昨日放送された第71回NHK総合「紅白歌合戦」。今年は新型コロナウイルスの影響により初の無観客開催となり、番組内容がどんなものになるか心配の声もありました。

蓋を開けてみれば、意外な盛り上がりを見せていました。お一人お一人の歌唱の素晴らしさはさることながら、今回視聴していて、筆者は3つの可能性を見た気がしました。

■コロナによる歌謡番組の可能性

1つは、言わずもがなコロナによる歌謡番組の可能性です。今回無観客の番組編成は安全面への配慮だけでなく、年末の一体感のようなものをどう演出するか、そして歌が続くというある程度出てしまう単調さをどう払拭するかが、様々練られているように感じました。

たとえば4人組歌謡グループ「純烈」が見せた、視聴者のリモコンのボタン数により演出パターンが変わる手法は、生放送ならではかつ一体感を生み出しやすい取り組みだなと感じました。

また意外とその存在意義は大きかったのかなと感じた点が、リモートとなった審査員の存在です。今回別室でのモニター参加となった審査員の方々。時たまトークを振られることはありましたが、従来よりも登場回数は少なかったように思います。

普段は何も意識していませんでしたが、今回長時間紅白を視聴している際に「ちょっと内容が詰まりすぎて疲れたな」と感じた場面も多かったので、合間合間に入るトークやちょっとした歌と関係のない演出の重要性をより実感したのでした。

大泉洋が示した紅白歌合戦の可能性

次に感じた可能性は、白組司会だった大泉洋さん(47)の存在です。

おなじみのテンションでギャグやオーバーなリアクションを交えた彼のトークは、総合司会の内村光良さん(56)ともしっくり来ていて非常に魅力的でした。当たり前のように馴染んでいたものの、実はここ10年、白組の司会を勤めていたのは常にジャニーズの方でした。

2010年~2014年:
2015年:井ノ原快彦
2016年:相葉雅紀
2017年:二宮和也
2018年:櫻井翔
2019年:櫻井翔

今年、嵐の方々は節目の年ということで司会が担えなかった事情もあるかもしれませんが、改めてみていくと、今年の番組では新たな“風”を生み出したい気持ちもあったのかなと感じます。同時にその風は、大泉さんから十分に感じることができたかもしれません。

数年前、紅白歌合戦の若返りを模索した結果の出演者の選定基準が話題になりました。そして今度は番組の安定的な空気感も、また変わろうとしているのかもしれない。そんな風に思ったのでした。

■氷川きよしが示した“紅白”の可能性

最後は、今年もやってくれました氷川きよしさん(43)!

数年前から垣根をどんどん超えていっているのは言わずもがなですが、今年は登場時に白いコスチュームをまとい、途中で赤のボンテージ姿に変身(ヒップラインがめちゃくちゃセクシー)。そして最後は黄金色の衣装に変身し、宙を舞いました。

ここには2つのメッセージを個人的には感じました。1つは紅白のどちらでもあり、どちらでもないというメッセージ。

もう1つは昨年が金の龍に乗って宙を舞う演出だったのに対し、今年は自らが黄金となり舞ったという演出の変化です。

歌唱曲「限界突破×サバイバー」の歌詞にもあるような「可能性のドア」を何かに乗らなくても自分自信で突破し、「無敵のオイラ」になれるといったメッセージも込められているのかな……。そんな風に見ていて感じました。

何はなくともあれ、あっという間に盛り上がり、そして終わった今年の紅白歌合戦。来年は無観客開催でない事を祈りつつ、2021年の音楽シーン、芸能シーンに想いを馳せていきたいと思います。

(文:おおしまりえ)

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