女性なら100%知っている「保湿」という言葉。しかし、90%以上の方は正しく理解していない気がします。
バーで女性二人が飲んでいる際に、美容やスキンケアの話題になりました。
私は、その話を横で聞いていた一コマです。
女性Aさん「私って乾燥肌だから、もっと保湿力の高い化粧品探しているのよね~」
女性Bさん「そうよね、保湿力の高い化粧品って、どんどん肌に吸い込んでいく感じがするよね!」
女性Aさん「ちがうのよ、私が求める保湿力って、こってりしたクリームで肌から水分が逃げていかない感じがするタイプなのよね~」
女性Bさん「え、そうなの。しっかり浸透する化粧水の方が保湿力が高いとおもうんだけどな~」
二人の会話に突っ込みはしませんでしたが、保湿といったとき、きっとこの女性たちの会話の様にそれぞれが自分なりに「保湿」にイメージを持っているんだろうな、と思って話を聞いていました。
二人ともある意味、保湿の側面を話しているので、間違っているわけではありませんが、正しく理解しているとは言えません。
おそらく、スキンケアの理論などをしっかり学んでいと保湿を正しく理解するのは難しいと思います。
感覚的ですが、おそらく90%以上の女性は良く似た会話をしていると思います。
そこで、スキンケアやエイジングケアの基本である「保湿」について解説します。
このシリーズは2回に分けますが、今回は肌本来の保湿力(保湿能)にフォーカスします。
日本化粧品工業会のホームページでは、『「保湿」とは皮膚の水分を補ったり、水分の蒸発を防いだりして、うるおいを保つことです。
これを私なりに解釈すると「保湿」とは、「肌が本来持っている「みずからうるおう力=保湿能」を生かすためにできるスキンケア」です。
そんなスキンケアに使うのが、化粧水や美容液、乳液、保湿クリームなどです。
そして、それらには水と保湿成分が配合されています。
保湿の実践は、肌状態や肌質に合ったスキンケアアイテムを選んで正しく使うことなのです。
<参照元>
日本化粧品工業会 化粧品用語解説「保湿とエモリエント」
<参考記事>
肌の保湿能に大切な角層は部位・年齢・季節で水分量が違う!
お肌の保湿とは?本当にわかるスキンケアの基本と保湿成分
保湿を考えるには、肌の構造や役割をしることも大切です。
肌は、外側から大きく表皮と真皮にわかれます。さらに奥には、皮下組織があります。
その中で、保湿と関係が深いのが表皮です。
表皮は上から、角層、顆粒層、有棘層、基底層の4つに分かれますが、特に保湿と関係が深いのは一番外側にある角層です。
この角層では、アミノ酸や尿素などでできた天然保湿因子(NMF)があります。
天然保湿因子は、水分をしっかり引き寄せる(吸着する)はたらきがあります。
また、角質にはセラミドなどの油分でできた角質細胞間脂質があり、油分と水分がミルフィーユのような交互に整列した状態を作ります。これによって、水分が油分に挟み込まれた状態になります。
さらに、角層の表面を皮脂と汗が混ざり合ってできた皮脂膜がベールのように覆っています。これによって、肌の内部から水分が蒸散しにくい状態ができるのです。
この肌内部の構造を役割によって、肌が持つ保湿能がはたらくのです。
つまり、肌の保湿能には、次の3つのはたらきが大いにかかわってるのです。
・角層で天然保湿因子が水分を引き寄せて内部にとどめる
・角層で角質細胞間脂質が水分を挟み込んで内部にとどめる
・皮脂膜によって、肌表面の水分の蒸散を防ぐ
主にこの3つのはたらきで肌の水分量が保たれたり、外部からの異物の侵入を防ぎます。
それを「肌のバリア機能」と呼びます。
肌が保湿され、健やかな状態になるかどうかはバリア機能にかかっています。
<参考記事>
表皮の角質層の構造・はたらきと角質ケアの方法・対策は?
お肌のバリア機能とは?低下の原因を知って対策で美肌へ!
バリア機能が正しくはたらくためにもう1つ大切なのが、肌のターンオーバーです。
先ほど、「天然保湿因子」や「角質細胞間脂質」に触れましたが、これらはターンオーバーの過程で生まれます。
肌はターンオーバーとは、表皮の新陳代謝のことです。具体的には、表皮の奥の基底層で生まれた細胞が、有棘層、顆粒層を通って肌表面まで上がってきて、最後に角層細胞となって、役割を終えて垢となってはがれるプロセスです。
このプロセスは、肌をいつもフレッシュな状態に保つために大切です。
なぜなら、その中で「天然保湿因子」や「角質細胞間脂質」が作られているからです。
だから、バリア機能が正しくはたらくためには、ターンオーバーも正常である必要があるのです。
このように肌のターンオーバーも保湿にとってとても大切なのです。
<参考記事>
お肌のターンオーバーの改善と正常化は促進だけではNG!
肌のバリア機能もターンオーバーも健やかなら、スキンケアは不要です。
しかし、ほとんどの女性はスキンケアやエイジングケアの必要性を感じますよね。
最初に紹介した二人の女性のエピソードも化粧品の保湿力による会話でした。
スキンケアやエイジングケアによる保湿が必要なのは、肌本来の保湿能に悪影響を及ぼし、バリア機能を低下させたり、ターンオーバーを乱す原因があるからです。
ここではそれらを紹介します。
年齢を重ねると肌のターンオーバーは徐々に遅くなります。
つまり、加齢で肌の保湿能が下がり、保湿力も低下するのです。2)気温の低下や空気の乾燥
寒い冬は冷房の効いた部屋では乾燥を感じますね。
気温が下がると肌のターンオーバーのはたらきは鈍ります。
また、空気の乾燥で水分が肌から蒸散されやすくなります。
紫外線はバリア機能にダメージを与えます。その結果、角層から水分が減ってしまいます。
4)間違ったスキンケア洗顔やクレンジングの際に肌をゴシゴシとこすったり、刺激の強いもの、脱脂力の良いものを使うと天然保湿因子や角質細胞間脂質、皮脂を洗い流してしまい、肌の保湿力低下につながります。
また、過度な回数のスクラブ洗顔や毛穴パック、ピーリンはバリア機能を弱めてしまいます。
喫煙や過度な飲酒、ストレスの多い生活、運動不足などは肌のターンオーバーの乱れの原因になります。
どんな方でも今あげたものの影響を受けない方はいません。そのため、肌の乾燥を感じることはだれしもありますね。
こうした外部の環境や内部の環境の変化を受けて、肌の保湿状態を良い状態の戻すために行うのが、スキンケア化粧品による保湿です。5.まとめ
多くの女性が「保湿」について漠然としたイメージを持っていますが、正しい理解のためには肌の構造と機能を知ることが重要です。
真の保湿とは、肌が本来持つ「保湿能」を生かすスキンケアのことです。肌の保湿能は、角層の天然保湿因子が水分を引き寄せる働き、角質細胞間脂質が水分を挟み込む働き、そして皮脂膜が水分蒸散を防ぐ働きの3つで構成されています。これらがバリア機能として連携し、健やかな肌状態を維持します。
また、これらの保湿成分はターンオーバーの過程で生まれるため、正常な新陳代謝も保湿には欠かせません。
しかし、加齢、環境要因、紫外線、間違ったスキンケア、生活習慣の乱れなどが肌本来の保湿能を低下させるため、適切なスキンケア化粧品による保湿ケアが必要になります。次回は、具体的なスキンケアによる保湿方法について詳しく解説します。
(富本 充昭/エイジングケアやスキンケアのアドバイザー)