子どもが巣立ち、夫婦2人の食事が多くなると、食材のロスが気になり、大物野菜や大容量のパックを避けるように。そこで、“食材を買ってきたら、下処理をしてフリーザーバッグに小分けして冷凍する”というメリットだらけの保存法を紹介ーー。

「さまざまな食材を冷凍しておき、その日、必要なものを必要なだけ調理する。50歳を過ぎて子どもが巣立った家庭でこそ、こんな冷凍術が活躍します。手をかけずに、多品目の食材を取り入れた栄養バランスのよい食事を作れるようになりますよ」

そう話すのは、医学博士、管理栄養士として食と栄養に関する著書を60冊以上手がけてきた本多京子さんだ。

夫婦2人の食卓では、子育て時代と比べて、使う食材の量が減ってくるもの。白菜1玉や3本セットのにんじんはお買い得ではあるけれど、食べ切れないことを理由に諦める機会が増えたのでは。

「思い切って買ったとしても、使い切るために毎日同じ食材ばかり食べ続けていると、調理法を変えたとしても飽きてきますし、なにより栄養が偏ってしまいます」

それを解決するのが、本多さんが提案する食材の小分け冷凍術。大物野菜でも大容量のパックでも、フリーザーバッグに小分けして冷凍すれば、その日使いたい食材を必要な分だけ取り出して使うことができる。大根おろしや薬味など、少量加えるだけで料理の仕上がりがグレードアップするものを常備しておくことも可能だ。

「2人だけの食卓だと食材の種類が限られ、“ばっかり食”になりがちですが、いろいろな食材を冷凍しておき、一度の食事で多品目を少しずつ食べられるので、栄養バランスがアップ。大容量のパックを気にせず買えるという点では、節約にもつながります」

そこで、本多さんに冷凍のコツとレシピのアイデアを教えてもらった。

■“小分け冷凍”向き! 食材別「冷凍法とレシピ例」

【鶏ひき肉】

下味をつけた鶏そぼろは、いろいろな料理に追加でき重宝する。シニア世代のタンパク質不足解消に役立つ一品を冷凍庫に常備しよう。

(1)鶏ひき肉200グラムに酒、みりん、砂糖を各大さじ1、しょうゆ大さじ2を加える。
(2)菜箸などでよく混ぜてから火にかけ、かき混ぜながらパラパラになるまで煮る。粗熱が取れたらフリーザーバッグに入れる。

〈レシピ案〉

◎三色そぼろ丼:いり卵を作り、絹さやをゆで斜め切りにする。自然解凍したそぼろとともにご飯にのせる。
◎ひき肉あんかけ豆腐:解凍したそぼろをごま油で炒め、水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。食べやすい大きさに切って温めた豆腐にかけ、万能ねぎを散らす。

【白菜】

大物野菜の代表格・白菜は冷凍術を活用して、鍋物だけでなく炒め物、煮浸しなどにも使ってみよう。キャベツの冷凍も同じ手順で行えばOK。

(1)ざく切りした白菜200グラムに対し、塩小さじ3分の1(1%)をふり、軽くもむ。
(2)30分ほどおいてから、水気を絞ってフリーザーバッグに入れる。こうすることでカサが減り、省スペースで保管できる。

〈レシピ案〉

◎白菜の溶き卵スープ:凍ったままの白菜を中華だしのスープで煮て、溶き卵を加える。仕上げに万能ねぎを散らす。
◎白菜と豚肉の中華炒め:凍ったままの白菜を豚バラ肉とともに炒める。オイスターソースで味を調えてから、最後に片栗粉でとろみをつける。

【きのこ類】

きのこにより栄養素が異なるので、一度に数種類を食べるのが健康にいい。冷凍しておき、料理に少量加えるだけで香りやうま味が出るので便利。

(1)しいたけは石づきを除いて4つに割り、しめじは石づきを除いてほぐし、えのきは根元を切り落として3等分に切る。
(2)合計120グラムをまとめて冷凍。切った後2~3時間干して冷凍するとうま味アップ。

〈レシピ案〉

◎きのこ汁:凍ったまま煮汁に入れて加熱する。
◎きのこカレー:凍ったままオリーブオイルでさっと炒め、レトルトカレーとともに加熱する。冷凍鶏ひき肉、冷凍ブロッコリーなどを追加しても。

その場合、水気が出て味が薄まるのでとろけるチーズなどを加えると◎。

冷凍した食材を扱ううえで知っておきたいのが、「水分」の変化。

「食材を冷凍すると、細胞内の水分が凍り、氷の粒が細胞膜を傷つけます。すると解凍の際、傷ついた細胞膜から一気に水分が流れ出て、食材の内部はスカスカのスポンジ状に変化。冷凍に時間がかかると氷の粒が大きくなり、細胞膜が過剰に壊れて食感や栄養が落ちるので、できるだけ短時間で冷凍することが成功のポイントです」

一見デメリットに見えるこの特性だが、調理の際にはメリットに転じるそう。

「食材内部の水分量が減るので、火が通りやすく、調味液が染み込みやすくなります。玉ねぎをあめ色になるまで炒めるのにも時間はかかりませんし、大根は下ゆでの必要もなく、短い時間で味が染みた煮物を作ることができます。冷凍した食材をうまく使えば、調理の時短にもつながるんです」

生の食材と冷凍食材の組み合わせなら、栄養バランスの取れた食事を手軽に実現できる!

「女性自身」2021年2月16日号 掲載

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