近年家族のみで行う家族葬の割合が増加していたところに、新型コロナウィルス禍によって行動様式の変化が起こり、ますます一般葬の割合は減少しました。葬儀規模は年々小さい方へと移行する傾向にあります。
日本人の個人主義化や家族性の変化から、コロナの流行が始まる前から「葬儀はしなくていい」という声が増加し、直葬の割合は増えつつあります。元々は、身寄りがなくご遺体の引き取り手がいない場合に、警察や役所の方が火葬のみ手配することを直葬と呼んでいました。そのためか、直葬が何かを知る人であれば「父は(母は)直葬にしたんです」と言いにくいという罪悪感が少々伴いがちです。そこで葬儀社が、直葬のことを火葬式と名を変えてその罪悪感を軽くし、依頼しやすいようにしたのです。では、なぜ葬儀社は、安価な家族葬よりさらに儲からない火葬式を扱いたいのでしょう。
そこで、万一の際、気をつけていただきたいことがあります。昨今の終活ブームの中、希望の葬儀の形式を家族に伝える方も多くなりました。故人から「にぎやかにやって」と言われていれば一般葬を検討するでしょう。「こじんまりと家族だけで」と言われていれば、遺族は家族葬を検討します。「葬儀になるべくお金をかけないで」と言われていた場合は要注意です。パンフレットに「火葬式・家族葬・一般葬」とプランが並んでいると、火葬式は故人が望んでいた【一番安い葬儀のプラン】だと認識しかねない紛らわしさがあります。もちろん、殆どの葬儀社は「火葬式は直葬のことで、直葬とは…」と説明をしてくれるでしょうが、説明が十分でないこともあるかもしれませんし、中には火葬式を「よりシンプルな家族葬の形」などと定義している場合もあるので、注意が必要です。理解した上で直葬を選んでも、後悔する遺族が後を絶ちません。
(薩野 京子/上級終活カウンセラー)