化粧品の効果を実感するためには「肌にどれだけ成分が届くか」がとても重要です。ですが、「ナールスゲン」や「ダルトンルール」といった専門用語は聞き慣れない方も多いかもしれません。
を、やさしい言葉でわかりやすく解説します。スキンケア製品を選ぶ際に役立つ知識として、ぜひお読みください。1.肌への化粧品成分の浸透力を決める「500ダルトンルール」
「せっかく高価な美容液を使っているのに、なかなか効果を実感できない」
そんな経験はありませんか?化粧品の効果を左右する最も重要な要素の一つが「浸透力」です。どんなに優れた美容成分でも、肌の奥深くまで届かなければその真価を発揮することはできません。
この分子量と皮膚浸透の関係を説明する重要な概念が「500ダルトンルール」です。
この科学的な法則を理解することで、より効果的な化粧品選びが可能になります。
この記事では、500ダルトンルールについて紹介するとともに、分子量約331ダルトンのナールスゲンを簡単に紹介します。
500ダルトンルールとは、「分子量500ダルトン以下の小さな物質は健常な皮膚を通過するが、500ダルトンより大きな物質は健常な皮膚を通過しにくい」という経皮吸収研究の基本的な法則です。
この法則は、もともと医薬品の経皮吸収研究から導き出されたもので、現在では化粧品業界でも重要な指標として用いられています。
私たちの皮膚は、外部からの異物の侵入を防ぎ、体内からの水分蒸散を防ぐ重要な防御システムを持っています。皮膚は外部からの異物の侵入を防いだり、体内からの水分蒸散を防ぐことからヒトが地上で生きる上で極めて重要な組織とされています。
皮膚の最外層にある角質層は、死んだ細胞(角質細胞)と細胞間脂質によって構成されており、これが肌を守るバリアとして機能しています。
このバリア機能は、悪い物質が入るのを防ぐ点では大きなメリットです。
一方、肌に良い成分を内部に届ける点ではデメリットなのです。
<参考記事>
お肌のバリア機能とは?低下の原因を知って対策で美肌へ!
健常な皮膚の場合では、角層が有するバリア機能が大きく低下しない限り、分子量が500ダルトンより大きいサイズの分子が効果を示すだけの十分な量が入らないことが知られています。
具体的には、500ダルトンより大きい成分の場合、100塗っても0.1か、それ以下しか24時間経過しても浸透しないのに対し、500ダルトンより小さい薬で、かつ皮膚に塗って効果を示すものは、100塗って50以上皮膚に浸透します。
これは理解が比較的簡単だと思いますが、分子の大きさが小さいほど化粧品成分は肌に浸透しやすいのです。
ナールスゲンは、分子量約331ダルトンの小さな美容成分です。
ナールスゲンは、京都大学化学研究所の平竹潤教授グループと大阪市立大学大学院の小島明子准教授グループとの共同研究の成果を基にして、日本科学技術振興機構(JST)の支援により設立された株式会社ナールスコーポレーションが開発し、2012年に販売を開始した画期的なエイジングケア化粧品成分です。
分子量が約331といったとても小さなアミノ酸誘導体であるナールスゲンは、500ダルトンルールに合致した成分として注目されています。
この成分の最大の特徴は、コラーゲンなどをつくり出す機能が低下した静止状態の細胞にはたらきかけ細胞を活性化させることで、コラーゲン、エラスチンやヒアルロン酸をよみがえらせることです。
具体的な効果として、細胞内でのコラーゲンの産生量が2~3倍に、肌の張りに必要不可欠な成分であるエラスチンの産生量も1.5倍以上に増加することが確認されています。また、ヒト皮膚の表皮細胞を活性化し、抗酸化物質としてよく知られるグルタチオンの産生を促進する機能も持っています。
<参考記事>
ナールスゲンのうれしい10の特徴
化粧品によく配合される成分の中には、500ダルトンを大きく超える高分子成分も多数存在します。代表的なものとして、ヒアルロン酸(分子量:約100万~200万ダルトン)やコラーゲン(分子量:約30万ダルトン)が挙げられます。
これらの高分子成分は、500ダルトンルールに従えば皮膚への浸透は困難とされています。しかし、これらの成分にも重要な役割があります。皮膚表面に留まることで保湿膜を形成し、水分蒸散を防ぐ効果や、一時的な保湿効果を提供します。
近年の化粧品技術の発達により、500ダルトンを超える成分の皮膚浸透を向上させる技術が開発されています。
その代表がナノ化技術で、成分を超微細な粒子にすることで、角質層の隙間を通過しやすくする技術です。ナノ化されたヒアルロン酸やコラーゲンが実用化されています。
浸技術としては、ほかにも分子を小さくするアプローチ以外に、リポソーム化技術やイオン導入、エレクトロポレーションなどがあります。
500ダルトンルールは、化粧品成分の皮膚浸透を理解する上で極めて重要な指標です。この法則を理解することで、より科学的根拠に基づいた化粧品選びが可能になります。
分子量500ダルトン以下の成分、例えばナールスゲン(331ダルトン)などは、優れた皮膚浸透性を持ち、実際に肌の内部で効果を発揮できる可能性が高い成分です。
一方で、500ダルトンを超える高分子成分も、表面での保湿効果や、先進的な浸透技術との組み合わせにより、重要な役割を果たしています。現在も様々な浸透技術の研究開発が進められており、今後さらに効果的な化粧品の開発が期待されます。
化粧品選びにおいて、成分の分子量という新たな指標を活用し、より効果的なスキンケアを実現していきましょう。
(富本 充昭/エイジングケアやスキンケアのアドバイザー)