「いま、初めて知りました。びっくりです……。

そんな話、これまで一度も聞いたことがありませんでしたから」(地元住民)

11月14日、大阪市は城東区の介護老人保健施設「幸成園」を来年3月から6カ月間業務停止の行政処分にすると発表した。

男性従業員が入所者女性を殴る、下半身を触るなどの虐待をしていたことが発覚したとのこと。女性はいずれも80代以上。男性はすでに退職しており、入所者約60人はこれから別の施設へ移るなどして対応することになるという。

さらに驚くべきことに、この施設はこれまでにも市から虐待の認定を受けていた。その数、2019年から3度。再三にわたる行政指導にもかかわらず、今回の処分となったのだ。

そこで、本誌は現地へと向かった。だが4度の虐待認定があったのにもかかわらず、聞こえてきたのは冒頭のようなコメントばかり。地元では、驚くほど内部の実態は知られていなかった。

近所の人はこう語る。

「よく笑ったり、歌を歌ったりするような声はよく聞こえてきていました。

お年寄りなのでたまに大きな声を出される方がいましたけど、そんな虐待されているのではと思わせる叫び声みたいなのは、聞いたことないです。虐待に関する話が地元で話題になったことも、いっさいありませんでした」

さらに周辺でトラブルはなかったのかと聞くと「ないこともないけど……」としつつ、こう続けた。

「一度だけ、施設から出るゴミについて問題になったことはありました。ゴミ回収後も残飯が地面に落ちたまま残っていたことがあって、地元の人たちが施設に『何とかしてほしい』と言いに行ったんです。でも、そのときはすぐに改善してもらえました。だからトラブルといっても、どこにでもあるような些細なことくらいですよ」

内部では過ちを繰り返しながらも、外部からの声には即座に対応……。その甲斐もあってか、地元にとっては“ありがたい施設”だという評判さえあった。

「いま、なかなか施設に入るのが大変じゃないですか。だから『近所に施設があってよかった』『うちの家族も入れたい』『私もゆくゆくは入りたい』といった人が多かったんです。実際、おばあちゃんを入居させた人は『近所の施設に入れることができてよかったわ』と喜んでいました。それだけに、今回のことは『えっ、なんで』と信じられませんでした」(前出・近所の人)

なぜ、虐待は止められなかったのか。本誌は施設へ直接、連絡した。

だが……。

――今回の入居者への虐待について話を聞きたいのですが。

「今そのことで対応できるスタッフかいませんので、答えられません」

――対応できるスタッフの方はいつ戻られますか?

「わかりません」

――明日にはご対応いただけるのでしょうか?

「それもわかりません」

何を聞いても、「担当者が不在で答えられない」を繰り返すだけだった。

前出の近所の人はこう憤る。

「みんな、最後はあそこで豊かに暮らしたいという思いで入所したはずです。なのに虐待なんてされていたら、腹が立ってしょうがないですよ。身内がいない人は他に移ると言っても、難しいでしょうし。あまりにもかわいそうです」

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