コロナ禍の東京で、救急搬送された患者の生存率が大きく低下していたーー。

先日、衝撃的ともいえる調査結果を発表したのは日本医科大学などの研究グループ。

昨年3月~今年1月の東京都の救急搬送について調査をしたところ、病院外で心停止して救急搬送された患者の1カ月後の生存率が、コロナ前の19年の6.3%から、4.7%に低下していたことがわかったのだ。

その要因について、同調査を行った日本医科大学付属病院救命救急科・病院講師の五十嵐豊さんは「コロナ禍で、搬送先が見つかりにくかったことや、病院内の感染対策によって検査や治療開始までの時間が延びたなどの可能性が考えられる」と分析している。

この冬、オミクロン株などの影響で再びコロナへの感染が拡大したら、心停止や脳梗塞を起こして救急搬送されたとしても、命を落とす可能性が高くなるのだ。

■ヒートショックにより“溺れてしまう”可能性も

とくに寒さが一段と厳しくなるこれからのシーズンは、家庭内で多発する“ヒートショック”への自衛が欠かせない。

「ヒートショックとは、急激な温度変化により血圧が大きく変動することで、失神や心筋梗塞、不整脈、脳梗塞などを起こし、体に悪影響を与えることです」

こう語るのは、ヒートショックに詳しい循環器内科の専門医である、さかい医院の堺浩之院長。特に冬場の入浴時に多いとされるヒートショックは、どのようにして起こるのだろうか?

「寒い脱衣所で服を脱ぐ際、体は熱が逃げないように皮膚表面の血管を縮めるため、血圧が上昇します。湯船につかると体は温まりますが、血管が広がって、血圧が急激に低下。この血圧変化(乱高下)が、心筋梗塞などの重大な病気を引き起こすのです」

さらに、ヒートショックによって意識を失い、浴槽内で溺れてしまうこともあるという。

厚生労働省の人口動態統計によると、令和2年の「浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水」による死亡者数は5,451人。ただし、この死亡者数には入浴中に脳血管疾患や心疾患など、溺水ではなく病気で亡くなったと判断された場合は含まれていない。

入浴中にヒートショックなどで亡くなった人の実際の数はもっと多く、厚労省の研究班の推計では年間約1万9,000人とされている。

入浴中のヒートショックを避けるためには、高齢者や高血圧の人は一番風呂を避け、浴室が暖まってから入ることが基本だ。

また、溺死を防ぐために浴槽の蓋を半分だけ開けて入ることも有効。具合が悪くなったら蓋の上にもたれかかるようにすれば、湯船の中に沈んでしまうことを防げる。

■家中の寒い場所はすべてヒートショック危険箇所

浴室で起こるヒートショックについては、これまでも危険性が指摘されてきた。しかし、気を付けなければいけない箇所は家中にあると、菅原脳神経外科クリニックの菅原道仁院長は警鐘を鳴らす。

「リビングから廊下に出たら寒い、と思ったことはありませんか? このような温度変化がある場所なら、どこでもヒートショックを起こす危険があるんです」

そこで堺院長と菅原院長に、危険箇所ついて聞いた。

「温度差が大きいほどヒートショックを起こす可能性は上がります」(堺院長)

特に寝間着のまま室温が低い場所に行くのは非常に危険だという。

「夜中のトイレは、排せつ時に血圧が変動しやすいうえ、冷え込みやすい場所のため、注意が必要です」(菅原院長)

夜中に台所に行って、水を飲むこともあるが、この移動にも危険が潜んでいるという。

「夜中や早朝の台所は、非常に寒いことを認識しておくべきです。水分補給は、枕元にペットボトルを置くなどして、寝室内で済ませてください」(菅原院長)

暖房などの対策をしにくい場所という意味で、玄関とベランダも要注意だ。

「とくに玄関は、新聞を取りに行ったり、ゴミ出しなどで足を運ぶ頻度が高いうえ、一瞬だからと、パジャマのまま行くことが多い場所。ヒートショックを防ぐためには、多少面倒でも、寒いと感じる格好で行くのは避け、厚手の上着などを羽織るようにしましょう」(菅原院長)

また、暖房効率を上げ、家の中に温度差を作らないことも重要。

「厚手のカーテンを使う、窓にフィルムなどを張る、夏場に使用した扇風機を活用して、部屋の下にある冷たい空気と上にある暖かい空気を循環させるなど、少しの工夫でヒートショックへの対策はできます」(堺院長)

■危険度MAPであなたの家の危険な場所を確認!

浴室だけじゃない!深夜のトイレ、早朝の玄関…ヒートショックの...の画像はこちら >>

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