「女性理事を選ぶというのは、日本は文科省がうるさくいうんですよね」
「だけど、女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」
「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね」

かつて首相も務めた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長(83)がJOCの臨時評議員会で上記のように発言。

女性蔑視との批判が高まっている。各メディアによるとJOC評議員のメンバーはこうした発言を批判するのではなく、笑いをこぼしたという。

しかし、笑ってる場合ではない。五輪憲章の「オリンピズムの基本原則」には五輪憲章の定める権利および自由は“性別”などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく「確実に享受されなければならない」とある。さらに、こうつづられている。

「男女平等の原則を実践するため、 あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を奨励し支援する」(第1章 2-8)

つまり、五輪とは「性差別をなくす」ことを理念としているのだ。

■性差別をなくすために、東京五輪でも取り組みが

森会長の発言はThe New York TimesやWashington Post、AFPやロイター通信といった海外メディアを通して、瞬く間に世界中に報じられた。

さらにはJOCメンバーが“笑って流した“ため、《JOCも もう一度オリンピック憲章読み直した方が良い》《組織を挙げてオリンピック憲章に反旗を翻した事になります》と厳しい声がネットに上がっている。

近年、IOCは「性差別をなくす」ことに力をいれている。そのため、東京五輪でも様々な取り組みがなされている。

「14年4月にIOCは『アジェンダ2020』を発表。その提言11には『男女平等を推進する』と明記されており、女性の参加率を50%にすることや男女混合種目を増やすことが具体的な取組みとして紹介されています。

そして東京五輪では、女子の参加比率が過去最高の48.8%に。また史上初めて、各国のNOCに男性および女性メンバーが最低1人ずつ含まれています。さらに開会式で旗手を務める選手を男女1人ずつ選出するよう推奨されることとなりました」(全国紙記者)

■「より良い未来へ、ともに進もう」を掲げているが……

それだけではない。東京五輪は未来志向的に、「性差別をなくす」ことを目標としているのだ。

「15年、国連で世界のリーダーたちによって『持続可能な開発のための2030アジェンダ』が採択されました。掲げられた17の目標のなかには『ジェンダー平等を実現しよう』とあり、その目的はすべての女性と女児のエンパワーメントを図ることです。

また30年までにジェンダー平等を達成するロードマップも策定しており、スポーツをその重要な鍵として位置付けています。そんな2030アジェンダに『貢献する』と、東京五輪の公式サイトにあるのです。

しかし森会長だけでなく、その発言を笑っていたメンバーを擁するJOCは女性のための未来を描く2030アジェンダに貢献することができるのでしょうか」(前出・全国記者)

東京五輪の持続可能性コンセプトは「Be better, together/より良い未来へ、ともに進もう」。しかし、JOCは過去に取り残されたままではないか。

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