約10年ぶりに改訂された学習指導要領がいよいよ本格化します。2020年度に小学校、21年度に中学校で、22年度から高校と順次実施されます。
Q:4月から小学校で必修化される「プログラミング教育」。何年生から、どんなことを学ぶのでしょうか?
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「プログラミング教育」といっても、実際にプログラミング言語を学び、「プログラマー」を育成するものではありません。教科としての「プログラミング」ではなく、各教科や総合学習の時間にプログラミングを活用します。教科学習の内容を、プログラミングを通して、より楽しく学びながら、物事を論理的に考える「プログラミング的思考」を育みます。
例えば、文部科学省が示した取り組み例によると、小学4年生の音楽では、「さまざまなリズム・パターンを組みあわせて音楽を作る」。社会では、「都道府県の特徴を組みあわせて、47都道府県の名前と位置を見つける」などが挙げられています。小学5、6年生では、算数や理科で、プログラミングの要素が取り入れられます。
各教科で、必ずしもコンピューターが用いられるわけではありませんが、これまでよりもコンピューターに触れる機会が増えると考えられます。単に、文字を入力するなどではなく、課題解決のためにパズルを並び替えるなど、子どもたちが興味を持って取り組める内容となるでしょう。
Q:なぜ「プログラミング教育」が導入されるのでしょうか?
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背景には、社会の変化があります。IoT(Internet of Things/モノのインターネット)やAI(人工知能)の活用によりもたらされる「第4次産業革命時代」や、グローバル社会に対応できる人材を育てることが急務となっています。
今後、IT業界の市場規模が拡大すると同時に、ITスキルへのニーズもますます高まるでしょう。そのため、物事を柔軟にとらえることができる早い段階から、プログラミング的思考を身に付けることが必要なのです。
Q:プログラミング教育では、どんな力が身に付きますか?
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大きく3つの力が身に付きます。
①論理的思考:物事を整理して、順序立てて考える
②創造力:新しいアイデアを生み出し、実現する
③問題解決力:問題に直面したときに、対応できる
これらの力が役立つのは、将来IT関連の仕事に就きたい人だけではありません。今後、あらゆる職業で、情報技術を活用する力が求められるため、社会に出たときに広く役立つ力となります。
Q:親世代は学んだ経験がない人が多い「プログラミング」。今から、子どもが家庭学習でできることは?
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保護者からは、「プログラミングなんて本当に必要なの?」という声が聞かれます。まずは、これからのAI時代に、「プログラミングを学ぶことは当たり前」という意識に変えてください。
実は、普段の生活でも「プログラミング的思考」を活用している場面はたくさんあります。
例えば、料理では、必要な人数分の材料を用意し、段取りよく完成させます。ほかに、掃除や洗濯など、どんな家事にも「段取り力」が求められるはずです。子どもにいろいろなお手伝いをさせ、段取りを意識させることは、順序よく、課題解決を導く「プログラミング的思考」につながります。
Q:文部科学省では、2023年度までに、全国の小中学校の児童・生徒に「1人1台」のパソコンを導入する構想を発表しています。プログラミング教育に与える影響は?
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「1人1台」のパソコンが、全員に対して効果的であるとは言いきれません。ただ、デジタルに強い児童・生徒については、その可能性を見出し、将来、AI技術などを活用できる人材へと開花させるきっかけづくりになるでしょう。
また、一人一人のモラルやセキュリティーなど情報活用能力の基礎力を向上させ、中学・高校でのより専門性の高い学習内容につなぐ目的もあると考えられます。中学校では、技術・家庭科(技術分野)で、プログラミングに関する内容が増加。高校では、2022年度に「情報Ⅰ」が必修化され、すべての生徒がプログラミングの基礎を学習します。
小学校では、プログラミング教室などでも使用している、パズル感覚で学べる教材などを用いる学校も多いと考えられます。
(田中 正徳/塾講師)