『TERRACE HOUSE TOKYO2019-2020』(フジテレビ系/Netflix)に出演していたプロレスラーの木村花さん(享年22)が亡くなってからまもなく1カ月が経とうとしている。
突然の死は世間に大きな衝撃を与えただけでなく、同番組を始めとする恋愛リアリティ番組の“問題”を浮かび上がらせた。
木村さんが同番組の新メンバーとして出演開始したのは19年9月。次第に知名度を増すいっぽうで、SNSでの誹謗中傷が木村さんを襲った。
「3月31日に配信された回で、洗濯機に入っていた花さんの大切な衣装を同居人が洗ってしまったことで、木村さんが激怒する場面が放送されました。この放送をきっかけに木村さんへのバッシングがSNS上で目立つように。連日のように、木村さんへの誹謗中傷がSNS上で書き込まれていました」(テレビ局関係者)
花さんの死を受け、フジテレビは同番組の制作中止を決断。同社の遠藤龍之介社長は5月29日に、「出演者の心の在り方という大変デリケートな問題を番組としてどう扱っていくか、時としてどう救済していくかということについて向き合う私どもの認識が十分ではなかった」とコメント。再発防止も含めた検証チームを立ち上げる意向を表明した。
国会でもSNS上の誹謗中傷への法整備に向けた議論が進むなど、番組制作側のケアに対する注目が集まっている。そこで、数々の恋愛リアリティショーを手掛けてきたフジテレビ、ABEMA、Amazon Prime Videoの3社に今後の方針や対策を聞いてみた。
まずは『TERRACE HOUSE TOKYO2019-2020』の制作体制を目下、検証中のフジテレビ。同社では今も、選ばれた7人の男女がピンク色のラブワゴンで世界を旅する『あいのり African Journey』が放送中だ。
過去シリーズ『あいのり Asian Journey』に出演したでっぱりんも、SNS上では誹謗中傷に悩まされたことをブログで発表。しかし、スタッフの支えが救いになったことも明かしていた。
Netflixでは全エピソードが配信終了しており、次回作も期待されている。しかし同局によると、新シリーズについては「現状、撮影の予定はございません」とし、今後については次の回答が寄せられた。
「撮影期間中は、出演者とスタッフの間ではコミュニケーションをはかってまいりました。『テラスハウス』の検証結果等も踏まえ、出演者に安心して番組出演して頂けるよう更なる環境整備に努めます」
次は『月とオオカミちゃんには騙されない』や『恋する♪週末ホームステイ 2020春』など、現状で最多となる恋愛リアリティ番組を配信しているABEMA。現役高校生といった未成年者も出演しているだけに対応策も入念のようだ。
出演にあたっては、「番組ごとのコンセプトや独自のルールを理解してもらった上で、本人の意向を最重視して出演してもらっている」という。
出演者へのケアについては「年齢層の若い方のご出演も多いので、番組としてもSNSの誹謗中傷を含めた反響について相談しやすい環境を作るなど、できる限りのサポートを行わせていただきながら番組制作を行っております」とし、「インターネットやSNS上での誹謗中傷、嫌がらせへの調査・法的手続きに関する相談窓口」も設置したことを明かした。
具体的な今後の対応策については次のように回答した。
「恋愛リアリティーショーをはじめ年齢層の若い方のご出演も多く、インターネット上での誹謗中傷、風評被害などに対する対応を強化するため、出演者がインターネットやSNS上での誹謗中傷や嫌がらせを受けた場合に、証拠の収集・精査やプロバイダー責任制限法に基づく個人情報の開示請求、警察への被害届の提出、訴訟手続きなどの法的手続きを弁護士事務所と連携しながら行ってまいります」
また、今後も7月に『ABEMA』のコメント機能で、視聴者がコメントをする際に内容に関する注意喚起を促す仕組みをリリースする予定をしているという。
今年4月、『今日、好きになりました。
最後は、1人の独身男性をめぐる“婚活サバイバル”『バチェラー・ジャパン』を配信するAmazon Prime Video。同シリーズはシーズン3まで配信され、今夏には、独身女性が主役の新シリーズ『バチェロレッテ・ジャパン』の配信も予定されている。
驚愕の展開からネット上で大反響を呼んだシーズン3。その中心人物であった岩間恵さんは、Twitterで誹謗中傷を受けていたことを明かしていた。その上で、《リアリティショーに出演した「自己責任」という言葉をいいことに、その後のリアルの生活まで脅かされるほどの作品にしてしまう側にも責任があると思う》と提起。
続けて、《切り取りかたひとつで、視聴者には全く別の人格に映る。番組の見せ場をつくらなきゃならない、面白くしなきゃいけない、というのも理解できるけど、私たちは「出演者」や「役」としてでなく、映っているものが「私」の全てとして視聴者に見られてしまうから》と出演者側の気持ちを綴っていた。
そんな出演者の声にどう対応するのかが気になるところだったが、Amazon側からは「現時点でお答えできることがございませんのでコメントは控えさせていただきます」と回答が寄せられるのみだった。
今後も制作され続けることが予想される恋愛リアリティ番組。