毎朝満員電車に揺られ、会社で言われたことをこなし、家に帰れば住宅ローンと子どもの教育費の心配。「頑張れば報われる」と信じて働いてきたのに、なぜか心の奥底で「このままで大丈夫なのか?」という不安が消えません。
この閉塞感の正体は「すべき思考」にあります。「もっと頑張るべき」「期待に応えるべき」「失敗してはいけない」 こうした思考パターンが、あなたの可能性を狭めているのです。
価値観発見コーチング「TERASIS」の荒井かなえさんは、かつて大手外資系IT企業のコンサルタントでした。しかし「以前の私は、本当に『すべき思考』の塊でした。『優秀であること』が重要だと思い込み、他人の期待に応えることばかり考えて生きていました」と振り返ります。
転機は価値観の見つめ直しでした。「私の大切な価値観には『学び』『気楽』『軽やか』があったのです。私にとって『優秀であること』は全く重要でないと気づきました」。この発見により外資系企業を退職し、現在はコーチとして独立。「辞めたことを後悔したことは1度もありません」
閉塞感の原因は、自分の価値観を無視して「すべき」で生きているから。本当の価値観を発見し「したい」で行動すれば、人生は劇的に変わります。
価値観が見えると、人生の主導権を取り戻せる多くの会社員は「なんとなく」で選択しています。
「でも価値観が明確になると、『この仕事は私の価値観に合っているか?』という内発的な基準で判断できるようになります」と荒井さんは説明します。「価値観に基づいた選択をしていくと、自分の人生の主導権を、しっかり自分で握れている感覚があるのです」
価値観に基づいた行動は継続力も生みます。「外的な動機による行動は長続きしにくいのですが、価値観に基づいた行動は『やらされている感』がなく、自然と継続しやすくなります」
感情のサインから価値観を発見する実践法では、どうやって自分の価値観を見つければよいのでしょうか?
「最近心が動いたことを思い出してみてください。嬉しかったこと、感動したこと、逆に悲しかったり怒ったりしたことでも構いません。そして『なぜそのような感情が湧いたのか?』を深掘りしてみてください」
感情は価値観のサインです。友人を手助けできて嬉しかったなら「貢献」があなたの価値観かもしれません。約束を破られて怒ったなら「信頼」が大切な価値観かもしれません。
「見つけた価値観を基に、『この価値観を大切にしながら生きるとしたら、どんな1日を過ごしたいか?』を具体的にイメージしてみてください」
理想が見えたら、次は行動です。「習慣化のコツは『小さく始める』ことです。例えば『毎日1時間読書する』ではなく、『毎日1ページだけ読む』から始める。物足りないくらい小さな行動から始めることで、脳の抵抗を最小限に抑えることができます」
制約の中でも「軽やかで楽しい人生」は実現できる住宅ローンも子どもの教育費も現実問題として存在します。
「価値観に沿った生き方を始めると、本当に軽やかで楽しい毎日が送れるようになります。小さな1歩から始めて、少しずつ自分らしい人生を築いていってほしいと思います」と荒井さんは語ります。
まずは今日、感情が動いた瞬間を1つ思い出し、「なぜそう感じたのか?」を問いかけてみてください。その小さな気づきが、人生を変える第1歩になるかもしれません。
インタビュー協力:TERASIS 荒井かなえさん (https://terasis.jp/)
(新井 一/起業コンサルタント)