「介護保険制度がスタートしてからまもなく20年になります。現在、制度改正に向けた審議会が行われていますが、利用者の自己負担増となるような改悪プランが検討されているのです」
そう懸念を示すのは淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授。
「介護保険制度が始まった当初、要介護認定された高齢者が介護サービスを利用する場合、年収に関係なく、自己負担は1割でした。ところが’15年には280万円以上の年収のある人が2割負担とされ、昨年には年収340万円以上の人が3割の負担とされました。今回の審議会では、2割負担や3割負担の対象者を増やすことが議論されています。とくに2割負担については、厚生年金受給者の平均年収でもある年収190万円以上ある人を対象にする案が具体的に出ています」(結城教授)
所得の基準を下げることで、国民の負担を重くし、国庫の負担を軽くしようという魂胆だ。介護保険部会の委員で「認知症の人と家族の会」常任理事の花俣ふみ代さんはこう危惧している。
「2割負担の対象者が広がると、今まで月2万円でサービスを受けていた人が、月4万円の負担を強いられるようなケースが続出することになります。その結果、介護サービスを抑制したり、食費や医療費など削らざるをえない人が出てくるでしょう」
利用者の金銭的な負担を増やす案はほかにも。現在、利用者の自己負担なしに行われている、在宅サービスの利用計画「ケアプラン」の作成の有料化も焦点の1つ。
「ケアプランは、利用者とその家族、ケアマネージャーと一緒になって作成します。
花俣さんはその影響を懸念する。
「自立支援を目的とした介護サービスの回数を減らしてしまうと、外出したり、人と接触したりする機会が少なくなってしまいます。すると、認知症が重症化したり、足腰が弱くなったりすることに。一方、買い物や洗濯などの日常生活のサポートなど、訪問介護のなかの生活援助サービスの回数を減らしてしまうと、それまで維持できていた暮らしが続けられなくなってしまいます。いずれにせよ、利用者の健康や生活の質を著しく悪化させることになるのです」
審議会は12月まで続けられる。その議論を注視し、国の暴走にストップをかけよう。