感染制御ドクターであり、高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘先生は、デルタ株への置き換わりが進んだ現在の状況を「感染爆発」とし、次のように警鐘を鳴らす。

「イギリスの人口は日本の半分ほどですが、10倍の件数のPCR検査を実施しています。

7月5日の検査数は32万件です。同日、日本は5万8,000件。日本がイギリスと同程度の規模でPCR検査を実施した場合、現在発表されている何倍もの感染者数が出るはずです。特に、東京は爆発的な感染の状態に入っているのです。ですから、緊急事態宣言の発出されている地域から、各地方へのお盆の帰省は、極力控えるべきというほかありません」

不要不急の外出を避け、ソーシャルディスタンスの確保や手洗い・うがいの励行など、日々の感染対策を行っている人でも新たに感染者が出ている。

これまでの対策が通用しないデルタ株による感染者数が急増しているいま、私たちの感染予防にもアップデートが欠かせないのだ。そんな、「新しい常識」を、埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭先生と小川先生に解説してもらった。

理化学研究所などによるスーパーコンピュータ「富岳」の実験によると、「ソーシャルディスタンス」とされる「2メートル離れてマスクの着用なし」の状態で会話した場合、従来型では感染確率10%に達するまで45分かかった。それがデルタ株になると、じつに20分ほどに短縮されるという。つまり、2倍の速さで感染確率が上昇してしまうことに。

小川先生が、“マスク着用”と“小声”での会話の重要性を説く。

「『5つの小』、つまり『小人数・小一時間・小声・(料理は)小皿で・小まめに消毒・換気』ということを、家でも外でもいっそう心がけましょう」

ソーシャルディスタンスを確保しても、けっして警戒を怠らないことが大切だ。

【帰省は“自粛”ではなく“原則中止”に】

お盆に合わせた新幹線や飛行機の予約状況は、昨年より増えているというが。

「夏休みの里帰りは、『中止する』のが賢明です。テレビをつければ東京五輪が中継されているなか、出かけたくなる気持ちもあるでしょうが、これ以上の感染拡大を防ぐためには我慢が必要です」(小川先生)

仮にやむをえない事情で帰省する場合であっても、滞在時間は「小一時間」にすること。日帰りが難しい地域であっても、実家ではなく最寄りのホテルなどに宿泊してうつらない、うつさないを徹底しよう。

【ワクチン2回目接種後も病院へのお見舞いは避ける】

「入院中や、施設に入所中の家族を見舞うのも避けるべきです。たとえ見舞う人が2回目のワクチン接種を完了し、2週間を過ぎている場合であっても、100%コロナに感染しないという保証が得られたわけではありません。さらに、ワクチンが何カ月有効なのかも現段階ではまだまだ未知数なのです」(小川先生)

2回目の接種完了から2週間が経過しても、ワクチンの予防効果は最大で90%ほど。それはすなわち10%ほどは感染リスクがあるという意味でもあるのだ。

「さらに、患者さんや入所者の方には病状などの理由で接種ができないという人もいます。自分が感染しないことだけではなく、人にうつさないようにする心がけも大切です」

まずは病院や施設の指導に従うべきだと小川先生は話す。

「面会許可が出た場合でも、なるべくワクチン接種完了者のみの最少人数で。3密回避、『5つの小』を厳守しましょう」

感染が広がるデルタ株。

大切な人の命を守るためにも、不要不急の外出はくれぐれも自粛するよう心掛けたい。

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