「老後資金も不安だし、今年こそパートに出よう」と思ってはや幾年……。専業主婦にとって、社会復帰は怖いものだ。
「最近カルチャーセンターでは講座を開いても、平日の昼間だと50~60代の方が集まらないのだそう。その理由は、パートを始めた人が多いからなんです」
こう語るのはファイナンシャルプランナーの寺門美和子さん。アラフィフ女性の相談者や友人、知人からも「パートに出たい」という声を聞くようになったという。だが、いざ働こうと思っても、「何年も働いていないのに、ちゃんとできるかな」と、最初の一歩を踏み出せない人も多いそう。
「昭和の時代は、学校や職場で、完璧じゃないものを見せると怒られました。そのため、50代女性は世代的に完璧主義の傾向が強い。そして、その“完璧でなければ”という思い込みから、パートへの応募を躊躇しがちなのです」
だが、過度に不安に思う必要はないという。
「今の社会、特に若い世代は、最初から完璧を目指さず、トライ&エラーを繰り返し、修正しながら完璧を目指していきます。わからないことがあれば聞けばいいし、失敗したら学べばいいんです。働いてみて自分に合わなければ、すぐに辞められるのがパートのいいところでもあります。重く考えず“とりあえずやってみよう”という軽い気持ちでまずは飛び込んでみてほしいです」
先輩パート主婦たちの声にも耳を傾け、一歩踏み出してみよう。
■「嫌々始めたパートに人生を救われた」損保事務Dさん(56)/ブランク:13年
「私は働く気はまったくなかったのですが、夫から『学費や老後資金のために働いてほしい』と言われて……。
損保会社のデータ入力が主な仕事。パート主婦の多い職場で、マニュアルもあり、社員さんもフォローしてくれるので大きな失敗はなかった。
「ただ、やっぱり鬼門はパソコン。専業主婦時代はスマホかタブレットなので、キーボードを打つのが遅い。物覚えも自信がなく、似ている会社の名前を取り違えてしまいそうで……。でもそこは、間違えるかもという不安があるから、事前にしっかり確認しているのでミスは防げています。一方で、専業主婦のほうが若い人に比べてコミュニケーション能力があるみたいで、電話応対などは得意です」
しぶしぶ始めたパートだったが、今では働いてよかったと思える。
「パートを勧めてくれた夫は、がんを患い亡くなりました。2年ほど闘病、介護生活があったのですが、会社に行くだけでも気分転換につながりました。専業主婦をしていたら出会えなかった人たちに話を聞いてもらったり、助言をもらうことが、大きな力になりました。自分一人で生きていく自信にもつながったと思います」
「女性自身」2021年5月25日号 掲載