新型コロナに2回以上感染した人は、1回だけ感染した人に比べて、発症時の死亡リスクが2倍以上、入院リスクは3倍以上に跳ね上がるーー。

’22年11月、アメリカのワシントン大学の研究グループが、こんなセンセーショナルな調査結果を報告し、コロナを軽視し始めた社会に改めて強い警鐘を鳴らした。

研究グループが解析したのは退役軍人省の医療データ。対象は主に高齢、かつ白人男性が多数を占める退役軍人であることから、サンプルとしての偏りが大きすぎるのでは、と指摘する声もあるにはある。だが、関西福祉大学教授の勝田吉彰教授は「決して軽々に捉えるべき報告ではなく、日本人にも当てはまる可能性は十分ある」と話す。

「当初盛んに言われていた、日本人だけが持つ、重症化を防ぐファクターXについても、今では否定されています。アメリカ人に起こって日本人には起こらないなんて、都合よく考えない方がいい」

オミクロン株になって以降、全体的には重症化率は下がり、国産の飲み薬も承認され、感染症法上の位置付けも5類への引き下げが検討され始めた。そんなこともあって、私たちの意識もどこか緩みつつあるのだが、勝田教授は「新たな視座を持って感染症と向き合う必要がある」と力を込める。

■年末年始の宴会で注意すべき同時感染ーー

「私たち人間にかつての日常が戻りつつあるということは、新型コロナウイルスはもちろん、あらゆるウイルスにとっても、日常が戻ってくるということ。マスクを外し、人と人との接触が増えるということは、ウイルスにとっても、これまで狭められていた感染経路という道が開く、好都合な環境だということを忘れてはいけません」

勝田教授が今、危惧するのは「ハイブリット型流行」だという。「一人の人が新型コロナとインフルエンザに同時感染する“ハイブリッド型感染”も恐ろしいですが、社会全般として怖いのは“ハイブリット型流行”です。少し前には南半球のオーストラリアで、そして最近はカナダで、インフルエンザが大流行している。そのほかにも、乳幼児がかかると重症化しやすいRSウイルスや、今後、手を洗う人が減るとノロウイルスなども。感染経路を取り戻した複数のウイルスが、渾然一体となって広まる危険があるのです」

そして「新型コロナもまだまだ軽んじられる敵ではない」と言う。

「新型コロナは流行が始まってから、まだ3年しか経っていない。ワシントン大の報告のように、じつはいまだにわからないこと、これからわかってくることが多い。たとえば最近の新たな報告では、過去に重症化した人の脳細胞を調べた結果、前頭葉の細胞が萎縮していることもわかって来ています。やはり換気や、人との距離を適切に保つ、そしてワクチンと、まだまだ油断することなく感染防止対策を続けることが肝要だと思います」

忘年会、新年会が続くシーズンに突入した日本。マスクを外して飲食する宴会が増えるなか、忍び寄る危機に細心の注意をーー。