中小企業基盤整備機構の2023年5月30日に発表によりますと、事業承継の問題に直面している中小・零細企業への支援で全国に展開されている「事業承継・引継ぎ支援センター」の活動が、昨年度に過去最高の成果を達成したとのことです。相談件数と事業譲渡(M&A)の成約件数が共に過去最高を記録したとのことで、これは明るいニュースと言えるでしょう。
しかし、「6割を下回った」という調査結果は、対象となった約6割の企業で後継者が決まっていないということです。これは、非常に高い数値です。事業承継にあまり関心のない方には理解できない数値ではないでしょうか?実際、昔の私も「なぜ、親族が継がないのか」と不思議でした。前述の帝国データバンクの調査でも、「長らく子供が最も多い後継者候補だったが、とうとう非同族がその位置を占めるに至った」とのことです。この調査結果も以前の私であれば「なぜ、子供が会社を継がないのか?」と疑問に思ったことでしょう。しかし、会社を継いだ二代目社長(子供)から、日々相談を受けるようになり、今では「たしかに、会社を継ぎたくない方も多いだろうな」と思うようになりました。いくつかの理由があります。
会社経営の大変さ大きな理由として多くの会社の経営が厳しい現実があります。特に赤字経営の会社を継ぐことには抵抗があるでしょう。
問題は会社経営の大変さだけではありません。事業の内容についても言えます。自分が興した会社は自分がやりたいことを事業として始めます。経営者には強い思いがあるはずです。しかし、ご家族(子供)は会社の事業が自分のやりたい事業だとは限りません。
ご家族以外への承継で言えば、会社の役員や社員への承継も選択肢の一つですが、会社の役員や社員への承継は、株式の承継等で金銭的な課題が生じます。そんな中、事業譲渡(M&A)は有力な選択肢の一つです。事業譲渡(M&A)は一族内での承継で発生し得る様々な問題を解決する可能性を秘めているからです。日経BPコンサルティング・周年事業ラボの調査によると、『創業年数100年以上200年以上』の企業数を国別に調査したところ、日本はともにダントツで世界1位となったそうです。
フェスティナレンテ社会保険労務士事務所
代表 小嶋裕司
(小嶋 裕司/社会保険労務士)