「死刑のハンコ」発言が物議を醸した葉梨康弘衆院議員(63)。11月11日、自ら辞表を提出し、法務相を辞任することとなった。

葉梨氏は9日、東京都内で開かれた自民党議員のパーティーで「法相は朝、死刑のハンコを押し、昼のニュースのトップになるのは、そういう時だけという地味な役職だ」と発言。続けて「今回は、旧統一教会の問題に抱きつかれ、私の顔もいくらかテレビに出るようになった」と話したという。

このことが報じられると、野党を中心に葉梨氏を非難する声が相次ぐことに。そして10日の朝、松野博一官房長官(60)は葉梨氏を厳重注意した。

その後、葉梨氏は取材陣に対して「結論的に言うと、今後言動には慎重に注意をしていく」と“役職続投”を明かした。続けて、9日の「死刑のハンコ」発言の前後も書き出してまとめた紙を取り出し、自身で読み上げた後、「一部切り取られたことがあったとしても、誤った印象を与えるようなことは気をつけていかなければならない」などと報道に対する不満を滲ませながら述べた。

さらに11日、葉梨氏は別の会合や地元でも「法相は死刑のハンコを押す地味な役職」という趣旨の発言をしていたと取材陣に対して認めた。「これらの発言すべてについて謝罪を申し上げ、撤回させて頂きたい」「信頼回復に努めていきたい」とコメント。

そして同日の参院本会議で岸田文雄首相(65)は、葉梨氏について「改めて職責の重さを自覚し、説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」といい、続投させる意向を表明していた。

ところが11日の夕方に一転し、葉梨氏は首相官邸を訪れて辞表を提出。葉梨氏は報道陣の取材に応じ、発言について「言葉足らずで極めて不適切だった」「どのようなとらえられ方をしているか確認し、よりよい政治を目指したい」といい、その場を後にしたーー。

■「葉梨さんをかばう人は党内にもういません」

ある政治部記者は、葉梨氏について「普段の人柄は穏やか。

あのような不要な発言をするとは驚きました」といい、こう続ける。

「大臣としての答弁能力も高かったと思います。予算委員会などの委員会では、大臣は官僚が作成した“ペーパー”を見ながら質問に答えるケースが多いのですが、葉梨氏は官僚出身の政治家らしく、手元を見ずに答えていました。それだけ政策や法律への深い理解があるということなのですが……。

しかし、今回の発言は生命を軽んじる重大性を帯びています。一報が駆け巡った時点で、『アウトだな』『これは進退に関わる』とこぼす党関係者は少なくありませんでした」

自ら辞表を提出した葉梨氏だが、“事実上の更迭”という声も上がっている。ある自民党関係者は葉梨氏に対して「話にならない」と断じ、こう続けた。

「党総務会長の遠藤利明さん(72)は、『みんなで岸田政権を支えようといっている時に、肝心の宏池会(岸田派)の中でそういう発言があるということは不愉快な思いです』とはっきり言っています。

実際、葉梨さんをかばう人は党内にもういません。現在、岸田政権の支持率は30%台に落ち込み、不支持が60%とも報じられています。そのため先日、経済再生担当相を辞任した山際大志郎さん(54)もそうですが、『支持率がグラついているときになんてことをしてくれたんだ!』という思いです」

また現在、寺田稔総務相(64)にも領収書の偽造を巡る政治資金の話が浮上している。

「『このままでは来年4月の統一地方選で惨敗する可能性が高いのでは……』と危機感が漂っています。

岸田総理にとって、何にしても“辞任ドミノ”は避けなくてはなりません。国民生活を圧迫している物価高に実効力を伴う対策が打てなければ、求心力が低下してしまうでしょう」(前述・自民党関係者)

葉梨氏の話は、岸田政権にさらなるダメージを与えたようだ。

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