5週連続で世界最多を更新中の日本の週間新規コロナ感染者数。おのずと自宅療養者も急増しているが、誤った行動により症状が悪化して入院につながることも。
「先日コロナになって、熱が下がらずつらい思いをしました。熱が出るのが怖くて、悪寒がしたらすぐ解熱剤を飲む。薬を飲むと熱は下がるけど、しばらくするとまた上がってくる……。そうやって『1日3回くらい解熱剤を飲んでいるんです』と、やっと受診できた発熱外来で話したら『解熱剤の飲みすぎで治りが遅くなっている!』とあきれられてしまいました」(本誌記者)
実はこのように、症状を悪化させるNG行動をとっている人は意外と多いのだという。
【1】無理に体を温める
発熱したときは、「体を温めて汗をかくと熱が下がる」と思っている人も多い。しかし「汗をかくために無理して温めると、かえって逆効果になる」と指摘するのは、コロナ診察に当たる医師の木村知さん。
「熱が高くて体が火照っているときに、わざわざ着込んだり、何枚も布団をかけたりして体を温めると、体内に熱がこもって、逆に熱が下がりにくくなります。
先日、汗をかいたら熱が下がると思ってサウナに入った、という患者さんがいましたが、汗をかいたからといってウイルスが死滅するわけではありません。脱水症状にもなりかねないので、発熱しているときに無理に体を温めるのは危険です。ただし、熱の上がり始めで悪寒がする場合は、しっかり着込んで温めましょう」
特に汗をかいているときは、体が熱を下げようとしているとき。そこで無理に温めるのは体に負担をかけるだけなのだ。
【2】冷却シートで熱を下げる
「おでこや頸部などに冷却シートを貼ることで不快感を和らげることはできますが、冷却シートに解熱効果はありません。
気持ちがいい場合は使用してもかまいませんが、乳幼児の場合は、おでこに貼ったシートがズレて鼻や口を塞いでしまう危険があるので避けたほうがいいでしょう」
【3】むやみに解熱剤を飲む
コロナ陽性になると、解熱剤を飲み続ける人も少なくない。しかし、それが逆効果になることも。
「最近、こんなケースがありました。その患者さんは、50代の男性で基礎疾患がある方。他院で、朝・昼・晩と5日間、解熱剤を飲むよう処方され、しんどくはなかったけれど、処方どおり解熱剤を飲み続けていたそうです。
この間、熱は下がっていましたが、コロナの療養期間が明けて仕事を始めた矢先に再び発熱。うちのクリニックを受診されました」
CTを撮ったところ、男性は肺炎を起こしており、即入院に。
「解熱剤で無理に熱を下げていると、症状の悪化に気づかないこともあるのです。仮に、38・5度くらいの熱があっても、体がつらくなければ解熱剤を飲んで平熱に下げる必要はありません。
そもそも発熱は、ウイルスの侵入を感知した体の免疫細胞がウイルスの増殖を抑えるために中枢に体温上昇を促すことで生じたもの。発熱は悪いものではなく生体の防衛機能なのです」
では、解熱剤はどのようなときに飲むべきなのか。
「体の節々が痛くてたまらないとか、喉が痛くて水が飲めない、熱が続いて食欲がわかない、などの症状がある場合です。そうなると脱水や体力の低下を招くので、解熱剤を服用しましょう」
■喉スプレーで喉の痛みが悪化する場合も…
【4】むやみに総合感冒薬や咳止めを飲む
自宅療養が推奨されるなか、総合感冒薬を服用する人もいるが、それも避けたほうがいという。
「風邪の場合も同じですが“速効”とか“最強処方”などのうたい文句で販売されている総合感冒薬には、あらゆる症状を抑え込むために、医師は処方しないような組み合わせの強い成分が入っています。もちろん解熱成分も入っていますから、一時的に症状が抑えられたように見えても、根本的にウイルスが消失しているわけではないため症状の悪化を見逃してしまうリスクがあるのです」
つらい咳を止めたい、という場合も同様だ。
「咳をすることで、痰が出やすくなるという効果もあります。痰を外に出すというのは、体内の悪いものを外に出そうとする防御反応なので、あまり早い段階で無理に咳を止めないほうがいいのです」
発熱も咳も体の防御反応。無理に止めると治りが悪くなるのだ。
【5】喉スプレーをする
オミクロン株で多いとされる喉の痛み。つい喉スプレーをシュッとしたくなるが、逆効果になることもあるという。
「イソジンなど、市販の喉スプレーやうがい薬に入っているのは、多くの場合消毒成分です。喉が腫れて痛いときに使うと患部に染みるので、効いているように思いがちですが、かえって喉粘膜を傷めてしまいかねません。甲状腺機能にも影響を与える可能性があり注意を要します。
【6】持病があるのにスポーツドリンクやフルーツジュースを飲む
コロナに罹患したさい、スポーツドリンクや、フルーツジュースなどを好んで取る人も多い。コロナでも風邪でも、発熱時には、とにかく水分補給が第一なのは確かだ。しかし、次のような持病がある場合、避けたほうがいいものも。
「スポーツドリンクは飲みやすいのですが、糖分が多く含まれているので、糖尿病の持病がある方は避けたほうがいいでしょう」
また、日ごろの健康診断で、「カリウム値が高い」と言われている人や、腎臓病がある人が避けたいのがフルーツジュースだ。
「腎機能が低下している人が、カリウムが多く含まれているフルーツジュースなどばかり取っていると、高カリウム血症になる可能性があります」
不整脈を引き起こすこともある高カリウム血症。該当する人の水分補給は、白湯の方が安心だ。
【7】呼吸が苦しいときに平らな布団で寝る
「呼吸が苦しい場合は、上半身を少し起こしたほうがラクになりますよ。また、寝返りを打つなどして体位を変えることで痰が出やすくなるので、意識して寝ている向きを変えるようにしましょう」
【8】体調が優れないのに7日間の隔離期間後に出歩く
怖いのは、7日間の隔離期間が終了したからといって完治しているとは限らないことだ。
「前出の肺炎で入院した患者さんのように、薬で熱を抑えていただけということもあります。そもそも、従来の10日間から7日間に隔離期間が短縮されたのは、社会生活に影響が出るからという“大人の事情”。ウイルスが消失するというエビデンスに基づくものではありません。体調が優れない場合は、無理せず休むようにしましょう」
正しい知識を身に付けて、自分の体の声を聞きながら療養することで、早期回復を目指そう!