物価高騰が止まりません。消費者物価指数(総合)は、’22年12月に前年同月比4%の上昇。

40年ぶりの物価高に驚きました。

ところが、全国の先行指数といわれる東京都区部の消費者物価指数(総合)の’23年1月は、前年同月比で4.4%アップとさらに上昇。全国の指数も同様に上がることが予想されますから、物価高が続くのは間違いないと思います。

ですが、本当に4%でしょうか。

実生活では、1年前と比べて電気代は約20%(東京電力)、ガス代は約37%(東京ガス)値上がりしました。スーパーで買う商品は、消費者の肌感覚として「20%ほど上がっている」と思う人が多いのではないでしょうか。

実際、’22年は1年間で、2万品目以上の食品が平均14%上がりました。’23年は、1~4月に1万品目以上の食品が、平均16%の値上げを予定。2月だけでも5000品目以上です(帝国データバンク)。

家計に直接影響を与えるものの値段は、統計データの平均値よりもっと大幅に上昇しているのです。

いっぽう給料は、日本最大の労働組合の全国組織「連合」が「ベースアップを含め5%の賃上げ」を要求し、ユニクロなどを展開するファーストリテイリングが「国内社員の年収を最大で約40%アップ」と打ち出すなど、景気のいい数字が並びます。

とはいえ、中小企業にお勤めの方や50代で役職定年を迎える方の給料が増えるかというと、かなり厳しいと言わざるをえません。

たとえ増えたとしても、物価の上昇分を超えるほどの大きな給料アップは難しいでしょう。

さらに、年金生活の方も苦しい家計管理を強いられます。’23年度の公的年金は3年ぶりの増額ですが、それは額面上のこと。支給額を抑えるマクロ経済スライドの発動によって、年金の引き上げは1.9%に抑えられました(68歳以上)。冒頭で示した消費者物価指数と比べても、物価上昇に追いつかないことは明らかです。

ものの値段はどんどん上がっていくのに、給料や年金などの収入に、物価に見合うだけの増額が期待できないとしたら、家計を守るためには「ムダなお金を使わない」ことが第一です。

ただ、生活するために買い物は避けて通れません。スーパーで「ムダ遣いしない、ムダ遣いしない」と念じるだけでは、あの手この手の売り込み作戦に負けて、買いすぎやムダ買いなど浪費の山を築くことにも……。

そこで、ムダな買い物をしないためのスーパー攻略術をお教えします。

まず初めに大事なことは、スーパーに行く前、家での冷蔵庫チェックです。携帯電話で写真を撮るのもよいでしょう。「冷蔵庫にあるのに買っちゃった」が防げます。

冷蔵庫の写真を見て、奥に何があるか見えないほど食品が詰まっていたら、その日は買い物に行かず、あるもので1食作っては。食品ロス削減にも貢献できます。

■国の打ち出す補助では到底追いつかない!

【1】入店前にアメかガムを

仕事帰りや夕方にスーパーに行く方はおなかがすいているでしょう。そのまま行ったら、何もかもおいしそうに見えて、つい買いすぎてしまいます。「アメかガムで小腹を落ち着かせてから」が得策です。

【2】1人で回ろう

スーパーには「1人で行く」ことも大切です。特売品の誘惑に負けず予算を厳守して、過不足なく買い物するには、実は、とても頭を使います。夫や子どもの「あれ買って」攻撃の相手をする余裕はないでしょう。

【3】総菜売場から回ろう

今日のメニューが決まっている方は、野菜売場から回ればいいのですが、まだ決まっていない人は「総菜売場から」がおすすめ。総菜を参考に先にメニューを決めてから、入口近くの野菜売場に戻って、いつものルートで回りましょう。メニューが決まらないままだと、つい安いものに手が伸びて買いすぎの原因になります。

【4】カートは使わない

大家族や1週間分のまとめ買いでなければ「カートはNG」。

かごの重みは出費の大きさだと心して、買うのは必要なものだけに厳選してください。

【5】具体的で限定されたセールがねらい目

スーパー側の考えも知っておくとよいでしょう。抽象的な「出血大感謝祭」より、たとえば、“1人〇本限り”や“1時間限定タイムセール”など、「具体的で限定されたセール」ほどスーパーが売り切りたいお値打ち品が多いです。また、客足のにぶい「雨の日セール」もお得チャンス大。

【6】陳列棚のコーナーに安いものあり

「陳列棚のコーナー(角)」や通路にワゴンなどがあると、買い物客の歩くスピードが遅くなります。スーパーとしてはしっかり商品を見てもらえるチャンスなので、特売品を並べる傾向があります。上下に並ぶ陳列台なら、目線の高さの商品に注目。

【7】レジ前でかごの中身をチェックし1つ返そう

買い物の最後、レジに向かう前に「かごの中身をチェック」しましょう。安くておいしそうな商品を「あったらいいな」とかごに入れていませんか。冷静に見てみると「なくてもいい」商品がいくつか入っていると思います。そのなかから、もっとも必要なさそうなものを1つ選んで棚に返すことを習慣化してください。200円の商品を返せば、月10回の買い物で2000円、年間で2万4000円の節約になります。

国が光熱費の補助を打ち出しても、東京電力など7つの大手電力会社が4~6月以降に行う規制料金の値上げ額に及びません。もっとも大切な給料アップについても、首相は口頭でお願いするだけで、具体的な方策は何も示しません。

ならば、家計は自主防衛するしかありません。スーパーを攻略してムダな買い物を根絶しましょう。

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

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