最初からお金を使わないと遊べないってところに敷居が高く感じちゃうんでしょうね。

かきゅん:そうですね。あと今はネットでユーザーの意見がすぐに見れてしまうので、そういったものを見て遊ぶ前から判断しちゃったり、遊んだ気になっちゃったりっていう方も増えている印象です。

──Twitterなどでいいことも悪いことも簡単に情報が拡散されちゃいますからね。

かきゅん:そうなんですよ。でも2015年は『ワンダーランドウォーズ』に始まって、『ポッ拳』『スクール オブ ラグナロク』『ディシディア ファイナルファンタジー』、格ゲーでは『鉄拳7』『ギルティギア イグザード レベレーター』『ブレイブルー セントラルフィクション』と新作ゲームが多くリリースされて、タイトル的には充実していたと思います。

営業的には格ゲーが強いお店はそれなりにやっていけてると思うんですが、そうでないお店にとっては、新作ゲームが当たってくれないことにはなかなか立ち行かなくなってきていますよね。

──ユーザーさんが「ゲーセンに遊びに行きたい」って強く思ってくれるようなゲームの存在ですね。

かきゅん:今だったら『ディシディア ファイナルファンタジー』のような、既存のアーケードユーザーではなくて「『FF』の新作だからやりに来る」、「PSP版で遊んでいたからやりたい」っていう新しい層を取り込んでいかないといけないので、そういったタイトルをオペレーター側としては大事に扱っていきたいです。ユーザーの方もネットの意見を鵜呑みにしないで自分の手で実際に遊んでみてほしいんです。

家庭用のように最初に数千円払わなくても、アーケードゲームなら100円でどんなゲームなのか確かめることができるんで。そこがゲーセンのいいところなので、気になったらとにかくゲーセンに来て遊んでみて欲しいですね。

森:僕は現状のゲーセンって気分転換の場になってないなっていうのが本音なんです。ゲームってやっぱり遊んだ人が気持ちよくならないといけないんで。娯楽って他のことを忘れて楽しみたいものなので、没頭できなきゃダメなんですよね。

だから一番良くないのは「遊んでみたけどなんだかよくわからない」で終わっちゃうことなんです。格ゲーは勝敗が絡むのでもちろんストレスはありますが、それを楽しみたいって人が集まっていると思うんですよ。対戦して負けた後って「あの時どうして技を食らったんだ」「どうすれば勝てるんだ」「こうすれば勝てるかも」って考えますよね。

そういうことを考えている時って、仕事や他の嫌なことを忘れられているんですよ。だから僕がゲームを見て、いまいち楽しめないなって思うゲームっていうのは大抵結果がわかりにくいゲームなんです。今のゲーセンに必要だなって思うことは、ストレスがないことだと思ってます。それを実践するのはすごく難しいですが……。

──僕も子供の頃ゲーセンに行きたい理由ってやっぱり学校のこととか勉強とか、現実を忘れられる、ストレス解消になるからっていう理由が大きかったと思いますね。

かきゅん:もちろん、今のゲーセンもそういう場所になっていると思います。あと僕らの世代くらいまでの人ってゲーセンは薄暗いほうが落ち着くってのがあると思うんですよ。ゲーセンってどこか隠れ家的な感じの場所でもあるんで。

森:確かに、今はゲーセンの店内って全体的に明るくなってきている印象がありますよね。相手の顏が見えるのでストレスを感じる人もいるとは思いますが、それはそれで安心できる場所になってると思うし、遊びに来やすいって意味ではどちらも正解だと思います。

さっきも言いましたが、僕はゲーセンってコミュニケーションの場であってほしいっていう気持ちが一番強いんです。やっぱり自分がユーザーとしてゲーセンに通ってた時って楽しかったですもん。『鉄拳』シリーズで10連コンボとか出している人を見たら「教えてくだーい!」って話しかけたりとか(笑)。「ウメハラ君が都内のゲーセンで何百連勝してるらしいよ」って聞いたら、即皆で見に行きましたもんね。

──現場で新しい出会いもあり、友人同士熱くなれるものがゲーセンにはあるんですよね。

◆未来のゲーセンはどうなっているのか──開発側とオペレータ側が予測する

──年々数も減ってきているゲーセンですが、未来のゲーセンはどうなっていくと思いますか?

かきゅん:世間的にはイメージないかもしれないんですが、店舗側は法律や法令に関することはすごい遵守しているんです。現在16歳未満の方は18時以降は立ち入り禁止になっていますが、それは本人が居たいって言っても強制的に退店してもらっています。不法に滞在させたり、未成年の喫煙なんかも現在はかなり厳しくしています。

それは自分のお店を守るためでもあるし、お互いに法律を守るっていうのはいいことでもあると思うんで。かと言って健全に明るく楽しくってだけがゲーセンの魅力ではないと思うんで、同じ趣味を持つ大人が集まる遊び場やコミュニティの場としても続いていくと思います。

──今以上に幅広い世代がそれぞれの価値観で楽しむ場になっていくといいですよね。

かきゅん:そうですね。それにskypeやLINEじゃなくて実際に友人と会って話して過ごせる場としてもゲーセンって貴重な場所だと思うんですよ。飲み屋に行くようなお金を使わなくても過ごせますし。

だからさっきも言ったように、子供に対しては明るく健全に遊べる場でありつつ、大人にとっては好きなゲームを遊んだり友人と楽しく過ごせる場所っていうハイブリッドな場を目指して運営しています。ですので昔の偏見とかは捨ててもらって今のゲーセンに遊びにきてもらえればって思っています。

森:僕個人の思いとしては、ゲームセンターで育ってきた人間なのでその場所を失いたくないっていうのが本音なんです。でも企業的な話をすれば、ゲーセンってお金儲けの場所なんですよね。アーケードゲームの新作を出したとしても、そのタイトルが回収できるかできないかって話になってきます。

うちの社内にもゲーセンっていう場を残すために努力しているスタッフが大勢いて、新作を開発したりゲームの大会をやったりっていう、できる限りゲーセンに人が集まってくれるための努力をしているんです。……なのでできればそれに対して文句を言うのはやめてほしいなって思っています。

かきゅん:ゲーセンが最新ゲームだけ置いていればいいっていう時代はもうとっくに過ぎてますし、今でも生き残っているゲーセンは何かしら営業努力をしていると思います。今後、ゲーセンの再ブームが来るかどうかはわからないですけど、文化として全くなくなるってことはないと思っていますので、僕らとしてはそれを信じてこれからも頑張っていきたいですね。

森:今かきゅん君が言ったけど、ゲーセンが無くなることはないと思ってます。確実に。だからゲーセンという場に対して僕らは今後もゲームを供給し続けます。僕らとしては「面白いものを作ろう」っていう努力の元で開発をしていますし、その結果として『セントラルフィクション』で見えたと思うので。

どういうタイトルをゲーセンに供給していきたいかっていう気持ちの部分も、ユーザーの方には伝わっていると思うんですよね。それに関してはこれからも努力していきたいし、応援してくれるユーザーさんがいれば頑張れますから。もちろん、それに対してオペレーター側へも「協力お願いします」ということですね。

かきゅん:もちろんです。

森:かきゅん君もさっき言ってたけど、ゲーセンってSNSではできないコミュケーションの場だと思うんですよ。そりゃ、友達同士ケンカをする事もあるでしょうけど、そういうのも含めてコミュニケーションですよ。それが怖いって言ってたら外に出れませんから(笑)。なのでどんどんゲーセンに足を運んでもらって交流してほしいなって思います。コミュニケーションに必要なのは共通の話題ですから。ゲームっていう共通の素材、それに対戦の勝ち負けっていう共通の話題ってわかりやすいじゃないですか。

──お互いの対戦を振り返ってコミュニケーションを取るって最高に楽しいですからね。

森:そうなんですよ。あとうちでは家庭用への移植もやっていきますが、家庭用版ではストーリーや世界観を深く楽しんでもらいたいんです。で、それに対して誰かと話したいって思うじゃないですか。

そう思ったらゲーセンに行ってもらえばいいんですよ。話せる仲間がきっとそこにたくさんいるハズなんで。僕らはそういった「縁」を作るつもりでゲームを作り続けているんです。だからゲーセンへの要望としてはそういう場を作る努力を今後もしてくれればなって思っています。

かきゅん:ゲーセンに人が集まってくれる、今後もそういう場所作りをしていきたいですね。

──ゲーセンっていう場を開発側、オペレーター側、双方で盛り上げてくれている2人の話を聞いて、ゲーセンの未来が明るいものになっていく予感もしますね。『セントラルフィクション』も開発側のアップデート、そして現場でのイベント開催などで長く盛り上がっていってほしいと思います。今日はありがとうございました!
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