急速に広がるオミクロン株。軽症の人が多いとはいうが、実際の危険性はどれほどで、どう対処すればよいのか? 高知総合リハビリテーション病院院長で感染制御ドクターの小川恭弘先生と埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭先生に、最新の知見を教えてもらった。
【Q1】風邪かコロナか曖昧なときはどうすればよい?
コロナ禍では、高熱やのどの痛み、咳、味覚異常などがある場合は、かかりつけ医や地域の相談センターに電話相談することが推奨されてきた。小川先生が話す。
「コロナか風邪か自分で判断できない場合、これまでと同様にまずは電話で相談してください。病院は基本的には患者さん、つまり“弱っており重症化リスクが高い人”が集まっています。そのような人々にうつす恐れが出てくるので、『いきなり病院に行く』のは避けるべきです。もちろん、持病の治療やがんの疑いがある場合などは、不要不急な外出と思わず、病院で診察・治療を受けるようにしましょう」
本当はコロナなのに、風邪と見過ごされてしまう可能性はないだろうか?
「コロナか風邪かわからないという方が来院された場合、現在では、『家族や周囲にコロナ患者は出ていないか』など診察前に書面回答でチェックすることが多いです。そのうえで医師は、風邪やコロナの諸症状があれば、抗原検査やPCR検査をするはず」(岡先生)
【Q2】治療薬は誰でも処方してもらえる?
日本で現在使用されている、軽症・中等症患者向けのコロナ治療薬にはメルク社の「モルヌピラビル」がある。
「処方の対象となるのは『重症化リスクのある軽症患者』(高齢者や、持病があり、妊娠していない人)で発症後5日以内の人と限定的です。また、薬の大きさが2センチほどあり、1日8粒飲まなければいけませんから、高齢者の場合飲めないこともあります。また、モルヌピラビルの重症化リスクを下げる効果は30%ほどで、そう高くなく、ワクチンを打つほうが効果的です」(岡先生)
今後承認される予定のファイザー社の経口治療薬「パクスロビド」は、入院と死亡リスクを約90%減少させるといわれている。
「こちらもしばらくは重症化リスクのある人に限った処方となるでしょう。重症化リスクの低い人は、自然治癒を待つことになるのです」(岡先生)
【Q3】世界で報告されているフルロナって何?
現在、インフルエンザと新型コロナウイルスに同時に感染する「フルロナ」が世界各地で確認されているという。
「同時期にはやっていれば、インフルエンザとコロナに同時感染する可能性はあります。1つ目のウイルスに感染しても潜伏期間中に外出していれば、2つ目のウイルスに感染してしまうケースもあるでしょう」(岡先生)
しかし、現実的にはこのようなケースは少ないと小川先生。
「イギリスで行われた’20年1~4月の調査では『インフルエンザとコロナの両方の検査を受けた1万9,256人中、同時感染は58人だった』とされています。確率にすると0.3%。かなりまれだと思ってよいでしょう」
岡先生も、過度に心配する必要はないと語る。
「現在、コロナ対策によってインフルエンザ患者は全国で1週間に数十人程度(’21年12月27日~’22年1月2日の全国感染者数は45人・厚労省発表)に抑えられています。いまのところ日本で『フルロナ』流行の心配はありません」
【Q4】コロナ禍はいつまで続くの?
小川先生は、オミクロン株のピークが「2月にある」と予測し、「暖かくなる4月には激減すると思います」と話す。
「すなわち、従来の季節性インフルエンザの流行と同じ状態に近づいていくと思われます。感染症は、いつかは必ず収束します。1918年のスペイン風邪も、国内で40万人近い死者を出しながらも、3年で収束していきました。『病いは気から』です。そのような日が来ることを信じて、前向きに正しく恐れて、感染対策を続けることが肝心です」
感染収束が見込まれる4月まであと、3カ月。
【PROFILE】
小川恭弘先生
高知総合リハビリテーション病院院長で感染制御ドクター。著書に『免疫療法を超えるがん治療革命』(光文社)など
岡秀昭先生
埼玉医科大学総合医療センター・総合診療内科・感染症科教授。著書に『感染症プラチナマニュアル』(メディカルサイエンスインターナショナル)など