日本の正月文化である年賀状が正直しんどい……。そんな人は、今年は年賀状じまいを検討するのはどうだろう。
「年末年始の忙しい時期に、毎年大量の年賀状を用意するのが大変……」
「年をとって老眼が進み、細かい宛名書き作業をするのが苦しくなってきた」
近年、年賀状を負担に思う人が増加しているという。実際、お年玉付き年賀はがきの発行枚数は減っている。最盛期の’03年は44億枚であるのに対し、その後発行枚数は減少し続け、’22年には過去最低の16億4000万枚に。ピーク時の3分1となった。
一方で、年賀状でしかやり取りしない間柄の人もいるだろう。
「とくに、シニア世代は人づきあいのデジタル化が進んでいないケースがほとんどでしょう。地元の旧友や遠い親戚などと交流できる唯一の手段が年賀状のみという場合も多いです」
そう話すのは、『後悔しない「年賀状終活」のすすめ』の著書もある、ダイヤ高齢社会研究財団主任研究員の澤岡詩野さんだ。
「正直年賀状を書くのはつらいけれど、やめたら不義理に思われたり、失礼になるかもしれないと心配している人もいます。やめるか否か、皆さん悩みどころなのだと思います」
■納得の理由があれば不審がられない
しかし、正しく「年賀状じまい」をすれば、人間関係にトラブルがおきることはない。
澤岡さんから、“最後の年賀状”のお作法を教えてもらった。
【1】両面とも印刷のみは厳禁
「宛名も裏書きもすべて印刷で、さらに末尾に、『今年で年賀状は終わりにいたします』と結ばれた無味乾燥な年賀状は避けたほうが無難です。送られた相手は新年早々悲しくなったり、いい気分はしないでしょう」
唐突に『関係を切られた感』があり、これは厳禁だ。
【2】やめる理由を明確に、簡潔に説明する
「理由を記すのは大切です。『還暦になったので年賀状は本年をもって卒業させていただくことにしました』、『高齢のため体力の衰えを感じ、年始のご挨拶は本状で最後にします』などが無難ですが、なかには『SDGsなので』など、なるほどと思わせる理由をしたためる方もいます」
説得力のある理由を添えて、相手を傷つけないように配慮することを心がけよう。
【3】今後の関係についての一文を添える
「『これからもよろしくお願いいたします』など、今後も交流を続けたい相手には、『年賀状をやめるけれど、あなたとはつながっていきたい』と伝わるよう書きましょう。できれば手書きだと気持ちがこもり、好印象になります」
【4】新たな連絡手段を伝える
「なかなか会えないけれど、交流を途絶えさせたくない相手にはLINEのIDや携帯番号など、新たな連絡先を書き添えることを忘れずに」
【5】可能な限り、年賀状じまいを口頭で伝える
「今年は出すけれど、近い将来年賀状じまいを考えている人は、直接、同期会や同窓会などで会った旧友に『卒業しようと思っているの』と口頭で伝えましょう。スムーズにやめるために、じっくり“仕込み”をしておくことも大事です」
いざ、年賀状じまいの挨拶文を読んだときの唐突感がなく、受け入れられそうだ。
【6】2年分は大切に保管する
年賀状を住所録代わりに使っている人もいる。
「年賀状は、最低でも過去2年間分は大切に保管をしておくと、いざというときの連絡に役立つかもしれません。自分の分はもちろん、できれば親御さんの分もファイルしておくといいですね」
家族で共有できる場所へ保管しておこう。
【7】出す人を絞る
「年賀状じまいを迷っているなら、完全にやめる必要はありません。やめて淋しいとなれば、また再開してもいいのです。『仕事だけのつながりの人はやめる』とか、出す意味のある人だけ厳選する『絞り込み』もありだと思います。
年末年始の貴重な時間を消費してしまう年賀状。面倒だと思いつつも惰性で書いている人は年賀状終活を検討しよう。
今年は、年賀状じまいで負担を軽減し、人間関係も見直してみよう。