2016年4月12日より、ポケモンのフィギュアが盤上で戦いを繰り広げるスマートフォン向けボードゲーム『ポケモンコマスター』が配信されました。

単にボードゲームを遊ぶだけではなく“AI”と協力してデュエルを行う本作、いったいどのようにして産まれたのか、開発に携わった皆さんにお話を伺ってきました。


◆はじまりは『ポケモントレーディングフィギュアゲーム』

●三浦昌幸氏
株式会社ポケモン 開発本部 アプリゲーム事業第二部マネジャー。ポケモン関連のアプリを手がけています。過去には『ポケモン+(プラス)ノブナガの野望』の開発プロデューサーを担当したほか、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のシナリオなども担当しています。

●大山功一氏
有限会社火星工房の代表で、ゲームデザイナーでもありイラストレーターでもあります。石原恒和氏(株式会社ポケモン代表取締役社長)と共に『ポケモンカードゲーム』のゲームデザインを作り上げた人物であり、関連イラストなども担当。また、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のアートワークも氏の担当でした。

●伊藤久史氏
HEROZ(ヒーローズ)所属。『ポケモンコマスター』のプロジェクトマネージャーで、全体の進行管理からゲームのルール調整など細部まで関わっています。

●鈴木直樹氏
株式会社ポケモン 開発本部 アプリゲーム事業第二部マネジャー。『ポケモンコマスター』ではプロデューサーを担当しており、開発会社であるHEROZとの調整などを実施。以前には三浦氏とともに『ポケモンカードゲーム』の仕事に関わっていました。

──本日はよろしくお願いします。
まずは自己紹介をお願いします。

三浦:本作を発案した三浦昌幸です。企画立ち上げ後は、作中に登場する「ポケモンフィギュアゲーム(PFG)」のアドバイザーという立場で本作に参加しています。

今回の『ポケモンコマスター』というアプリは、もともと2007年ごろ発売されたアナログゲーム『ポケモントレーディングフィギュアゲーム(TFG)』が元になっています。当時、石原から「フィギュアを使ったポケモンのゲームはできないか」という話がありまして、『ポケモンカードゲーム』の開発者でもある大山さんと協力してそのゲームを作ることになりました。ただ、それが日本では紹介できていなかったため、今回HEROZさんのお力を借りてスマートフォンのゲームとして作り上げることになりました。

今回のインタビューでは『TFG』の実物も見せていただきました。フィギュアの作りや盤面などは『ポケモンコマスター』とほぼ一緒で、この段階にたどり着くまでにもいろいろ案を考えたのだとか。3対3で戦うルール(練習用マップ)もあったそうですが、「これしかない」というところまで磨き上げたのが、今の盤面・6対6のルールだそうです。

大山:同じくアドバイザーの大山功一です。いきさつは三浦さんが話した感じで「スマートフォンのゲームになる」と聞いて「えっ!」とびっくりしました(笑)。

『TFG』は人と遊んでいくうちにいろいろわかって面白くなるゲームなので「コンピューターと一緒に遊ぶとどうなるのかな?」と思いましたが、見事にできていました。


伊藤:HEROZの伊藤と申します。本作ではプロジェクトマネージャーとして参加しました。『TFG』のゲーム化のお話をいただいたのが約2年前で、その後の進行管理を担当したほかルール周りなどの議論にも参加させてもらいました。

鈴木:私は大山さんと三浦が作り上げた『TFG』を、HEROZさんにどのようにスマホのゲームとして落とし込んだらいいのかということや、それをお客さんにどのように見せるかということを踏まえ、整理や調整を通じて世の中に届けるためのお手伝いをさせていただきました。

──本作は2007年のボードゲームから始まったわけですね。

三浦:当時はゼロからのスタートだったのですが、出来上がってみると、よくあるようでほかにないポケモンならではのゲームができたと思っています。『ポケモンコマスター』は一部アプリならではのところもありますが、基本的にはボードゲームで作り上げた要素を活かしてもらっています。

──確か『TFG』は海外のみで展開されたタイトルですよね?

三浦:そうですね。もともとボードゲームは欧州が本場だろうと思っていたので、挑戦する意味合いもあってそちらで発売しました。フィギュアの製造などもいろいろな問題があったので、残念ながら日本向けには紹介できていませんでした。

──『TFG』をスマホ向けに作ろうとしたきっかけはなんでしょうか。

三浦:実は、いつかやりたいとずっと機会を伺っていました(笑)。
そして機が熟してHEROZさんというパートナーに出会うことができ、前に進めることができたわけです。

──2年前の出会いはどのような形だったのでしょう。

伊藤:弊社の『将棋ウォーズ』というアプリがきっかけで株式会社ポケモンの方と繋がりができ、いくつかお話をいただいてその中から本作が決まったという形です。

◆すべてのポケモンが活躍するゲームデザイン

──開発における苦労などはありましたか?

伊藤:……そ、そうですね。

一同笑い

鈴木:ボードゲームは人がルールを解釈して進めていくわけですが、それをプログラムでやる場合はきちんとルール化しなければならないわけですよね。それ以外にもフィギュアの絵をどうするか、フィギュアをどこにしまうか、デッキをどう作るかといったことなど、アナログとは違うアプリならではの必要なことについて議論して試行錯誤を繰り返しましたね。

伊藤:いくつかアプリならではの変更が必要でその点は相談させていただきましたが、『TFG』のルールを再現するというところは特に力を入れました。また、緻密に定義が行われていないとAIが作れないので、時間をとってはじめの段階でそこを決めましたね。

鈴木:『ポケモンコマスター』はひとつひとつのルールについて、どこが楽しいのか伝えるのが少しむずかしいかもしれませんね。

大山:ユーザーの反応を見てると「そうか、そう捉えるかー」みたいなことがあってちょっと凹みますね(笑)。

三浦:そうですね、「AIが弱い」などという感想もいただくのですが、3つ目のホテルあたりから真価がわかりますよ。本当はAIには強すぎるくらいの能力があるものの、徐々に楽しめるように調整しています。


大山:少しずつフィギュアの動かし方を学んで行くと、AIの強さや良さがわかるようになるはずです。どのポケモンにどのポケモンを当てれば有利かは、敵AIや味方AIの駒の動かし方を見ていると色々学べると思いますね。むやみに自分からバトルをしかけないとか。

鈴木:最初のデッキを使ってAI任せにして進んでいくとそれなりの動きはできるのですが、ある時点で突然勝てなくなります。しかし、対戦相手のデッキに合わせて自分のデッキを組み替えるとAIがそこを読み取り、勝てるようになるわけですね。そういうプレイヤーとAIの協力の実現が特に面白いところですよね。

鈴木:あと、実はこのゲーム、登場するポケモンすべてが活躍できるゲーム性があるんです。多くのポケモンたちを活かせるというのは複雑で難しくもあるので、それをいかに作り上げていくのかというのも苦労しましたね。

──現在発見されているだけで721種類もいるポケモンたちのフィギュアを考えるのは大変なことですよね。

大山:どのポケモンにどの能力をどの確率で持たせるかがデザインするうえで肝になっているのですが、そこがたいへんでしたね。

鈴木:『ポケモンカードゲーム』でも、普段はあまり脚光を浴びないポケモンが活躍したりすることがありますよね。本作でいえば「オニスズメ」がそれらしく活躍していたりと、ポケモンと大山さんのゲーム哲学が合致したデザインを感じ取れます。


『ポケモンコマスター』に登場する「オニスズメ」のフィギュアは、「とぶ」というワザをうまく使うと一気に勝利できるため、プレイヤーたちの間から注目を集めています。ただし、当然ながら対策も用意されているため、場合によっては飛ぶことが仇になることも。

大山:伝説のポケモンなど人気なポケモンだけではなく、地味なポケモンであっても自分が好きなポケモンが活躍できるように能力のデータが作っています。それは、ファンにとっても嬉しいと思うんですよね。『ポケモンコマスター』でも、レア度が高いポケモンもそうではないポケモンも、それぞれに役割を持たせてあげたいと考えています。スピードが遅い「ビードル」も敵に回すと毒が意外と厄介だったりみたいにね(笑)。

三浦:レアリティが必ずしも強さではなくて、組み合わせてコンボを見つけていくと強力になったり、「プレート」をうまく使うと活躍したり、そういうデッキ作りも面白みのうちという考え方で作っています。

鈴木:たとえば「パルキア」は、バトルではすごく強いけれどもフィールドに出しにくいというデメリットがあるわけです。そういう時は「エモンガ」のボルトチェンジを使ったり、プレートで位置を入れ替えたりするとうまく活躍するわけですね。

プレートは、デュエルの最中に使うことができるアイテムのひとつ。自分のターンで使うことにより、ポケモンのフィギュアたちにさまざまな効果をもたらします。たとえば「ポケモン入れ替え」であれば、ちょっとしか移動できないものの強力なワザを持つポケモンを、一気に前線に移動することもできます。


──そういったゲームデザインに関してはどのように作り上げているのでしょうか?

大山:フィギュアを回して遊ぶ(ルーレットで出目を決める)とか、ボードの設計やポケモンセンターなど基本的なルールは僕が主に考えました。ルーレットのデータを考えたりするのは三浦さんが多いですかね。まあ、ルールも駒のデータもほぼふたりで考えたと言って良いですが、比率はそんな感じでしたね。データのアイデアは持ち寄っていましたが、「これはポケモンらしくない」とか三浦さんに言われたり(笑)。

三浦さんはポケモンのことをよく知っているので、コマの円の区切りも工夫していたりしましたね。たとえば「リザードン」だと、後ろに「アイアンテール」というワザがあって尻尾から繰り出す様子をイメージしていたり。なかなか気づかないとは思いますが、そういうこだわりがあるんです。

鈴木:このゲームは相手のゴールに行ける4つのルートがあるのですが、そこで待ち構えるポケモンに対してどのポケモンを出していくかが戦術的に大事なところですね。相手のデッキに対してどういうデッキで挑むか、敵のフィギュアに対してどのフィギュアで対抗するのかという、組み合わせが重要なんですよね。

三浦:対抗策の裏をかかれたりとかもありますよね。将棋と似ているかもしれませんが、相手にわざと誘うような一手を打ち……。

大山:そして別のルートを攻めるというような。あと、3マス動けるけれどもわざと途中で止めて相手を惑わせるとか、いろいろな戦法があるんです。

三浦:たとえるならば、スポーツに近いイメージで作っていました。『ポケモンコマスター』は最終的にゴールを取れば勝ちなので、1点取れば勝てるサッカーやラグビーみたいなものでしょうか。その1点をいかに取るか、どこまでリスクを取って攻めるか、あるいは慎重に守るか……という遊び方を考えて作りました。

大山:相手が対抗するフィギュアを当ててきた時にプレートでポケモンを入れ替えて自分に有利な組合せに変えるとかは、サッカーでいうところの“サイドを変える”ような感じでしょうか。あと、フィギュアの攻撃には運が絡みますが、単純に運に頼るのではなく「この確率なら攻撃しても大丈夫だろう」というところまで考えてもらうといいと思います。野球でいえば打率を見てアテにするような感じでしょうか。

──論理的でありながら運も絡み、かつそのあたりも考慮して戦うというあたり、『ポケットモンスター』シリーズの対人戦にも似たものを感じました。

三浦:やはりポケモンが好きな方にも遊んでいただくゲームなので、わかってないと思われないようなゲームに仕上げていきました。

大山:そういえば、「タイプ相性がなくてポケモンらしくない」と言われることもあるようなのですが、そこに関しては悩んだ挙句やめました。タイプを示すマークもあって一応バトルにも関係してくるのですが、弱点というものを採用するとあまりにも複雑になってしまうんですね。タイプ相性を知らなくとも遊べるようにしたかったですし、単純にアナログの時は情報を載せる場所がなかったという切実な問題もありました。

三浦:わかりやすさといえば、ポケモンのワザを表すルーレットにも気を使っています。円グラフのようになっていれば直感的にわかりやすいと思いますし。アプリなら別の表現もありえたと思うのですが、今回はうまく元のデザインを汲んでいただきました。

◆立ちはだかる敵であり頼れる先生でもある“AI”

──『ポケモンコマスター』のルールをAIに落としこむのは相当苦労されましたか?

伊藤:2年前にはじめて『TFG』を見せていただいた時、率直に言って「ヤバいな」と思いました(笑)。ルールの複雑さもそうなのですが、やはりAIは完全情報ゲームの中で活躍するのでランダム要素があると難しいんですよね。なので、本当にAIが強くなるかと途中までドキドキしていました。

ただ、途中からは一気に強くなりましたね。確かに運は絡むのですが、フィギュアの動かし方や戦略を考えて確実に勝利を掴めるようになりました。

──何かブレイクスルーがあったわけですね。

伊藤:AIにルールを教えたあとは、プログラム上で何百万局も延々と戦わせ、その中から勝率の高い手を選びより賢くさせていくということを半年から一年くらい続けていました。はじめはまだヨチヨチ歩きなAIだったのですが、AIの強化を続けるうちに1度か2度ブレイクスルーがあり、そう簡単に勝てないというレベルまで達しているのではと思っています。

──将棋と比べるとどちらが複雑でしょうか?

伊藤:僕はAIエンジニアではないので断言はできないのですが、おそらく『ポケモンコマスター』のほうがたいへんだと思います。拡張性が高く確率もあるというのは、手こずった点でもありやりごたえがあった点でもありますね。これができたことで皆の自信になりましたし、これから要素が増えていっても強さを維持していきたいですね。

ランクマッチで使える「スーパーAI」は、ダイヤ(もしくはAIチケット)こそ必要となりますが、最高峰の技術が詰まっていて勝利に大きく貢献してくれます。特に、戦局に大きな影響を与えるゲーム最初の数ターンに使うと効果的です。

──大山さんでもなかなか勝てないような感じになりましたか?

大山:いやあ、勝てないですね! AIを使わず3つ目のホテルの上層あたりに辿り着いて苦戦していたのですが、「AI先生お願いします!」と頼んだところ勝てたりして(笑)。

伊藤:悩んだ時にAIボタンを押すとすごくいい手を打ってくれますし、その手を見て対処法がわかるようになっていますね。最初はフィギュアの動かし方やワザもわからない時があったりすると思いますが、それもAIボタンが解決してくれますので、困ったら気軽に押してみてください。

大山:最初は相手のフィギュアにどのフィギュアをぶつけたらいいかわからないと思うので、そこはAI先生の動きを参考にするといいですね。それでプレイヤー自身も成長できるでしょうし。

三浦:AIによって、ゲームの奥深さに少しずつ触れつつ、ステップアップしていくことができるとしたらすごく良いことですよね。はじめは「AIはなんでこんなことしているんだろう?」と思うかもしれませんが、きちんと理由があったりするわけです。逆にAIがプレイヤーに対して「ここはプレートの使い時だろう!」と思ってる時もあるかもしれませんが。

一同笑い

──そういえば、クエストのAIはプレートを考慮しないんですよね。そこは自分で考える必要があるというわけですね。

伊藤:はい、クエストとオンライン(ランクマッチ)のAIは別物になっています。オンラインのAIはすべての手を読むことができるので、用意できる最強のものを採用しています。ランクマッチでどうしても勝ちたいという場合は、ぜひAIを頼ってみてください。AIは一手押す瞬間に200~300手を考えているので、大抵の場合はすごくいい手を打ってくれますね。

三浦:逆に、ルームマッチの場合は相手を目眩ましするような手が使えたりしますよね。奇襲するような手を仕掛けるようなことは、『TFG』で大山さんともよくやりあってました。そのあたりはAIには通じませんが(笑)。

大山:囲む罠なんかを作ると人間は引っかかってくれるのですが、AIはその先まで読んで布陣してきますね。

──最強レベルのAIともなると、人間に勝ち目がなかったりするのでしょうか?

伊藤:AIのほうがかなり優勢になるとは思いますが、確率の要素があるので100%勝つということはまずないでしょうね。そういえば、三浦さんと“人間のチャンピオン VS 最強のAI”みたいなことをいつかやりたいと話したことがありました。僕らが作ったAIなら負けないという自信があります! あ、でも一発勝負だと運が絡むので3戦くらいだと……(笑)。

鈴木:デッキは人間が用意するしかないのでそこをどうするかですね。

大山:デッキも使いこなし方で強くなりますよね。クエストだと「ビッパ」がたくさんいて本当にそれでいいの? みたいなデッキもあるんですが、戦ってみると意外と強かったりして。

三浦:『ポケモンコマスター』は、デッキの作り方、プレイングスキル、そして運の3つを軸に考えています。そのうち2つが勝っていれば勝利を掴めるという感じですね。

◆これまで、そしてこれからの『ポケモンコマスター』

──少し個人的な興味にもなってしまうのですが、『ポケモンコマスター』では今後メガシンカポケモンも登場したりするのでしょうか?

鈴木:先々はいろいろ用意しています、とだけ(笑)。現在(取材当時)ゲームでは103体のポケモンがゲーム内に登録されていますが、これからどういったポケモンが登場したりするのかは楽しみにしていただければと思います。

──新しいポケモンのフィギュアの登場で、これまで影が薄かったポケモンの株が急上昇することもありえるわけですね。

鈴木:これまで活躍していなかったはずのポケモンのフィギュアが強くなったり、逆にすごく強かったポケモンが新しいフィギュアによってうまく動けなくなったりということもあるでしょうね。そして、それがまた追加で変わっていったり……。そういう移り変わりも楽しんで欲しいですね。

三浦:たくさん用意してあるので、しかるべきタイミングでアップデートが行われていくということで(笑)。

──『ポケモンコマスター』というタイトルはどのように決まったのでしょうか?

大山:そういえば、僕は知らないというか教えてもらってないですね。

鈴木:タイトルは僕のところで決めました。いくつか案はあったのですが、駒(コマ)という単語がゲームをわかりやすく表現していますし、さらにコマを“スター”のように活躍させたいということで「コマスター」という言葉が生まれました。

三浦:一回聞いたら忘れない名前ですよね。『ポケとる』なんかもそうですが、そのままな感じで。

鈴木:ちなみに「コマスター」は、フィギュアやAIと一緒に強くなっていって欲しいという意味で、接頭辞の“co”(ともに、という意味合い)と“master”を掛けあわせた言葉でもあります。

──ところで、『ポケモンコマスター』はクエストの登場キャラクターも印象的ですよね。

鈴木:まず対人戦を遊ぶ前に、フィギュアの組み合わせや戦術を段階的に覚えていただいたほうが良いと考え、ストーリーを用意しました。キャラクターも基本的にHEROZさんにお願いして、我々がポケモンの世界に合うかどうかチェックするという形でしたね。

──ツンデレお嬢様「シャロン」や、喋りが古風(?)な「ナジャ」など強烈なキャラクターが多くてびっくりしました。

伊藤:いろいろ打ち合わせしていくうちに考えが広がっていって、みんないいキャラに仕上がりましたね。僕は「ユージ」がすごい好きです。

鈴木:この世界のポケモンはあくまでフィギュアとして登場するんですね。なので、その分キャラクターは尖った印象を与えるようになっています。

三浦:ストーリーがあることで、少しずつステップアップしていくゲームデザインとしても良い感じになっていますね。

大山:ステップアップといえばね……、途中から出てくる「サンド」がね……、ひどいんですよ。

一同笑い

──特性をよく知らなかった時、何が起こったかわからなくてびっくりしました。

サンドは「すながくれ」という特性を持っており、攻撃してきた相手をくぐり抜けて移動することが可能。これを忘れてうっかり攻撃すると、突然奥へ攻められて一気に劣勢になってしまうことも。

大山:わかっていても引っかかるんですよ! そういうのを少しずつ学習していくと強くなるんですけどね。

──本作では課金上限額が用意されていますが、これはどのような形で設定していったのでしょうか?

鈴木:「トレボ」といういわゆる“ガチャ”のようなシステムを採用するうえでさまざまな議論はありましたが、もともとのトレーディングフィギュアでもレアなものがあったりと、ランダム性があるわけですね。本作のゲームデザインもそれに合わせた形になっているわけで、アプリ化するからといってあまりかけ離れた設定にはしたくなく、結果として現在のシステムになりました。

鈴木:また、世間から批判を浴びることのあるシステムですし、お客さんから過剰にお金をいただくようなことも避けたいということで、ラインを探り議論を重ねて上限を設定しました。ただ、制限を設けることで手に入らないフィギュアが出てきてしまうということはないように気を使っています。

──トレボを引くと「マテリアル」が手に入りますよね。あれもその一環ということでしょうか。

トレボを引くことで手に入るマテリアルは、任意のフィギュアと交換することができます。必要なマテリアル数はフィギュアごとに異なり、レア度が高いほど必要マテリアル数が多い傾向にあります。

鈴木:そうですね。「どうしてもあのポケモンのフィギュアが欲しい!」という方が手に入れられるように、あるいは「戦略としてあのフィギュアが必須だ」という時に入手できるように考えています。好きなポケモンと一緒に戦えないのは寂しいですからね。

──では、最後にユーザーの方々へのコメントをお願いします。

三浦:対人戦がすごく楽しいゲームなので、ぜひ遊んでいただきたいと思っています。強さだけではなく「こんな面白いデッキを作った」みたいな戦い方もあるので、そういった部分も楽しんでいただけると嬉しいです。

大山:ルームマッチの機能を使って、近くの人と騒ぎながら対戦するのが楽しいのでおすすめです。もちろんオンラインでも良いのですが、知り合い同士で遊ぶのも違う楽しさがあります。

伊藤:ルールがわからなかったり困った時は、ぜひ気軽にAIを使ってみてください。そして、自分が強くなったらオンライン対戦に挑むとより楽しいと思います。今後もいろいろアップデートを控えていますので、そのあたりも楽しみにしていただければ嬉しいです。

鈴木:ぜひ好きなポケモンで戦って欲しいなと思っています。あと、クエストを進めてフィギュアを集める楽しみもありますし、レベル5まで育てる楽しみもありますね。なかなかレベルが上がらないという声も頂いているのですが、その分しっかりと強くなりますよ。ポケモンらしさと『ポケモンコマスター』の新しさを感じていただけると嬉しいです。

──本日はありがとうございました。

『ポケモンコマスター』は、ポケモンの姿を借りただけのタイトルではなく、ポケモンらしさを追い求めつつ、しかしボードゲームとしての良さを殺してしまう要素は排除するというこだわりを持って作られているタイトルと言えるでしょう。プレイしているうえでもそのことは伝わってきましたが、ルーレットの形もポケモンをイメージして作られているなど、想像を超える部分まで作りこまれていました。

また、スマホ向けの基本プレイ無料タイトルという印象が大きいですが、あくまで原作のアナログゲームをスマホ向けにしたという部分も興味深い話です。昨今はガチャでさまざまな騒動が起きていますが、本作に関してはプレイヤーとともに納得できる作りを目指していることも感じ取れました。

そして、AIのさらなる可能性も気になるところ。もし、最強のAIと人間のチャンピオンとの対戦が実現したのであれば、競技としてさらなる可能性が見えてくるかもしれません。

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『ポケモンコマスター』は配信中で、基本プレイ無料(ゲーム内課金制)です。

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