3月13日、栃木県河内郡の「上三川町立上三川中学校」では卒業式が行われていた。この日、卒業するのは125人の生徒。

中学生活はコロナ禍と重なったため、修学旅行の中止をはじめ、クラスの仲間たちとの思い出がとても少なかったようだ。卒業式も終盤にさしかかったころ、小雨が降りだした中、会場の前に停車した車から降りてきたのはGACKT(49)とK(39)だった――。2人は同中学の校長先生に呼ばれ、卒業生へのサプライズライブを行うために来校したのだ。

もともとGACKTは06年から日本国中の卒業式にサプライズで現れ、卒業する学生たちへ応援歌『野に咲く花のように』を歌っている。音楽関係者は言う。

「05年、GACKTさんはラジオ番組で兵庫県立舞子高等学校の生徒から『自分の在籍する学科が定員割れの危機に瀕しているため、応援して欲しい』との相談を受けたんです。GACKTさんは“学科の魅力を自分らの手でアピールする活動をしてみてはどうか”と提案。『定員割れを防げたのなら、卒業式へ歌を書き下ろして贈る』と約束したのです。

その結果、学科の志望人数が定員を上回ったため、その生徒との約束を果たすべく、GACKTさんは翌年の2月28日、同校の卒業式にサプライズゲストとして出席。書き下ろし曲『野に咲く花のように』を歌ったのです」

彼の「卒業式サプライズライブ」は、これまで計13回行ってきたライフワークになっていたが、20年と21年はコロナ禍で中止。昨年は秋に病魔に襲われ活動休止を余儀なくされたため、卒業式ライブを断念していたのだ。

闘病から復活したGACKTが4年ぶり14回目となる卒業式ライブに「上三川中学校」を選んだ理由は、今年で教職最後を迎え、定年する校長から届いた手紙だった。

《コロナ禍であまり思い出が残せなかった生徒たちに、最後に残せる“贈り物”として、卒業してゆく生徒たちの旅立ちに花を添えたい、いつまでも記憶に刻むものにしたい》――そんな思いが綴られていたという。

■「夢は見るものじゃない、夢は叶えるもの」

その手紙を受け取った時、GACKTは闘病中だったが、彼の心を大きく動かしたようだ。

「東京から校長先生の友達がかけつけてくれました!」とのアナウンスの後、講堂の後ろの扉が開き登場したGACKTとKに、生徒も保護者も一瞬固まるが「ひゃ~!」「きゃ~!」と言う歓声が上がる。誰が来たのか信じられない様子だった。

しかし、壇上にあがり、GACKTが「元気か?」と語りかけると生徒たち「わ~!!」という歓声に変わり、保護者と先生からは拍手が。そしてGAKCKはゆっくりと語り始めた。

「今日は…オマエたちとともに、この学校を去る校長先生がどうしてもオマエたちの門出に華を添えたいと連絡をくれました」

ここで会場から再び大きな拍手が。改めてGACKTは「オマエたちの背中を押しに来たGACKTです」と挨拶。生徒からは「本物?」「本当に~!?」と歓声があがるなか、GACKTは続けて「オマエたちの背中を一緒に押したいと僕の親友のKも東京から来てくれました」と紹介した。2人は3月24日に「東京ガーデンシアター」を皮切りに、26、27日は「グランキューブ大阪」、31日に「福岡サンパレスホテル&ホール」にて、アコースティックライブを行う。そのため、過去の卒業式ライブと異なり、Kの生演奏でのライブとなった。

「こっちはあまり顔が見えないな。

もう泣いているのか? まだ何もやってないぞ!」

と笑いを誘うGACKT。生徒たちの緊張をほぐすのも上手だ。

「これから辛いことがあってくじけそうなことがあったら、今日のメッセージを思い出して、顔を上げてしっかり前に進んでくれ。いいな!」

こう呼びかけると生徒たちからは「ハイ!」と返事があがる。そしてKのピアノが始まった。『野に咲く花のように』をKのピアノとコーラスとともに熱唱。力強く歌い終えたGACKTは生徒たちに力強く語りかける。

「夢は見るものじゃない、夢は叶えるもの。そして夢を叶えること、それは諦めずに強い意志を貫くこと。オマエたちの未来に期待します。卒業おめでとう!」

そんな“贈る言葉”とともに、卒業生と一緒に去る校長先生に一礼、さらに卒業生と在校生と保護者にも一礼し、Kとともに会場を去っていった。卒業生125人、そして参列した在校生、保護者、校長先生には生涯忘れられない卒業式となったことだろう――。

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