「初めて台本を読ませていただいたとき、“出会った!”と感じたんです。寧子の心の葛藤が理解できたし、どこか自分の人生と重なる気がしました。
映画『生きているだけで、愛。』(11月9日より全国ロードショー)で主演を務めた趣里(28)は、出演を決意したときの心境をこう語った。
彼女が演じた主人公の寧子は、うつが招く過眠症のせいでひきこもり状態。同棲中の恋人・津奈木(菅田将暉)はいるが、自分の感情がコントロールできず、日々彼に理不尽な感情をぶつけてしまう。じつに、生きづらい性格の女性だ。
「生きていくうえでいろいろな葛藤って、人は誰しもあると思います。変わりたいのに変われない自分。とても普遍的な話だと思って撮影に臨みました。そうは言っても、寧子はかなりエキセントリックですよね(笑)」(趣里・以下同)
危ういほどに繊細で、まっすぐすぎるがゆえに常軌を逸した言動に走ってしまう寧子。
「役作りは、あえて言えば“何も考えないこと”ですね。寧子のことを考え、自分の人生を振り返り、とにかく理解しようと努めて、あとは現場で自然に、監督に導かれるままという感じでした」
クライマックスで寧子は服を脱ぎながら商店街を疾走する。ヌードになることへの抵抗感は?
「それがあまり感じなくて(笑)。
そしてラスト、寧子が文字どおり、津奈木と裸の心で向き合うシーンは印象的だったとも。
「すれ違っていた2人がほんの一瞬でもわかり合えた。その瞬間があったから、寧子はこれからも生きていける。その感覚はとても腑に落ちましたし、“人は一人じゃない”と気付かされた自分がいて、そういう思いを大切に明日からも生きていこうと思いました。人とちゃんと向き合い、相手のことを知るって、当たり前のようだけど、じつは難しいこと。自分自身もいま、人を知ることが活力になっているし、ここからすべて動き出すのかなあと思っています」
原作は、劇作家・小説家の本谷有希子の同名小説。早くも趣里の代表作になると注目されている。
「これほど人の生きざまを思いっきり出している作品は、なかなかないと思います。そして何よりも、『絶対、自分がやりたい!』と思う役に巡り会えたということがうれしい」