嵐』に出ていた松本潤さん。ひと目ぼれよ(笑)。
どこがよかったか? そりゃ、男は顔よ! 濃い眉、スッとした鼻筋という、キリリとした顔立ちのイケメンが、あたし、大昔の大映映画のころから好きなのよ」
以降、松本潤や嵐が登場する番組はすべて録画して、何度も見返すことが日課となる。
こうして始まった「推し活」だったが、まさか、そんな自分の日常がSNSに上げられ、日本中の話題になるとは夢にも思っていなかった。
「最初は、おばあちゃんの90歳の誕生日に、ツイッターに家族で祝ったときの写真を上げました。ただ、これは私自身の思い出のつもりでした。大好きなおばあちゃんが、90歳という大台に乗ったことのお祝い、記念として。
ですから、本人にも家族にも友達にも内緒だったんです」
麻咲子さんが、千恵子さんの密かなSNSデビューについて語る。3年前の4月6日のことだ。
こうして、祖母が嵐や韓国ドラマに夢中になっている様子などが、孫娘によって次々とツイッターにアップされていった。
なかでも多いのが韓流の話題だが、長生きの秘訣であり、80代になってハマったというその魅力について千恵子さんは、
「世間で大騒ぎしていた『冬のソナタ』のヨン様のころは、あたしもまだ70代でバリバリに働いていたから、まだゆっくりドラマを見る余裕もなかったのね。
最初は、『愛の不時着』のヒョンビンから。『梨泰院クラス』のパク・ソジュンも好き。
韓国ドラマのどこがいいかって? 美男と美女しか登場しないじゃない。
■推しのライブに行くために、自宅からコンビニまで毎日歩いて自主トレを
最近バズったのは、冒頭でも紹介したとおり、嵐の活動休止に落ち込んでいたころに新たに大ファンとなった、辰巳ゆうとの推し活のエピソード。
辰巳のライブに行くために、いそいそとおしゃれなどをする様子に、多くのフォロワーが「推しがいて、応援する家族がいる。これぞ長生きの秘訣。元気をもらいました」と声を寄せた。
しかし、いちばん元気になっていたのは、当の千恵子さん。裕樹子さんが、動画にはなかった義母の奮闘ぶりを語る。
「ライブの1カ月前くらいから、万全の状態で臨みたいと、お義母さんは自主トレを始めたんです。うちから100m離れたコンビニまで毎日歩いて、最初は1往復に3回休んでいたのが2回になり、最後は1回になったと喜んでました。
インスタを見て店まで会いに来てくれる人が増えたおかげで、義母は20歳も若返りました」
千恵子さん本人は、
「SNSの反響は、あたしより、ママ(裕樹子さん)のほうが心配してるの。ほら、93歳のおばあちゃんがパジャマ姿で動画に出たりするからよ。
でも、あたしは、みんなが喜ぶなら気にしない。ただね、こっそり、ちょいといいパジャマに替えたりしてるけどさ(笑)」
午後は韓国ドラマ、夜は松潤のドラマ三昧。
目下の楽しみは来年の大河や推しのライブ。
「朝6時に起きて、まずするのはお化粧。あたし、旦那との40年の生活でも、素顔を見せたことはありません。女性のたしなみね。
1階に降りると、ママがご飯の支度をしてるので、その時間から午前中はユーチューブで、辰巳ゆうと君の歌を聴きます。で、午後は韓国ドラマ。今、楽しみなのは『キム秘書はいったい、なぜ?』です。うちは、居間の隣が店舗だから、お客さんが来たら、すぐに出ていけますし。
5時半に夕食で、夜はネットフリックスで松潤のドラマ三昧。夢中になって、寝るのが11時を過ぎるときもあります」
ただし、ニュースは見ないとのこと。
「特に最近は、ロシアの戦争のことばかり。実際に戦争を体験したあたしたちには、つらすぎるんです。
孫の麻咲子さんも言う。
「インスタにもありますが、おばあちゃんが突然、セピア色をした昔の写真を見せてくれたことがありました。祖父の軍服姿の写真もあったり。
そうか、こんな時代を生きてきたんだと思うと同時に、この貴重な証言をSNSなどで残していきたいと、そんなことを考えるきっかけをもらいました」
現在、インスタのフォロワー数は、約1万1000人。
「おばあちゃんがパク・ソジュンさんに夢中という記事のときは、1200人だったフォロワーが一気に10倍近くになり驚きました」
80代半ばから、大腸と肺のがんや狭心症で4回も手術をした千恵子さんだが、今は「SNSのおかげ」で健康を取り戻し、月に1度の内科と皮膚科への通院だけという。
もちろん、目下の楽しみは、年明けからの大河ドラマや辰巳の次のライブだ。
「まずは健康。元気なら、ドラマもライブも楽しめるでしょ。
うれしいのは、女三代で、嫁も孫も後を継いでくれると言ってること。だから、あたしは、いくつになっても、お気楽に看板娘をやってればいいの(笑)。あとは、家族がいるから安心なのよ」
SNSやこの記事で関心を持った人は、ぜひ浅草を訪ねてほしい。今日も千草屋の店先に、93歳の千恵子おばあちゃんのとびきりの笑顔がある。